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全能の爆誕
022:ルーシー姉さんとの創作マンガ。
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スマホとマンガが一気に知られた日から数日が経った。
とりあえずスマホのことを知っている人は、あの日知った人以外にはいない。お父上様、お母上様、シルヴィー姉さん、ルーシー姉さん、俺、ベラ、グリーテンの七人だ。
まあ、そこからお母上様は増やすと思うが、そこら辺で世間にバレることはないと俺の直感が言っている。ただ噂話にはなるだろうなという予感はする。
マンガの方は早々に俺が表紙と背表紙を作ったことでグリーテンと複製魔法でまずは千部ほど作り上げたから、使用人が目に付くところに置いておくと仕事をせずに立ち読みする事件が多発してしまった。
マンガを秘密にしていたことで、ルーシー姉さんから何で黙っていたのかとありがたいお説教が長時間続けられ、シルヴィー姉さんからメールを溢れんばかりに受け取った。
今はもう秘密にしていることはないから少しだけ気持ちが軽くなった気がする、また次のことを始めるけどね。
そろそろ本格的にインターネットを使っていかないともったいない。まだ七台しかスマホがないにしても作っておくに越したことはない。
まずはメッセージアプリを作るか。通話とは違ってその人が今出れなくても言葉を伝えられるだけでもすごく強い。
メッセージアプリで動画や写真が送りやすくなるから、もう実装してもいいくらいか。
あぁ、せっかくスマホがあるんだから家庭用ゲーム機じゃなくてスマホでゲームを作れるのか。テンプレだらけのRPG、『叛逆の英雄』をゲームにすれば売れそう。
いやぁ、『叛逆の英雄』さまさまよ、これからガッポリと稼がせてもらいますぜ!
「アーサーさま。それはどんな感情のお顔ですか?」
「悪いことを考えている顔だよ」
スマホをいじりながら少し下衆い笑みを浮かべているとベラに突っ込まれた。
「何をお考えになられているのですか?」
「んー……スマホの新しい機能かな」
「アーサーさまの思考がどうなっているのか見てみたいですね。私ごときでは理解することができなさそうです」
俺はあちらの知識をこちらに持ってきているだけだからな。
「今度から何かお考えになられていれば、私にお伝えください。できるだけ秘密にしますから」
「分かった!」
いやぁ、ベラもベラでこういう手のことはあまり信用できないんだよなぁ。だってベラは俺の安全を第一に考えていて、俺を第一に考えているわけではない。
もちろん考えているが、もし俺が敵国に行きたいと言えば止めるだろうし、俺の安全が第一に、俺の意思が第二というところか。
今後のことを考えながらベラと会話していると、こちらに向かってきている足音が二つ聞こえてきた。
「アーサー! いる?」
「うん、いるよ」
ノックと共にルーシー姉さんの声が聞こえてきて、ベラが扉を開けた。
「今日は鍛錬がないから一緒に遊べるわね!」
入ってきたのはルーシー姉さんと、ルーシー姉さんの専属メイドであるジャンヌだった。
明るい茶髪をサイドテールの気だるそうな目をしているルーシー姉さんと同い年の女の子だ。
「どーも、アーサーさまー」
「うん、何だかジャンヌと会うのは久しぶりな気がするね」
「そーっすね。二ヶ月くらいっすね。アーサーさまは元気っすか?」
「元気だよ! ジャンヌは?」
「元気っすよー」
ジャンヌと軽く話していると、静かにキレている人がいた。もちろんベラだ。
「ジャンヌ。その喋り方をやめなさいと言ったはずよ?」
「そうっすか? 忘れたっす」
半笑いで答えるジャンヌに何かが切れる音がベラから聞こえてきた。
「その頭を喋り方と共にみっちりと仕込んであげるわ。あなたのご両親からは許可は得ているわ」
「……はーいっす」
ジャンヌはベラに連れて行かれてしまった。その際にジャンヌがルーシー姉さんに向けて親指を立ててルーシー姉さんも親指を立てて返していた。
これは間違いなく俺からベラを引き離すための作戦だ。案外ルーシー姉さんもお母上様の血を引いて考えている女の子だ。
ちなみにジャンヌの家は代々ランスロット家に仕えている従者の家系で、ジャンヌは生まれた時からランスロット家の子供たちに仕えることが定められていたらしい。
「これで二人で遊べるわね」
「ジャンヌは大丈夫かな?」
「大丈夫よ。あの子はベラに言われても何も気にしていないんだから」
それはそれで良くはないと思うのだが、まあそれもジャンヌの個性というものだな。個性って言葉便利だなぁ。
「そっか。それなら今日は何して遊ぶ?」
「今日はアーサーがマンガをかいているところを見せてほしくて来たのよ!」
「マンガを?」
「そう! お姉ちゃんはまだ見ていないって言ってたからお姉ちゃんより先に見たいわ。それにあの迫力がある『叛逆の英雄』の続きが見たいから!」
「うん、いいよ」
ルーシー姉さんがそれでいいのならまあそれでいいか。ちなみに問題の『叛逆の英雄』R18シーンはカットされており、R18が詰まった本を随時出す予定だから、ルーシー姉さんもシルヴィー姉さんも見ていない。
ペンと紙を用意していつもの場所に座ると、その横に椅子を持ってきてピッタリとくっ付いて座るルーシー姉さん。
その目はワクワクという感情しか見て取れないから、早めに取りかかろうとする。
「あれ? ルーシーお姉ちゃんは最新話まで見ているんだっけ?」
「最新話って、敵の攻撃でお互いの気持ちを知って終わるところでしょ?」
「うん、それならまだ読んでないところがあるから持ってくるね」
「本当!? 読むわ読むわ!」
執務室でかいたものをまだ読んでいないようだから机にしまってあるマンガを持ってくる。
「読むまで待っているから」
「速攻で読むわ!」
全容を知っている話とは言え、さすがに続いて読まないと俺は少し気持ち悪い感じがしていたから先にルーシー姉さんに読んでもらう。
ただ、小説で出版されている叛逆の英雄と俺が過去視で見て描いている叛逆の英雄では微妙に話が違っている。
それは正確に歴史を継承されていなかったのか、誰かが意図して継承されていなかったのか。
真実はどうでもいいか。今俺が真実を正しているのだから。それがいいかどうかは別としてね。
「読み終わったわ。これでいつでもかいていいわよ」
「うん、それじゃあかいていくね」
本当にすぐに読んだルーシー姉さんは、たぶん絵しか見ていないような気がするが、後から穴が開くくらいに読むだろう。
そしてジッと俺の手元を見ているルーシー姉さんを横に、マンガの続きをかき進める。
さすがに横にいるのがルーシー姉さんだからR18シーンはかけないが、それでもまだかかないといけないR18シーンはない。
もう若い男女が童貞卒業して処女喪失したら、それは毎晩猿のように盛っているが、それは別に必要じゃないR18シーンだ。かくシーンは物語に関わってくるものだけだ。
例えば、これから仲間になる女魔法使いと主人公がやっているところを幼馴染が見て、幼馴染と距離を置くのならかかなければならない。
「わぁ……アーサーはすごいわね」
「そう?」
「かいているところを初めて見たけど、こうやってかいているのね……」
俺がマンガをかいていることに目が離せないでいるルーシー姉さん。
そんなルーシー姉さんを微笑ましく思いながら黙々とかいていく。
「んっ……」
休みなしでかき続けられるのが全能の力だが、四歳がそんなことできるわけないからベラの時と同じように少しして伸びをして休憩をはさむ。
「休憩?」
「うん……少し体をほぐすね」
「それじゃあ紅茶を準備してくるわね!」
おぉ、ルーシー姉さんにそんなことができるのかと思ったが少し前に戻って来て、出てすぐのところに待機していたベラに頼んでいた。
説教されたジャンヌはベラの近くで言葉遣いを未だに直されている。
ベラがいれてくれたいつも通り美味しい紅茶を飲みながら、次のシーンをどうかこうか構築していく。
「ねぇ、アーサー」
「なに?」
俺がかき終えたマンガを手に取ってじっくりと見ているルーシー姉さんが俺に声をかけてきた。
「これって……他のことでもかけるの?」
「他のこと? 違う物語でもってこと?」
「そ。……例えば、私とアーサーが主人公の物語とか」
あっ、もしかしてルーシー姉さんはその話が見たくて言ったのか? 少し顔をそらしているから間違いない。
「かけるよ。今日はかなり進んだからその物語でもかこうか」
「本当!? さすがはアーサーね!」
「うん、それじゃあどういう物語にするか考えようか」
「えぇ……それはもうとびっきり面白い話にしてあげるわ……!」
ルーシー姉さんだから俺とルーシー姉さんが冒険する系が来るのかと思っていた。
「えっ……? も、もう一回聞いてもいい?」
「だ、だから! 大人になった私とアーサーが駆け落ちする物語!」
顔を真っ赤にして声を荒げるルーシー姉さんの口から出た言葉は、まさかの禁断の姉弟物語とは思わなかった。
しかもそれを顔を真っ赤にして言うあたりがかなり女子力が高い。……ただ、これを本当に考えていることじゃないよな? それならもう手遅れな気がする。
「駆け落ちの物語だね、うん、かいていこうか」
「え、えぇ……」
とにもかくにも、恥ずかしそうにしながらも想像力を膨らませているルーシー姉さんと細かいところを詰めていく。
その結果、こういう話になった。
ある貴族の家に引き取られたルーシーは、その家の唯一の男の子アーサーと幼い頃から仲が良かった。だがそれを面白く思わなかった性格が悪いアーサーの実の姉シルヴィーによって仲を引き裂かれ、ルーシーは遠くに嫁いでいくことになる
その際にアーサーが必ず迎えに行くと約束し、ルーシーはそれを信じて好きでもない男と結婚生活を続けていた。
数年が経ってもなおずっとアーサーを待っていたルーシーの前に、大人の姿になったアーサーが現れ、ルーシーをさらって二人で暮らしていく、という物語になった。
これ、シルヴィー姉さんが悪者になりすぎだろ。ルーシー姉さんはシルヴィー姉さんに恨みでもあるのかな?
あっ、ちゃんとこの作品はフィクションですって書いとかないと言い訳できなくなる。
「これでいい?」
「いいわよ……」
詰めていく中で俺がルーシー姉さんにどんどんと聞いていくから、ルーシー姉さんはもうずっと顔を赤くしてやり切ったという表情をしている。
「すぐにかくからね」
「えぇ……お願い……」
羞恥で疲れ切っているルーシー姉さんを休ませて、すぐにマンガをかき始める。
一応、『叛逆の英雄』とは違ってバトル主体じゃなくて恋愛主体だから少女マンガのように画風を少し変えてかいている。
でも……まあこれを売り出すわけではないからいいと思うけど、キャラ案はまるっきり現実世界と同じものを使っているから……何も起こらなければいいけど。
「ふぅ、できた」
ハッピーエンドまでかき終え、紅茶を飲んで一息つく。
「あっ、もうできたの!?」
「うん、できたよ。読んでみて」
「楽しみだわ……!」
俺から紙束を受け取って読み始めるルーシー姉さん。
「少しかき方を変えているのね」
「うん、そっちの方が雰囲気があっていると思って」
「この方がいいと思うわ」
ルーシー姉さんはワクワクとしながら読み進め、作中のシルヴィー姉さんにムカつきながらも読み、最後の方になるにつれ黙々と読み進めた。
そして最後まで読んだルーシー姉さんは泣いていた。
「ぐすっ、すごくよかったわぁ……」
「それは良かった。ハンカチいる?」
「いるぅ……」
俺からハンカチを受け取って流れる涙を拭っているルーシー姉さん。
うーむ、才能を使って泣けるように演出してみたのだが、まさかここまでルーシー姉さんが泣くとは思わなかった。自身が作った作品だから? 自身が登場しているからか?
「もぉ、私と駆け落ちするわよぉ……?」
「どうして⁉」
「これを見たらいける気がしてきたわぁ……」
「いや、意味わからないことを言ってないで泣き止んで」
えっ、泣いているから意味わからないことを言っているんだよな……? ウソだと言ってくれ。
「あー、久しぶりにこんなに泣いたわ」
泣き止んだルーシー姉さんは元通りのルーシー姉さんになった。
「これ、貰っていいの?」
「いいよ。ルーシーお姉ちゃんのためにかいたものだからね」
「ありがとう、大切にするわ!」
紙束を大事そうに腕で包み込んで満面の笑みを浮かべるルーシー姉さんを見て、やっぱりかいて良かったと思った。
「ねぇ、ルーシーお姉ちゃん」
「なに?」
「それ、誰かに見せるとかはしないよね?」
「こんなにいいものを見せちゃダメなの?」
それは相手によると思いますけど……まあいいか。
「ううん、構わないよ」
「ふふふっ、お母さんに見せようかしら? あっ、でも今度にしないといけないわね」
「どうして?」
「あれ? アーサー聞いていないの?」
「何を? 特に聞いてないけど」
「アーサーの婚約者がもうすぐ来るって」
「……えっ?」
超初耳なんですけど。
とりあえずスマホのことを知っている人は、あの日知った人以外にはいない。お父上様、お母上様、シルヴィー姉さん、ルーシー姉さん、俺、ベラ、グリーテンの七人だ。
まあ、そこからお母上様は増やすと思うが、そこら辺で世間にバレることはないと俺の直感が言っている。ただ噂話にはなるだろうなという予感はする。
マンガの方は早々に俺が表紙と背表紙を作ったことでグリーテンと複製魔法でまずは千部ほど作り上げたから、使用人が目に付くところに置いておくと仕事をせずに立ち読みする事件が多発してしまった。
マンガを秘密にしていたことで、ルーシー姉さんから何で黙っていたのかとありがたいお説教が長時間続けられ、シルヴィー姉さんからメールを溢れんばかりに受け取った。
今はもう秘密にしていることはないから少しだけ気持ちが軽くなった気がする、また次のことを始めるけどね。
そろそろ本格的にインターネットを使っていかないともったいない。まだ七台しかスマホがないにしても作っておくに越したことはない。
まずはメッセージアプリを作るか。通話とは違ってその人が今出れなくても言葉を伝えられるだけでもすごく強い。
メッセージアプリで動画や写真が送りやすくなるから、もう実装してもいいくらいか。
あぁ、せっかくスマホがあるんだから家庭用ゲーム機じゃなくてスマホでゲームを作れるのか。テンプレだらけのRPG、『叛逆の英雄』をゲームにすれば売れそう。
いやぁ、『叛逆の英雄』さまさまよ、これからガッポリと稼がせてもらいますぜ!
「アーサーさま。それはどんな感情のお顔ですか?」
「悪いことを考えている顔だよ」
スマホをいじりながら少し下衆い笑みを浮かべているとベラに突っ込まれた。
「何をお考えになられているのですか?」
「んー……スマホの新しい機能かな」
「アーサーさまの思考がどうなっているのか見てみたいですね。私ごときでは理解することができなさそうです」
俺はあちらの知識をこちらに持ってきているだけだからな。
「今度から何かお考えになられていれば、私にお伝えください。できるだけ秘密にしますから」
「分かった!」
いやぁ、ベラもベラでこういう手のことはあまり信用できないんだよなぁ。だってベラは俺の安全を第一に考えていて、俺を第一に考えているわけではない。
もちろん考えているが、もし俺が敵国に行きたいと言えば止めるだろうし、俺の安全が第一に、俺の意思が第二というところか。
今後のことを考えながらベラと会話していると、こちらに向かってきている足音が二つ聞こえてきた。
「アーサー! いる?」
「うん、いるよ」
ノックと共にルーシー姉さんの声が聞こえてきて、ベラが扉を開けた。
「今日は鍛錬がないから一緒に遊べるわね!」
入ってきたのはルーシー姉さんと、ルーシー姉さんの専属メイドであるジャンヌだった。
明るい茶髪をサイドテールの気だるそうな目をしているルーシー姉さんと同い年の女の子だ。
「どーも、アーサーさまー」
「うん、何だかジャンヌと会うのは久しぶりな気がするね」
「そーっすね。二ヶ月くらいっすね。アーサーさまは元気っすか?」
「元気だよ! ジャンヌは?」
「元気っすよー」
ジャンヌと軽く話していると、静かにキレている人がいた。もちろんベラだ。
「ジャンヌ。その喋り方をやめなさいと言ったはずよ?」
「そうっすか? 忘れたっす」
半笑いで答えるジャンヌに何かが切れる音がベラから聞こえてきた。
「その頭を喋り方と共にみっちりと仕込んであげるわ。あなたのご両親からは許可は得ているわ」
「……はーいっす」
ジャンヌはベラに連れて行かれてしまった。その際にジャンヌがルーシー姉さんに向けて親指を立ててルーシー姉さんも親指を立てて返していた。
これは間違いなく俺からベラを引き離すための作戦だ。案外ルーシー姉さんもお母上様の血を引いて考えている女の子だ。
ちなみにジャンヌの家は代々ランスロット家に仕えている従者の家系で、ジャンヌは生まれた時からランスロット家の子供たちに仕えることが定められていたらしい。
「これで二人で遊べるわね」
「ジャンヌは大丈夫かな?」
「大丈夫よ。あの子はベラに言われても何も気にしていないんだから」
それはそれで良くはないと思うのだが、まあそれもジャンヌの個性というものだな。個性って言葉便利だなぁ。
「そっか。それなら今日は何して遊ぶ?」
「今日はアーサーがマンガをかいているところを見せてほしくて来たのよ!」
「マンガを?」
「そう! お姉ちゃんはまだ見ていないって言ってたからお姉ちゃんより先に見たいわ。それにあの迫力がある『叛逆の英雄』の続きが見たいから!」
「うん、いいよ」
ルーシー姉さんがそれでいいのならまあそれでいいか。ちなみに問題の『叛逆の英雄』R18シーンはカットされており、R18が詰まった本を随時出す予定だから、ルーシー姉さんもシルヴィー姉さんも見ていない。
ペンと紙を用意していつもの場所に座ると、その横に椅子を持ってきてピッタリとくっ付いて座るルーシー姉さん。
その目はワクワクという感情しか見て取れないから、早めに取りかかろうとする。
「あれ? ルーシーお姉ちゃんは最新話まで見ているんだっけ?」
「最新話って、敵の攻撃でお互いの気持ちを知って終わるところでしょ?」
「うん、それならまだ読んでないところがあるから持ってくるね」
「本当!? 読むわ読むわ!」
執務室でかいたものをまだ読んでいないようだから机にしまってあるマンガを持ってくる。
「読むまで待っているから」
「速攻で読むわ!」
全容を知っている話とは言え、さすがに続いて読まないと俺は少し気持ち悪い感じがしていたから先にルーシー姉さんに読んでもらう。
ただ、小説で出版されている叛逆の英雄と俺が過去視で見て描いている叛逆の英雄では微妙に話が違っている。
それは正確に歴史を継承されていなかったのか、誰かが意図して継承されていなかったのか。
真実はどうでもいいか。今俺が真実を正しているのだから。それがいいかどうかは別としてね。
「読み終わったわ。これでいつでもかいていいわよ」
「うん、それじゃあかいていくね」
本当にすぐに読んだルーシー姉さんは、たぶん絵しか見ていないような気がするが、後から穴が開くくらいに読むだろう。
そしてジッと俺の手元を見ているルーシー姉さんを横に、マンガの続きをかき進める。
さすがに横にいるのがルーシー姉さんだからR18シーンはかけないが、それでもまだかかないといけないR18シーンはない。
もう若い男女が童貞卒業して処女喪失したら、それは毎晩猿のように盛っているが、それは別に必要じゃないR18シーンだ。かくシーンは物語に関わってくるものだけだ。
例えば、これから仲間になる女魔法使いと主人公がやっているところを幼馴染が見て、幼馴染と距離を置くのならかかなければならない。
「わぁ……アーサーはすごいわね」
「そう?」
「かいているところを初めて見たけど、こうやってかいているのね……」
俺がマンガをかいていることに目が離せないでいるルーシー姉さん。
そんなルーシー姉さんを微笑ましく思いながら黙々とかいていく。
「んっ……」
休みなしでかき続けられるのが全能の力だが、四歳がそんなことできるわけないからベラの時と同じように少しして伸びをして休憩をはさむ。
「休憩?」
「うん……少し体をほぐすね」
「それじゃあ紅茶を準備してくるわね!」
おぉ、ルーシー姉さんにそんなことができるのかと思ったが少し前に戻って来て、出てすぐのところに待機していたベラに頼んでいた。
説教されたジャンヌはベラの近くで言葉遣いを未だに直されている。
ベラがいれてくれたいつも通り美味しい紅茶を飲みながら、次のシーンをどうかこうか構築していく。
「ねぇ、アーサー」
「なに?」
俺がかき終えたマンガを手に取ってじっくりと見ているルーシー姉さんが俺に声をかけてきた。
「これって……他のことでもかけるの?」
「他のこと? 違う物語でもってこと?」
「そ。……例えば、私とアーサーが主人公の物語とか」
あっ、もしかしてルーシー姉さんはその話が見たくて言ったのか? 少し顔をそらしているから間違いない。
「かけるよ。今日はかなり進んだからその物語でもかこうか」
「本当!? さすがはアーサーね!」
「うん、それじゃあどういう物語にするか考えようか」
「えぇ……それはもうとびっきり面白い話にしてあげるわ……!」
ルーシー姉さんだから俺とルーシー姉さんが冒険する系が来るのかと思っていた。
「えっ……? も、もう一回聞いてもいい?」
「だ、だから! 大人になった私とアーサーが駆け落ちする物語!」
顔を真っ赤にして声を荒げるルーシー姉さんの口から出た言葉は、まさかの禁断の姉弟物語とは思わなかった。
しかもそれを顔を真っ赤にして言うあたりがかなり女子力が高い。……ただ、これを本当に考えていることじゃないよな? それならもう手遅れな気がする。
「駆け落ちの物語だね、うん、かいていこうか」
「え、えぇ……」
とにもかくにも、恥ずかしそうにしながらも想像力を膨らませているルーシー姉さんと細かいところを詰めていく。
その結果、こういう話になった。
ある貴族の家に引き取られたルーシーは、その家の唯一の男の子アーサーと幼い頃から仲が良かった。だがそれを面白く思わなかった性格が悪いアーサーの実の姉シルヴィーによって仲を引き裂かれ、ルーシーは遠くに嫁いでいくことになる
その際にアーサーが必ず迎えに行くと約束し、ルーシーはそれを信じて好きでもない男と結婚生活を続けていた。
数年が経ってもなおずっとアーサーを待っていたルーシーの前に、大人の姿になったアーサーが現れ、ルーシーをさらって二人で暮らしていく、という物語になった。
これ、シルヴィー姉さんが悪者になりすぎだろ。ルーシー姉さんはシルヴィー姉さんに恨みでもあるのかな?
あっ、ちゃんとこの作品はフィクションですって書いとかないと言い訳できなくなる。
「これでいい?」
「いいわよ……」
詰めていく中で俺がルーシー姉さんにどんどんと聞いていくから、ルーシー姉さんはもうずっと顔を赤くしてやり切ったという表情をしている。
「すぐにかくからね」
「えぇ……お願い……」
羞恥で疲れ切っているルーシー姉さんを休ませて、すぐにマンガをかき始める。
一応、『叛逆の英雄』とは違ってバトル主体じゃなくて恋愛主体だから少女マンガのように画風を少し変えてかいている。
でも……まあこれを売り出すわけではないからいいと思うけど、キャラ案はまるっきり現実世界と同じものを使っているから……何も起こらなければいいけど。
「ふぅ、できた」
ハッピーエンドまでかき終え、紅茶を飲んで一息つく。
「あっ、もうできたの!?」
「うん、できたよ。読んでみて」
「楽しみだわ……!」
俺から紙束を受け取って読み始めるルーシー姉さん。
「少しかき方を変えているのね」
「うん、そっちの方が雰囲気があっていると思って」
「この方がいいと思うわ」
ルーシー姉さんはワクワクとしながら読み進め、作中のシルヴィー姉さんにムカつきながらも読み、最後の方になるにつれ黙々と読み進めた。
そして最後まで読んだルーシー姉さんは泣いていた。
「ぐすっ、すごくよかったわぁ……」
「それは良かった。ハンカチいる?」
「いるぅ……」
俺からハンカチを受け取って流れる涙を拭っているルーシー姉さん。
うーむ、才能を使って泣けるように演出してみたのだが、まさかここまでルーシー姉さんが泣くとは思わなかった。自身が作った作品だから? 自身が登場しているからか?
「もぉ、私と駆け落ちするわよぉ……?」
「どうして⁉」
「これを見たらいける気がしてきたわぁ……」
「いや、意味わからないことを言ってないで泣き止んで」
えっ、泣いているから意味わからないことを言っているんだよな……? ウソだと言ってくれ。
「あー、久しぶりにこんなに泣いたわ」
泣き止んだルーシー姉さんは元通りのルーシー姉さんになった。
「これ、貰っていいの?」
「いいよ。ルーシーお姉ちゃんのためにかいたものだからね」
「ありがとう、大切にするわ!」
紙束を大事そうに腕で包み込んで満面の笑みを浮かべるルーシー姉さんを見て、やっぱりかいて良かったと思った。
「ねぇ、ルーシーお姉ちゃん」
「なに?」
「それ、誰かに見せるとかはしないよね?」
「こんなにいいものを見せちゃダメなの?」
それは相手によると思いますけど……まあいいか。
「ううん、構わないよ」
「ふふふっ、お母さんに見せようかしら? あっ、でも今度にしないといけないわね」
「どうして?」
「あれ? アーサー聞いていないの?」
「何を? 特に聞いてないけど」
「アーサーの婚約者がもうすぐ来るって」
「……えっ?」
超初耳なんですけど。
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