51 / 369
第6章 Accident
3
しおりを挟む
ほんの少しの複雑な感情を持ったまま、他愛もない会話と、カラコンと小気味良い下駄の音を楽しんで居るうちに、俺達は祭り囃しと、境内へと続く参道に所狭しと立ち並ぶ屋台の灯りとで、いつになく賑やかな神社に着いた。
「翔真さん、後から来るんだっけ?」
石階段を一段一段足元を確かめながら和人が言う。
「そう言ってたけど、劇場の戸締りしてからだから、もうちょいかかるだろうな」
和人には、翔真のことは伝えてあったが、雅也が来るとは敢えて伝えていない。翔真曰く、和人を驚かせるため……、要はサプライズってことらしい。
「じゃあ、どうする? 先回っちゃう?」
「そうだな、翔真には連絡しとけばいいしな」
俺は翔真に神社に到着したこと、そして和人と先にブラブラしてることをメールに打ち、送信した。それから、翔真達が着いたら連絡くれるように、とも……
そう大して大きな祭りではないもけど、それなりに人が集まることだし、混雑した中で俺が見つからないとなれば、翔真の性格だからきっと心配して大騒ぎするだろうし、連絡だけはこまめにしておいた方が面倒がなくて良い。
なんたってアイツ、前に二人で買い物に行った時、ちょっと俺の姿が見えなくなっただけで、迷子の館内放送入れやがったし……
あん時は恥ずかしかったな……
「コレでよし、と」
「ねぇ、金魚すくいやろうよ」
「やだよ、俺世話出来ねぇもん…」
それにこういうトコの金魚って、すぐ死んじまうから……
「じゃあさ、ヨーヨー釣りは? あ、射的も良くない?」
まるで子供のようなはしゃぎっぷりに、俺は思わず肩を竦めた。
この調子じゃ、翔達が来る前に両手が塞がっちまう。一つ溜息を落として、目の前にある筈の黄色い浴衣に視線を向けるけど……
「あ、あれ……? 嘘だろ……?」
辺りを見回してみるけど、揃いで買った黄色い浴衣はどこにも見当たらなくて……
「か、和人……?」
俺は人並みを掻き分けるようにして、歩を前に進めた。勿論、和人が興味を持ちそうな屋台も覗き込みながら……
でも和人の姿はどこにもなくて……
「アイツ、いい歳して迷子って、洒落になんねぇし……」
頭をポリッと掻いて、辺りをグルっと見回した。
その時、俺の目の前を、見覚えのあるキャップが通り過ぎて行った。
「翔真さん、後から来るんだっけ?」
石階段を一段一段足元を確かめながら和人が言う。
「そう言ってたけど、劇場の戸締りしてからだから、もうちょいかかるだろうな」
和人には、翔真のことは伝えてあったが、雅也が来るとは敢えて伝えていない。翔真曰く、和人を驚かせるため……、要はサプライズってことらしい。
「じゃあ、どうする? 先回っちゃう?」
「そうだな、翔真には連絡しとけばいいしな」
俺は翔真に神社に到着したこと、そして和人と先にブラブラしてることをメールに打ち、送信した。それから、翔真達が着いたら連絡くれるように、とも……
そう大して大きな祭りではないもけど、それなりに人が集まることだし、混雑した中で俺が見つからないとなれば、翔真の性格だからきっと心配して大騒ぎするだろうし、連絡だけはこまめにしておいた方が面倒がなくて良い。
なんたってアイツ、前に二人で買い物に行った時、ちょっと俺の姿が見えなくなっただけで、迷子の館内放送入れやがったし……
あん時は恥ずかしかったな……
「コレでよし、と」
「ねぇ、金魚すくいやろうよ」
「やだよ、俺世話出来ねぇもん…」
それにこういうトコの金魚って、すぐ死んじまうから……
「じゃあさ、ヨーヨー釣りは? あ、射的も良くない?」
まるで子供のようなはしゃぎっぷりに、俺は思わず肩を竦めた。
この調子じゃ、翔達が来る前に両手が塞がっちまう。一つ溜息を落として、目の前にある筈の黄色い浴衣に視線を向けるけど……
「あ、あれ……? 嘘だろ……?」
辺りを見回してみるけど、揃いで買った黄色い浴衣はどこにも見当たらなくて……
「か、和人……?」
俺は人並みを掻き分けるようにして、歩を前に進めた。勿論、和人が興味を持ちそうな屋台も覗き込みながら……
でも和人の姿はどこにもなくて……
「アイツ、いい歳して迷子って、洒落になんねぇし……」
頭をポリッと掻いて、辺りをグルっと見回した。
その時、俺の目の前を、見覚えのあるキャップが通り過ぎて行った。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる