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第8章 To embrace
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迎えたオープン当日。
Tシャツにジーンズ、足元はサンダルというラフな格好で出掛けようとした智樹に、予め用意してあったスーツと革靴を(無理矢理)着せ、俺達は家を出た。
流石にこの年になって、まだ自分でネクタイを結べないと言った智樹には驚かされたがな。
いつものように、車を劇場裏の駐車場に停め、当然のように裏口から入ろうとする智樹を引き止めた。
「今日は正面から入るぞ」
「えっ、なんで……」
意味が分からず困惑する智樹を引き摺り、劇場正面入り口に回った俺達は、改めて新しくなった看板を見上げた。
「俺、今までしっかり見たことなかったけど……、こうして見ると、なんか恥ずかしいっつーか……」
智樹が恥ずかしがるのも無理はない、正面入り口の脇には、智樹の妖艶な姿を映し出したポスターが、それはデカデカと貼ってあるんだから……
「行くぞ」
俺は智樹の手を引くと、ロビーに向かって伸びる赤いカーペットの上を進んだ。
ロビーに入ると、そう大して広くはないロビーの至る所に、リニューアルオープンを祝っての物だろう、スタンド花やら鉢植えなんかが所狭しと飾られていて、噎せ返るような花の匂いに酔いそうになる。
「なんか……、すげぇな……」
「な? 俺もビックリした……」
花の送り主の大半はオーナーである親父と繋がりのある企業や、関係者ばかりだけどな……
それは祝い花に限ったことではなくて、ロビーに溢れかえる招待客の顔ぶれにしたってそうで、そこそこ名の知れた企業のトップやら、政界の重鎮の顔まで並んでいる。
今更ながらに、親父の顔の広さには驚かされるぜ……
「支配人、おはようございます。アチラにオーナーがお待ちです」
声をかけて来たのは滝本だ。
普段は音響ルームに引きこもったきり、一切人前に出ることもない滝本だが、今日ばかりはビシッとスーツで決め込んでやがる。
「親父来てんのか? じゃあ挨拶くらいしとかねぇとな、智樹?」
滅多なことでは、こういった晴れやかな場に顔を出すことのない親父が来ているとなれば、当然顔を見せておかないと、後で面倒なことになる。
Tシャツにジーンズ、足元はサンダルというラフな格好で出掛けようとした智樹に、予め用意してあったスーツと革靴を(無理矢理)着せ、俺達は家を出た。
流石にこの年になって、まだ自分でネクタイを結べないと言った智樹には驚かされたがな。
いつものように、車を劇場裏の駐車場に停め、当然のように裏口から入ろうとする智樹を引き止めた。
「今日は正面から入るぞ」
「えっ、なんで……」
意味が分からず困惑する智樹を引き摺り、劇場正面入り口に回った俺達は、改めて新しくなった看板を見上げた。
「俺、今までしっかり見たことなかったけど……、こうして見ると、なんか恥ずかしいっつーか……」
智樹が恥ずかしがるのも無理はない、正面入り口の脇には、智樹の妖艶な姿を映し出したポスターが、それはデカデカと貼ってあるんだから……
「行くぞ」
俺は智樹の手を引くと、ロビーに向かって伸びる赤いカーペットの上を進んだ。
ロビーに入ると、そう大して広くはないロビーの至る所に、リニューアルオープンを祝っての物だろう、スタンド花やら鉢植えなんかが所狭しと飾られていて、噎せ返るような花の匂いに酔いそうになる。
「なんか……、すげぇな……」
「な? 俺もビックリした……」
花の送り主の大半はオーナーである親父と繋がりのある企業や、関係者ばかりだけどな……
それは祝い花に限ったことではなくて、ロビーに溢れかえる招待客の顔ぶれにしたってそうで、そこそこ名の知れた企業のトップやら、政界の重鎮の顔まで並んでいる。
今更ながらに、親父の顔の広さには驚かされるぜ……
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声をかけて来たのは滝本だ。
普段は音響ルームに引きこもったきり、一切人前に出ることもない滝本だが、今日ばかりはビシッとスーツで決め込んでやがる。
「親父来てんのか? じゃあ挨拶くらいしとかねぇとな、智樹?」
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