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王都でも渦中
067:第二の社交界。
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昨日はディンドランさんが来たが、まあギネヴィアさまじゃないから楽しく過ごすことができた。
ディンドランさんと仲良くしていても悪いことはない。あの性格は少しだけ難アリだが、あの感じは嫌いではない。
俺の渡したスカーレット・バスターを上手く使いこなすことができれば、というかあんな欠陥品を上手く使いこなす日来たら、使わなくてもディンドランさんは強くなる。
渡した後、宿の外で試していたが、嬉々として色々な枷をつけている姿を見た周りの人たちは少しだけ引いていたなぁ……。
まあとにもかくにも、今日はとても嫌な社交界の日だ。
でも今日は公爵家の令嬢と婚約をし直さなくてもいいし、王女さまがいるわけでもない。それを考えればなんて気が楽な社交界なんだ!
社交界がメンドウなことに変わりはないけど、それでもボールス家やガラハッド家のご令嬢と何かあるわけではないんだ。
「よしっ……!」
「気合が入っているね、アーサー」
馬車に乗った俺が気合が入っていることを察したお父上様。
「だって、今日の社交界は特に重要なことはないんでしょ?」
「うん、ないよ」
「それなら気が楽で気合が入るよ!」
「あんなことはそうそう起きるものではないからね。どの社交界でもそういう風に余裕を持てるようにしないとね」
もう社交界なんて出たくはないのだが、公爵家の次期当主としてはそういうわけにもいかないのは分かっている。
……少し不安だから一応聞いておこうか。
「ねぇお母さん。今日は本当に何もないよね?」
「ないわよ~」
「良かった……」
「……息子から徐々に信用されなくなっていくのが分かる……」
それだけのことをしているのだと理解してほしいところだ。
「そう言えばアーサー」
「なに?」
「スザンヌにスマホを渡したよね?」
「渡したよ」
屋敷でならともかく、宿にいるのだからすぐに気が付かれるよな。
お母上様は俺がスマホを渡してから、すぐにどこかに向かっていた。考えられるのはスマホを渡しに行ったくらいしか考えられないし、バレバレだろ。
「ハァ……アーサー、スザンヌにスマホを大量に渡せば、どうなるか分かっているはずだ」
「僕としては、スマホを広げることは悪いことではないと思っているよ。お母さんが信用している人に渡せば、情報の有利を得られるから」
「そうよ~。これも全部ランスロット家のためなんだからぁ」
「アーサーの言うことはまだしも、スザンヌはそう思っているのは少しだけだろうね」
「そんなことはないわよ~」
いやそんなことはあるだろうな。
「ただ……僕としてもそれは考えていることだよ。情報は強さよりも重要で、スマホを使えば今まで情報の遅さでできなかったことをできるようになるからね」
「それなら信用できる人に配っていく?」
「それをしてしまえば、スマホのことがバレる可能性が出てくる。マンガの件のようにグリーテン辺りを代わりに立てておくことはできるけど、それ自体が重要なものだから面倒事が起こるかもしれない。そうなれば新たな争いが生まれるかもしれない。それが心配なんだよ」
「も~、それはアルノが心配し過ぎなのよ~」
お父上様の心配は本当に行き過ぎている。
だが、おそらくはお父上様が心配しているのは俺の身なのだろうな。何かに巻き込まれるかもしれないから、極力それを避けたいのかもしれない。
でもね、お父上様。それをされると俺の計画が頓挫するんですよ。
俺の計画ではスマホを持っているのが当たり前で、ネットが普及している状態にあること。だからスマホを身内だけで持っているのは良くない。
いや機能テストを身内でやるのは問題ないのだが、身内だけで留めておくのは意味がない。
ただ、お父上様の言う通り問題が出てくるのも確かだ。だからこそ俺の目標はかなりえげつないのだと前々から理解している。
「お父さんの言いたいことは分かるけど、それを使ってブリテン王国をよくできるのなら、使うべきだと思う。それにお母さんが楽しく使ってくれるのなら、それも嬉しいよ」
最初はこれをできるだけ広めて、これを使える下地を作ることだと思う。
だからお父上様がこの国に巣食う害虫は駆除しつつお母上様が楽しさを広めてくれれば俺の目標に向けてのやるべきことが同時進行できる。
「……そうだね。僕が少し慎重になりすぎていたのかもしれない」
「アーサーが言うならぁ、使わないわけにはいかないわね~」
「アーサーに言われても、くれぐれも気を付けてね、スザンヌ」
「大丈夫よ~、他のみんなにも言っておくからぁ」
「……不安だ」
これで少しはスマホを広める一歩を進めることができたかな。
☆
今後のスマホのことをお父上様と話していると、ボールス家の社交界会場にたどり着いた。
パーシヴァル家の社交界とボールス家の社交界、どちらも同じような感じだが、飾りや音楽、出されている料理の種類はまるっきり違うから昨日とは違った社交界という認識が出てきた。
公爵家だからもうほとんどの貴族たちが集まっており、それぞれがあちこち話しているが、俺たちランスロット家が来るとそちらに視線が集中してざわついていた。
それに見たところ、パーシヴァル家の社交界に出ていた人がチラホラといる。それはランスロット家も同じことだが、どういう基準で選ばれているのだろうか。
派閥? 好み? それとも俺みたいに社交界の場で何か決めている人たちがいっぱいいるのか。まあそこら辺はどうでもいいか。
お父上様を先頭に、この社交界の主催者であるボールス公爵の元に向かう。
「アーサー、ボールス家がこの国でどういう役割を担っているのか分かっているかな?」
お父上様に問われて、ベラに教えられた通りのことを口にする。
「この国の相談役みたいな役割を担っているんだよね?」
「そうだよ。ボールス家は大勢を見て、よりよい考えを導き出してくれる」
四大公爵はそれぞれ役割がある。
ランスロット家なら優れた武と知で王家を支える。
パーシヴァル家なら優れた武で敵を殲滅する。
ガラハッド家なら優れた攻と防で敵から国を守る。
ボールス家なら王家と他の公爵家の手助けをする。
まあそれはあくまで指針であって、それ通りに動かなくてもいいようにはなっている。
例えば俺やシルヴィー姉さん、ルーシー姉さんはおそらくパーシヴァル家やガラハッド家よりも武は優れているから、お株を奪ってしまう可能性はある。
「これはこれはアルノ殿、よくぞ我が社交界にお越しくださいました」
「パトリス殿、今夜はお招きいただきありがとうございます」
貴族なのに腰が低い雰囲気を感じる金髪の男性がお父上様に話しかけてきた。
「スザンヌ殿もお久しぶりです」
「パトリスさん、お久しぶりですねぇ」
パトリスと呼ばれた男性はお母上様に話しかけ、今度は俺に視線を向けた。貴族は本当に毎度毎度、こちらを値踏みしてくる。
だが今回もパーシヴァル家の時と同様に貴族として最上位な動きはしているから問題ないとは思う。
「こちらが、アーサー殿ですか。……ふむ、素晴らしい才能の持ち主ですな」
「はい。アーサーは私以上に才に恵まれています」
まあほぼ全能だから才に恵まれているというか、才があって当然と言うべきだな。
「初めまして、アーサー殿。私はボールス家当主パトリス・ボールスです」
「初めまして、僕はアーサー・ランスロットです」
お父上様よりも油断ならないと思う印象だ。たぶん一番警戒しないといけない人がこのボールスさんじゃないだろうか。
「それでは――」
「お父さま!」
ボールスさんが何か話し始めようとした時に、横から少女の声が聞こえてきて、それはボールスさんに向けられているものだと分かった。
全員がそちらに視線を向けると、この場にておそらく一番目立っているであろう真っ赤なドレスに長い金髪の俺くらいの女の子が走って来ていた。
「こら、リザ。危険ではしたないから走るのはおやめなさい」
「これくらいいいじゃないですか、お父さま!」
ボールスさんが優しくたしなめるが、全く通じていない女の子は俺の方を見てきた。
「ふーん、あんたがアーサーね」
このガキも俺のことを値踏みするような視線を向けてきた。ガキンチョの癖に。
こう……想像の貴族としての人物像はかなり当てはまるような女の子だ。この歳でこれとは、やべぇなと思うしかない。
「あんた私の手下になりなさい!」
「断る」
何だこのメスガキは。
ディンドランさんと仲良くしていても悪いことはない。あの性格は少しだけ難アリだが、あの感じは嫌いではない。
俺の渡したスカーレット・バスターを上手く使いこなすことができれば、というかあんな欠陥品を上手く使いこなす日来たら、使わなくてもディンドランさんは強くなる。
渡した後、宿の外で試していたが、嬉々として色々な枷をつけている姿を見た周りの人たちは少しだけ引いていたなぁ……。
まあとにもかくにも、今日はとても嫌な社交界の日だ。
でも今日は公爵家の令嬢と婚約をし直さなくてもいいし、王女さまがいるわけでもない。それを考えればなんて気が楽な社交界なんだ!
社交界がメンドウなことに変わりはないけど、それでもボールス家やガラハッド家のご令嬢と何かあるわけではないんだ。
「よしっ……!」
「気合が入っているね、アーサー」
馬車に乗った俺が気合が入っていることを察したお父上様。
「だって、今日の社交界は特に重要なことはないんでしょ?」
「うん、ないよ」
「それなら気が楽で気合が入るよ!」
「あんなことはそうそう起きるものではないからね。どの社交界でもそういう風に余裕を持てるようにしないとね」
もう社交界なんて出たくはないのだが、公爵家の次期当主としてはそういうわけにもいかないのは分かっている。
……少し不安だから一応聞いておこうか。
「ねぇお母さん。今日は本当に何もないよね?」
「ないわよ~」
「良かった……」
「……息子から徐々に信用されなくなっていくのが分かる……」
それだけのことをしているのだと理解してほしいところだ。
「そう言えばアーサー」
「なに?」
「スザンヌにスマホを渡したよね?」
「渡したよ」
屋敷でならともかく、宿にいるのだからすぐに気が付かれるよな。
お母上様は俺がスマホを渡してから、すぐにどこかに向かっていた。考えられるのはスマホを渡しに行ったくらいしか考えられないし、バレバレだろ。
「ハァ……アーサー、スザンヌにスマホを大量に渡せば、どうなるか分かっているはずだ」
「僕としては、スマホを広げることは悪いことではないと思っているよ。お母さんが信用している人に渡せば、情報の有利を得られるから」
「そうよ~。これも全部ランスロット家のためなんだからぁ」
「アーサーの言うことはまだしも、スザンヌはそう思っているのは少しだけだろうね」
「そんなことはないわよ~」
いやそんなことはあるだろうな。
「ただ……僕としてもそれは考えていることだよ。情報は強さよりも重要で、スマホを使えば今まで情報の遅さでできなかったことをできるようになるからね」
「それなら信用できる人に配っていく?」
「それをしてしまえば、スマホのことがバレる可能性が出てくる。マンガの件のようにグリーテン辺りを代わりに立てておくことはできるけど、それ自体が重要なものだから面倒事が起こるかもしれない。そうなれば新たな争いが生まれるかもしれない。それが心配なんだよ」
「も~、それはアルノが心配し過ぎなのよ~」
お父上様の心配は本当に行き過ぎている。
だが、おそらくはお父上様が心配しているのは俺の身なのだろうな。何かに巻き込まれるかもしれないから、極力それを避けたいのかもしれない。
でもね、お父上様。それをされると俺の計画が頓挫するんですよ。
俺の計画ではスマホを持っているのが当たり前で、ネットが普及している状態にあること。だからスマホを身内だけで持っているのは良くない。
いや機能テストを身内でやるのは問題ないのだが、身内だけで留めておくのは意味がない。
ただ、お父上様の言う通り問題が出てくるのも確かだ。だからこそ俺の目標はかなりえげつないのだと前々から理解している。
「お父さんの言いたいことは分かるけど、それを使ってブリテン王国をよくできるのなら、使うべきだと思う。それにお母さんが楽しく使ってくれるのなら、それも嬉しいよ」
最初はこれをできるだけ広めて、これを使える下地を作ることだと思う。
だからお父上様がこの国に巣食う害虫は駆除しつつお母上様が楽しさを広めてくれれば俺の目標に向けてのやるべきことが同時進行できる。
「……そうだね。僕が少し慎重になりすぎていたのかもしれない」
「アーサーが言うならぁ、使わないわけにはいかないわね~」
「アーサーに言われても、くれぐれも気を付けてね、スザンヌ」
「大丈夫よ~、他のみんなにも言っておくからぁ」
「……不安だ」
これで少しはスマホを広める一歩を進めることができたかな。
☆
今後のスマホのことをお父上様と話していると、ボールス家の社交界会場にたどり着いた。
パーシヴァル家の社交界とボールス家の社交界、どちらも同じような感じだが、飾りや音楽、出されている料理の種類はまるっきり違うから昨日とは違った社交界という認識が出てきた。
公爵家だからもうほとんどの貴族たちが集まっており、それぞれがあちこち話しているが、俺たちランスロット家が来るとそちらに視線が集中してざわついていた。
それに見たところ、パーシヴァル家の社交界に出ていた人がチラホラといる。それはランスロット家も同じことだが、どういう基準で選ばれているのだろうか。
派閥? 好み? それとも俺みたいに社交界の場で何か決めている人たちがいっぱいいるのか。まあそこら辺はどうでもいいか。
お父上様を先頭に、この社交界の主催者であるボールス公爵の元に向かう。
「アーサー、ボールス家がこの国でどういう役割を担っているのか分かっているかな?」
お父上様に問われて、ベラに教えられた通りのことを口にする。
「この国の相談役みたいな役割を担っているんだよね?」
「そうだよ。ボールス家は大勢を見て、よりよい考えを導き出してくれる」
四大公爵はそれぞれ役割がある。
ランスロット家なら優れた武と知で王家を支える。
パーシヴァル家なら優れた武で敵を殲滅する。
ガラハッド家なら優れた攻と防で敵から国を守る。
ボールス家なら王家と他の公爵家の手助けをする。
まあそれはあくまで指針であって、それ通りに動かなくてもいいようにはなっている。
例えば俺やシルヴィー姉さん、ルーシー姉さんはおそらくパーシヴァル家やガラハッド家よりも武は優れているから、お株を奪ってしまう可能性はある。
「これはこれはアルノ殿、よくぞ我が社交界にお越しくださいました」
「パトリス殿、今夜はお招きいただきありがとうございます」
貴族なのに腰が低い雰囲気を感じる金髪の男性がお父上様に話しかけてきた。
「スザンヌ殿もお久しぶりです」
「パトリスさん、お久しぶりですねぇ」
パトリスと呼ばれた男性はお母上様に話しかけ、今度は俺に視線を向けた。貴族は本当に毎度毎度、こちらを値踏みしてくる。
だが今回もパーシヴァル家の時と同様に貴族として最上位な動きはしているから問題ないとは思う。
「こちらが、アーサー殿ですか。……ふむ、素晴らしい才能の持ち主ですな」
「はい。アーサーは私以上に才に恵まれています」
まあほぼ全能だから才に恵まれているというか、才があって当然と言うべきだな。
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「それでは――」
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ボールスさんが何か話し始めようとした時に、横から少女の声が聞こえてきて、それはボールスさんに向けられているものだと分かった。
全員がそちらに視線を向けると、この場にておそらく一番目立っているであろう真っ赤なドレスに長い金髪の俺くらいの女の子が走って来ていた。
「こら、リザ。危険ではしたないから走るのはおやめなさい」
「これくらいいいじゃないですか、お父さま!」
ボールスさんが優しくたしなめるが、全く通じていない女の子は俺の方を見てきた。
「ふーん、あんたがアーサーね」
このガキも俺のことを値踏みするような視線を向けてきた。ガキンチョの癖に。
こう……想像の貴族としての人物像はかなり当てはまるような女の子だ。この歳でこれとは、やべぇなと思うしかない。
「あんた私の手下になりなさい!」
「断る」
何だこのメスガキは。
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