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外伝・過去(語り)

『全能の魔法使い』 第一章、第五節。

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『弓の英雄』ドリアーヌ・カロー。南の大陸の、中央大陸の近くに存在している森の中にある小さな村の出身の彼女は両親と妹の四人家族であり、狩りを生業としている家系であった。両親が両方狩人であることから、彼女も必然的に狩人の道へと進んだ生粋の狩人である。

 そんな平穏を送っていた彼女の暮らしは、唐突に崩れた。南の大陸に第二次侵攻が来たのだ。

 南の大陸の侵攻は、西の大陸の宣戦布告侵攻より後で、準備が整っている状態で侵攻が始まった。始まったものの準備が整っているのは南の大陸にある大きな国だけであり、中央大陸の近くにあるドリアーヌがいる村は完全に見放されていた。

 しかし、小さな村はそれが分かっていたかのように、独自で村を襲ってくる魔族を撃退する準備をしていた。森の中は、彼たち狩人の狩場であるため時間をかけずに罠をかけることができた。

 魔族が侵攻の際、確実に通る場所に位置している小さな村には、当然魔族が侵攻してきた。魔族は数の暴力で軽く来ていたのだろう。それが命取りとは知らずに何の策も練らずに侵攻してきた。

 結果は、魔神王軍の惨敗。

 魔族は一つの村の、少数の人間の策により多くの魔族の命を狩られたのだ。魔神王軍が南の大陸を一つも制覇できず、多くの兵を失ったことに魔神王は激怒した。他の場所では順調に制覇できているにもかかわらず、南の大陸の、それも小さな村にされたことで威厳が失われたと思ったのだろうか、魔神王は南の大陸ではなく、小さな村を侵攻するべく一斉に多くの魔族を送り込んだ。

 だが、それも惨敗。

 策だけでは覆らない魔族の数であったのにもかかわらず、魔神王軍は全滅した。小さな村の彼らだけの力では勝てなかったが、ある人物の力が合わさったことにより勝つことができた。その人物の名は、『全能の魔法使い』の彼である。彼が一番最初に現れた戦場は、ここである。

 彼は最初に撤退したすぐ後に現れ、次の戦いに備えて『全能の魔法使い』の力と狩人の力を組み合わせ、半永久的に自動で動き続ける攻略不可能の森を作り上げた。

 中央大陸の近くにあるこの場所を落とされれば、ただでさえ兵力が他の大陸よりも劣っている南の大陸はすぐに落とされてしまうと考えた結果、絶対に通る場所を難攻不落にしたことで南の大陸の侵攻を遅らせることができた。

 そして、『全能の魔法使い』の最初に仲間になったのは、この話に出てきた『弓の英雄』となる未来が待っているドリアーヌ・カローである。後に彼女にこの時のことを聞いた。

 “最初は胡散臭い人だと思ったけど、すべての言葉を誠心誠意言っていて、ここを守ろうとしていることが伝わってきた。そんな彼について行かない道理がなかった。結果として、世界で一番信頼している人になっちゃった”
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