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王都でも渦中
062:ゲームにハマる王女。
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道化のように踊って見せろと言わんばかりのギネヴィアさまが、全くそんなことを言わずに机の上の箱に夢中になって遊んでいる。
最初は病気で人類が滅亡して、次にそれを気を付けてやったら今度は身内で争って絶滅し、その次には猛獣に襲われて絶滅するという、何とも見事に絶滅していた。
ゲームを繰り返していくにつれ、ステータス値の割り振りを考えるようになり、人の数を増やすことはできるようになったギネヴィアさま。
人が増え、最初に設定した人類が死んだことで次の世代に移り変わる。どんどんと世代が移り変わり、文明が発達していく。
「どうですか? この文明を見てください!」
数々の失敗を経て一つの王国が出来上がったことを俺に自慢げに見せてくるギネヴィアさま。
うん、喜んでくれているのなら良かった。これで外に連れていくことなんか頭から抜け落ちているはずだ。
でもね、俺は一つだけ言わないといけなことがあるんだ。
「えっと……そのゲーム設定がイージー、一番簡単な世界なんです」
「……どういうことですか?」
「ゲーム設定として、イージー、ノーマル、ハード、ヘルという難易度が設定することができるんですよ。イージーは、いわばゲームを始めるための肩慣らしになります」
「……これより、難しいということですか?」
「はい……ですからそれで得意げにされても……」
俺の言いたいことが分かったのか、少し顔を赤くしたギネヴィアさまはすぐに口を開いた。
「いいですわ! そのヘルという難易度で見事に文明を発達させて見せますわ!」
「本当にいいんですか?」
「いいですわ! 望むところです!」
まあ本人がそう言うんだから俺が止めることはしない。例え難易度ヘルが運要素が強いとしても、怒らないでくれると助かります。
「な、な、な……何ですの、これ……」
難易度ヘルを始めたギネヴィアさまは、雷に打たれて人類が滅亡したり、未知のウイルスが突然変異して人類が滅亡したり、地震で地割れして人類が滅亡したりと、ヘルの理不尽さを受けて呆然としていた。
「あーあ、意地を張るから。王女っていう難易度を設けた方が良かったですかぁ?」
そうだ、ここで煽れば少しは俺のことを嫌いになってくれるのではないかとここぞとばかりに煽ってみる。
すると一度深呼吸をして落ち着きを取り戻したギネヴィアさまは俺に笑顔を向けてきた。
「必要ありません。わたくしは王女ですが、ゲームでそれを考慮される必要は皆無ですわ」
「そうですか。それならイージーで頑張っていただいて……」
「ヘルをやりますわ!」
あー、意地になってるよこの王女。最初は子供らしくないと思ったが、案外子供らしい部分も残っているんだな。
ていうかもうかなり時間が経っているから帰ってほしいんだけど。俺の一日をこんなことで無駄にしないでくれる? 王女にその権利があるの?
「ギネヴィアさま、そろそろでお帰りになられた方がよろしいのでは?」
「いいえ、今日一日はアーサーに婚約を納得していただけるように時間をとってありますわ」
えー、そんな時間必要ない。そんなに時間を作っても地獄なだけだろ。
「それよりも、この難易度ヘルは難しくありませんか?」
「王女さまにヘルは無理ですからねぇ。今すぐにでも難易度王女を作ってあげますよ?」
「結構ですわ」
難易度ヘルをしていく王女だが、あまりにも理不尽さにちょっとした文句を言ってくるが、それはヘルを選んだギネヴィアさまが悪いということで煽っておく。
ギネヴィアさまがしているところを見ているのもつまらなくはないが、特に見たいとも思わないから次はベラの『カミサマシミュレーション』を作る。
「ベラ、やっていいよ」
「いえ、私はアーサーさまの次で大丈夫です」
「僕は後でいいよ。ベラがどんなことをするのか見てみたいし」
「それでは……やらせていただきます」
別の机の上にもう一つの『カミサマシミュレーション』を置いて、その前にベラが座る。さっきまでギネヴィアさまの操作を見ていただけあって、俺が少し説明すると理解してくれた。
やはり人によって初手は変わってくるな。いや、ベラは少し見ていたからどうやろうか考えていたんだと思う。
さすがベラと言うべきか、難易度イージーで初心者が死にそうな要因を着実に潰していきすぐに国を作り上げるまでに至った。
「イージーは、簡単でしたね」
「チュートリアルだからね。次はノーマルでもやってみる?」
「どれくらい難しくなるのですか?」
「大体二倍くらいかな。絶滅の要因も増えるし、確率も上がるから」
「それは楽しみです」
難易度ノーマルは今ここで誰もしたことがないからな。一番初めにやり始めたギネヴィアが難易度を二つも飛ばしてヘルをしているからな。
そしてそんなギネヴィアさまは未だに一日目すら超えられずにいた。
「どうして……こんなに……」
「諦めたらどうですか? 正直その難易度はどれだけ上手な人でも運要素が絡んでいますから上手い下手とか関係ないんですよ」
ヘルではなくハードならまだゲームが上手な人は綺麗に文明を発達させることができる。だけど難易度ヘルはそんなことを嘲笑い、ゲームとして成り立たないようにしているのがヘルだ。
「いいえ、わたくしがこの難易度で文明が発達した時、わたくしは真の『カミサマシミュレーション』の王者になることができるでしょう。それまでは逃げませんわ」
意気揚々と言っているが、それただのゲームだからなぁ。でも一応こういう事態は現実でも起こりうることだから、これで王女が何か政策を出してくれるとか、そんなくだらないことを思ってプラスに考えることにした。
「そうですか。それなら僕は何も言いません。頑張ってください」
「はい、最初からそのつもりですわ」
そうやって頑張っているギネヴィアさまの顔を見て、俺は少しだけギネヴィアの評価を修正する。
ワガママで、自分のやりたいことがあれば手段を選ばず、自己中心的で、それでいて能力が高い王女だと思っていたが、こうして集中できるものがあれば頑張って取り組む姿は少しだけ評価した。
それを俺以外のところでやってほしかったという思いしかないんだがな。
最初は病気で人類が滅亡して、次にそれを気を付けてやったら今度は身内で争って絶滅し、その次には猛獣に襲われて絶滅するという、何とも見事に絶滅していた。
ゲームを繰り返していくにつれ、ステータス値の割り振りを考えるようになり、人の数を増やすことはできるようになったギネヴィアさま。
人が増え、最初に設定した人類が死んだことで次の世代に移り変わる。どんどんと世代が移り変わり、文明が発達していく。
「どうですか? この文明を見てください!」
数々の失敗を経て一つの王国が出来上がったことを俺に自慢げに見せてくるギネヴィアさま。
うん、喜んでくれているのなら良かった。これで外に連れていくことなんか頭から抜け落ちているはずだ。
でもね、俺は一つだけ言わないといけなことがあるんだ。
「えっと……そのゲーム設定がイージー、一番簡単な世界なんです」
「……どういうことですか?」
「ゲーム設定として、イージー、ノーマル、ハード、ヘルという難易度が設定することができるんですよ。イージーは、いわばゲームを始めるための肩慣らしになります」
「……これより、難しいということですか?」
「はい……ですからそれで得意げにされても……」
俺の言いたいことが分かったのか、少し顔を赤くしたギネヴィアさまはすぐに口を開いた。
「いいですわ! そのヘルという難易度で見事に文明を発達させて見せますわ!」
「本当にいいんですか?」
「いいですわ! 望むところです!」
まあ本人がそう言うんだから俺が止めることはしない。例え難易度ヘルが運要素が強いとしても、怒らないでくれると助かります。
「な、な、な……何ですの、これ……」
難易度ヘルを始めたギネヴィアさまは、雷に打たれて人類が滅亡したり、未知のウイルスが突然変異して人類が滅亡したり、地震で地割れして人類が滅亡したりと、ヘルの理不尽さを受けて呆然としていた。
「あーあ、意地を張るから。王女っていう難易度を設けた方が良かったですかぁ?」
そうだ、ここで煽れば少しは俺のことを嫌いになってくれるのではないかとここぞとばかりに煽ってみる。
すると一度深呼吸をして落ち着きを取り戻したギネヴィアさまは俺に笑顔を向けてきた。
「必要ありません。わたくしは王女ですが、ゲームでそれを考慮される必要は皆無ですわ」
「そうですか。それならイージーで頑張っていただいて……」
「ヘルをやりますわ!」
あー、意地になってるよこの王女。最初は子供らしくないと思ったが、案外子供らしい部分も残っているんだな。
ていうかもうかなり時間が経っているから帰ってほしいんだけど。俺の一日をこんなことで無駄にしないでくれる? 王女にその権利があるの?
「ギネヴィアさま、そろそろでお帰りになられた方がよろしいのでは?」
「いいえ、今日一日はアーサーに婚約を納得していただけるように時間をとってありますわ」
えー、そんな時間必要ない。そんなに時間を作っても地獄なだけだろ。
「それよりも、この難易度ヘルは難しくありませんか?」
「王女さまにヘルは無理ですからねぇ。今すぐにでも難易度王女を作ってあげますよ?」
「結構ですわ」
難易度ヘルをしていく王女だが、あまりにも理不尽さにちょっとした文句を言ってくるが、それはヘルを選んだギネヴィアさまが悪いということで煽っておく。
ギネヴィアさまがしているところを見ているのもつまらなくはないが、特に見たいとも思わないから次はベラの『カミサマシミュレーション』を作る。
「ベラ、やっていいよ」
「いえ、私はアーサーさまの次で大丈夫です」
「僕は後でいいよ。ベラがどんなことをするのか見てみたいし」
「それでは……やらせていただきます」
別の机の上にもう一つの『カミサマシミュレーション』を置いて、その前にベラが座る。さっきまでギネヴィアさまの操作を見ていただけあって、俺が少し説明すると理解してくれた。
やはり人によって初手は変わってくるな。いや、ベラは少し見ていたからどうやろうか考えていたんだと思う。
さすがベラと言うべきか、難易度イージーで初心者が死にそうな要因を着実に潰していきすぐに国を作り上げるまでに至った。
「イージーは、簡単でしたね」
「チュートリアルだからね。次はノーマルでもやってみる?」
「どれくらい難しくなるのですか?」
「大体二倍くらいかな。絶滅の要因も増えるし、確率も上がるから」
「それは楽しみです」
難易度ノーマルは今ここで誰もしたことがないからな。一番初めにやり始めたギネヴィアが難易度を二つも飛ばしてヘルをしているからな。
そしてそんなギネヴィアさまは未だに一日目すら超えられずにいた。
「どうして……こんなに……」
「諦めたらどうですか? 正直その難易度はどれだけ上手な人でも運要素が絡んでいますから上手い下手とか関係ないんですよ」
ヘルではなくハードならまだゲームが上手な人は綺麗に文明を発達させることができる。だけど難易度ヘルはそんなことを嘲笑い、ゲームとして成り立たないようにしているのがヘルだ。
「いいえ、わたくしがこの難易度で文明が発達した時、わたくしは真の『カミサマシミュレーション』の王者になることができるでしょう。それまでは逃げませんわ」
意気揚々と言っているが、それただのゲームだからなぁ。でも一応こういう事態は現実でも起こりうることだから、これで王女が何か政策を出してくれるとか、そんなくだらないことを思ってプラスに考えることにした。
「そうですか。それなら僕は何も言いません。頑張ってください」
「はい、最初からそのつもりですわ」
そうやって頑張っているギネヴィアさまの顔を見て、俺は少しだけギネヴィアの評価を修正する。
ワガママで、自分のやりたいことがあれば手段を選ばず、自己中心的で、それでいて能力が高い王女だと思っていたが、こうして集中できるものがあれば頑張って取り組む姿は少しだけ評価した。
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