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03:強制クエスト完了。

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「彩加義姉さんはこれを使って」
「えっ!? どこから出したの!?」

 俺が『収納』から取り出したのはランク2のイエローソード。ランクが高いものはいくらでもあるが、これくらいまでしか今の彩加義姉さんが装備できない。

「今は目の前のモンスターを片付けよう。『剣聖』があればすぐに倒せるはずだよ」
「えっ……そ、そんなことできるわけないでしょ!?」

 まあ至って普通の反応だ。今の俺はただクエストクリアするためだけの人間に成り下がっている。

 ここで彩加義姉さんがするかしないかで今後の行動は変わってくるから、これは確認するための物だ。

「そうだよね。なら、パーティーを組もうか」
「「パーティー?」」

 最初だとこういうことが分からないが、今の俺だとこういう裏道を知っている。

「こんなところでどうやってやるの!?」
「それは大丈夫。俺が止めているから」

 今にも襲い掛かろうとしているモンスターたちに向かって『威圧』を使ってこちらに来させないようにした。

 モンスターは俺の威圧を受け、俺たちの方ではなく他の人間を襲い始める。

「俺がパーティー申請を送るから、それを承諾してくれればパーティーを組めるようになるよ」

 もはや指を動かさずに申請ができるようになった俺が即座にパーティー申請を彩加義姉さんと依怜義姉さんに送った。

「あっ、創次から来た。YESと」
「本当にゲームみたいだよね~」

 視界の左端に彩加義姉さんと依怜義姉さんのHPゲージとMPゲージが出現したことでここの三人はパーティーになれた。

「……へぇ、こういう風になるんだ」

 まじまじと左上も見ているのが分かる彩加義姉さん。

「パーティーになるってことは、パーティーメンバーのステータスも見れるの?」
「見れるよ。ステータスを開くとステータスとは違う枠にあるパーティーってところを押すと俺のステータスも出るはず」

 依怜義姉さんにそう聞かれて素直に答え、依怜義姉さんと彩加義姉さんは指を動かして俺のステータスを見ようとしているのが分かる。

 こういう行動は本当にいつでも変わらないのは当たり前のことか。

 そして俺のステータスを見てギョッとした反応をするのも、十回目の頃からか。

「えっ……? 何このステータス……一、十、百、千、万、十万、百万、千万、一億、十億、百億、千億……三兆!?」
「えっ、創くんはバグだったの……?」
「ステータスに見惚れているのはいいけど、とりあえず今は強制クエストをクリアするから」

 威圧を消したことで、モンスターたちはこちらに襲い掛かろうとしてきた。

 彩加義姉さんと依怜義姉さんは身構えるが、俺が義姉さんたちを抱き寄せてただ見ていると、近寄ってくるだけで細切れになっていく。

 そんなこと構わずに数で押してくるモンスターたちも、すべてが細切れになったことで周りにいるモンスターたちはいなくなった。

『宵月創次、強制クエスト達成』
『宵月依怜、強制クエスト達成』
『宵月彩加、強制クエスト達成』

 これで第一の強制クエストを終わらせることができた。

「……創次、どういうこと?」
「創くん、私はどうしても教えてほしいって思っているわけじゃないけど……教えてくれると嬉しいかな」

 でもこんな状態を見せてしまった義姉さんたちには隠し通せるわけがない。いや、隠そうと思えば俺のステータスを『偽装』すれば隠すことはできた。

 でもそれが意味のないことで、義姉さんたちに話した方がいいということは体験している。言わなかったら碌な目にしか合っていない。

「俺のスキルに、『強くてニューゲーム』ってスキルがあるよね? このスキルは死ねばスキルを手に入れた時、つまり今日の一時間前に戻ることができる力を持っているんだ。それもスキルやステータス値を受け継いだ状態で。俺はこのスキルで何度もこの終わることのない地獄を繰り返しているんだよ」
「ふーん……」
「そうなんだ……」
「いや反応」
「急に地獄とか言われてもあんまりピンと来ないから」
「そうだよねぇ、でも繰り返してこんなステータスを手に入れているってことだけは分かったかな」

 深く聞かない優しさというのもある。さっきの俺の言動からも、察してくれたのだろう。

 本当に義姉さんたちだけは守らないと。

 さて、そんなことよりもこれからどう動くかを明確に確認しておかないといけない。

「俺たちは強制クエストを達成したから、もうここに留まる必要はないよ。というかここに留まらなくても他の場所でもモンスターはいるけど、学校という避難場所に留まっておくという選択肢はある。でもそれは人が多くておススメしない」
「どうして?」
「だって、こういう危機的状況で人がどう動くかなんて、生き残るために裏切る以外にないでしょ?」
「まあ、そうね。それなら家に戻る?」
「そっちの方が安心できそうだけど……依怜義姉さん?」

 俺と彩加義姉さんが会話している中、依怜義姉さんは校舎を見つめていた。

「ねぇ、創くん」
「助けたいの?」
「うん、助けたい」
「分かった。行こうか」

 もう何十回も繰り返しているのだから、依怜義姉さんが何を思っているのかも分かっている。

 というか、何なら他に助けたい人はいくらでもいるが、それをしてしまうと他の人の成長を阻害してしまう恐れがある。

 でもあの人は助けないといけない女性だ。ここで助けないと六割の確率でモンスターに殺されてしまう。

 現に一回目から四回目までは遭遇することがなかった。五回目からは簡単にモンスターを殺せて、余裕を持っていたから依怜義姉さんの願いを聞いて助けに行けた。

 助けに行けなかった時でも生き残っていたことがあったが、どこかしら負傷している状態だ。

「あっ、俺がこんなステータスを持っていることは黙っていてね」
「どうして? 自慢すればいいじゃない」
「スキルを持って自慢する器の小さい奴らを見て、そう思うの?」
「……それもそうね。でも秘密にするのはどうして?」
「これだけ強いステータスを持っているよりも、持っていないと思わせた方が動きやすいからだよ。まあある程度のスキルは使うけど、こんな強いステータスを持っているということは秘密にする」

 確か十六回目だったか。義姉さんたちに話して、そこから色々な人を助けていたら義姉さんを人質に取られたり、無駄に敵を作ったりした。

 今はそういう時期ではないということだ。

「そう。それなら創次の言う通りにするわ」
「ありがとう」
「むー! さっきから彩ちゃんとばかり話して!」
「ごめんね、依怜義姉さん」

 俺と彩加義姉さんが話していたら依怜義姉さんが横から抱き着いて主張してきた。

「今は急ごう」
「そうね、行きましょう」
「私はこうして行ってもいい?」
「いいよ」
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