S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
40 / 369
第5章   Time

しおりを挟む
 智樹を一人支配人室に残し、大道具やら機材やらで溢れた狭い通路を抜けステージ袖まで出ると、薄闇に紛れて二つの人影がゆっくりこちらを向いた。

 「お前ら……、こんなトコで何やってんだ?」
 「あっ、翔真!」

 情けない声を上げたのは、副支配人の雅也だ。そしてもう一人は……

 「あん、もう……相原さんたら。直ぐに支配人に泣き付くんだから……」

 圭か。
 どうせ雅也が独り身なのを良い事に、色仕掛けで擦り寄ったんだろうが、ダンサーとしての資質は十分なだけに、残念な奴だ。

 「お前明日もステージあんだろ? たまには早く帰って休め」

 劇場を取り仕切る責任者としての一言に、圭は仕方ないとばかりに肩を竦めて見せると、振り向き様、雅也に向かってウィンクに加えて投げキッスを送った。


 やれやれ、困った奴だ……


 「あ、圭。帰りにエステ寄んの忘れんなよ? 脛毛すねげ生えて来てるぞ」

 駄目押しの一言に、圭が薄闇の中自分の両足を手で撫でる。

 「やっだー、もぉっ……」

 キャッとばかりに両手で顔を覆い、内股気味に楽屋へと続く階段を駆け上がって行った。

 「ったく、乙女かよ」
 「いやぁ、助かったよ、マジで……。もうさ、圭の奴しつこくってさ……」

 クスクスと笑いながら舞台袖からステージ上へ出た俺を、心底困り果てた雅也が頭をガシガシと掻きながら着いて来る。

 「それはお前、アレだ。早いとこ特定の相手作んねぇからじゃねぇか?」

 スラッとした長身、見るからに爽やかな好青年と言った風貌をしているにも関わらず、雅也が恋人と呼べる存在を作らないのには理由わけがある。

 コイツには随分と前から惚れてる相手がいる。

 智樹と同じダンサーで、小悪魔キャラを売りにしている、そう……和人だ。

 尤も、そのことに俺が気付いている……なんてことは、この天然を絵に書いたような男は知る由もないんだけどな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...