全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
26 / 109
全能の爆誕

026:メッセージアプリ。

しおりを挟む
 無事にご納得してくれたクレアさんと仲良く手を繋いで屋敷へと戻ると、俺とクレアさんの家族が出迎えてくれた。

 ニコニコとしている俺と、湯気が出そうなくらいに顔を赤くしているクレアさんを見て、サグラモール家の皆様は驚かれていた。

 だがノエルさんだけが驚きながらも良くやったと言わんばかりの表情を俺に向けてきた。クレアさんの心の変化があったのが分かっているかのような感じだった。

 そして俺とクレアさんの婚約を正式なものとするために大人たちが何かしている間に、時間を潰すためにクレアさんを俺の部屋に招待していた。

「どうぞこちらですよ、お嬢さま」
「も、もう……やめてください。恥ずかしいです……」

 俺の本気度を分かってくれたクレアさんはどうやら俺の言葉を素直に聞いてくれるようになったようだ。

 だからこうしてエスコートしてもひねくれた返しじゃなくて恥ずかしがっている。

 ちなみに他の姉三人はシルヴィー姉さんの部屋に行っているようだったから、騒がしいのがなくて安心した。

 俺もクレアさんもおそらく静かな方が性に合っていると思う。

「ここが……アーサーさまのお部屋ですか」
「そうですよ。特に変わり映えのしない部屋ですよ」

 俺としては色々な物を置きたいところだけれど、まだ段階を踏まないと早いと思っている。

 少し段階を早めるためにグッズを置くのはありだと思っているけどね。

「そう言えば、クレアさんは『叛逆の英雄』を知っているのですか?」
「もちろん知っています。知らない人は貴族の中、ブリテン王国ではいないと思いますよ」

 本当にそうなんだな。だからこそ、『叛逆の英雄』をマンガにすれば売れると誰もが思っているわけか。

「それなら『叛逆の英雄』の中で誰が好きとかありますか?」
「……笑いませんか?」
「笑いませんよ」
「……絶対にですか?」
「絶対にですよ。笑う要素なんてありませんよ」

 どんなキャラを言われても笑うとかないだろ。

 そう思ってクレアさんの反応を見ていると、クレアさんは手をモジモジとさせて恥ずかしそうに答えてくれた。

「アニェスさまに……憧れています」
「アニェスって、女王さまでしたね」
「はい……」

 叛逆の英雄の主人公、ジャックが叛逆する前よりも前に叛逆を企てていた一国の女王。

 女性であろうと舐められることなく勇ましく立ち振る舞っていた女王がアニェスだったはず。

「いいですよね、アニェス。カッコいいですし、誰にも弱さを見せない強さを持っているところが特に」
「そうなんです! アニェスさまは誰に何と言われようとも自分を曲げず自信を持ち、誰よりも頑張っていた人なんです!」

 そういうことならクレアさんがアニェスが好きになる理由は分かるな。てかさまつけなのね。

 これ、クレアさんにグッズとかアニメとか見せたら発狂しそう。そういうクレアさんも見てみたいところですね。

「……引きましたか?」

 俺が生暖かい目でクレアさんを見ているとクレアさんはハッとして少し控えめに聞いてきた。

「いえ全く。好きなものについて語るのは素晴らしいことですよ。気にしなくていいです」
「ほ、本当ですか……?」
「もちろんです。そんなクレアさんのためにとっておきの絵を描きますね」

 不思議そうな顔をしているクレアさんをよそに、机の上に置いてあるペンと紙を取って作業を始める。

「これって……」

 会話の流れやかいている途中でも分かったクレアさんは俺の顔を見たりかきかけの絵を見たりと忙しなかった。

「はい。できましたよ。アニェスです」

 七つの宝石がついた王冠を被り、勇ましく立っているアニェスの絵が完成した。

 これは小説の中だけだとあまり外見が出てこないけど、俺のは過去視をしているからバッチリと再現している。

「……私が想像していた通りのアニェスさまです」
「それは良かったです。差し上げますよ、その絵」
「い、いいんですか!?」
「もちろん。そのためにかいたんですから」
「あ、ありがとうございます!」

 今日一番で大きくてテンションが高い声を聞いたな。

「そしてこれも差し上げます」
「これは……?」

 絵に続いて机の上に出したのはスマホ。

 どうせお母上様とゾーイさんのあの感じならスマホを渡すだろうから、クレアさんに渡しても問題はないだろう。問題はなくてもクレアさんは大丈夫だと感じる。

「この四角いものは何ですか?」
「それはスマホと言って、言葉や文字をスマホを持っている同士なら遠くからでもやり取りすることができる魔道具です」
「……どういうことですか?」
「まあ実際にやってみましょう」

 とりあえずメールのやり取りをしたり、毎度おなじみの部屋の対角線に立って電話するということをした。

「これ、すごいですね……」
「お父さんにも言われましたね。で、これをスムーズに行えるアプリを作りました」
「はぁ……? 先ほどの説明で頭がいっぱいなので、少し簡単にお願いします」

 この世界とは全く違う文明を持ってきたのだからそれはそうか。

「まああまり深く考えなくて大丈夫ですし、あまり理解しなくても大丈夫です。そういう便利なものがあるんだと思っていれば大丈夫です」
「分かりました。理解できるところは理解します」

 本当にいい子だなぁ。ルーシー姉さんだったら何も理解しようとしないのに。

 ま、ルーシー姉さんとクレアさんの性格のどちらがいいとかじゃなくて、いいところも悪いところもあるという話だな。

「アプリというものは特定の機能を使うために作られたものだと考えてくれたらいいですよ。カメラとかもそういう立ち位置ですね」
「それは理解しました」

 俺が一々他の人のスマホをいじってアプリを追加するのはメンドウだから、アプリストアをインターネット上で開設した。

「クレアさん、一度スマホにアプリを入れるためのアプリを追加しますね」
「……それは分かりません」

 知っていないとイメージしずらいのかもしれないから、作業しながら説明する。

「アプリを入れるアプリ、アプリストアって名付けているんですけど、そのアプリストアはアプリをスマホに入れるためのお店で、スマホの持ち主が好みのアプリを入れるための場所ですね。アプリストアが露店で、並べられている商品がアプリですね。これからアプリストアに少しずつアプリを増やしていく予定なので、ここからアプリを追加してください」
「露店と商品というので理解できました」
「はい、追加できました。なので早速操作しますか」
「はい」

 さっきスマホの説明をしていたからクレアさんは問題なく操作できるようだった。

「アプリストアを開きます」
「開きました」
「そこで、まだ一つしかないですけどメッセージアプリをタッチして、インストールってところをタッチすればアプリがスマホの中に追加されます」
「押しました」

 インストール自体は一秒もかからずに終わった。

「アプリをインストールしましたから、次は設定ですね」
「ふぅ……まだあるんですね……」
「もう少しですから頑張ってください!」
「はい……!」

 少し疲れてきているクレアさんだが、もう少しだけ頑張ってもらう。

「まずは自分の名前、このアプリ上での名前ですね。これは何でもいいですよ。僕はアーサーにしますけど、フルネームでも、気に入っている名前の人でも」
「……アニェスでもいいんですか?」
「構いませんよ。何ならアイコン、名前と一緒に設定できる写真が登録できるのでさっきのアニェスの絵を撮影して設定しますか?」
「します!」

 適当にやっていたけど、何だかんだ上手く繋がっているなぁ。

 クレアさんが名前をアニェスにして俺の絵を撮影してアイコン設定をしていた。

「これで設定は終わったので、次は友達追加ですね。メールで言えば相手のアドレスを交換と同じです」
「それは理解しました」

 俺がQRコードを出してクレアさんに読み込ませて俺とクレアさんは友達になった。

「このメッセージアプリは会話する部屋を作ることができます」
「部屋、ですか?」
「はい。個人間で行う部屋を作ったり、僕とクレアさん以外に、例えばルーシーお姉ちゃんを呼べば、三人で会話ができるようになります。僕とクレアさんとルーシーお姉ちゃんはその会話を見ることができて、その会話に参加することができるようになるわけです」
「……あまり、よく分からないです」

 これは説明するよりも実践した方が早いから、もう一台作って説明することにしよう。

 だけど何だか複数の足音がこちらに向かっているのが聞こえてきて、これはもしかしなくてもあの三人だと理解できた。

「アーサーくん! こんな面白いものをどうして隠していたの!?」

 扉を開けて入ってきたのはノエルさんで、手にはスマホが握られていた。

 そして背後にシルヴィー姉さんとルーシー姉さんがおり、ノエルさんを止めようとしていたのが見て取れた。

「いや、隠していたとかじゃなくてノエルさんとは今日会ったばかりなので」
「こんな面白いものをすぐに教えてくれないのは万死に値するんだよ!?」
「いや万死速すぎでしょ」
「……クレアにはすぐに渡しているみたいだね」

 目ざとくクレアさんが持っていたスマホを見るノエルさん。

「渡さないわけではないですよ。はい、どうぞ」
「さすが分かってる~。それでどうやって使うの?」
「それはですね――」

 また使い方をレクチャーして、アプリストアやメッセージアプリを三人に対して説明した。

 そして待ってくれていたクレアさんにグループを説明するために、五人のグループ『世界で初めてのグループ』ができて全員招待した。

「これでこのグループの会話は全員が見ることができるようになりました」
「逆に誰か特定の人に見られたくなければ、その人だけを抜いたグループを作ればいいということ?」
「そういうことですね」
「それならシルヴィーとルーシーを抜いたグループを作ろっと」
「ちょっと、何の恨みがあるのよ」
「意味不明」
「特にないよ」

 何だかんだこの三人は仲がいいのかと思いながらも、メッセージアプリが導入できて良かったと思った。

 あるメッセージが俺の個人間の部屋に届いた。

『よろしくお願いします、アーサーさま』

 スマホを口のところに持っていき視線をそらしているクレアさんからだった。

 何だよそれ、萌えかよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...