全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
70 / 109
王都でも渦中

070:ガラハッド家の跡継ぎ。

しおりを挟む
 クレアさんが恥ずかしさでゾーイさんの元へと行ってしまったことで、俺はぽつんと一人になってしまった。

 俺もお父上様とお母上様の元へと向かおうかと思ったが、何やら用事をしているようだったから、邪魔をしてはいけないと思ってその場に留まる。

 とりあえず誰の目にもとまらずに会場の端っこに移動して、社交界が終わるのをジッと待つ。

 今日はクレアさんとも出会えたし、社交界もそろそろで終わりを迎えることができる。

 今は気配を消して誰も俺を見つけることができないから、落ち着いてゆっくりすることにした。

 ……それにしても、この社交界とは別に何か嫌な予感がするのは気のせいか?

 俺はほぼ全能だからこれから起こる大きなことを第六感で俺に知らせてくる。バタフライエフェクトと言えばいいのか、その蝶の羽ばたきを感じている気がする。

 誰かが、この世界を破滅に導こうとする思考が俺の第六感で感じる。……一度千里眼か何かをして調べ上げた方がいいかもしれないな。

 そうじゃないと本当に手遅れになりそうで怖いという感情が俺の中に渦巻いている。まあ俺がいればそういう状況になることもないと思うが、それでも気のせいだと言えるようにしておこう。

 そう考えていると、どうやらお父上様が俺を探しているようだから、気配を出して俺を自然に見つけられるように視線誘導する。

「アーサー、ここにいたのか」
「うん、少し疲れたから休んでた」

 俺を見つけたお父上様は俺の元へと来て声をかけてきた。

「頼みごとがあるから、来てくれ」
「えっ、うん、分かった」

 こっちでも何だか嫌な予感がするなぁ……。お父上様は俺を厄介ごとに巻き込まないと気がすまないのか? いや巻き込んでいるのは俺の方でしたね。ごめんなさい。

 お父上様と一緒に目的の場所へと向かうと、見知らぬ三人がいた。

 一人は俺が見た中でお父上様よりも佇まいがよく、騎士ということが一目で分かるモノクルをかけた青髪のお父上様よりも年上な男性。

 一人は二十手前くらいのクールでその男性の息子だと分かるイケメンな青髪の男性。

 そしてもう一人はその青年にピタリとくっ付いている長い青髪の俺よりも少し年上の女の子がいた。

「キミがアーサーくんですね。私はエディ・ガラハッドです」
「はい、アーサー・ランスロットです」
「……ふむ」

 モノクルをかけた男性はボールスさんと同じ類で物腰が柔らかい人だが、こちらは実力を隠そうとしていない感じな男性だ。それに全員が俺を見極めているようだけど、どうせ俺の実力なんて分からないだろうに。

 お父上様と同じで、エディさんがかなり化け物じみた能力を持っている人だと分かる。

 まあそれは普通の人目線での話であって、俺目線では誰も彼も実力はそこまで変わらない。

 俺を百だと仮定すれば、全員が最低ラインの1になるだけで、1を細かく区別することなんか面倒ですることはない。

「アーサーくんはその歳でとても強いですね。それにそれは氷山の一角に過ぎないとは」

 おぉ、この人はかなり高得点だな。実力が分からないのに、俺の実力を計り知れないと理解している。

「エレオノール、アーサーくんに挨拶しなさい」
「えぇー? それに挨拶する必要なんてないでしょ」

 あぁ、こういう系の奴か。てめぇにそれ呼ばわりされる覚えはねぇよ。

「エレオノール」
「うっ……分かったわよ……」

 エディさんに言われて、渋々俺に挨拶する女の子。

「エレオノール・ガラハッドよ」
「初めまして、アーサー・ランスロットです」

 一応こういう場だから完璧な態度で応えてあげる。俺はてめぇとは違うということを周りに示すためにも。

「フンッ、あんたなんかが強いなんて冗談でしょ?」

 どういうことだ? ここに呼ばれたことは挨拶だけじゃないみたいだし。

「俺はスティード・ガラハッド。ここにキミを呼んでもらったのは挨拶だけではない。俺と決闘してほしい」
「どういうことですか?」

 何でこの人と戦うことになるんだ? そういうことは家とディンドランさんの時だけで十分だ。

 いやこのブリテン王国ではそういうことが当たり前だから、ディンドランさんやスティードさんの方が普通なのだろう。

 それにしては社交界で決闘しているのが俺しかいないのはどうしてなのだろ。

「パーシヴァル家のご令嬢と戦ったのだろう? そこで圧倒的な力を見せたのは聞いた」
「まあ……そうですね」
「それに七聖剣であるパスカルさんにも絶賛されていると聞いた」
「パスカルが……」

 パスカルのことを知っている、ということは当たり前のことだ。彼女はランスロット家の騎士団をしているが世界で七人しかいない七聖剣なのだから。

 だけどパスカル、俺のことを絶賛して回るのだけはやめろ。七聖剣の一人に絶賛とか目立つに決まっているだろ、こんな感じでな。

「俺は同世代では最強だと思っている。もちろん父や『至高の騎士』であるアルノさんにははるかに及ばないと思う」

 至高の騎士って呼ばれているのか、お父上様。

「最強に至るために、俺は日々挑戦者として挑んでいる」
「だから、僕に挑戦しているわけですか?」
「そうだ。どれほどの強さか、知りたい、見たい、挑みたい。キミのことを聞いてそう思った」

 あー……ディンドランさんと一緒ですか。それは別にいらないんですよねぇ。

 ディンドランさんがいるんだからいらなくないですか? ディンドランさんの男バージョンとしか思えませんよ?

「どうだ、受けてくれないか?」

 受けてくれと言われても、受けたくないんですよね。

 でもそういうことはこの国ではあまりウケは良くない。戦いを挑まれたら戦いを受けるのが当たり前なのだから。

 ハァ、もっとまともな国に転生したかったんですけど。そのおかげで俺は強さを隠せずにこういう状況になってしまっている。

「お父さん、いい?」
「アーサーがやる気なら構わないよ」

 やる気なんてないよ。でもそれを言ってしまったらランスロット家の恥だ。

 少しでも隙は見せておきたくはないが、それは却って俺の首を絞めているのは分かっている。

「分かりました、その挑戦受けます」
「感謝する、アーサー・ランスロット」
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
【完結】ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...