全能で楽しく公爵家!!

山椒

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王都でも渦中

049:宿にて。

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 王都の中を馬車に乗らずに歩きで宿に向かった。

 馬車にずっといたから少し歩かないとお尻が痛くなりそうだとグリーテンに言ったらグリーテンの膝の上に乗せられたからあまり言うほど痛くなかった。

 今回、パーシヴァル家主催のパーティーであるため、パーシヴァル家の屋敷にお招きされていたようだが丁重にお断りしたお父上様。

 あまりそこら辺の貴族の仲の良い悪いが分からないから、遠慮しているのか、嫌なのか、それとも他に何かあるのか分からない。

 お父上様に聞こうと思ったけど後でベラに聞くことにした。

 たどり着いた宿はうちほどではないが、十分に大きいと言える貴族が泊まること以外考えてなさそうな大きな宿だった。

「お待ちしておりました、ランスロットさま」

 宿泊施設の前でそこで働いている人たちが出迎えてくれ、馬車とは別れて宿の中に入っていく。

 宿の中も外装から思った通りの内装で、前世の俺だったら泊まることがないし金があっても泊まることがなかったであろう場所だ。

 それを言ってしまえばランスロット家なんて入ることが嫌だと思うくらいの場所だが、その家の子供になってしまっている。

 そして俺たちが泊まる部屋に向かったところ、俺はお父上様とお母上様と一緒の部屋になるのかと思っていたがそうではないらしい。

「あれ? 一緒の部屋じゃないんだ。どうして?」
「えー、あれだ……」
「うふふっ」

 俺が聞いたところお父上様は言い淀んで、お母上様は笑みを浮かべているだけだった。

 俺としてはベラと一緒の部屋という屋敷では考えられない部屋割りだからいいんだけど……気になってしまう。

「アーサー、あなたのお父さんとお母さんはあなたの弟か妹を作ろうとしているのよ」
「あー……なるほど」

 グリーテンがド直球でそう言ったことで、俺は納得してしまった。

 シルヴィー姉さんができたのがお父上様とお母上様が二十歳の時だから、お父上様は三十三歳でお母上様はまだ誕生日が来ていないから三十二歳。まだまだ子供を作るのに大丈夫な歳だ。

 ていうかあれだけやっているのに未だに三人しか子供がいないのはどういうことだろうか。避妊魔法でもかけているのだろうか。

「子供にそんなことを言うんじゃないよ!」
「本当のことだからいいじゃありませんか。どうせアーサーにも見られているのでしょう?」
「うっ……」

 顔を赤くしてグリーテンに反論するが、思わぬ反撃をくらって黙ったお父上様。

「そうよ~。アーサーは~、弟と妹どっちがいいかしら~?」
「うーん……どっちも?」
「あら~、それはお父さんに頑張ってもらわないとね~? うふふふふっ!」
「勘弁してくれ……」

 上機嫌なお母上様に少しげんなりしているお父上様。これは本当に弟か妹ができそうだな。

 でもあの家でもう一人増えるとか騒がしくなりそうだなぁ。まあ俺はシルヴィー姉さんとルーシー姉さんの相手しかできないから、弟と妹はお母上様に任せた!

 俺とベラが割り振られている部屋に、俺とベラとグリーテンが入る。

「グリーテンはここに一緒に泊まるの?」
「いいえ、私は久しぶりに家に帰るわ。その時にでも」
「グリーテンさま、おやめください」
「こっそりお誘いするわね」

 ぎろりとベラに視線を向けられたグリーテンは人差し指を唇に当ててそういってきた。

 うむ、その仕草は可愛くてよきかなよきかな。

「あっ、お姉ちゃんたちに写真送ろ」

 特に理由はないが、記念撮影ということで部屋の中がある程度見える場所に立って、腕を伸ばして自撮りする姿勢に入って片手はピースを忘れない。

「イエーイ」

 ノリノリで写真に入ってくるグリーテンは俺が教えたダブルピースをしている。

 入ってこないと思っていたベラだが、ちゃっかりと写真のギリギリ入っている位置に立ってピースしている。

 そして手前に俺、少し離れた後ろにグリーテン、写真の端にいるベラという写真が撮ることができた。

 それを早速ランスロット家の子供のグループに送ると、すぐさま反応が返ってきた。

『いいなぁ、私も一緒にアーサーと泊まりたい!』
『私も一緒に行ければ良かった』

 それに『また今度一緒に旅行に行こうね』と返信してスマホをしまった。

 ベラは部屋の中で荷物を空間魔法から取り出しており、俺の荷物やらベラの荷物やらを出している。

「アーサー、少しいいか?」
「うん、なに?」

 お父上様が部屋の外から声をかけてきたことで俺は扉を開ける。そこにはお父上様とお母上様がいた。

「僕とスザンヌは旧友のところに行くから、何かあればスマホに連絡するかカーラに言うように」

 カーラとはランスロット家のメイド長をしている女性だ。完璧メイドであるベラと凄腕秘書メイドであるカーラがランスロット家のメイドツートップだ。

「知り合いだったら僕は行かなくていいの?」
「いつかは会ってもらうことになるけど、今は行かなくていいよ」
「そうなんだ」
「夕食まで時間があるから暇ならベラとグリーテンと王都を見て回るといいよ」
「うん、そうする!」
「アーサー? 王都は色々な人がいるから気を付けなさいよ~」
「色々な人……?」

 なにそのお母上様の含みのある言葉は。まあでもどうせここにいても暇だから王都を回ることにするのは決定事項だな。

「それじゃ僕たちは行ってくるよ」
「うん! 気を付けてね」
「アーサーもね~」
「うん!」

 お父上様とお母上様を見送って、俺は部屋の中に戻る。

 部屋の中ではベラがあの短時間で荷物を整理し終わっており、俺に紅茶を出してくれていた。一方のグリーテンは俺の荷物がおかれている方のベッドに寝転がっていた。

「王都に行くのかしら?」
「そうするから、ついてきてくれない?」
「えぇ、アーサーがいるのならどこでも行くわよ」
「ベラも来てくれる?」
「はい、私はアーサーさまのメイドですのでどこへなりとも」

 片方はメイドだからいいけど、もう片方はプロポーズととられかねない言葉を言っているのだが、まあいいか。

「それじゃあ行こうか」
「ちょっと待ちなさい」
「どうしましたか?」

 行こうとしたがグリーテンに止められた。

「その格好でいったら目立つわよ?」
「でも王都だから珍しくないんじゃ……?」
「えぇ、そうね。でもどうせなら変装して行ってもいいんじゃないの? 無駄に貴族を主張するよりも平民だと主張していた方が何も起こらないわよ?」
「確かに……」

 それもそうか。店に入るときでも平民なら全く目立たず入ることができるということか。でも実際貴族が道を歩いているからどうなんだ、という感情しか俺の中にはない。

 俺が平民で貴族がいたら、うわっ、貴族だ近寄らないでおこう。……あぁ、なるね。でもそれは俺の前世の価値観だし、王都に住んでいる人たちからすれば日常茶飯事な光景なのではないのか?

「グリーテンさま、いい加減なことを仰らないでください」
「いい加減じゃないわよ」
「命を狙われるような王族ならまだしも公爵家がそのようなことをする必要がありません。それにグリーテンさまがおられるのなら、不要なことです」

 あー、やっぱりそうなのね。だが目立つのは間違ってないのか。

「えー、いいじゃない。変装して行った方が楽しいわよ? それにあなたもメイド服で行くつもり? どうせ王都に来たんだから、アーサーと三人で王都デートをしましょうよ」

 これ、普通にグリーテンが変装してデートをしたかったというオチなのか、まあいいけど。五歳の俺よりかは15、6歳の俺の方が違和感なく歩くことができるだろう。

「ねぇ、ベラ。今日だけはメイド服じゃない格好でデートしよ?」
「うっ……ですが……」
「ダメ?」
「……はい、承知しました」
「あなた、アーサーに弱すぎね」
「言わないでください、自覚していますから」

 グリーテンに突っ込まれるほどベラは俺に甘いのはすでにわかりきっている事実。

 よし、これからベラとグリーテンで三Pデートだ!
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