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全能の爆誕
023:ややこしい婚約。
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ルーシー姉さんから俺の婚約者が来るという話を聞いて、満足しているルーシー姉さんを部屋において今現在執務室へと駆け抜けていた。
危ないですよという使用人の注意を一切聞かず、ただ走る。走らなければ叫びそうになる。
そして執務室にたどり着き、一度深呼吸をして落ち着かせる。
「アーサーです」
「どうぞ」
落ち着いて部屋の中に入ると、忙しく書類をさばいているお父上様の姿があった。
「どうしたんだい?」
「お父さん! 僕の婚約者が来るってホント!?」
「あぁ、そうだよ。誰かから聞いた?」
「ルーシーお姉ちゃんから聞いたよ」
「今日の夜にでも言おうと思っていたんだけど、丁度いいね」
お父上様はペンを置き、俺はソファーに座った。
ていうか思ったんだけど、何で決まった時に言ってくれないんだろうか。俺が一番当事者じゃん!
「アーサーの婚約者の話は少しややこしくなっているんだ」
「ややこしく?」
「まず、貴族というものは生まれたら許嫁が決められるのは知っているね?」
「うん、習った」
「アーサーが生まれた時もアーサーの婚約者はすぐに決まった。パーシヴァル家の次女、ディンドラン・パーシヴァルが婚約者として決まったよ」
へぇ、そうなんだ。パーシヴァル家は知っているけどディンドランさんは知らない人だ。
「他にもガラハッド家やボールス家のご令嬢、第二王子であるギネヴィアさまも候補として挙がっていたけれど、一番相性が良さそうだという理由だったね」
「相性? そんなものが分かるの?」
「ボールス家はそういう未来予知染みた考えができるんだよ。だからアーサーとディンドランの婚約がいいと判断したみたいだね」
何だよそれ。俺の全能で未来予知みたいなものか?
でも俺は未来予知ができるけど未来予知は決してしない。それだと人生がつまらなくなるからな。
「それならパーシヴァル家が来るの?」
「そこで何事も起こらなければ良かったんだけどね……」
起こったんですね。まあ起こっているからこうして話しているのか。
「少し前にシルヴィーの婚約者であるブリテン王国第一王子のアンリ・ペンドラゴンさまが駄々をこね始めたんだ」
「駄々?」
「『公爵家の令嬢はすべて俺の妻にする』ってね」
えっ、アンリ・ペンドラゴンってそんなにやばい奴だったのか? そんな奴にシルヴィー姉さんを任せれるか? いいや、金玉を潰してやるか。
何だよ、ハーレム志望かよ。普通に考えたら他の家と繋がりを強くしたり、政治的な側面があるのに自分の私利私欲のためにそんなことを言い出すとかヤバいだろ。
「しかも公爵家で一人ずつかと思いきや、本当にすべての令嬢、ウチだったらシルヴィーだけじゃなくてルーシーも妻にすると言っているんだ」
「……うーん、王子、だよね? ……第一王子……大丈夫、じゃないよね?」
「大丈夫じゃないだろうね。そんなアホなことはまかり通らず国王さまのおかげでさすがにそんなことにはならなかったんだが、今度は『アーサー・ランスロットが他の公爵家と婚約するのは許さない』と言ったんだ」
「……えっ? 僕?」
「そうだよ。全く、アーサーにまで迷惑をかけるなど許されることではないのに」
どうして名指しされているんだよ。俺、あなたと一度も会ったことがありませんよ? それなのにどうしてそんなにヘイトが高いんですか?
もしかしてディンドランのことが好きで、でもそれを悟られないために公爵家全員と婚約するって言っているとか? いや、それなら素直に言えばそうなりそうだ。
「それで僕が婚約できなくなったの?」
「いいや、そんなことを王子が決めれるわけがない」
「それならどうなったの?」
「どういうわけか、今度は王女であるギネヴィア・ペンドラゴンさまがアーサー・ランスロットと婚約したいと言い出したんだ」
「えっ……また僕?」
どういうこと? あなたもお会いしたことありませんよね? それなのにどうしてそんなこと言い出しているんですか?
もう俺の視点からは俺をからかっている第一王子と第二王子の構図しかないぞ。
「国王はギネヴィアさまに甘いからアーサーとの婚約を進めようとしたけど、さすがにそんなことができるわけもなく、アーサーを含む婚約話が色々と止まっているよ。……まあ、その隙に乗じてスザンヌが知己の貴族の女性の娘をアーサーの婚約者にしてしまったけどね」
「その人が……」
「サグラモール家の次女、クレア・サグラモールがアーサーの婚約者だよ」
うわぁ……それでお父上様は疲れていたのか。俺のせい……俺が関わっているように見えて俺は一切何もしていないんだが。
これも欠陥全能のせいなのか? それはあり得そうで怖いんだが。こんなことがずっと起きるってことだろ?
「そうなんだ……それで、いつ来るの?」
「明後日だよ。それまでに色々と準備をしておかないといけない」
「……お父さん、大丈夫? 疲れてない?」
「その優しさをスザンヌが少しでも持っていればいいんだけどね……」
あー、やっぱりこの家を支配しているのはお母上様だったのか。
危ないですよという使用人の注意を一切聞かず、ただ走る。走らなければ叫びそうになる。
そして執務室にたどり着き、一度深呼吸をして落ち着かせる。
「アーサーです」
「どうぞ」
落ち着いて部屋の中に入ると、忙しく書類をさばいているお父上様の姿があった。
「どうしたんだい?」
「お父さん! 僕の婚約者が来るってホント!?」
「あぁ、そうだよ。誰かから聞いた?」
「ルーシーお姉ちゃんから聞いたよ」
「今日の夜にでも言おうと思っていたんだけど、丁度いいね」
お父上様はペンを置き、俺はソファーに座った。
ていうか思ったんだけど、何で決まった時に言ってくれないんだろうか。俺が一番当事者じゃん!
「アーサーの婚約者の話は少しややこしくなっているんだ」
「ややこしく?」
「まず、貴族というものは生まれたら許嫁が決められるのは知っているね?」
「うん、習った」
「アーサーが生まれた時もアーサーの婚約者はすぐに決まった。パーシヴァル家の次女、ディンドラン・パーシヴァルが婚約者として決まったよ」
へぇ、そうなんだ。パーシヴァル家は知っているけどディンドランさんは知らない人だ。
「他にもガラハッド家やボールス家のご令嬢、第二王子であるギネヴィアさまも候補として挙がっていたけれど、一番相性が良さそうだという理由だったね」
「相性? そんなものが分かるの?」
「ボールス家はそういう未来予知染みた考えができるんだよ。だからアーサーとディンドランの婚約がいいと判断したみたいだね」
何だよそれ。俺の全能で未来予知みたいなものか?
でも俺は未来予知ができるけど未来予知は決してしない。それだと人生がつまらなくなるからな。
「それならパーシヴァル家が来るの?」
「そこで何事も起こらなければ良かったんだけどね……」
起こったんですね。まあ起こっているからこうして話しているのか。
「少し前にシルヴィーの婚約者であるブリテン王国第一王子のアンリ・ペンドラゴンさまが駄々をこね始めたんだ」
「駄々?」
「『公爵家の令嬢はすべて俺の妻にする』ってね」
えっ、アンリ・ペンドラゴンってそんなにやばい奴だったのか? そんな奴にシルヴィー姉さんを任せれるか? いいや、金玉を潰してやるか。
何だよ、ハーレム志望かよ。普通に考えたら他の家と繋がりを強くしたり、政治的な側面があるのに自分の私利私欲のためにそんなことを言い出すとかヤバいだろ。
「しかも公爵家で一人ずつかと思いきや、本当にすべての令嬢、ウチだったらシルヴィーだけじゃなくてルーシーも妻にすると言っているんだ」
「……うーん、王子、だよね? ……第一王子……大丈夫、じゃないよね?」
「大丈夫じゃないだろうね。そんなアホなことはまかり通らず国王さまのおかげでさすがにそんなことにはならなかったんだが、今度は『アーサー・ランスロットが他の公爵家と婚約するのは許さない』と言ったんだ」
「……えっ? 僕?」
「そうだよ。全く、アーサーにまで迷惑をかけるなど許されることではないのに」
どうして名指しされているんだよ。俺、あなたと一度も会ったことがありませんよ? それなのにどうしてそんなにヘイトが高いんですか?
もしかしてディンドランのことが好きで、でもそれを悟られないために公爵家全員と婚約するって言っているとか? いや、それなら素直に言えばそうなりそうだ。
「それで僕が婚約できなくなったの?」
「いいや、そんなことを王子が決めれるわけがない」
「それならどうなったの?」
「どういうわけか、今度は王女であるギネヴィア・ペンドラゴンさまがアーサー・ランスロットと婚約したいと言い出したんだ」
「えっ……また僕?」
どういうこと? あなたもお会いしたことありませんよね? それなのにどうしてそんなこと言い出しているんですか?
もう俺の視点からは俺をからかっている第一王子と第二王子の構図しかないぞ。
「国王はギネヴィアさまに甘いからアーサーとの婚約を進めようとしたけど、さすがにそんなことができるわけもなく、アーサーを含む婚約話が色々と止まっているよ。……まあ、その隙に乗じてスザンヌが知己の貴族の女性の娘をアーサーの婚約者にしてしまったけどね」
「その人が……」
「サグラモール家の次女、クレア・サグラモールがアーサーの婚約者だよ」
うわぁ……それでお父上様は疲れていたのか。俺のせい……俺が関わっているように見えて俺は一切何もしていないんだが。
これも欠陥全能のせいなのか? それはあり得そうで怖いんだが。こんなことがずっと起きるってことだろ?
「そうなんだ……それで、いつ来るの?」
「明後日だよ。それまでに色々と準備をしておかないといけない」
「……お父さん、大丈夫? 疲れてない?」
「その優しさをスザンヌが少しでも持っていればいいんだけどね……」
あー、やっぱりこの家を支配しているのはお母上様だったのか。
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