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全能の爆誕
018:スマホ、バレる。
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昨日は丸一日を使ってシルヴィー姉さんとルーシー姉さんによって俺の撮影会が行われた。
最初は少しカメラに俺を収めることに苦労していたが、丸一日使ったからかなり上達していた。たぶん前世であまるカメラを使っていなかった俺より上手くなっていたんじゃないのだろうか。
スマホの他に、カメラを作り出せばそれはそれで売りだせ……いや、正確に情報が手に入るという悪いことに使われそうだ。
この世界では前世の地球のような文明には上手く発達しない。魔法という便利な手段があるからこそ、文明を進化させようとは前世の地球よりかは思わないのだろう。
まあこの世界が文明を築き始めてどれくらい経過しているかは分からないから何とも言えないが。
スマホもお父上様とお母上様に開示するにしても、よく考えて作らないといけない気もするが、結局すべてのスマホは俺が掌握しているからあまり問題ではないか。
それにお母上様に開示したらお茶会のメンバーに配るために危険なんて関係なしに作ってと言われそう。
さてさて、今日はルフェイの授業が一発目にある。
もう固有魔法(偽)である『創造』をルフェイさんに見せた方がシルヴィー姉さんとルーシー姉さんのスマホがバレても問題ない気がする。
後々バレてどうして黙っていたんだと言われた方がメンドウか……?
そうこう考えている間に魔導室の前にたどり着き、少し早いが魔導室の扉をノックして声をかける。
「どうぞ」
ルフェイさんの声が中から聞こえ、魔導室に入る。
「あれ? シルヴィーお姉ちゃん?」
こちらを向いて妖艶な笑みを浮かべているルフェイが立っていて、俺に視線を向けるなり申し訳なさそうな顔をしながら視線をそらしたシルヴィー姉さんがいた。
まだ魔法を習い始めの俺が一緒に授業を受けるわけがない。ましてやシルヴィー姉さんだ。
「いらっしゃいませ、アーサーさま」
「うん……どうしてシルヴィーお姉ちゃんが?」
シルヴィー姉さんが申し訳なさそうな顔をしていたということは……まさか。
「ふふっ、それはこれです!」
「……あー、バレちゃったか」
手を後ろで隠していたルフェイさんが手を前に持ってくるとシルヴィー姉さんのスマホが握られていた。
……まあ、こちらが暴露する前にバレるかもしれないと思っていたが、まさかお父上様とお母上様じゃなくて部外者であるルフェイにバレるとは思わなかったな。
「心配しないでください、私はこれを言いふらすつもりはありません。危険な物であることは分かっていますから」
「そうなの?」
「はい。口封じ、口止め料になりますが……このスマホを私専用に作ってくれませんか?」
「それくらいなら喜んでやるよ!」
「ありがとうございます!」
ルフェイなら、いいか。俺の第六感、全能がこの人は大丈夫だと言っているから、ルフェイさんに渡してしまおう。
スマホを持ち主に返しているルフェイを尻目に、俺はスマホを作り上げた。
「今から作らなくても大丈夫です。時間がある時にでも――」
「えっ、もうできたよ?」
「へ?」
どれくらいかかると思っていたのか、素っ頓狂な声を上げるルフェイに、一瞬で出来上がった同じ型のスマホを差し出した。
「……も、もう一度見せてくれませんか?」
「えっ、でももう作り終わったし……」
「お願いします! 何でもしますから!」
ルフェイが両手を合わせてお願いしてくるのだが……まあいつか出てくる誰かに渡せばいいか。
それよりも何でもしますという言葉が美女から出るのは非常に需要がありますね。
不用意にそういう言葉は発さない方がいいでしょう。
「口止めだから、また作るね」
「本当にありがとう!」
そう言って俺に抱き着いてくるルフェイの胸の谷間にジャストフィットする俺の頭。
うむ、よきかなよきかな。
いつまで続くんだと思っていたが、何とこれを止めに入ったのはシルヴィー姉さんだった。
「……ダメ」
俺の服の裾をつかみ、ルフェイに圧をかけながら言葉を発するシルヴィー姉さん。
「ふふっ、分かりました」
そんなシルヴィー姉さんを微笑ましいものを見る目で見ながら解放するルフェイ。
俺としてはかなり天国を満喫できたから良しとしよう。
「じゃあやるね」
「いつでも来てください!」
俺が手のひらを出すと、ルフェイが凝視してきて、それにつられてシルヴィー姉さんも俺の手のひらを見ている。
というかシルヴィー姉さんも俺のスマホを作り出すのを見るのも初めてか。
そんな中でいつものように手のひらから一瞬でスマホを作り出して見せた。
「はい、できたよ!」
「えっ……どうなっているの? ……全く分からないわ。固有魔法であることは間違いないけど……」
俺の手を凝視していたルフェイはそのスマホを未だに凝視しながら一人でブツブツ言っている。
「あの、ルフェイ……?」
「あぁ、ごめんなさい。このスマホを借りてもいいですか?」
「うん、もうこれはルフェイのモノだから大丈夫だよ」
「もしかして、その一つ余っていますか?」
「えっ、うん、今は余ってるよ」
「それならもう一つもください! お金ならいくらでもお支払いしますから! 何ならアヴァロンのリンゴも付けますよ!」
「あっ、はい。どうぞ」
あまりにもルフェイが必死だから、引きながらルフェイに二台のスマホを渡した。
「どうなっているの……? 二人のものと一緒だけど、全く構造が理解できない。……分解して中身を確認するしかないわね……」
俺の魔法の授業はどこにやら、ルフェイは一人の世界に入ってしまった。
そうなれば俺の視線を向ける先はシルヴィー姉さんしかいないが視線は合わず、スマホをいじっていた。
何をしているんだと思っていると、俺のスマホにシルヴィー姉さんからメールが届いた。
『ごめんなさいアーサー。私の不注意が原因』
えっ、もしかしてこれで会話を成立させるつもりなのか?
前世のアニメキャラみたいなことをしているな……。この異世界で目の前にいるのにメールで会話するのはシルヴィー姉さんしかいないよ。
どうせだから俺もメールでかえそ。
『ううん、気にしなくていいよ。ルフェイならバレてもいいかなって思っているから。でもどうしてバレたの?』
俺がそう返すと、シルヴィー姉さんはかなり早くスマホに文字を打ち込んで返信してきた。
『グリーテンが部屋に来た時に机の上に置きっぱなしだったから見つかった』
『本当に不注意だったんだ。でも気にしなくていいよ』
『これはそう簡単に許されることではない。罰を受けるべき』
『スマホ没収にする?』
『勘弁して』
『それなら僕と目を合わせて喋るとか?』
『無理』
『それ以外には特に思いつかないから、思いついた時に言うね』
『そうしてくれた方が私は楽』
まあそうだよな。こういう時に罰を与えられた方がいいのだろう。
今回の件はむしろプラスに捉えられる。俺の目標のためなら早め早めに行動しても時間が足りないくらいだし、それを考えれば次のステップにも進めやすくなる。
俺が今考えている娯楽は『叛逆の英雄』のマンガ。
今絶賛書いている『叛逆の英雄』のマンガを皮切りにそのアニメを作ったり、売れるようだったらグッズも作ればいい。
それにゲーム機などの他の娯楽を売りだせば、たぶんランスロット家は莫大な富を得ることができるだろう。お金はいくらあっても問題はない。
てか地位が上がれば上がるだけ公国になる可能性が出てくるのか。それは嫌だな。俺が王さまになるんだろ? 無理だな。
それから前世で現代のものじゃなくても俺の固有魔法を『創造』と伝えるのだから、高価な魔道具をポンポンと売り出したとしても問題ない。
それは今後の流れ次第だな。
「面白いわね……!」
ブツブツ言うのをやめ、こちらに迫ってくるルフェイ。その顔は興奮を隠しきれず、まるで子供のような楽しそうな表情をしている。
「これは興味深いわね! 構造を確認したけど全く分からなかったわ! こんなものはこの世界でアーサーさま以外に作れないものだわ! こんな小さなもの中にこんな細かく意味が分からないものが詰まっているなんて、夢のようだわ! 今まで生きてきた中で一番興奮しているわね、私! これで遠くの人と話せたり外の光景を記録できるなんて、すごすぎるわ!」
もうこれ以上興奮することはないというくらいに興奮して俺に詰め寄ってくるルフェイ。興奮しすぎて敬語を忘れて話しているが、むしろこちらの方が俺的にはいい。
二台あるから一台を分解したようで、机の上で部品が散乱している。
「私、ここに永住するわ。こんな興味深いものが出てくるのなら、ここに永住しても悔いはないわね」
そこまで言わせます? このスマホ。それにしても魔法が得意な人が、科学に興味が行くとは思わなかったなぁ。
前世の科学も調べることができる。むしろ前世の科学以上の空想上の科学も調べることができるから、そういう本を出せばどうなるんだろうか。
『グリーテンは未知が好き。それに長生きしている分、ほぼこの世界のことを知り尽くしているからこういう真新しい未知には弱い』
シルヴィー姉さんからのメールを見て、好都合だと判断した。
「ねぇ、ルフェイ」
「ルフェイじゃなくてグリーテンって呼んでください、アーサーさま」
「それなら僕もアーサーでいいし、口調はもっと軽くしてもいいよ。グリーテン」
「そう? それなら遠慮なくさせてもらうわ。それでどうしたのかしら?」
「うん。僕の固有魔法って、たぶん思い描いたものを何でも作り出せる能力だと思う」
「『創造』ってこと? そのスマホを作るという能力じゃなくて?」
「昨日もできたんだけど……」
俺は再び手のひらを前に出して、お洒落に金でできたワイングラスよりも二回りくらい大きなものを出した。
「グラス、かしら? 確かにこれ……ウソでしょ!?」
グリーテンは俺が持っているグラスを少し見て、これが何なのか気が付いた様子で俺からグラスをひったくってじっくりと見ている。
『何を?』
三文字くらいならメールで送ってこないでほしいと思いながらも、口頭で答えた。
「ワインが出るグラスだよ」
『魔道具ってこと?』
「そうなるね」
『さすがは私の弟』
シルヴィー姉さんとは視線が合わないがかなり驚いていることは分かった。
対するグラスを持っているグリーテンさんはまたブツブツ言っている。
「なに、この組み込まれている魔法陣は? 素晴らしすぎる。それに無駄が一切ない美しい魔法回路。素材にも一切の損傷がない。しかもこの効率の良さ。……効果は」
グラスに魔力を流し込んで中にワインが出てきたことで、それをグリーテンは嗜むように一口口にした。
「……最高ね」
一言そう言っただけだったグリーテンだが、それがとてつもなく最高だということに俺は分かっていた。
「アーサー」
「なに?」
グリーテンが近づいてきてシルヴィー姉さんは俺の前に来て警戒していたが、その抵抗はむなしくグリーテンは俺を転移魔法で移動させて胸の谷間に頭を入れてくれた。
「私たち結婚しましょう! いえあなたの愛人にするだけでいいわ、もうこんなに面白いことをしてくれる人はこれから誰も現れないわ!」
「おばさんにアーサーはもったいない」
一生懸命引き剥がそうとしているシルヴィー姉さんだが、今回は本当に俺を引き剥がせないでいるようだった。
そしておばさんと言ったシルヴィー姉さんに呪いをかけたりと、色々と混沌としていた。
その後ベラが来るまでこの攻防は続いて、俺はグリーテンさんにずっと口説かれていた。
最初は少しカメラに俺を収めることに苦労していたが、丸一日使ったからかなり上達していた。たぶん前世であまるカメラを使っていなかった俺より上手くなっていたんじゃないのだろうか。
スマホの他に、カメラを作り出せばそれはそれで売りだせ……いや、正確に情報が手に入るという悪いことに使われそうだ。
この世界では前世の地球のような文明には上手く発達しない。魔法という便利な手段があるからこそ、文明を進化させようとは前世の地球よりかは思わないのだろう。
まあこの世界が文明を築き始めてどれくらい経過しているかは分からないから何とも言えないが。
スマホもお父上様とお母上様に開示するにしても、よく考えて作らないといけない気もするが、結局すべてのスマホは俺が掌握しているからあまり問題ではないか。
それにお母上様に開示したらお茶会のメンバーに配るために危険なんて関係なしに作ってと言われそう。
さてさて、今日はルフェイの授業が一発目にある。
もう固有魔法(偽)である『創造』をルフェイさんに見せた方がシルヴィー姉さんとルーシー姉さんのスマホがバレても問題ない気がする。
後々バレてどうして黙っていたんだと言われた方がメンドウか……?
そうこう考えている間に魔導室の前にたどり着き、少し早いが魔導室の扉をノックして声をかける。
「どうぞ」
ルフェイさんの声が中から聞こえ、魔導室に入る。
「あれ? シルヴィーお姉ちゃん?」
こちらを向いて妖艶な笑みを浮かべているルフェイが立っていて、俺に視線を向けるなり申し訳なさそうな顔をしながら視線をそらしたシルヴィー姉さんがいた。
まだ魔法を習い始めの俺が一緒に授業を受けるわけがない。ましてやシルヴィー姉さんだ。
「いらっしゃいませ、アーサーさま」
「うん……どうしてシルヴィーお姉ちゃんが?」
シルヴィー姉さんが申し訳なさそうな顔をしていたということは……まさか。
「ふふっ、それはこれです!」
「……あー、バレちゃったか」
手を後ろで隠していたルフェイさんが手を前に持ってくるとシルヴィー姉さんのスマホが握られていた。
……まあ、こちらが暴露する前にバレるかもしれないと思っていたが、まさかお父上様とお母上様じゃなくて部外者であるルフェイにバレるとは思わなかったな。
「心配しないでください、私はこれを言いふらすつもりはありません。危険な物であることは分かっていますから」
「そうなの?」
「はい。口封じ、口止め料になりますが……このスマホを私専用に作ってくれませんか?」
「それくらいなら喜んでやるよ!」
「ありがとうございます!」
ルフェイなら、いいか。俺の第六感、全能がこの人は大丈夫だと言っているから、ルフェイさんに渡してしまおう。
スマホを持ち主に返しているルフェイを尻目に、俺はスマホを作り上げた。
「今から作らなくても大丈夫です。時間がある時にでも――」
「えっ、もうできたよ?」
「へ?」
どれくらいかかると思っていたのか、素っ頓狂な声を上げるルフェイに、一瞬で出来上がった同じ型のスマホを差し出した。
「……も、もう一度見せてくれませんか?」
「えっ、でももう作り終わったし……」
「お願いします! 何でもしますから!」
ルフェイが両手を合わせてお願いしてくるのだが……まあいつか出てくる誰かに渡せばいいか。
それよりも何でもしますという言葉が美女から出るのは非常に需要がありますね。
不用意にそういう言葉は発さない方がいいでしょう。
「口止めだから、また作るね」
「本当にありがとう!」
そう言って俺に抱き着いてくるルフェイの胸の谷間にジャストフィットする俺の頭。
うむ、よきかなよきかな。
いつまで続くんだと思っていたが、何とこれを止めに入ったのはシルヴィー姉さんだった。
「……ダメ」
俺の服の裾をつかみ、ルフェイに圧をかけながら言葉を発するシルヴィー姉さん。
「ふふっ、分かりました」
そんなシルヴィー姉さんを微笑ましいものを見る目で見ながら解放するルフェイ。
俺としてはかなり天国を満喫できたから良しとしよう。
「じゃあやるね」
「いつでも来てください!」
俺が手のひらを出すと、ルフェイが凝視してきて、それにつられてシルヴィー姉さんも俺の手のひらを見ている。
というかシルヴィー姉さんも俺のスマホを作り出すのを見るのも初めてか。
そんな中でいつものように手のひらから一瞬でスマホを作り出して見せた。
「はい、できたよ!」
「えっ……どうなっているの? ……全く分からないわ。固有魔法であることは間違いないけど……」
俺の手を凝視していたルフェイはそのスマホを未だに凝視しながら一人でブツブツ言っている。
「あの、ルフェイ……?」
「あぁ、ごめんなさい。このスマホを借りてもいいですか?」
「うん、もうこれはルフェイのモノだから大丈夫だよ」
「もしかして、その一つ余っていますか?」
「えっ、うん、今は余ってるよ」
「それならもう一つもください! お金ならいくらでもお支払いしますから! 何ならアヴァロンのリンゴも付けますよ!」
「あっ、はい。どうぞ」
あまりにもルフェイが必死だから、引きながらルフェイに二台のスマホを渡した。
「どうなっているの……? 二人のものと一緒だけど、全く構造が理解できない。……分解して中身を確認するしかないわね……」
俺の魔法の授業はどこにやら、ルフェイは一人の世界に入ってしまった。
そうなれば俺の視線を向ける先はシルヴィー姉さんしかいないが視線は合わず、スマホをいじっていた。
何をしているんだと思っていると、俺のスマホにシルヴィー姉さんからメールが届いた。
『ごめんなさいアーサー。私の不注意が原因』
えっ、もしかしてこれで会話を成立させるつもりなのか?
前世のアニメキャラみたいなことをしているな……。この異世界で目の前にいるのにメールで会話するのはシルヴィー姉さんしかいないよ。
どうせだから俺もメールでかえそ。
『ううん、気にしなくていいよ。ルフェイならバレてもいいかなって思っているから。でもどうしてバレたの?』
俺がそう返すと、シルヴィー姉さんはかなり早くスマホに文字を打ち込んで返信してきた。
『グリーテンが部屋に来た時に机の上に置きっぱなしだったから見つかった』
『本当に不注意だったんだ。でも気にしなくていいよ』
『これはそう簡単に許されることではない。罰を受けるべき』
『スマホ没収にする?』
『勘弁して』
『それなら僕と目を合わせて喋るとか?』
『無理』
『それ以外には特に思いつかないから、思いついた時に言うね』
『そうしてくれた方が私は楽』
まあそうだよな。こういう時に罰を与えられた方がいいのだろう。
今回の件はむしろプラスに捉えられる。俺の目標のためなら早め早めに行動しても時間が足りないくらいだし、それを考えれば次のステップにも進めやすくなる。
俺が今考えている娯楽は『叛逆の英雄』のマンガ。
今絶賛書いている『叛逆の英雄』のマンガを皮切りにそのアニメを作ったり、売れるようだったらグッズも作ればいい。
それにゲーム機などの他の娯楽を売りだせば、たぶんランスロット家は莫大な富を得ることができるだろう。お金はいくらあっても問題はない。
てか地位が上がれば上がるだけ公国になる可能性が出てくるのか。それは嫌だな。俺が王さまになるんだろ? 無理だな。
それから前世で現代のものじゃなくても俺の固有魔法を『創造』と伝えるのだから、高価な魔道具をポンポンと売り出したとしても問題ない。
それは今後の流れ次第だな。
「面白いわね……!」
ブツブツ言うのをやめ、こちらに迫ってくるルフェイ。その顔は興奮を隠しきれず、まるで子供のような楽しそうな表情をしている。
「これは興味深いわね! 構造を確認したけど全く分からなかったわ! こんなものはこの世界でアーサーさま以外に作れないものだわ! こんな小さなもの中にこんな細かく意味が分からないものが詰まっているなんて、夢のようだわ! 今まで生きてきた中で一番興奮しているわね、私! これで遠くの人と話せたり外の光景を記録できるなんて、すごすぎるわ!」
もうこれ以上興奮することはないというくらいに興奮して俺に詰め寄ってくるルフェイ。興奮しすぎて敬語を忘れて話しているが、むしろこちらの方が俺的にはいい。
二台あるから一台を分解したようで、机の上で部品が散乱している。
「私、ここに永住するわ。こんな興味深いものが出てくるのなら、ここに永住しても悔いはないわね」
そこまで言わせます? このスマホ。それにしても魔法が得意な人が、科学に興味が行くとは思わなかったなぁ。
前世の科学も調べることができる。むしろ前世の科学以上の空想上の科学も調べることができるから、そういう本を出せばどうなるんだろうか。
『グリーテンは未知が好き。それに長生きしている分、ほぼこの世界のことを知り尽くしているからこういう真新しい未知には弱い』
シルヴィー姉さんからのメールを見て、好都合だと判断した。
「ねぇ、ルフェイ」
「ルフェイじゃなくてグリーテンって呼んでください、アーサーさま」
「それなら僕もアーサーでいいし、口調はもっと軽くしてもいいよ。グリーテン」
「そう? それなら遠慮なくさせてもらうわ。それでどうしたのかしら?」
「うん。僕の固有魔法って、たぶん思い描いたものを何でも作り出せる能力だと思う」
「『創造』ってこと? そのスマホを作るという能力じゃなくて?」
「昨日もできたんだけど……」
俺は再び手のひらを前に出して、お洒落に金でできたワイングラスよりも二回りくらい大きなものを出した。
「グラス、かしら? 確かにこれ……ウソでしょ!?」
グリーテンは俺が持っているグラスを少し見て、これが何なのか気が付いた様子で俺からグラスをひったくってじっくりと見ている。
『何を?』
三文字くらいならメールで送ってこないでほしいと思いながらも、口頭で答えた。
「ワインが出るグラスだよ」
『魔道具ってこと?』
「そうなるね」
『さすがは私の弟』
シルヴィー姉さんとは視線が合わないがかなり驚いていることは分かった。
対するグラスを持っているグリーテンさんはまたブツブツ言っている。
「なに、この組み込まれている魔法陣は? 素晴らしすぎる。それに無駄が一切ない美しい魔法回路。素材にも一切の損傷がない。しかもこの効率の良さ。……効果は」
グラスに魔力を流し込んで中にワインが出てきたことで、それをグリーテンは嗜むように一口口にした。
「……最高ね」
一言そう言っただけだったグリーテンだが、それがとてつもなく最高だということに俺は分かっていた。
「アーサー」
「なに?」
グリーテンが近づいてきてシルヴィー姉さんは俺の前に来て警戒していたが、その抵抗はむなしくグリーテンは俺を転移魔法で移動させて胸の谷間に頭を入れてくれた。
「私たち結婚しましょう! いえあなたの愛人にするだけでいいわ、もうこんなに面白いことをしてくれる人はこれから誰も現れないわ!」
「おばさんにアーサーはもったいない」
一生懸命引き剥がそうとしているシルヴィー姉さんだが、今回は本当に俺を引き剥がせないでいるようだった。
そしておばさんと言ったシルヴィー姉さんに呪いをかけたりと、色々と混沌としていた。
その後ベラが来るまでこの攻防は続いて、俺はグリーテンさんにずっと口説かれていた。
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