全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
23 / 109
全能の爆誕

023:ややこしい婚約。

しおりを挟む
 ルーシー姉さんから俺の婚約者が来るという話を聞いて、満足しているルーシー姉さんを部屋において今現在執務室へと駆け抜けていた。

 危ないですよという使用人の注意を一切聞かず、ただ走る。走らなければ叫びそうになる。

 そして執務室にたどり着き、一度深呼吸をして落ち着かせる。

「アーサーです」
「どうぞ」

 落ち着いて部屋の中に入ると、忙しく書類をさばいているお父上様の姿があった。

「どうしたんだい?」
「お父さん! 僕の婚約者が来るってホント!?」
「あぁ、そうだよ。誰かから聞いた?」
「ルーシーお姉ちゃんから聞いたよ」
「今日の夜にでも言おうと思っていたんだけど、丁度いいね」

 お父上様はペンを置き、俺はソファーに座った。

 ていうか思ったんだけど、何で決まった時に言ってくれないんだろうか。俺が一番当事者じゃん!

「アーサーの婚約者の話は少しややこしくなっているんだ」
「ややこしく?」
「まず、貴族というものは生まれたら許嫁が決められるのは知っているね?」
「うん、習った」
「アーサーが生まれた時もアーサーの婚約者はすぐに決まった。パーシヴァル家の次女、ディンドラン・パーシヴァルが婚約者として決まったよ」

 へぇ、そうなんだ。パーシヴァル家は知っているけどディンドランさんは知らない人だ。

「他にもガラハッド家やボールス家のご令嬢、第二王子であるギネヴィアさまも候補として挙がっていたけれど、一番相性が良さそうだという理由だったね」
「相性? そんなものが分かるの?」
「ボールス家はそういう未来予知染みた考えができるんだよ。だからアーサーとディンドランの婚約がいいと判断したみたいだね」

 何だよそれ。俺の全能で未来予知みたいなものか?

 でも俺は未来予知ができるけど未来予知は決してしない。それだと人生がつまらなくなるからな。

「それならパーシヴァル家が来るの?」
「そこで何事も起こらなければ良かったんだけどね……」

 起こったんですね。まあ起こっているからこうして話しているのか。

「少し前にシルヴィーの婚約者であるブリテン王国第一王子のアンリ・ペンドラゴンさまが駄々をこね始めたんだ」
「駄々?」
「『公爵家の令嬢はすべて俺の妻にする』ってね」

 えっ、アンリ・ペンドラゴンってそんなにやばい奴だったのか? そんな奴にシルヴィー姉さんを任せれるか? いいや、金玉を潰してやるか。

 何だよ、ハーレム志望かよ。普通に考えたら他の家と繋がりを強くしたり、政治的な側面があるのに自分の私利私欲のためにそんなことを言い出すとかヤバいだろ。

「しかも公爵家で一人ずつかと思いきや、本当にすべての令嬢、ウチだったらシルヴィーだけじゃなくてルーシーも妻にすると言っているんだ」
「……うーん、王子、だよね? ……第一王子……大丈夫、じゃないよね?」
「大丈夫じゃないだろうね。そんなアホなことはまかり通らず国王さまのおかげでさすがにそんなことにはならなかったんだが、今度は『アーサー・ランスロットが他の公爵家と婚約するのは許さない』と言ったんだ」
「……えっ? 僕?」
「そうだよ。全く、アーサーにまで迷惑をかけるなど許されることではないのに」

 どうして名指しされているんだよ。俺、あなたと一度も会ったことがありませんよ? それなのにどうしてそんなにヘイトが高いんですか?

 もしかしてディンドランのことが好きで、でもそれを悟られないために公爵家全員と婚約するって言っているとか? いや、それなら素直に言えばそうなりそうだ。

「それで僕が婚約できなくなったの?」
「いいや、そんなことを王子が決めれるわけがない」
「それならどうなったの?」
「どういうわけか、今度は王女であるギネヴィア・ペンドラゴンさまがアーサー・ランスロットと婚約したいと言い出したんだ」
「えっ……また僕?」

 どういうこと? あなたもお会いしたことありませんよね? それなのにどうしてそんなこと言い出しているんですか?

 もう俺の視点からは俺をからかっている第一王子と第二王子の構図しかないぞ。

「国王はギネヴィアさまに甘いからアーサーとの婚約を進めようとしたけど、さすがにそんなことができるわけもなく、アーサーを含む婚約話が色々と止まっているよ。……まあ、その隙に乗じてスザンヌが知己の貴族の女性の娘をアーサーの婚約者にしてしまったけどね」
「その人が……」
「サグラモール家の次女、クレア・サグラモールがアーサーの婚約者だよ」

 うわぁ……それでお父上様は疲れていたのか。俺のせい……俺が関わっているように見えて俺は一切何もしていないんだが。

 これも欠陥全能のせいなのか? それはあり得そうで怖いんだが。こんなことがずっと起きるってことだろ?

「そうなんだ……それで、いつ来るの?」
「明後日だよ。それまでに色々と準備をしておかないといけない」
「……お父さん、大丈夫? 疲れてない?」
「その優しさをスザンヌが少しでも持っていればいいんだけどね……」

 あー、やっぱりこの家を支配しているのはお母上様だったのか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...