全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
60 / 109
王都でも渦中

060:王女襲来。

しおりを挟む
 パーシヴァル家主催の社交界は無事……無事だよな。ディンドランさんと婚約は予定通りだし、ギネヴィアさまとの婚約は避けれたから無事に終わったと言える。

 でも今はすぐにでもランスロット家に帰りたいと思うくらいには疲れている。ルーシー姉さんとシルヴィー姉さんに俺から電話をかけたくらいには疲れている。

 何なら迷惑にならないかと思いながらもクレアさんにも電話をかけた、出てくれなかった。グスン。

 でも社交界は昨日で終わり! と思っていましたよ。

「あっ、二日後にボールス家主催の社交界があるのを言い忘れていたよ」

 その言葉を社交界から解放されて疲れている俺を労ってくれたベラの体に包まれながら幸せな気持ちで起きて、言われたんですよ、このお父上様に。

 は……? 昨日言ったよな、まだ言ってないことはないかって?

「お父さん、いい加減にして?」
「い、いや、二つ社交界があると最初に言ったらアーサーが余計に疲れてしまうと思ったからね」
「いや、解放された気持ちで起きたのに、それを言われたら文句を言いたくなるんだけど?」
「あー……アーサーなら大丈夫かと思ったから……」

 出たよ! ジュストさんが言っていたお父上様の悪い癖! 俺を困らせたいのか!?

「……ベラ、お父さんに言って」

 近くにいたベラの足に抱き着いて、ベラにお願いした。

 もう俺ではお父上様に何も言う気力もなければ、すでに家に帰りたいという気持ちしか持っていなかった。

「アルノさま、五歳のアーサーさまが社交界にて頑張ったことはスザンヌさまからお聞きしました。それなのに、アーサーさまをここまで追いつめることはいかがなものかと思います。アーサーさまが倒れてもよろしいですか?」
「別にそんなつもりじゃないんだ……」
「そんなつもりではなくともアーサーさまは言葉を口にしないほど追い詰められています。いい加減に悪癖を直すべきだと思いますが」
「……次からは気を付けるよ」

 まあ学生の頃からの仲のジュストさんから言われていて直らないんだったらもう無理だよな。もう諦めた方が良さそうな気がする。

「あっ、それからアーサー……」
「なに!? 今度言い忘れていたことだったら本当に怒るよ!?」
「はいはい、アーサーさま落ち着いてください」

 何か言いづらそうにしているお父上様に、五歳の心情はこんな感じだろうなと想像しながらキレてみた。初めて息子がキレたことにお父上様に少し驚いていた。

 それをベラに宥められながらお父上様の話を聞くことにした。

「アーサー、例のマンガ家の顔出しの話、三日後に決まったよ」
「えっ……社交界が終わった次の日ってこと?」
「うん、メルシエさんがその日に会見の都合を合わせてくれた」

 あぁ、王都に帰ってきているようだが何かしているようで一切顔を合わせていないメルシエさんが、そんなことをしていたとは、メルシエさんには感謝しかない。

 明日は何もないけれど明後日はボールス家の社交界、三日後には会見が行われるとは。明日に何もないのが幸いだけど、明後日と三日後が地獄だな。しかも日が続いているのがなお嫌だ。

 でもボールス家の社交界は特に婚約とかそういう話がないから安心だ。

「ねぇ、お父さん。ボールス家の社交界は何もないよね? よね?」
「圧がすごい」

 念を押していないと言っていないことがあるかもしれないからな。

「何もないよ。その社交界でボールス家とガラハッド家に挨拶するくらいで、それ以外は特にないね。あぁ、でもサグラモール家が来ることになっているね」
「本当!? クレアさんも!?」
「あぁ、もちろんだよ。ノエルは来ないようだけど」

 もうギネヴィアさまを見れば、ノエルさんが来てもそれ以上に強烈な物を見たから可愛いものを見る目で見てしまう。

 ただクレアさんが来てくれるというだけで、俺の心は一気に軽くなってきた。俺の心のオアシスがこの地獄のような王都に来るのだ。もうこれが喜ばずにはいられない。

「ねぇ~、アーサー?」
「なに?」
「いっぱいスマホを作れない~?」

 こちらに来たお母上様が突然そんなことを言い出した。

 昨日のお母上様はそれはとてもとても楽しんでおられた。社交界というものは貴族たちが腹の探り合いをするところだと思っていたが、そんな素振りを一切見せずにご夫人たちと楽しそうに話していたお母上様。

「スザンヌ、むやみやたらに渡すのはダメに決まっているよ」
「えぇ~? みんなで通話出来たら楽しいのに~」
「それが周りに知られたら大変なことになる。もちろんホログラムもダメだよ」
「でも~、私が選んだ人だから~」
「これ以上危険なことになる可能性を増やさないでくれ」

 お父上様にそう言われて不貞腐れるお母上様。

 でも夫人たちなら黙って会話を楽しんでいそうな気がする。特に昨日お母上様と楽しそうに話しているご夫人たちなら。

 それでも数が三、四人とかじゃなくて七、八人くらいだから少しリスクがあるなぁって思うが、それらすべてを掌握できていれば、強力な武器になるし、俺やランスロット家も動きやすくなるだろう。

 さて、話は終わったし今日は部屋でのんびりマンガをかきながらベラと一緒に過ごすとしよう。そうじゃないと俺の身が持たない。いや全能だからそんなことはないんだが。

 そう思っていたのだが、この宿にかなりの護衛を引き連れてきている馬車が見えてきたんだが? しかも馬車にかかれているマークは赤き竜が剣をくわえている紋章だった。

 ペンドラゴン家の紋章ということは、この国において一番有名な紋章だから誰でも分かる。

「あれって……」
「どうしてペンドラゴン家が?」

 俺が最初に気が付いたことでお父上様たちも気が付いて窓からそちらに視線を向けた。

「……アンリ・ペンドラゴンかな?」
「いや、それはないはずだ。手を回しているからあんな大人数でこちらに来るはずがないよ」
「なら誰が……?」
「アーサーが一番思い当たるんじゃないのかな?」
「えっ?」

 お父上様にそう言われて、一番考えたくないことを無理やり考えさせられてしまう。

 しかもその人ならあり得そうだと思ったから間違ってなさ、いやもしかしたら国王さまかもしれない!

「ごきげんよう、アーサー」

 そんなことはなく、俺の部屋にギネヴィアさまが訪ねてきた。むしろ国王さまの方が困るまである。

「おはようございます、ギネヴィアさま。今日はどのようなご用件で?」

 俺がそう問いかけてもニコニコとするだけで何も答えることはなかったギネヴィアさま。

「紅茶です」
「ありがとうございます……とても美味しいですわ」
「ありがたきお言葉です」

 ベラが出した紅茶を飲んで、美味しい言うのは当たり前だ。

 これで不味いとか言い出したら舌を引っこ抜くところだ。万が一にもベラがわざと不味い紅茶を出したのなら、何かあるのだと思ってすぐに戦闘体勢に入る!

「あなたは……」

 ベラの顔をジッと見つめるギネヴィアさま。

 もしかしたら引き抜こうとしているのかもしれないが、そんなことは国王や神が許しても俺が許さない。何なら俺が死んじゃうから。

「愚兄が探している……いえ、何でもありませんわ」

 何か言いかけたギネヴィアさまは口を閉じた。

 ……うん? ぐけい、愚兄か。もしかしなくても愚兄ってアンリ・ペンドラゴンのことを言っているのか? 妹に愚兄と言われている兄とは……俺の中でアンリ・ペンドラゴンの評価を一つ下げる。マイナスはとうに過ぎ去っているが、マイナス一不可思議くらいになっているな。

 てか、用事があるなら早く用件を言って帰ってほしいんだが。

「わたくし、昨夜のあの激しい夜の密談が忘れられず、ここまで来てしまいましたわ……」
「十本勝負のコイントスですよね」

 何でそんなふざけた言い回しをするのやら。

「また、勝負したいということですか?」
「いいえ。決して負けたことにどう思っているというわけではありませんわ」

 いや絶対にそうだろ。

「今日は用事がなかったので、わたくしの婚約者になってもらうために来ましたわ」
「……はい?」

 またふざけたことを言っているな、この女。

「いや、その話は昨夜で終わったはずでは?」
「わたくし、そんなことを言いましたか? あの場を収めるための勝負はしましたが、そういう話ではなかったと思いますわ」
「そうですか……」

 うわぁ……変なのに目を付けられたな……。しかもこれに異を唱えたとしても相手が王女だからどうにもならない。

 ハァ~、こういう時の上の地位の相手って言うのはメンドウだな~。まあこれを俺にできるのは限られているし、下の人たちにしないようにしよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

処理中です...