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第6章 Accident
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和人の定期公演の最終日、俺は翔真が立てた計画を実行するために、和人を神社の祭りへと誘った。
思いの外祭り好きだったらしい和人は、自分のステージを終えると俺のステージが終わるのを待って、浴衣を買いに行こうなんて言い出すから、俺は内心面倒臭いと思いながらも、和人に付き合うことにした。
雅也は勿論のこと、和人には幸せになって欲しかったから……
和人の話では、和人の母親は未婚のまま、和人を産んだ。
和人自身は、自分に父親がいることは知っていたが、どこにいるのかも、名前すらも知らず、生きてるのか死んでるのかさえ知らされないまま育ったらしい。
母親はパートをいくつも掛け持ちして収入を得ていたらしいが、それでも家計は当然火の車で、幼い和人は望みもしない貧しい生活を強いられてきた。
それでも和人はそれなりに幸せだった、って笑ったけど。
でもそんな生活も、母親が死んだことによって一変した。
まだ幼く、母親以外に身寄りのなかった和人は、当然のように児童養護施設に送り込まれたが、そこでの暮らしには慣れず……
行く当てなんてないまま施設を逃げ出した和人は、金のために売春を繰り返し、やがてストリップの世界に足を踏み入れた。
身体を売るよりは、オナニー目当ての野郎の前で裸になる方が、よっぽどマシだと考えたんだろうな……
「ねぇ、ボーっとしてないで、智樹も自分の選んだら?」
「はあ? 俺? 俺はいいよ、このままで」
浴衣なんて歩きにくいし、けっこう暑いし……、どうせ近所のちっぽけな祭りなんだから、Tシャツにハーフパンツで十分だと考えていた俺は、咄嗟にその場から逃げ出そうとした。
けど、和人の思いの外強い握力に引っ張られ……
「あ、コレにしない? 俺が黄色で、智樹は青。良くない?」
「いいんじゃねぇか……」
結局和人に押し切られるまま、浴衣を買う羽目になった。
しかも同じ柄の色違いを……
この年になって、しかも男と揃いの浴衣を着るなんて、少しどころかだいぶ恥ずかしいと思いながらも、和人の幸せのためなら仕方ない。
ただ、これでまた翔真の奴に笑われんだろうな、と思うと溜息が自然と零れた。
思いの外祭り好きだったらしい和人は、自分のステージを終えると俺のステージが終わるのを待って、浴衣を買いに行こうなんて言い出すから、俺は内心面倒臭いと思いながらも、和人に付き合うことにした。
雅也は勿論のこと、和人には幸せになって欲しかったから……
和人の話では、和人の母親は未婚のまま、和人を産んだ。
和人自身は、自分に父親がいることは知っていたが、どこにいるのかも、名前すらも知らず、生きてるのか死んでるのかさえ知らされないまま育ったらしい。
母親はパートをいくつも掛け持ちして収入を得ていたらしいが、それでも家計は当然火の車で、幼い和人は望みもしない貧しい生活を強いられてきた。
それでも和人はそれなりに幸せだった、って笑ったけど。
でもそんな生活も、母親が死んだことによって一変した。
まだ幼く、母親以外に身寄りのなかった和人は、当然のように児童養護施設に送り込まれたが、そこでの暮らしには慣れず……
行く当てなんてないまま施設を逃げ出した和人は、金のために売春を繰り返し、やがてストリップの世界に足を踏み入れた。
身体を売るよりは、オナニー目当ての野郎の前で裸になる方が、よっぽどマシだと考えたんだろうな……
「ねぇ、ボーっとしてないで、智樹も自分の選んだら?」
「はあ? 俺? 俺はいいよ、このままで」
浴衣なんて歩きにくいし、けっこう暑いし……、どうせ近所のちっぽけな祭りなんだから、Tシャツにハーフパンツで十分だと考えていた俺は、咄嗟にその場から逃げ出そうとした。
けど、和人の思いの外強い握力に引っ張られ……
「あ、コレにしない? 俺が黄色で、智樹は青。良くない?」
「いいんじゃねぇか……」
結局和人に押し切られるまま、浴衣を買う羽目になった。
しかも同じ柄の色違いを……
この年になって、しかも男と揃いの浴衣を着るなんて、少しどころかだいぶ恥ずかしいと思いながらも、和人の幸せのためなら仕方ない。
ただ、これでまた翔真の奴に笑われんだろうな、と思うと溜息が自然と零れた。
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