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都市開発本格始動
096:シルヴィー姉さんの悩み。
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ルーシー姉さんがああなのに、シルヴィー姉さんがいつも通りということが少し気になった。
だから鍛錬が休みなシルヴィー姉さんの部屋に向かう。
別にシルヴィー姉さんが構ってくれないから気に食わないとか、この状態がおかしいとか、そういうことではない。
いつものように俺の脱いだ服をエルザが盗んでシルヴィー姉さんが堪能している、という光景を千里眼で見ていたのだが、そこであまりストレス発散が捗っていないシルヴィー姉さんが見えた。
何か悩み事があるのではないかと思って、俺が相談に乗ろうという話だ。
他の人に頼んでも良かったのだが、まあ姉弟の交友を深めようと思っているだけだ。
「シルヴィーお姉ちゃん、いる?」
シルヴィー姉さんが部屋にいることは分かっているが、ノックをして問いかけた。
「……なに?」
扉が開いてシルヴィー姉さんが顔を出した。
「少し話がしたいんだけど、いいかな?」
「……分かった。でも少し待ってて」
「うん、分かった」
シルヴィー姉さんが部屋に戻って音は出ていないが何をしているのか丸わかりだった。
部屋に出しっぱなしな俺の服の数々を片付けているのが透視で見えていた。
シルヴィー姉さんは俺の服をエルザに頼んで持ってきているわけだが、それを返してはいない。
どうしてバレなかったのか。それは非常に簡単だ。
同じ服とすり替えているから。
他の使用人が服を洗う前にエルザが洗っていると誤魔化していて、エルザは本当に働き者だ。そんな業務はないのに。
「お待たせ」
「ううん、待っていないよ。メッセージで伝えれば良かったんだけどね」
俺はわざと向かうことを伝えなかった。少しだけシルヴィー姉さんをからかいたかったから。
シルヴィー姉さんの部屋に入ると、綺麗に整頓されていて目立つところに『叛逆の英雄』のマンガがあるのが分かった。
これはあざといとかそういうのではなく、シルヴィー姉さんが意図せずここに置いているだけだ。
「で、なに?」
シルヴィー姉さんの座った椅子のテーブルを挟んだ正面の席に座り、シルヴィー姉さんがいつも通りに話しかけてくる。
「あのね、シルヴィーお姉ちゃん。……何か悩んでいることある?」
「……私?」
ここは直球で言った方が、会話していて何かの拍子でシルヴィー姉さんのキャパをオーバーすることはないだろう。
「そうだよ」
「……どうして?」
「うーん……正直これだという感じはなかったんだけど、シルヴィーお姉ちゃんの弟だから、感じたのかな?」
「……ふっ、アーサーには敵わない」
俺がそう言うだけで、シルヴィー姉さんは観念した顔をした。
もしかしたら俺に聞いてほしかっただけなのかもしれない。普通に接していたら分からないと思うがそこは俺だから良かった。
「私は今年で十三歳になる。だからあと二年で王立聖騎士学園に入学しないといけない」
貴族の義務として十五歳になれば王立聖騎士学園に三年間在籍することを義務付けられている。それは俺もルーシー姉さんも十五になればそうなっている。面倒だけど。
その学園は貴族が集まる場で、公爵家として相応しい振る舞いを求められる。それは武においても、文においても、すべてにおいて公爵家の威厳を示さなければならない。
王家の懐刀であるランスロット家ならなおさらだ。
「そうだね。あと二年かぁ……」
「アーサーは寂しい?」
「寂しいよ。だって毎日会っているのに長期休暇はあるとはいえ、ほぼ三年間会えなくなるのはね」
「私も、そう」
そうだろうね。ルーシー姉さんはごねるんじゃないのか?
「私は、今のままだとそれに耐え切れない。……だから、少しでもアーサーと離れられるように心の準備をしていた。……でも、アーサーに気付かれるとは思わなかった」
あぁ、そういうことなのか。それにしては前と一緒だったけど。
この心持ちは正しいのだろう。だってシルヴィー姉さんもルーシー姉さんもどこかの貴族と婚約するのかもしれない。
シルヴィー姉さんに至ってはアンリ・ペンドラゴンとの婚約……あいつは『ちゃん』になっているし、俺の時のやらかしで婚約がどうなっているのか知らないから何とも言えないな……。
ともかく、貴族だから離れるということは当たり前のことだ。
でも、俺は家族に甘いんだ。こんなにも愛してくれているのだから、何とかしてあげたいと思ってしまう。
「大丈夫だよ、シルヴィーお姉ちゃん」
「……何が?」
「王都からランスロット家までの行き来を簡単にしてみせるから」
「……アーサーの魔道具で?」
「そうだよ! これからは交通を便利にして、王都に行っても簡単に帰って行けるようにするから!」
シルヴィー姉さんのためだけではない。クレアとの約束もある。だから交通革命はやっておかないといけない。
「……うん。ありがとう」
どこか信用していない顔だけど、少しスッキリとしたシルヴィー姉さんの度肝を抜かしてやる。
何せこの俺は全能なんだから、この世界を真の平和にすることくらい用意なんだから。
だから鍛錬が休みなシルヴィー姉さんの部屋に向かう。
別にシルヴィー姉さんが構ってくれないから気に食わないとか、この状態がおかしいとか、そういうことではない。
いつものように俺の脱いだ服をエルザが盗んでシルヴィー姉さんが堪能している、という光景を千里眼で見ていたのだが、そこであまりストレス発散が捗っていないシルヴィー姉さんが見えた。
何か悩み事があるのではないかと思って、俺が相談に乗ろうという話だ。
他の人に頼んでも良かったのだが、まあ姉弟の交友を深めようと思っているだけだ。
「シルヴィーお姉ちゃん、いる?」
シルヴィー姉さんが部屋にいることは分かっているが、ノックをして問いかけた。
「……なに?」
扉が開いてシルヴィー姉さんが顔を出した。
「少し話がしたいんだけど、いいかな?」
「……分かった。でも少し待ってて」
「うん、分かった」
シルヴィー姉さんが部屋に戻って音は出ていないが何をしているのか丸わかりだった。
部屋に出しっぱなしな俺の服の数々を片付けているのが透視で見えていた。
シルヴィー姉さんは俺の服をエルザに頼んで持ってきているわけだが、それを返してはいない。
どうしてバレなかったのか。それは非常に簡単だ。
同じ服とすり替えているから。
他の使用人が服を洗う前にエルザが洗っていると誤魔化していて、エルザは本当に働き者だ。そんな業務はないのに。
「お待たせ」
「ううん、待っていないよ。メッセージで伝えれば良かったんだけどね」
俺はわざと向かうことを伝えなかった。少しだけシルヴィー姉さんをからかいたかったから。
シルヴィー姉さんの部屋に入ると、綺麗に整頓されていて目立つところに『叛逆の英雄』のマンガがあるのが分かった。
これはあざといとかそういうのではなく、シルヴィー姉さんが意図せずここに置いているだけだ。
「で、なに?」
シルヴィー姉さんの座った椅子のテーブルを挟んだ正面の席に座り、シルヴィー姉さんがいつも通りに話しかけてくる。
「あのね、シルヴィーお姉ちゃん。……何か悩んでいることある?」
「……私?」
ここは直球で言った方が、会話していて何かの拍子でシルヴィー姉さんのキャパをオーバーすることはないだろう。
「そうだよ」
「……どうして?」
「うーん……正直これだという感じはなかったんだけど、シルヴィーお姉ちゃんの弟だから、感じたのかな?」
「……ふっ、アーサーには敵わない」
俺がそう言うだけで、シルヴィー姉さんは観念した顔をした。
もしかしたら俺に聞いてほしかっただけなのかもしれない。普通に接していたら分からないと思うがそこは俺だから良かった。
「私は今年で十三歳になる。だからあと二年で王立聖騎士学園に入学しないといけない」
貴族の義務として十五歳になれば王立聖騎士学園に三年間在籍することを義務付けられている。それは俺もルーシー姉さんも十五になればそうなっている。面倒だけど。
その学園は貴族が集まる場で、公爵家として相応しい振る舞いを求められる。それは武においても、文においても、すべてにおいて公爵家の威厳を示さなければならない。
王家の懐刀であるランスロット家ならなおさらだ。
「そうだね。あと二年かぁ……」
「アーサーは寂しい?」
「寂しいよ。だって毎日会っているのに長期休暇はあるとはいえ、ほぼ三年間会えなくなるのはね」
「私も、そう」
そうだろうね。ルーシー姉さんはごねるんじゃないのか?
「私は、今のままだとそれに耐え切れない。……だから、少しでもアーサーと離れられるように心の準備をしていた。……でも、アーサーに気付かれるとは思わなかった」
あぁ、そういうことなのか。それにしては前と一緒だったけど。
この心持ちは正しいのだろう。だってシルヴィー姉さんもルーシー姉さんもどこかの貴族と婚約するのかもしれない。
シルヴィー姉さんに至ってはアンリ・ペンドラゴンとの婚約……あいつは『ちゃん』になっているし、俺の時のやらかしで婚約がどうなっているのか知らないから何とも言えないな……。
ともかく、貴族だから離れるということは当たり前のことだ。
でも、俺は家族に甘いんだ。こんなにも愛してくれているのだから、何とかしてあげたいと思ってしまう。
「大丈夫だよ、シルヴィーお姉ちゃん」
「……何が?」
「王都からランスロット家までの行き来を簡単にしてみせるから」
「……アーサーの魔道具で?」
「そうだよ! これからは交通を便利にして、王都に行っても簡単に帰って行けるようにするから!」
シルヴィー姉さんのためだけではない。クレアとの約束もある。だから交通革命はやっておかないといけない。
「……うん。ありがとう」
どこか信用していない顔だけど、少しスッキリとしたシルヴィー姉さんの度肝を抜かしてやる。
何せこの俺は全能なんだから、この世界を真の平和にすることくらい用意なんだから。
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