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第6章 Accident
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「ったく、どこ行っちまったんだよ、和人の奴」
一人ごちりながら来た道を戻って行く。
露天が立ち並ぶ参道から境内までは、途中の分かれ道を除けば、一本しかない。
もしかしたらアイツ、道に迷ったのかも……
俺は迷った挙句、賑やかな参道を行くのは諦めて、もう一方の街灯一つないひっそりと静まり返った道を行くことにした。参道よりも幾分足場の悪い砂利道に苦戦しながら、奥へ奥へと足を進める。
確かこの奥には、普段は参拝者すら殆どない、小さな社殿があると聞いたことがある。
ただ、いくら道に迷ったからと言って、地元の人間ですら立ち入らないような場所へ、全く土地勘のないよそ者の和人が足を踏み入れるなんてことは考え難い。
そうは思いながらも、得も知れない不安と、焦燥感だけが俺をその場所へと誘っていた。
そして薄気味悪く朽ちた古びた社殿を視界に捉えた時、俺の不安と予感は見事に的中した。三人はいるだろうか、大柄な男達に取り囲まれていた夜目にも鮮やかな黄色が、乱暴に地面に叩き付けられた。
「和人……っ!」
俺は居ても立っても居られず、砂利に下駄履きの足を取られながら駆け出した。
「智……樹? 駄目……、来ちゃ駄目っ!」
俺の姿に気付いた和人が、男達に飛びかかる数歩手前で叫んだ。瞬間、その場にいた男達の視線が、一斉に俺に向かって降り注いだ。
えっ……、コイツら……
俺は見覚えのある顔に、一瞬記憶を巡らせた。
そうだ、確かコイツら何度か劇場に客として来ていた奴らだ。
それも、散々ダンサーにヤジを飛ばした挙句、支配人である翔真から出入り禁止を命じられていた筈。
和人自身も、ヤジこそ浴びせられてはいないが、使用済みのゴムを投げ付けられたり、局部の写真を撮られたりと、けっこうな目に合っている。
でもどうしてコイツらが?
一人ごちりながら来た道を戻って行く。
露天が立ち並ぶ参道から境内までは、途中の分かれ道を除けば、一本しかない。
もしかしたらアイツ、道に迷ったのかも……
俺は迷った挙句、賑やかな参道を行くのは諦めて、もう一方の街灯一つないひっそりと静まり返った道を行くことにした。参道よりも幾分足場の悪い砂利道に苦戦しながら、奥へ奥へと足を進める。
確かこの奥には、普段は参拝者すら殆どない、小さな社殿があると聞いたことがある。
ただ、いくら道に迷ったからと言って、地元の人間ですら立ち入らないような場所へ、全く土地勘のないよそ者の和人が足を踏み入れるなんてことは考え難い。
そうは思いながらも、得も知れない不安と、焦燥感だけが俺をその場所へと誘っていた。
そして薄気味悪く朽ちた古びた社殿を視界に捉えた時、俺の不安と予感は見事に的中した。三人はいるだろうか、大柄な男達に取り囲まれていた夜目にも鮮やかな黄色が、乱暴に地面に叩き付けられた。
「和人……っ!」
俺は居ても立っても居られず、砂利に下駄履きの足を取られながら駆け出した。
「智……樹? 駄目……、来ちゃ駄目っ!」
俺の姿に気付いた和人が、男達に飛びかかる数歩手前で叫んだ。瞬間、その場にいた男達の視線が、一斉に俺に向かって降り注いだ。
えっ……、コイツら……
俺は見覚えのある顔に、一瞬記憶を巡らせた。
そうだ、確かコイツら何度か劇場に客として来ていた奴らだ。
それも、散々ダンサーにヤジを飛ばした挙句、支配人である翔真から出入り禁止を命じられていた筈。
和人自身も、ヤジこそ浴びせられてはいないが、使用済みのゴムを投げ付けられたり、局部の写真を撮られたりと、けっこうな目に合っている。
でもどうしてコイツらが?
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