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王都でも渦中
070:ガラハッド家の跡継ぎ。
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クレアさんが恥ずかしさでゾーイさんの元へと行ってしまったことで、俺はぽつんと一人になってしまった。
俺もお父上様とお母上様の元へと向かおうかと思ったが、何やら用事をしているようだったから、邪魔をしてはいけないと思ってその場に留まる。
とりあえず誰の目にもとまらずに会場の端っこに移動して、社交界が終わるのをジッと待つ。
今日はクレアさんとも出会えたし、社交界もそろそろで終わりを迎えることができる。
今は気配を消して誰も俺を見つけることができないから、落ち着いてゆっくりすることにした。
……それにしても、この社交界とは別に何か嫌な予感がするのは気のせいか?
俺はほぼ全能だからこれから起こる大きなことを第六感で俺に知らせてくる。バタフライエフェクトと言えばいいのか、その蝶の羽ばたきを感じている気がする。
誰かが、この世界を破滅に導こうとする思考が俺の第六感で感じる。……一度千里眼か何かをして調べ上げた方がいいかもしれないな。
そうじゃないと本当に手遅れになりそうで怖いという感情が俺の中に渦巻いている。まあ俺がいればそういう状況になることもないと思うが、それでも気のせいだと言えるようにしておこう。
そう考えていると、どうやらお父上様が俺を探しているようだから、気配を出して俺を自然に見つけられるように視線誘導する。
「アーサー、ここにいたのか」
「うん、少し疲れたから休んでた」
俺を見つけたお父上様は俺の元へと来て声をかけてきた。
「頼みごとがあるから、来てくれ」
「えっ、うん、分かった」
こっちでも何だか嫌な予感がするなぁ……。お父上様は俺を厄介ごとに巻き込まないと気がすまないのか? いや巻き込んでいるのは俺の方でしたね。ごめんなさい。
お父上様と一緒に目的の場所へと向かうと、見知らぬ三人がいた。
一人は俺が見た中でお父上様よりも佇まいがよく、騎士ということが一目で分かるモノクルをかけた青髪のお父上様よりも年上な男性。
一人は二十手前くらいのクールでその男性の息子だと分かるイケメンな青髪の男性。
そしてもう一人はその青年にピタリとくっ付いている長い青髪の俺よりも少し年上の女の子がいた。
「キミがアーサーくんですね。私はエディ・ガラハッドです」
「はい、アーサー・ランスロットです」
「……ふむ」
モノクルをかけた男性はボールスさんと同じ類で物腰が柔らかい人だが、こちらは実力を隠そうとしていない感じな男性だ。それに全員が俺を見極めているようだけど、どうせ俺の実力なんて分からないだろうに。
お父上様と同じで、エディさんがかなり化け物じみた能力を持っている人だと分かる。
まあそれは普通の人目線での話であって、俺目線では誰も彼も実力はそこまで変わらない。
俺を百だと仮定すれば、全員が最低ラインの1になるだけで、1を細かく区別することなんか面倒ですることはない。
「アーサーくんはその歳でとても強いですね。それにそれは氷山の一角に過ぎないとは」
おぉ、この人はかなり高得点だな。実力が分からないのに、俺の実力を計り知れないと理解している。
「エレオノール、アーサーくんに挨拶しなさい」
「えぇー? それに挨拶する必要なんてないでしょ」
あぁ、こういう系の奴か。てめぇにそれ呼ばわりされる覚えはねぇよ。
「エレオノール」
「うっ……分かったわよ……」
エディさんに言われて、渋々俺に挨拶する女の子。
「エレオノール・ガラハッドよ」
「初めまして、アーサー・ランスロットです」
一応こういう場だから完璧な態度で応えてあげる。俺はてめぇとは違うということを周りに示すためにも。
「フンッ、あんたなんかが強いなんて冗談でしょ?」
どういうことだ? ここに呼ばれたことは挨拶だけじゃないみたいだし。
「俺はスティード・ガラハッド。ここにキミを呼んでもらったのは挨拶だけではない。俺と決闘してほしい」
「どういうことですか?」
何でこの人と戦うことになるんだ? そういうことは家とディンドランさんの時だけで十分だ。
いやこのブリテン王国ではそういうことが当たり前だから、ディンドランさんやスティードさんの方が普通なのだろう。
それにしては社交界で決闘しているのが俺しかいないのはどうしてなのだろ。
「パーシヴァル家のご令嬢と戦ったのだろう? そこで圧倒的な力を見せたのは聞いた」
「まあ……そうですね」
「それに七聖剣であるパスカルさんにも絶賛されていると聞いた」
「パスカルが……」
パスカルのことを知っている、ということは当たり前のことだ。彼女はランスロット家の騎士団をしているが世界で七人しかいない七聖剣なのだから。
だけどパスカル、俺のことを絶賛して回るのだけはやめろ。七聖剣の一人に絶賛とか目立つに決まっているだろ、こんな感じでな。
「俺は同世代では最強だと思っている。もちろん父や『至高の騎士』であるアルノさんにははるかに及ばないと思う」
至高の騎士って呼ばれているのか、お父上様。
「最強に至るために、俺は日々挑戦者として挑んでいる」
「だから、僕に挑戦しているわけですか?」
「そうだ。どれほどの強さか、知りたい、見たい、挑みたい。キミのことを聞いてそう思った」
あー……ディンドランさんと一緒ですか。それは別にいらないんですよねぇ。
ディンドランさんがいるんだからいらなくないですか? ディンドランさんの男バージョンとしか思えませんよ?
「どうだ、受けてくれないか?」
受けてくれと言われても、受けたくないんですよね。
でもそういうことはこの国ではあまりウケは良くない。戦いを挑まれたら戦いを受けるのが当たり前なのだから。
ハァ、もっとまともな国に転生したかったんですけど。そのおかげで俺は強さを隠せずにこういう状況になってしまっている。
「お父さん、いい?」
「アーサーがやる気なら構わないよ」
やる気なんてないよ。でもそれを言ってしまったらランスロット家の恥だ。
少しでも隙は見せておきたくはないが、それは却って俺の首を絞めているのは分かっている。
「分かりました、その挑戦受けます」
「感謝する、アーサー・ランスロット」
俺もお父上様とお母上様の元へと向かおうかと思ったが、何やら用事をしているようだったから、邪魔をしてはいけないと思ってその場に留まる。
とりあえず誰の目にもとまらずに会場の端っこに移動して、社交界が終わるのをジッと待つ。
今日はクレアさんとも出会えたし、社交界もそろそろで終わりを迎えることができる。
今は気配を消して誰も俺を見つけることができないから、落ち着いてゆっくりすることにした。
……それにしても、この社交界とは別に何か嫌な予感がするのは気のせいか?
俺はほぼ全能だからこれから起こる大きなことを第六感で俺に知らせてくる。バタフライエフェクトと言えばいいのか、その蝶の羽ばたきを感じている気がする。
誰かが、この世界を破滅に導こうとする思考が俺の第六感で感じる。……一度千里眼か何かをして調べ上げた方がいいかもしれないな。
そうじゃないと本当に手遅れになりそうで怖いという感情が俺の中に渦巻いている。まあ俺がいればそういう状況になることもないと思うが、それでも気のせいだと言えるようにしておこう。
そう考えていると、どうやらお父上様が俺を探しているようだから、気配を出して俺を自然に見つけられるように視線誘導する。
「アーサー、ここにいたのか」
「うん、少し疲れたから休んでた」
俺を見つけたお父上様は俺の元へと来て声をかけてきた。
「頼みごとがあるから、来てくれ」
「えっ、うん、分かった」
こっちでも何だか嫌な予感がするなぁ……。お父上様は俺を厄介ごとに巻き込まないと気がすまないのか? いや巻き込んでいるのは俺の方でしたね。ごめんなさい。
お父上様と一緒に目的の場所へと向かうと、見知らぬ三人がいた。
一人は俺が見た中でお父上様よりも佇まいがよく、騎士ということが一目で分かるモノクルをかけた青髪のお父上様よりも年上な男性。
一人は二十手前くらいのクールでその男性の息子だと分かるイケメンな青髪の男性。
そしてもう一人はその青年にピタリとくっ付いている長い青髪の俺よりも少し年上の女の子がいた。
「キミがアーサーくんですね。私はエディ・ガラハッドです」
「はい、アーサー・ランスロットです」
「……ふむ」
モノクルをかけた男性はボールスさんと同じ類で物腰が柔らかい人だが、こちらは実力を隠そうとしていない感じな男性だ。それに全員が俺を見極めているようだけど、どうせ俺の実力なんて分からないだろうに。
お父上様と同じで、エディさんがかなり化け物じみた能力を持っている人だと分かる。
まあそれは普通の人目線での話であって、俺目線では誰も彼も実力はそこまで変わらない。
俺を百だと仮定すれば、全員が最低ラインの1になるだけで、1を細かく区別することなんか面倒ですることはない。
「アーサーくんはその歳でとても強いですね。それにそれは氷山の一角に過ぎないとは」
おぉ、この人はかなり高得点だな。実力が分からないのに、俺の実力を計り知れないと理解している。
「エレオノール、アーサーくんに挨拶しなさい」
「えぇー? それに挨拶する必要なんてないでしょ」
あぁ、こういう系の奴か。てめぇにそれ呼ばわりされる覚えはねぇよ。
「エレオノール」
「うっ……分かったわよ……」
エディさんに言われて、渋々俺に挨拶する女の子。
「エレオノール・ガラハッドよ」
「初めまして、アーサー・ランスロットです」
一応こういう場だから完璧な態度で応えてあげる。俺はてめぇとは違うということを周りに示すためにも。
「フンッ、あんたなんかが強いなんて冗談でしょ?」
どういうことだ? ここに呼ばれたことは挨拶だけじゃないみたいだし。
「俺はスティード・ガラハッド。ここにキミを呼んでもらったのは挨拶だけではない。俺と決闘してほしい」
「どういうことですか?」
何でこの人と戦うことになるんだ? そういうことは家とディンドランさんの時だけで十分だ。
いやこのブリテン王国ではそういうことが当たり前だから、ディンドランさんやスティードさんの方が普通なのだろう。
それにしては社交界で決闘しているのが俺しかいないのはどうしてなのだろ。
「パーシヴァル家のご令嬢と戦ったのだろう? そこで圧倒的な力を見せたのは聞いた」
「まあ……そうですね」
「それに七聖剣であるパスカルさんにも絶賛されていると聞いた」
「パスカルが……」
パスカルのことを知っている、ということは当たり前のことだ。彼女はランスロット家の騎士団をしているが世界で七人しかいない七聖剣なのだから。
だけどパスカル、俺のことを絶賛して回るのだけはやめろ。七聖剣の一人に絶賛とか目立つに決まっているだろ、こんな感じでな。
「俺は同世代では最強だと思っている。もちろん父や『至高の騎士』であるアルノさんにははるかに及ばないと思う」
至高の騎士って呼ばれているのか、お父上様。
「最強に至るために、俺は日々挑戦者として挑んでいる」
「だから、僕に挑戦しているわけですか?」
「そうだ。どれほどの強さか、知りたい、見たい、挑みたい。キミのことを聞いてそう思った」
あー……ディンドランさんと一緒ですか。それは別にいらないんですよねぇ。
ディンドランさんがいるんだからいらなくないですか? ディンドランさんの男バージョンとしか思えませんよ?
「どうだ、受けてくれないか?」
受けてくれと言われても、受けたくないんですよね。
でもそういうことはこの国ではあまりウケは良くない。戦いを挑まれたら戦いを受けるのが当たり前なのだから。
ハァ、もっとまともな国に転生したかったんですけど。そのおかげで俺は強さを隠せずにこういう状況になってしまっている。
「お父さん、いい?」
「アーサーがやる気なら構わないよ」
やる気なんてないよ。でもそれを言ってしまったらランスロット家の恥だ。
少しでも隙は見せておきたくはないが、それは却って俺の首を絞めているのは分かっている。
「分かりました、その挑戦受けます」
「感謝する、アーサー・ランスロット」
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