上 下
2 / 31

第二章

しおりを挟む
 ビル群が建てられているローマの首都はニューヨークかと見間違うほどの町並みであったが、街の至る所に歴史建造物もあり、郊外に行くほどにその近代的ビル群は増して行く、しかし軍事力で言えばまだまだアフリカの方が大きく、ローマは案外軍事力だけは魔法国家的であった。これは何も変なことではない、諸君の国のように半民主主義の国、日本も経済大国として四位だか五位に居るのであろうが(三位という認識は感染流行を考慮して三位という順位は妥当ではないとこちらの世界では考えている)軍事力では法的制限から韓国と同程度か、その少し下を行く程度だと分析している。それでも経済力は大きく、その価値は世界経済の一翼を担うレベルである。それでも政治が未熟なせいで軍事力も未熟なのである。優秀なのは一重に保守的でありながら勤勉な労働者と内部留保主義の企業が多い点で日本は優秀なのだ。これはローマにも言えることで、結果的に経済力はあるものの軍事力は保守的なローマを体現している。ただ日本と違う点は軍事行動に国家元首が臆しないことだが、今回はローマは実はヒエルランドに軍事計画をしていなかった。
 カエサルは言われもない疑いに不快に思っていた。
 彼が居るのは王城である。皇城という認識はないのはひとつの民族が王国を成した時、最大の権力が王に集中する事を帝国というが、この世界にひとつの民族や複数の民族を束ねることを王の義務とする考えから王国という認識が広く、ローマ帝国という国名も実は王国の上位国という認識が歴史学者にあるだけで、王族も帝国という認識はなく、実際この世界で帝国と名乗っているのは実はローマだけであり、日本も王国という認識であり、帝国と名乗っているのは軍人だけであった。
 華族出身者から見たら日本は王国である。急進派も保守派もあとにも先にも王国制を認識している。教育を受けた国民は(ヨーロッパから見た日本は教育を受けていないと見られている。もちろんこの世界のことであるが……)日本は王国と見ている。
 そちらの日本は名ばかりの民主主義を標榜しているそうだな。 
 為政者は恥とは思わぬのか。国家を家臣が牛耳るとは王家への侮辱である。この世界でそれを理解するのは工業国であり、全ての王国は魔法を使えぬ卑しきものが、悲しきものが、自身を正当化する苦し紛れの概念であると考えている。
 わかるだろうか、この世界で自民党だろうが民主党だろうが、卑しき身分のものが国家を名乗ること自体異常なのだ。王族、貴族は生まれながらにして民の幸福を願い、私利私欲に走らぬというのは当たり前であり、卑しき身分のものが議員報酬目的や、自身の名誉のために生きるというのを絶対にこの世界は理解しない。
 王や貴族の統治は当然の勤めであり、名誉と受け止めている。王家は貴族を統治し、民を統治し、その安定と発展を義務としている。つまりそちらの民主主義とは名ばかりの統治はこちらではまだまだ幼き赤子である。
 真に民主主義とは一部の有力者が財を成すべきではなく、無償でその情報を提供し、そして意見を無償で共有するべきという思想の元が民主主義と考えている。
 これを均等に配布することを社会主義と言い、さらに国家不要を是として民が共有意識で統治するのが共産という。
 これを理解する者は一切そちらの世界には存在しないのは、約束を守らぬ為政者が多いからだ。実際に約束を護った為政者を思い浮かべ、ひとりも浮かばぬであろう。そうなのだ。そちらのアメリカも日本も、誰一人として約束を護ったものはおらぬ。
 逆にこちらの世界では裏切りは確実に処刑であり、滅亡させるために戦争に出向く辺り、約束の重さはそちらとは桁違いだ。
 命の重さが違うのだ。
 尊厳の重さが違うのだ。伝統が違う、盟約の重さが違う。何もかもそちらとは価値が違う。故にこの世界は精霊契約がそのまま命となる。それを敗れるのは信仰を失った人間のみだ。
 精霊契約とは神への信仰と精霊信仰がそのまま約束事になったものだ。
 これは魔法国家では憲法並みに重要な契約である。だからローマはヒエルランドに無闇に工作兵を送らぬ。此度のヒエルランドの疑惑は不当だとローマは思っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...