13 / 369
第2章 Frustrating Feeling
10
しおりを挟む
智樹はとの生活は長くなる……、理由もなくそう直感した俺は、智樹の体調が戻り次第引越しを決めた。
丁度手狭に感じていた頃だったから、良い機会だったのかもしれない。
それから智樹の身の回りの物も買い揃えた。智樹は最低限どころか、何一つ自分の物を持っていなかったから。
唯一持っていたのは、たった一枚の写真だけ。
それも智樹が写っているわけではなく、一見ハーフと見間違える程の美形の男の写真で、俺は一目見てソイツが、智樹の言っていた《じゅんいち》だと確信した。
でなけりゃスマホも財布も、何一つ持たない智樹が、たった一枚の写真を後生大事に持ってる筈がないと思ったからだ。
俺は身の回りの物を揃えるついでに、どこにでもあるような安っぽい写真立てを買い、そこに写真を飾るように智樹に提案した。
でも智樹は、「そんなのいらない」の一点張りで、皺になるのも構わずポケットに捩じ込んだ。
俺はその時になって漸く気が付いた。
智樹は写真の中の《じゅんいち》を見ていたいんじゃなくて、常に身近に感じていたいんだと……
それ程、その《じゅんいち》って奴は智樹にとって特別な存在なんだと……
でも所詮は紙だ。ずっと肌身離さずポケットに入れていれば、所々色だって褪せるし、破れたりもする。
見兼ねた俺は、
「智樹の気持ちは分かる。でもな、一枚しかないんだろ? だったらボロボロになる前に、写真立てに飾った方が良いんじゃないか?」
破れてしまった箇所を、丁寧にテープで補修する智樹に言った。
「そう……なんだよね……。俺も分かってんだけどさ、でもどうしても手放せなくて……」
智樹は所々テープで補修した跡を指でなぞった。愛おしそうな、でもどこか寂しそうな目をして……
それ程、たった一枚手元に残った《じゅんいち》が写った写真は、智樹にとって大切な物だったんだ。
丁度手狭に感じていた頃だったから、良い機会だったのかもしれない。
それから智樹の身の回りの物も買い揃えた。智樹は最低限どころか、何一つ自分の物を持っていなかったから。
唯一持っていたのは、たった一枚の写真だけ。
それも智樹が写っているわけではなく、一見ハーフと見間違える程の美形の男の写真で、俺は一目見てソイツが、智樹の言っていた《じゅんいち》だと確信した。
でなけりゃスマホも財布も、何一つ持たない智樹が、たった一枚の写真を後生大事に持ってる筈がないと思ったからだ。
俺は身の回りの物を揃えるついでに、どこにでもあるような安っぽい写真立てを買い、そこに写真を飾るように智樹に提案した。
でも智樹は、「そんなのいらない」の一点張りで、皺になるのも構わずポケットに捩じ込んだ。
俺はその時になって漸く気が付いた。
智樹は写真の中の《じゅんいち》を見ていたいんじゃなくて、常に身近に感じていたいんだと……
それ程、その《じゅんいち》って奴は智樹にとって特別な存在なんだと……
でも所詮は紙だ。ずっと肌身離さずポケットに入れていれば、所々色だって褪せるし、破れたりもする。
見兼ねた俺は、
「智樹の気持ちは分かる。でもな、一枚しかないんだろ? だったらボロボロになる前に、写真立てに飾った方が良いんじゃないか?」
破れてしまった箇所を、丁寧にテープで補修する智樹に言った。
「そう……なんだよね……。俺も分かってんだけどさ、でもどうしても手放せなくて……」
智樹は所々テープで補修した跡を指でなぞった。愛おしそうな、でもどこか寂しそうな目をして……
それ程、たった一枚手元に残った《じゅんいち》が写った写真は、智樹にとって大切な物だったんだ。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説







寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる