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王都でも渦中
058:決闘。
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勝手にディンドランさんが決闘を仕掛けてきたから無効にならないかなと思ったが、こういう場ではならないらしい。
しっかりと俺とディンドランさんとの決闘が決まり、今すぐ決闘することになった。どうして社交界の場で決闘が始まるんだよ。しかも相手は社交界デビューしたての五歳だぞ?
ただ、こういうところはブリテン王国の貴族みたいだなと思ってしまう辺り俺も汚染されているのだろうな。
決闘をするために俺とディンドランさんは外に出て、他の貴族たちも見物のために外に出てくる。
どうにかならないかとお父上様に視線を向けると、その視線を受けてお父上様は口を開く。
「ディンドランはアーサーが自身に勝てば、婚約でも何でもすると言っていたみたいだよ」
「ジュストさん情報?」
「そうだよ。ディンドランはアーサーのことを僕情報で知っていたみたいだけど、それが本当か確かめるためにその条件を出したんだと思う」
全く、そんなことを社交界で言い出さなくてもいいのに……。
「あの感じ、認めるとか認めないとかそういう雰囲気じゃないよね……」
「何が気にくわなかったのかな?」
「僕の動作が美しくて、それに時間を費やしていたことに怒っているみたいだよ」
「……アーサーを普通の尺度で測っていては理解することができないだろうに」
お父上様の目から見ても、俺の潜在能力がすごいと理解しているのか。さすがだな。
「ただアーサーなら問題ないだろう。ルーシーやシルヴィーより彼女は強くない」
そりゃあの二人よりも強い人が同世代にいたらとんでもないことになるでしょうよ。
ていうかそれなら負けたら婚姻関係はなしということ? 負けてもいいんだけど? そもそもそんな形で婚約者ができるとか相手にとっても不幸だろう。
「負けてもいいの?」
「負けても構わないけど……そうなった場合は彼女が最初に言っていた通りみっちりと鍛練に付き合わされると思うよ。彼女は自身にも他人にも厳しいことで有名だね」
それはそうでしょうね。あの傷跡はそういうものだと分かっている。
それなら勝って、婚姻関係を結ぶしかないというわけか。でも俺的にはディンドランさんはあまり悪い印象は感じていない。
だからディンドランさんと婚約すること自体は文句はない。ただ強くなりたいと思っている女の子。一途でいいじゃないか。
何も持たない俺と、大の大男が持ちそうな体よりとてつもなく大きい大剣を使用人から受け取っていた。
いや、普通模擬剣とかでしません? どうしてそんな大きな剣を持ってくるんですか?
「貴様は何も持たなくていいのか?」
「えぇ、まあ。大丈夫です」
「ランスロット家には剣と鎧を作り出す固有魔法があると聞く。それか?」
「そんなところです。それよりもそんな大きな剣を持って、僕を殺す気ですか?」
「死んだら貴様がそれだけの人間だった話だ」
すっごい思いきりがいいな、この人。普通に貴族を殺したらダメだろ。
そしてディンドランさんは自身のドレスを動きやすいように足元を引き裂いたことで、チラリと赤いおパンツが見え隠れしている。
いや羞恥心! 仕事しろ!
「それでは父よ、合図を頼む」
「はぁぁぁ、どうしてこういうところでやろうとするかな……」
「諦めろ」
ジュストさんに合図を頼むディンドランさんだが、ジュストさんはかなり辟易としている表情をしていた。
やっぱりそう思いますか? これ俺が間違っている訳じゃないんだよね。良かった。
「アンリ・ペンドラゴンは話にならなかった。貴様はどうなる? 魔法を使ってもいいぞ? 尤も私は使えないが」
……うん? アンリ・ペンドラゴンに勝ったことがあるのか? それなら強さ的には俺>シルヴィー姉さん>ルーシー姉さん>ディンドランさん>アンリ・ペンドラゴンってことか? 俺最強。
「はぁ……ゴホン! それではアーサー・ランスロットとディンドラン・パーシヴァルの決闘を開始する」
ジュストさんの言葉にディンドランさんは大剣を構え、俺は何もせず棒立ちしている。
「始めッ!」
開始の合図でディンドランさんはまっすぐ俺と距離を詰めてきた。そして飛び上がって大剣を振り上げる。
「様子見だ!」
今まさに大剣を振り下ろそうとしてきているディンドランさんを見ながら少しだけ考える。
これ、どうやって勝とうか。圧倒的な力の差で勝ってもいいし、ギリギリの戦いを演出してもいい。勝つことは決まっているんだが、前者でディンドランさんのプライドを傷つけないかということを考えてしまう。
でもそれは分からないことだから、ギリギリの戦いは面倒くさいから圧倒的な力の差での勝利でいいか。
「きゃぁ!」
俺が避けようともしないから貴族の女性が目をそらして少し悲鳴をあげたのがわかるが、俺に直撃しそうになっているディンドランさんの大剣を指一本で受け止める。
大剣を指一本で受け止められたディンドランさんは目を見開いたが、それでいて笑みを浮かべた。
「やるな! それでこそランスロット家だ!」
さっきまでの俺の軽蔑した瞳はどこへやら、嬉々として俺の方に笑顔を向けてきた。
うん、そういう性格だって分かりやすくていいな。貴族の腹黒い感じとどちらがいいかって言われたら間違いなく分かりやすい方だ。
ディンドランさんは大剣を引いて薙ぎ払ってくる。しかもさっきとは威力が段違いに跳ね上がり、魔力を帯びているのが分かる。
まあディンドランさんの性格上、こういうのは受ければ喜ばれそうだから薙ぎ払いも前腕で受け止めたが一切俺が動くことはなかった。
回転斬りなどロマンあふれる攻撃で何度も俺に攻撃してくる中で、ディンドランさんは体が温まっているようにどんどん攻撃力を上げていく。
毎回ディンドランさんが大剣を振るっていることで周りの貴族たちに風が向かって行っており、女性の貴族のスカートがめくり上がるという事件が今まさに勃発して周りは周りで騒ぎになっている。
だがそんなことお構いなしにディンドランさんは幾度となく攻撃してくる。
「ははっ! アーサー! お前は天才なのか!? 所作と強さを五歳でその段階にまで上げることは不可能だ!」
「まあ、そうかもしれませんね」
天才というよりも全能ですから。
「ランスロット家はいいな! ルーシーと言いシルヴィーさんと言い、けた外れに強い! まるで神に愛されているような才能の持ち主だ!」
「そういうディンドランさんはどうなんですか?」
「私は傷だらけにならないと強くなれないからな! 優雅で、可憐で、強きランスロット家の人間には敵わない!」
まあそういうものなのか。ルーシー姉さんとシルヴィー姉さんは俺が見ても普通ではないから、他から見たらランスロット家は異常に見えるのだろう。
「ルーシーとシルヴィーさん、それにアーサーでは誰が一番強い!?」
「前に戦った時は、どちらも僕が勝ちましたから、僕が一番強いですよ」
「まるで力の片鱗を見せていないあたり、本当なのだろうな! ルーシーとシルヴィーからお前のことをよくすごいと聞いていたからな!」
……姉さんたち、他のところで俺の話をするのはやめてくれませんか? あなたたちがいない時に話をしている人に会ったら恥ずかしいんですよ。
「どうした!? 私に勝たないとお前はパーシヴァル家の婿になるぞ!」
「えっ、鍛えるとかじゃありませんでしたっけ?」
「そんなことをお前にしても意味がないだろ! お前と一緒にいれば毎日が楽しそうだ!」
それ、嬉々として言う言葉ではないですよ。プロポーズですか? あぁ、そうですか。もう婚姻関係になるのは決定事項っぽいな。
とは言え、ディンドランさんの言う通りこのまま受け続けるだけでは勝てないし、時間が過ぎていくだけだ。しかもまだまだディンドランさんは攻撃力を上げている。
「その剣、壊しても大丈夫なものですか?」
「問題ないぞ! これは戦闘用ではなく決闘用だからな! 壊すのか!?」
これが決闘用って、確かにただのなまくらだけどそれにしては質量だけで人を殺せるぞ。
まあだが壊していいのなら好都合だ。どうせこういう貴族の場で俺の実力を明かせるいい機会だからインパクトが欲しいな。
強くて目立つみたいなことをしたくはないのだが、それは今さらか。マンガの世界でも、強くても目立たないやつはいくらでもいる。うん、そうなればいいな。
「纏雷」
辺りに轟音を響かせるほどの雷を纏う。
やっぱり男の子なら雷を纏うのをやってみたいよな。
「行きますよ」
「来い!」
ただこう言ってもディンドランさんがどうこうできるわけもないし、一応形式上言っておく。
手のひらを前に突き出して、ディンドランさんが持っている大剣に向けて雷撃を放つ。
「三式雷槍」
「くぅっ……!」
ディンドランさんの大剣だけを槍のような雷が瞬く間に消し炭にしてすぐにディンドランさんの背後に立って剣を作り出してディンドランさんの首元に近づける。
「負け、ですよね?」
「……あぁ、負けだ。……私は、アーサーの強さに惚れてしまったようだ」
ディンドランさんが降参したことで、ジュストさんによる声が響いた。
「勝者、アーサー・ランスロット!」
その言葉で貴族たちはより盛り上がった。
しっかりと俺とディンドランさんとの決闘が決まり、今すぐ決闘することになった。どうして社交界の場で決闘が始まるんだよ。しかも相手は社交界デビューしたての五歳だぞ?
ただ、こういうところはブリテン王国の貴族みたいだなと思ってしまう辺り俺も汚染されているのだろうな。
決闘をするために俺とディンドランさんは外に出て、他の貴族たちも見物のために外に出てくる。
どうにかならないかとお父上様に視線を向けると、その視線を受けてお父上様は口を開く。
「ディンドランはアーサーが自身に勝てば、婚約でも何でもすると言っていたみたいだよ」
「ジュストさん情報?」
「そうだよ。ディンドランはアーサーのことを僕情報で知っていたみたいだけど、それが本当か確かめるためにその条件を出したんだと思う」
全く、そんなことを社交界で言い出さなくてもいいのに……。
「あの感じ、認めるとか認めないとかそういう雰囲気じゃないよね……」
「何が気にくわなかったのかな?」
「僕の動作が美しくて、それに時間を費やしていたことに怒っているみたいだよ」
「……アーサーを普通の尺度で測っていては理解することができないだろうに」
お父上様の目から見ても、俺の潜在能力がすごいと理解しているのか。さすがだな。
「ただアーサーなら問題ないだろう。ルーシーやシルヴィーより彼女は強くない」
そりゃあの二人よりも強い人が同世代にいたらとんでもないことになるでしょうよ。
ていうかそれなら負けたら婚姻関係はなしということ? 負けてもいいんだけど? そもそもそんな形で婚約者ができるとか相手にとっても不幸だろう。
「負けてもいいの?」
「負けても構わないけど……そうなった場合は彼女が最初に言っていた通りみっちりと鍛練に付き合わされると思うよ。彼女は自身にも他人にも厳しいことで有名だね」
それはそうでしょうね。あの傷跡はそういうものだと分かっている。
それなら勝って、婚姻関係を結ぶしかないというわけか。でも俺的にはディンドランさんはあまり悪い印象は感じていない。
だからディンドランさんと婚約すること自体は文句はない。ただ強くなりたいと思っている女の子。一途でいいじゃないか。
何も持たない俺と、大の大男が持ちそうな体よりとてつもなく大きい大剣を使用人から受け取っていた。
いや、普通模擬剣とかでしません? どうしてそんな大きな剣を持ってくるんですか?
「貴様は何も持たなくていいのか?」
「えぇ、まあ。大丈夫です」
「ランスロット家には剣と鎧を作り出す固有魔法があると聞く。それか?」
「そんなところです。それよりもそんな大きな剣を持って、僕を殺す気ですか?」
「死んだら貴様がそれだけの人間だった話だ」
すっごい思いきりがいいな、この人。普通に貴族を殺したらダメだろ。
そしてディンドランさんは自身のドレスを動きやすいように足元を引き裂いたことで、チラリと赤いおパンツが見え隠れしている。
いや羞恥心! 仕事しろ!
「それでは父よ、合図を頼む」
「はぁぁぁ、どうしてこういうところでやろうとするかな……」
「諦めろ」
ジュストさんに合図を頼むディンドランさんだが、ジュストさんはかなり辟易としている表情をしていた。
やっぱりそう思いますか? これ俺が間違っている訳じゃないんだよね。良かった。
「アンリ・ペンドラゴンは話にならなかった。貴様はどうなる? 魔法を使ってもいいぞ? 尤も私は使えないが」
……うん? アンリ・ペンドラゴンに勝ったことがあるのか? それなら強さ的には俺>シルヴィー姉さん>ルーシー姉さん>ディンドランさん>アンリ・ペンドラゴンってことか? 俺最強。
「はぁ……ゴホン! それではアーサー・ランスロットとディンドラン・パーシヴァルの決闘を開始する」
ジュストさんの言葉にディンドランさんは大剣を構え、俺は何もせず棒立ちしている。
「始めッ!」
開始の合図でディンドランさんはまっすぐ俺と距離を詰めてきた。そして飛び上がって大剣を振り上げる。
「様子見だ!」
今まさに大剣を振り下ろそうとしてきているディンドランさんを見ながら少しだけ考える。
これ、どうやって勝とうか。圧倒的な力の差で勝ってもいいし、ギリギリの戦いを演出してもいい。勝つことは決まっているんだが、前者でディンドランさんのプライドを傷つけないかということを考えてしまう。
でもそれは分からないことだから、ギリギリの戦いは面倒くさいから圧倒的な力の差での勝利でいいか。
「きゃぁ!」
俺が避けようともしないから貴族の女性が目をそらして少し悲鳴をあげたのがわかるが、俺に直撃しそうになっているディンドランさんの大剣を指一本で受け止める。
大剣を指一本で受け止められたディンドランさんは目を見開いたが、それでいて笑みを浮かべた。
「やるな! それでこそランスロット家だ!」
さっきまでの俺の軽蔑した瞳はどこへやら、嬉々として俺の方に笑顔を向けてきた。
うん、そういう性格だって分かりやすくていいな。貴族の腹黒い感じとどちらがいいかって言われたら間違いなく分かりやすい方だ。
ディンドランさんは大剣を引いて薙ぎ払ってくる。しかもさっきとは威力が段違いに跳ね上がり、魔力を帯びているのが分かる。
まあディンドランさんの性格上、こういうのは受ければ喜ばれそうだから薙ぎ払いも前腕で受け止めたが一切俺が動くことはなかった。
回転斬りなどロマンあふれる攻撃で何度も俺に攻撃してくる中で、ディンドランさんは体が温まっているようにどんどん攻撃力を上げていく。
毎回ディンドランさんが大剣を振るっていることで周りの貴族たちに風が向かって行っており、女性の貴族のスカートがめくり上がるという事件が今まさに勃発して周りは周りで騒ぎになっている。
だがそんなことお構いなしにディンドランさんは幾度となく攻撃してくる。
「ははっ! アーサー! お前は天才なのか!? 所作と強さを五歳でその段階にまで上げることは不可能だ!」
「まあ、そうかもしれませんね」
天才というよりも全能ですから。
「ランスロット家はいいな! ルーシーと言いシルヴィーさんと言い、けた外れに強い! まるで神に愛されているような才能の持ち主だ!」
「そういうディンドランさんはどうなんですか?」
「私は傷だらけにならないと強くなれないからな! 優雅で、可憐で、強きランスロット家の人間には敵わない!」
まあそういうものなのか。ルーシー姉さんとシルヴィー姉さんは俺が見ても普通ではないから、他から見たらランスロット家は異常に見えるのだろう。
「ルーシーとシルヴィーさん、それにアーサーでは誰が一番強い!?」
「前に戦った時は、どちらも僕が勝ちましたから、僕が一番強いですよ」
「まるで力の片鱗を見せていないあたり、本当なのだろうな! ルーシーとシルヴィーからお前のことをよくすごいと聞いていたからな!」
……姉さんたち、他のところで俺の話をするのはやめてくれませんか? あなたたちがいない時に話をしている人に会ったら恥ずかしいんですよ。
「どうした!? 私に勝たないとお前はパーシヴァル家の婿になるぞ!」
「えっ、鍛えるとかじゃありませんでしたっけ?」
「そんなことをお前にしても意味がないだろ! お前と一緒にいれば毎日が楽しそうだ!」
それ、嬉々として言う言葉ではないですよ。プロポーズですか? あぁ、そうですか。もう婚姻関係になるのは決定事項っぽいな。
とは言え、ディンドランさんの言う通りこのまま受け続けるだけでは勝てないし、時間が過ぎていくだけだ。しかもまだまだディンドランさんは攻撃力を上げている。
「その剣、壊しても大丈夫なものですか?」
「問題ないぞ! これは戦闘用ではなく決闘用だからな! 壊すのか!?」
これが決闘用って、確かにただのなまくらだけどそれにしては質量だけで人を殺せるぞ。
まあだが壊していいのなら好都合だ。どうせこういう貴族の場で俺の実力を明かせるいい機会だからインパクトが欲しいな。
強くて目立つみたいなことをしたくはないのだが、それは今さらか。マンガの世界でも、強くても目立たないやつはいくらでもいる。うん、そうなればいいな。
「纏雷」
辺りに轟音を響かせるほどの雷を纏う。
やっぱり男の子なら雷を纏うのをやってみたいよな。
「行きますよ」
「来い!」
ただこう言ってもディンドランさんがどうこうできるわけもないし、一応形式上言っておく。
手のひらを前に突き出して、ディンドランさんが持っている大剣に向けて雷撃を放つ。
「三式雷槍」
「くぅっ……!」
ディンドランさんの大剣だけを槍のような雷が瞬く間に消し炭にしてすぐにディンドランさんの背後に立って剣を作り出してディンドランさんの首元に近づける。
「負け、ですよね?」
「……あぁ、負けだ。……私は、アーサーの強さに惚れてしまったようだ」
ディンドランさんが降参したことで、ジュストさんによる声が響いた。
「勝者、アーサー・ランスロット!」
その言葉で貴族たちはより盛り上がった。
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