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全能の爆誕
032:クレアさんへの課題。
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お母上様がお父上様に俺が作った魔道具を伝えるだけ伝えてゾーイさんと何やら作戦会議を楽しそうにしていた。
お父上様は本当に伝えられただけで、相談とかでも許可をもらうとかでもなく、伝えられただけだ。
お父上様もお母上様に勝てないと思ったのか、何も言わず俺に詳細だけ聞いてきた。これが尻に敷かれるということなのか。
お父上様がエリオットさんと一緒にいたが、こう考えればランスロット家もサグラモール家も同じような感じか。いや父親の態度があれなのは違うけど。
「あっ、シルヴィーお姉ちゃん」
「ん。アーサー」
お母上様とゾーイさんに解放されて部屋に戻ろうとしたところで、シルヴィー姉さんと遭遇した。
だが……何だか様子がおかしい。いつもならこんなに短く返事が返ってこないのに、こうして言葉が返ってきている。
「一人?」
「そう。……クレアとノエルはルーシーと話している」
おかしいな。これはシルヴィー姉さんの皮を被った誰かか?
「なに?」
「いや……何だか普通に会話できて嬉しいなって!」
「……そうかも」
意外にもシルヴィー姉さんも気にしていなかった様子だった。
あれ、もしかして気付かせない方が良かった系か? いつかは気付くんだからどっちでもいいか。
「……あの戦いで、アーサーと意外と話せることが分かった」
「それならどうして今まで話せなかったの?」
「……少し、恥ずかしかった……かも」
「それでも話してみたらそれほどでもなかったと」
シルヴィー姉さんは頷いた。
視線は合わないけどそれなりに面と向かって話すことができるのはいいことだ。
「それなら良かった! シルヴィー姉さんと喋れないのは寂しいから!」
「ッ! そう。じゃ」
「えっ」
シルヴィー姉さんはそう短く言い終えて早足でその場から去った。
……ヤバい? もしかして恥ずかしくなって素早く去った? すべてを台無しにしましたか?
俺は自身の頬に全力の拳をぶつけたところ、すごい音がなって辺りに風が吹き荒れた。
……痛くない。この矛盾勝負は盾の勝利です! 残念! ……ふぅ、部屋に戻ろ。
部屋に戻って、俺はクレアさんと出会った時、クレアさんの才能を理解した時から考えていたものをインターネットで構築し始める。
どうせだから人工知能も付けるか。俺に遠慮して聞けないということがあるかもしれないから、そっちの方がクレアさんのためになる。
まあ、これを作ったとしてもクレアさんの意思次第だな。
俺はクレアさんを強制するつもりはないし、才能がある=やる気があるにはつながらない。
だからすべてはクレアさんに聞いてからになるな。
それをいつ聞こうかと思っているところで、俺の部屋がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
部屋に入ってきたのは丁度会いたかったクレアさんだった。
「どうしましたか?」
「いえ……その……」
「とりあえず席にどうぞ」
「はい」
何か喋りにくそうにしていたから俺の前の席に座ってもらった。
「先ほどシルヴィーお姉ちゃんから聞いたんですが、ルーシーお姉ちゃんのところにいたんですよね?」
少しだけ気分を楽にするために他の話題を振ることにした。
「はい。ノエルお姉さまとルーシーさまで私の今後の鍛錬についてどう行えばいいのか話し合っていました」
「……ん?」
あの二人と? 才能マンのノエルさんとあまり考えていないルーシー姉さんで? 何かの冗談だろ。
そもそもそんなことをされて鍛錬の時間を増やされたら少し困る。
言い方はあれだが、クレアさんは俺が望んでいる才能は持っているが、クレアさん自身が望んでいる才能は皆無だ。戦闘の才能とか。
そんな才能のために時間を費やすよりも他の才能のために時間を使ってほしいと、少し自分勝手に思ってしまっている。
このブリテン王国の貴族は強いことが求められているから、その性質上どうしようもないと言える。
解決する方法があるにはあるが、それは完全にチートだからクレアさんが乗ってくれるかどうか。
「ですが、私は以前よりも強くなりたいとは思わなくなりましたから少し話は聞き流していました」
少し申し訳なさそうにするクレアさんに、俺は驚いた。
「どうしてですか?」
「アーサーさまが私の才能、娯楽の才能があるとか仰っていましたよね?」
「言いました」
「アーサーさまが必要とされているのなら、その才能を磨くために時間を取りたいと思っています。ですから鍛錬にあまり時間を使えません」
クレアさんがやる気ならいいが……俺に言われているからやろうとしていないか? それだと強制しているみたいだからな。
「クレアさん。本当にやりたいんですか?」
「……はい?」
「僕はクレアさんに僕の事情を強制するつもりはありません。クレアさんがもっと強くなりたいと言うのであればそちらに時間を使ってもらって構いません。ですが――」
俺がそう言いながらクレアさんの顔を見ると、クレアさんはみるみる顔色を悪くしていた。
「ど、どうしましたか? 気分でも悪いですか?」
「い、いえ……あ、アーサーさまは……わ、私のことが、ひ、必要ありませんか……?」
「そんなことはありませんよ」
「で、ですが……鍛錬に時間を使えと……」
手も震えているクレアさんを見て、これはもう俺について来てくれるのだと理解した。言い方を悪くすればいいようにしていいということだな。ホント言い方悪い。
俺は震えているクレアさんの手に自身の手を重ねた。
「意地悪なことを言ってごめんなさい。クレアさんはもう覚悟を決めていたんですね。それなら僕からはもう何も言いません。僕が欲しい才能に時間を使ってください」
こう言った方がいいと感じた。
「はい……!」
それは間違っていないようで、いい笑顔で答えてくれた。
これならチートを使っても問題なさそうだ。
「それで、ここに来た理由はもしかしてそれと関係していますか?」
「はい、しています。……その、私は何をすればいいんでしょうか?」
そうだよな。俺がクレアさんが必要だと言ってからまだ何も伝えていなかった。
「絵の練習をすればいいのでしょうか……?」
「いや、それよりも勉強をしてほしいです」
「勉強……どのようなものですか?」
「スマホ出してください」
「はい」
すでにネットにアップロードしているため、それをクレアさんにダウンロードしてもらった。
その手順を教えたため、今後こういう機会があってもデータのダウンロードをしてもらうことができるようになったわけだ。
「これは……」
クレアさんはダウンロードしたデータを見て訳の分からないという表情をしていた。
「クレアさん」
「はい」
「これを勉強してください」
「えっ」
俺が作ったデータは、アニメやマンガ、音楽などの娯楽の知識をぶち込んだものだ。
「たぶん、僕が言っていることは鍛錬をするよりも厳しいと思います。それでもやりますか?」
「……アーサーさま。これを私ができると思われているのですよね?」
「もちろんです」
「それならばやり遂げて見せます。ですから待っていてください」
「はい」
まあど素人でも分かるように一から構築したけど、それでも分からない時の場合も言っておく。
「何か分からないことがあれば遠慮なく僕に連絡してきてください」
「はい。分からないことは聞きます」
「僕が対応できない時は、ネットの妖精に聞いてください」
「妖精?」
『ハロハロ―!』
「ひゃっ!」
クレアさんのスマホから急に可愛い声が出てきたことで、クレアさんからも可愛い声が聞こえてきた。
「なに……!?」
『さっきご主人に説明されたネットの妖精だよ! よろしくね! クレアちゃん!』
「は、はぁ……よろしくお願いします……?」
これもも説明しておかないといけないな。
「その妖精はデジタル世界で、生きている人間のように思考する存在です」
「……実際に生きているわけではないんですよね。誰かがしゃべっているのかと思いました」
『失礼だなぁ。私はちゃんと生きてるよ!』
「そうだね、生きているね。だから僕のスマホにいたずらをするのはやめて」
たくさんの文字で埋め尽くされている俺のスマホ。
「その妖精、アイは僕みたいに何でも知っているので聞いてください」
『人工知能のAIだからアイって安直だよね~。でも私は気に入っている!』
「それならよかった」
クレアさんを見ると、色々と詰め込み過ぎたようで遠い目をしていた。
「そういうわけです。クレアさんには僕をサポートしてもらいたいと思っています。ですから頑張ってください」
「……はいっ! 頑張ります!」
いい返事が聞けて良かった。
お父上様は本当に伝えられただけで、相談とかでも許可をもらうとかでもなく、伝えられただけだ。
お父上様もお母上様に勝てないと思ったのか、何も言わず俺に詳細だけ聞いてきた。これが尻に敷かれるということなのか。
お父上様がエリオットさんと一緒にいたが、こう考えればランスロット家もサグラモール家も同じような感じか。いや父親の態度があれなのは違うけど。
「あっ、シルヴィーお姉ちゃん」
「ん。アーサー」
お母上様とゾーイさんに解放されて部屋に戻ろうとしたところで、シルヴィー姉さんと遭遇した。
だが……何だか様子がおかしい。いつもならこんなに短く返事が返ってこないのに、こうして言葉が返ってきている。
「一人?」
「そう。……クレアとノエルはルーシーと話している」
おかしいな。これはシルヴィー姉さんの皮を被った誰かか?
「なに?」
「いや……何だか普通に会話できて嬉しいなって!」
「……そうかも」
意外にもシルヴィー姉さんも気にしていなかった様子だった。
あれ、もしかして気付かせない方が良かった系か? いつかは気付くんだからどっちでもいいか。
「……あの戦いで、アーサーと意外と話せることが分かった」
「それならどうして今まで話せなかったの?」
「……少し、恥ずかしかった……かも」
「それでも話してみたらそれほどでもなかったと」
シルヴィー姉さんは頷いた。
視線は合わないけどそれなりに面と向かって話すことができるのはいいことだ。
「それなら良かった! シルヴィー姉さんと喋れないのは寂しいから!」
「ッ! そう。じゃ」
「えっ」
シルヴィー姉さんはそう短く言い終えて早足でその場から去った。
……ヤバい? もしかして恥ずかしくなって素早く去った? すべてを台無しにしましたか?
俺は自身の頬に全力の拳をぶつけたところ、すごい音がなって辺りに風が吹き荒れた。
……痛くない。この矛盾勝負は盾の勝利です! 残念! ……ふぅ、部屋に戻ろ。
部屋に戻って、俺はクレアさんと出会った時、クレアさんの才能を理解した時から考えていたものをインターネットで構築し始める。
どうせだから人工知能も付けるか。俺に遠慮して聞けないということがあるかもしれないから、そっちの方がクレアさんのためになる。
まあ、これを作ったとしてもクレアさんの意思次第だな。
俺はクレアさんを強制するつもりはないし、才能がある=やる気があるにはつながらない。
だからすべてはクレアさんに聞いてからになるな。
それをいつ聞こうかと思っているところで、俺の部屋がノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
部屋に入ってきたのは丁度会いたかったクレアさんだった。
「どうしましたか?」
「いえ……その……」
「とりあえず席にどうぞ」
「はい」
何か喋りにくそうにしていたから俺の前の席に座ってもらった。
「先ほどシルヴィーお姉ちゃんから聞いたんですが、ルーシーお姉ちゃんのところにいたんですよね?」
少しだけ気分を楽にするために他の話題を振ることにした。
「はい。ノエルお姉さまとルーシーさまで私の今後の鍛錬についてどう行えばいいのか話し合っていました」
「……ん?」
あの二人と? 才能マンのノエルさんとあまり考えていないルーシー姉さんで? 何かの冗談だろ。
そもそもそんなことをされて鍛錬の時間を増やされたら少し困る。
言い方はあれだが、クレアさんは俺が望んでいる才能は持っているが、クレアさん自身が望んでいる才能は皆無だ。戦闘の才能とか。
そんな才能のために時間を費やすよりも他の才能のために時間を使ってほしいと、少し自分勝手に思ってしまっている。
このブリテン王国の貴族は強いことが求められているから、その性質上どうしようもないと言える。
解決する方法があるにはあるが、それは完全にチートだからクレアさんが乗ってくれるかどうか。
「ですが、私は以前よりも強くなりたいとは思わなくなりましたから少し話は聞き流していました」
少し申し訳なさそうにするクレアさんに、俺は驚いた。
「どうしてですか?」
「アーサーさまが私の才能、娯楽の才能があるとか仰っていましたよね?」
「言いました」
「アーサーさまが必要とされているのなら、その才能を磨くために時間を取りたいと思っています。ですから鍛錬にあまり時間を使えません」
クレアさんがやる気ならいいが……俺に言われているからやろうとしていないか? それだと強制しているみたいだからな。
「クレアさん。本当にやりたいんですか?」
「……はい?」
「僕はクレアさんに僕の事情を強制するつもりはありません。クレアさんがもっと強くなりたいと言うのであればそちらに時間を使ってもらって構いません。ですが――」
俺がそう言いながらクレアさんの顔を見ると、クレアさんはみるみる顔色を悪くしていた。
「ど、どうしましたか? 気分でも悪いですか?」
「い、いえ……あ、アーサーさまは……わ、私のことが、ひ、必要ありませんか……?」
「そんなことはありませんよ」
「で、ですが……鍛錬に時間を使えと……」
手も震えているクレアさんを見て、これはもう俺について来てくれるのだと理解した。言い方を悪くすればいいようにしていいということだな。ホント言い方悪い。
俺は震えているクレアさんの手に自身の手を重ねた。
「意地悪なことを言ってごめんなさい。クレアさんはもう覚悟を決めていたんですね。それなら僕からはもう何も言いません。僕が欲しい才能に時間を使ってください」
こう言った方がいいと感じた。
「はい……!」
それは間違っていないようで、いい笑顔で答えてくれた。
これならチートを使っても問題なさそうだ。
「それで、ここに来た理由はもしかしてそれと関係していますか?」
「はい、しています。……その、私は何をすればいいんでしょうか?」
そうだよな。俺がクレアさんが必要だと言ってからまだ何も伝えていなかった。
「絵の練習をすればいいのでしょうか……?」
「いや、それよりも勉強をしてほしいです」
「勉強……どのようなものですか?」
「スマホ出してください」
「はい」
すでにネットにアップロードしているため、それをクレアさんにダウンロードしてもらった。
その手順を教えたため、今後こういう機会があってもデータのダウンロードをしてもらうことができるようになったわけだ。
「これは……」
クレアさんはダウンロードしたデータを見て訳の分からないという表情をしていた。
「クレアさん」
「はい」
「これを勉強してください」
「えっ」
俺が作ったデータは、アニメやマンガ、音楽などの娯楽の知識をぶち込んだものだ。
「たぶん、僕が言っていることは鍛錬をするよりも厳しいと思います。それでもやりますか?」
「……アーサーさま。これを私ができると思われているのですよね?」
「もちろんです」
「それならばやり遂げて見せます。ですから待っていてください」
「はい」
まあど素人でも分かるように一から構築したけど、それでも分からない時の場合も言っておく。
「何か分からないことがあれば遠慮なく僕に連絡してきてください」
「はい。分からないことは聞きます」
「僕が対応できない時は、ネットの妖精に聞いてください」
「妖精?」
『ハロハロ―!』
「ひゃっ!」
クレアさんのスマホから急に可愛い声が出てきたことで、クレアさんからも可愛い声が聞こえてきた。
「なに……!?」
『さっきご主人に説明されたネットの妖精だよ! よろしくね! クレアちゃん!』
「は、はぁ……よろしくお願いします……?」
これもも説明しておかないといけないな。
「その妖精はデジタル世界で、生きている人間のように思考する存在です」
「……実際に生きているわけではないんですよね。誰かがしゃべっているのかと思いました」
『失礼だなぁ。私はちゃんと生きてるよ!』
「そうだね、生きているね。だから僕のスマホにいたずらをするのはやめて」
たくさんの文字で埋め尽くされている俺のスマホ。
「その妖精、アイは僕みたいに何でも知っているので聞いてください」
『人工知能のAIだからアイって安直だよね~。でも私は気に入っている!』
「それならよかった」
クレアさんを見ると、色々と詰め込み過ぎたようで遠い目をしていた。
「そういうわけです。クレアさんには僕をサポートしてもらいたいと思っています。ですから頑張ってください」
「……はいっ! 頑張ります!」
いい返事が聞けて良かった。
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