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序章:平穏の終わり

5/28(水):共に冒険者へ

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 源三郎さんとの商談は無事に終わり俺の口座に三十一億円が振り込まれることになった。

 東江愛理のすぐに用意されたスマホで連絡先を交換して、帰りは送ってもらうのではなく自分で転移して帰ることにした。

 源三郎さんからこの場で売買されたものは一部の者以外知られないようにしておくと言われたからそれを信用するしかない。だがそこら辺は大丈夫だと思っている。特に理由はないけど。

 誰にも見られないように部屋から輝夜の家の玄関に転移する。

「あれ?」

 だが転移した先は人気がない山を抜けた場所だった。

「……どういうことだ?」

 確かに俺が指定したのは輝夜の家だった。だがたどり着いたのは東江家の道中で通らなかった場所だ。

「距離制限があるのか!?」

 考えられるのはそれしかない。俺一人で移動した時と輝夜か東江と一緒に転移した時、魔力の減りは一緒だった。

 おそらく人数制限はないんだろう。でも距離制限があると。

「……どうすることもできないのか?」

 魔力消費を増やせば距離制限も解消されるのだろうか。……あっ、魔力操作! もしかして魔力操作を使えば魔力消費を変えることができて距離制限も解消されるのか!?

「大事じゃねぇか……!」

 習得した当時は何に使うのか分からなかったがこういうことなのか……! 待て、ランクが表記されていない魔法は魔力操作がないと威力の制限がついているのか?

 持っている魔法でランク表記がないのは魔弾、魔力障壁、浄化、解毒、聖火。これらは魔力操作がないと一定値しか効果を発揮しないのか……? まあそうか。そうじゃないと無限に威力を上げられることになるんだから。

「気づいてよかった……」

 いつかは気が付いていただろうが早い方がいいに決まっている。これで魔力操作の必要性は分かったわけだ。

 でも今のところ属性魔法はこの魔力操作を必要としないから魔弾とかがドロップしてからだな。それまでは俺と輝夜しか必要としないわけだ。輝夜にも魔弾を覚えてもらった方がいいだろうし。

 転移でどれくらい移動したかを確認する。そこからここから輝夜の家までどれくらい魔力が必要かを計算して魔力操作を使用。

「転移」

 ちゃんと輝夜の家の玄関にたどり着くことができた。

 ……これ、転移した時に魔力操作した魔力分が壁の中なら壁に埋まるのか? それとも少し手前になるのか。誰か悪人で試してみたいな。

 壁に埋まったらその中の質量はどうなるんだろうか。壁が膨らむのだろうか。



「おっ、振り込まれてる」

 夕食の準備まで終わらせてスマホを見ると通知が来た。通知は銀行口座が見れるアプリからで三十二億が振り込まれていた。

 ちゃんと振り込まれていることも分かったしこれからも向こうが反故にしない限りは売買しようかな。

 それにしても三十一億だったはずだがこの一億は謝礼か? 一億も太っ腹だ。これからどうぞよろしくお願いします料も含まれているのかもしれない。

 当たりを引けて良かった。

「ん? 東江愛理からか」

 東江愛理からメッセージが届いた。

『お金振り込まれた?』
『確かに振り込まれたぞ』
『そっか、良かった。これからもウチで売ってね』
『今のところこんな大金を出してくれるのは東江家しかないからな。また商売させてもらう』
『ありがとう!』

 東江愛理には悪いが本当に運が良かった。



「今日は東京ダンジョンに行ったのよね? どこまで行ったの?」
「今日ダンジョンの五階層まで行ったぞ」

 晩御飯を食べ終えてまったりとしている時に輝夜がそう聞いてきた。俺はお金が貯まったことをいつ言おうかと機会を伺っていたから丁度いい。

「そこまででどれくらいのお金になったのかしら」
「今日は換金はしていない」
「それなら今日は収入はなしってこと?」
「ふっ、俺は輝夜の想像を超える男だからな」

 スマホの画面をつけて予め開いていた口座残高を輝夜に見せる。

「……ボトルを売ったの?」
「正解。よく分かったな」
「そんな金額はそれしか思いつかないわよ。まだ下層に行ったのなら分かるけれど五階層までなのでしょう? それならボトルしかないわ」
「これで輝夜は仕事をやめれるな」
「えぇ、明日にでも退職届を出すわ。それにしても一日でどうやって見つけたの?」

 とても喜んでいる輝夜も可愛いなと思いつつ今日あったことを話す。

 五階層に行ったら東江愛理が強姦にあいそうになっていてそれを助けて東江家のお嬢さまだったからそこで面白そうだったからボトルを売ったことを伝えた。

「才能アリの冒険者は特別だと思い込んで何をしてもいいと思っている度し難いほどのクズね」
「それをボトルで解決できることはいいことだ」
「……その東江愛理は可愛かったの?」
「カワイイ系だったな。それがどうした?」
「ふぅん。その子のほぼ全裸を見たのよね。さぞ素晴らしいものだったのでしょうね」

 拗ねていらっしゃる。

「俺がこの世で一番大切な人は輝夜だぞ。他の女体なんて気にしたことがない」
「これから変わるかもしれないわよね?」
「いやいや、輝夜が一番じゃなくなることはないだろ。これまでの人生でもそうだっただろ」
「……信用できないわね」

 どうしてここで信用できないのだろうか。輝夜は自分自身が絶世の美女であることを分かっているくせに俺のことになるとその前提がなくなってしまう。

 まあでも俺は輝夜が絶世の美女だから一番というわけではない。ただ輝夜が面白くてずっと一緒にいたくなったから一番になっている。

「輝夜、信じてくれ」
「……その目と声と雰囲気だけで信じてしまう自分のチョロさが嫌になるわね……!」
「俺にガチ惚れしている証拠だろ?」
「そうよ! ずっとガチ惚れしているわよ!」
「ありがとう。俺もガチ惚れしているぞ」
「……ハァ、別に女を作るのはいいのだけれど私は絶対に一番よ」
「俺がそんな節操なしだと思われているのか?」
「私の妹」
真昼まひるは……まあ、返り討ちしているだけだな」
「私たち姉妹はどうして同じ男を好きになるのかしら……?」
「まあまだ真昼が俺じゃなくて弟が好きな可能性もあるからな」
「いやもうないわよ」
「そうか……それもそうだな」

 あいつ、本当に何をやっているんだか。真昼から事情を少し聞いているとは言えさすがに不良みたいなことはバカバカしいんだが。
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