全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
73 / 109
王都でも渦中

073:アニメ、知らせる。

しおりを挟む
 ボールス家主催の社交界が無事に終わり、王都での社交界はこれで終了したから帰りの馬車で安どのため息が出た。

「おつかれ~、アーサー」
「……お母さんは、あまり疲れてなさそうだね」
「私はね~、おしゃべりが楽しかったわ~」

 お母上様は社交界をとても楽しめていたようで何よりだ。

 今日の社交界はパーシヴァル家の社交界よりも楽だと思っていたが、結果的にはどっちもどっちな感じになった。

 スティードさんとエレオノールさんがいた分、それなりに疲れた。というか二つの社交界ですべての他の公爵家と接することができたな。疲れたけど。

 ただ一つだけいいことがあるとすれば、クレアさんと王都デートを取り付けられたことだ。

 危ないからダメだと言っていたが、そこら辺は俺の魔道具で何とかできるからと説得したら顔を真っ赤にしながら頷いてくれた。

「アーサー、疲れているところ悪いけど、今日はまだ仕事が残っているよ」
「うん、分かってる」

 お父上様からの言葉に頷くが、社交界よりかはだいぶ楽だからそこまで気負っていない。

 明日にはマンガ『叛逆の英雄』の作者として名乗り出る記者会見なるものを控えている。

 暗殺者『静粛』さんが俺の元に暗殺しに来たことで、今回の会見が行われることになったが、これをしなければランスロット家に被害が及ぶかもしれないと考えたら、これはこれでやらなければと燃えているくらいだ。

「明日の朝には会見を行うから、それまでにメルシエさんと段取りを詰めておくよ。もうメルシエさんは僕たちが泊っている宿に来ているはず」
「うん。メルシエさんには後で何かお礼をしないと」
「こちらでも用意するけど、メルシエさんはアーサーが用意した物の方が喜びそうだね」
「変なプレッシャーをかけないでよ」

 でも本当にメルシエさんがいないとこの会見は成り立たなかったかもしれないから、メルシエさんには最大限の感謝のしるしを用意しないといけない。

 今のところ考えられるのは『叛逆の英雄』のすべて俺が声優を務めるPVか、グッズのどちらかだな。グッズならその先の商売にすぐに直結しそうだからグッズの方が今のところ可能性が高い。

「ねぇアーサー」
「なに? お母さん」
「『叛逆の英雄』でぇ、何か今後展開するものはあるのかしら~?」
「アニメとかの話?」
「あにめ? それは何かしら~?」

 あれ? お母上様に言ってなかったっけ?

 そう言えば最初はメルシエさんに説明して、その後にベラに説明、そして馬車の中でベラに言われてグリーテンに音声ナシのアニメを見せてから、それをシルヴィー姉さんとルーシー姉さんに見せた。

 でもそこから俺からは言っていないから、誰かが言わない限りは誰にも伝わらないのか。

「待ってくれアーサー。僕は何も聞いていないよ」

 あれ? お父上様にも言ってなかったっけ? 色々な人に言ったから言った気になっていたのかもしれないな。

「あにめとは何だい? まさかスマホみたいな重要な物なのか?」
「ううん、違うよ。アニメはマンガの延長線上みたいな娯楽だよ」

 スマホの件で何かあればお父上様に伝えるようにって言われてたことを、お父上様の険しい顔で思い出した。

 でも今はまだ何にも始まっていない、娯楽ギルドを設立するくらいで計画の段階だしまだ言わなくていいかなと思った。

 でもとりあえずはアニメがどういうもので、今どういう状況なのかスマホに入っている無音のアニメを見せながらお父上様とお母上様に説明した。

「……なるほど、これはすごいね」
「へぇ~、こんなものが作れるのね~」

 二人は驚いているし、感心もしている様子だった。

 でも俺としてはこのアニメを見れば見るほど完成させたい気持ちが強くなるくらいに不服だ。だって音も入っていなくて絵だけって満足する方がおかしい。

「こういうことは早く言ってきてほしいんだけどね」
「まだ計画の段階だったから、いいかなって」
「そういう状態でも何かするのなら僕に言ってくれ」

 うーむ、それをお父上様に言われてもジュストさんの話を聞いてからだとお前に言われてもと思ってしまうな。

「うふふっ、アーサーはあなたに言われるのは心外って顔をしているわね~」
「……スザンヌ、僕の話とアーサーの話だと規模が違う」
「ううん、お父さん。そういう話じゃないと思う。これから僕も気を付けるから、お父さんも気を付けてね」
「……うん、善処する」

 これなら痛み分けということだな。でも俺はそのつもりじゃないけど、もしかしたら俺の体がお父上様のこういうところを引き継いでいるのかもしれない。

 でも俺の場合は少し考えているから、お父上様の癖とは全く違うのかもしれない。

 その後俺はお母上様のメッセージアプリにアニメを送り、宿に戻るまでそのアニメを堪能していた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
【完結】ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

処理中です...