S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

第３章 Collaboration

６

　俺の提案に翔真さんが飲んでいたコーヒーを吹き出し、智樹の手からはトーストがポロリと落ちた。


　えっ、俺なんか変なこと言った？


　「お前……それ……、本気で言ってんのか？」

　口元をTシャツの裾で拭きながら翔真さんが目を丸くして、智樹は……依然として固まったままだ。

　「うん、本気だよ。だってその方が智樹にも負担かからなくていいでしょ？」


　それにこんな事でもない限り、智樹と一緒に踊れる、なんてことないだろうし……


　「ま、まあ……そ、それはそうだけど……」
　「ね、いいでしょ？」

　この際智樹の意見なんて関係ない。ここは支配人である翔真さんの権限を遺憾無く発揮して欲しい。

　「うーん……、そうだな……、やってみるか……」
　「やった！ それでこそ翔真さん！」

　普段は滅多にしないことなんだけど、喜びのあまりガッツポーズを決める俺。その反面、智樹はというと、目を見開いたまま首をプルプルと振っては、「無理だ」と繰り返すばかり。

　智樹はいつもそうだ、誰かと一緒に踊ることをやたらと嫌がる。


　元々人と群れるのが好きなタイプじゃないってのは分かるんだけど、でもさ……


　「よし、ちょっと待ってろ」

　翔真さんが席を立ち、ローテーブルの上に置かれたノートパソコンを開き、キーボードを嬉々として叩き始めた。その背中を追いかけるように智樹も席を立ち、キーボードの上を忙しなく動き始めた翔真さんの腕を掴んだ。

　「ね……俺、絶対無理……」

　今にも泣き出しそうな声で縋るけど、翔真さんはその手を逆に握り返すと、

　「手遅れだな。ホームページに告知したし……」

　サラッと言い放った。

　「そん……な……」

　ガックリと肩を落とす智樹を、超笑顔で見つめる翔真さん。


　やば……、優しい顔してるけど、やっぱこの人鬼だわ……