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全能の爆誕
014:剣の鍛錬。
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「これほど早くアーサーさまのお相手をすることになるとは思いませんでした!」
「何か、ごめんね? 忙しいのに」
「いえいえ! アーサーさまのお相手はどんなことよりも大切なことなのでお気になさらず!」
お父上様に俺の剣の才能を見せたことで、俺の鍛錬相手をベラやルフェイやお母上様ではなく、騎士団長であるパスカルになった。
「どうしてパスカルなの?」
「おや、私ではご不満ですか?」
「そんなことはないよ! でも、忙しいパスカルなのはどうしてなんだろ」
パスカルの実力はすでに分かっているから疑うことはない。
でもそれで忙しいパスカルになった理由が分からない。ベラに聞いたらパスカルはランスロット騎士団団長だけあって、かなり忙しい身らしく、俺の鍛錬相手になったら過労死するのではないかと言っていた。
「それだけアルノさまが本気でアーサーさまを鍛えようとしている証拠でしょう。自分で言うのもあれですが、私はこのランスロット家において二番目に強い実力を持っています。そのため多忙なアルノさまに代わり、私がアーサーさまの鍛錬を担当させていただきます」
「一番目はお父さん?」
「その通りです。七聖剣である私でさえ、アルノさまには及びません」
「へぇ……お父さんは七聖剣に選ばれないの?」
「三大七聖者に選ばれても、その称号が必要ない、邪魔であるならば本人が拒否することができます。アルノさまは一度選ばれたみたいですが拒否したご様子です」
「選ばれて何かやる必要はある?」
「ありませんし、その称号があるだけでどこからも引く手あまたになります。ですがアルノさまのような貴族であったり、『パラディンロード』のような称号があるのならば、もう称号は必要ありませんね」
「そうなんだ」
そういうことだったのか。てっきり勝手に選ばれるものかと思っていたが、拒否することもできるのか。
俺が選ばれたとしても拒否しよ。いや選ばれることもしたくないけどね。
「アーサーさまの鍛錬担当になったことで、私の仕事がかなり減ったのでアーサーさまはお気になさらず。それだけアーサーさまの鍛錬に集中しろということでしょう」
「それなら良かった!」
「他の者たちに負担が回っていますが、給与に反映されるのでいいでしょう」
パスカルにどれだけ仕事をさせていたんだよ。
いや騎士団長だから仕方ないとは思うが、こういう立場にはなりたくないものだ。公爵家の次期当主が何を思っているんだって話だけど。
「前置きはこれくらいにして、まずはアーサーさまの実力を拝見させていただきます」
「分かった!」
前もって渡されていた摸擬剣を構えた俺の正面でパスカルも摸擬剣を構える。
「アルノさまからある程度はお聞きしていますので、油断せずいるのでどこからでもどうぞ」
「それじゃあ行くね!」
「ご遠慮なく」
お父上様の時と同じくらいの強さでパスカルに斬りかかる。
それをパスカルは少し驚いた表情と共に笑みを浮かべて受け止めた。さらには視線でもっと打ち込んでこいと言わんばかりだったから、強さを維持しつつ何度も打ち込んでいく。
受け止めるパスカルの表情を嬉々としており、何よりも興奮している様子がとても印象的だ。
「いいですよ! もっと打ち込んできてください!」
「うん!」
初対面で騎士の中の騎士みたいな感じがしていたのに、今戦っているパスカルを見ると全く印象が違っていた。
俺の強さに喜んで興奮しているのか、戦っていることにそうなっているのか。通常時と戦闘時が少し違っている女性だ。
「この流れでこちらから攻撃を仕掛けます!」
「いいよ!」
「ではお言葉に甘えて!」
俺の打ち込みをかなり上手に受け流して俺に攻撃を仕掛けるパスカル。
攻撃自体は俺の今の強さに対応できる程度に抑えられているから攻撃を受け止めて再び斬りかかる。
こうして打ち込んでみて分かったが、このパスカルは攻撃ではなく防御がかなり上手い騎士なのだと理解した。
もちろん攻撃は手加減されているが、俺の全能がパスカルは防御に特化していると伝えてくる。
俺の想像している騎士のイメージでは守る力が強い方がしっくりくるから、パスカルという騎士はすごいと思っている。
「一旦これまで。少し休憩にしましょう」
「ハァ……ハァ……ぅんっ……」
ちゃんと俺の今の体力を計算してこれくらい疲れている感じの演技をする。
「アーサーさま。お水とタオルです」
「うん、ありがとう。ベラ」
近くで待機していたベラに水とタオルを渡されて休憩をする。
「いやはや、アーサーさまには驚かされますね。アルノさまからお聞きしていたとは言え、あそこまで実力をお持ちになられているとは感服いたしました」
「ふぅ……でもお父さんやパスカルに比べたらまだまだだよ」
「そんなことはありません。四歳でシルヴィーさまやルーシーさまの実力を上回られているのはすごいことです。これならば私を超える日も近いでしょう。三年以内には超えることができますね」
「ホント!?」
いや、七聖剣を超えたらまずいだろ。
でもランスロット家の次期当主としては超えなければならないわけで、でもそれほど目立ちたくなくて超えたら超えたで面倒になるし……。
ふぅ……この欠陥全能めんどくせぇ……。でも超えないといけないんだよな。
「はい。ランスロット家の騎士としてウソは言いません。アーサーさまがお強くなられるのは私としても嬉しいことですから」
騎士団長として、仕えている主が強くなるのは嬉しいという意味合いではない気がする、このパスカルの言い方。
「アーサーさま。パスカルにはお気をつけて」
ベラが俺に耳打ちをしてこんなことを言ってきた。
「どうして?」
俺もベラの耳に近づいてそう言った。少し肩をびくりとさせたベラが答えてくれた。
「私の口からは彼女の尊厳のためにお伝えできませんが、何かあることだけはご理解ください」
「よく分かんない……」
そこまで言ったのなら言ってくれればいいのに。
でも尊厳を守るということなら、どういうことだろ。ショタとか? それなら普通に言いそうだな。
「アーサーさま。鍛錬を再開しましょう。ご説明していませんでしたが、これからの鍛錬は実戦形式で行いたいと思います。剣を主体に、その他の武器も私がご指導させていただきます」
「うん、お願いね!」
「お任せください」
パスカルの尊厳を砕くようなことがどんなことなのかを探りつつ、鍛錬をするか。
「何か、ごめんね? 忙しいのに」
「いえいえ! アーサーさまのお相手はどんなことよりも大切なことなのでお気になさらず!」
お父上様に俺の剣の才能を見せたことで、俺の鍛錬相手をベラやルフェイやお母上様ではなく、騎士団長であるパスカルになった。
「どうしてパスカルなの?」
「おや、私ではご不満ですか?」
「そんなことはないよ! でも、忙しいパスカルなのはどうしてなんだろ」
パスカルの実力はすでに分かっているから疑うことはない。
でもそれで忙しいパスカルになった理由が分からない。ベラに聞いたらパスカルはランスロット騎士団団長だけあって、かなり忙しい身らしく、俺の鍛錬相手になったら過労死するのではないかと言っていた。
「それだけアルノさまが本気でアーサーさまを鍛えようとしている証拠でしょう。自分で言うのもあれですが、私はこのランスロット家において二番目に強い実力を持っています。そのため多忙なアルノさまに代わり、私がアーサーさまの鍛錬を担当させていただきます」
「一番目はお父さん?」
「その通りです。七聖剣である私でさえ、アルノさまには及びません」
「へぇ……お父さんは七聖剣に選ばれないの?」
「三大七聖者に選ばれても、その称号が必要ない、邪魔であるならば本人が拒否することができます。アルノさまは一度選ばれたみたいですが拒否したご様子です」
「選ばれて何かやる必要はある?」
「ありませんし、その称号があるだけでどこからも引く手あまたになります。ですがアルノさまのような貴族であったり、『パラディンロード』のような称号があるのならば、もう称号は必要ありませんね」
「そうなんだ」
そういうことだったのか。てっきり勝手に選ばれるものかと思っていたが、拒否することもできるのか。
俺が選ばれたとしても拒否しよ。いや選ばれることもしたくないけどね。
「アーサーさまの鍛錬担当になったことで、私の仕事がかなり減ったのでアーサーさまはお気になさらず。それだけアーサーさまの鍛錬に集中しろということでしょう」
「それなら良かった!」
「他の者たちに負担が回っていますが、給与に反映されるのでいいでしょう」
パスカルにどれだけ仕事をさせていたんだよ。
いや騎士団長だから仕方ないとは思うが、こういう立場にはなりたくないものだ。公爵家の次期当主が何を思っているんだって話だけど。
「前置きはこれくらいにして、まずはアーサーさまの実力を拝見させていただきます」
「分かった!」
前もって渡されていた摸擬剣を構えた俺の正面でパスカルも摸擬剣を構える。
「アルノさまからある程度はお聞きしていますので、油断せずいるのでどこからでもどうぞ」
「それじゃあ行くね!」
「ご遠慮なく」
お父上様の時と同じくらいの強さでパスカルに斬りかかる。
それをパスカルは少し驚いた表情と共に笑みを浮かべて受け止めた。さらには視線でもっと打ち込んでこいと言わんばかりだったから、強さを維持しつつ何度も打ち込んでいく。
受け止めるパスカルの表情を嬉々としており、何よりも興奮している様子がとても印象的だ。
「いいですよ! もっと打ち込んできてください!」
「うん!」
初対面で騎士の中の騎士みたいな感じがしていたのに、今戦っているパスカルを見ると全く印象が違っていた。
俺の強さに喜んで興奮しているのか、戦っていることにそうなっているのか。通常時と戦闘時が少し違っている女性だ。
「この流れでこちらから攻撃を仕掛けます!」
「いいよ!」
「ではお言葉に甘えて!」
俺の打ち込みをかなり上手に受け流して俺に攻撃を仕掛けるパスカル。
攻撃自体は俺の今の強さに対応できる程度に抑えられているから攻撃を受け止めて再び斬りかかる。
こうして打ち込んでみて分かったが、このパスカルは攻撃ではなく防御がかなり上手い騎士なのだと理解した。
もちろん攻撃は手加減されているが、俺の全能がパスカルは防御に特化していると伝えてくる。
俺の想像している騎士のイメージでは守る力が強い方がしっくりくるから、パスカルという騎士はすごいと思っている。
「一旦これまで。少し休憩にしましょう」
「ハァ……ハァ……ぅんっ……」
ちゃんと俺の今の体力を計算してこれくらい疲れている感じの演技をする。
「アーサーさま。お水とタオルです」
「うん、ありがとう。ベラ」
近くで待機していたベラに水とタオルを渡されて休憩をする。
「いやはや、アーサーさまには驚かされますね。アルノさまからお聞きしていたとは言え、あそこまで実力をお持ちになられているとは感服いたしました」
「ふぅ……でもお父さんやパスカルに比べたらまだまだだよ」
「そんなことはありません。四歳でシルヴィーさまやルーシーさまの実力を上回られているのはすごいことです。これならば私を超える日も近いでしょう。三年以内には超えることができますね」
「ホント!?」
いや、七聖剣を超えたらまずいだろ。
でもランスロット家の次期当主としては超えなければならないわけで、でもそれほど目立ちたくなくて超えたら超えたで面倒になるし……。
ふぅ……この欠陥全能めんどくせぇ……。でも超えないといけないんだよな。
「はい。ランスロット家の騎士としてウソは言いません。アーサーさまがお強くなられるのは私としても嬉しいことですから」
騎士団長として、仕えている主が強くなるのは嬉しいという意味合いではない気がする、このパスカルの言い方。
「アーサーさま。パスカルにはお気をつけて」
ベラが俺に耳打ちをしてこんなことを言ってきた。
「どうして?」
俺もベラの耳に近づいてそう言った。少し肩をびくりとさせたベラが答えてくれた。
「私の口からは彼女の尊厳のためにお伝えできませんが、何かあることだけはご理解ください」
「よく分かんない……」
そこまで言ったのなら言ってくれればいいのに。
でも尊厳を守るということなら、どういうことだろ。ショタとか? それなら普通に言いそうだな。
「アーサーさま。鍛錬を再開しましょう。ご説明していませんでしたが、これからの鍛錬は実戦形式で行いたいと思います。剣を主体に、その他の武器も私がご指導させていただきます」
「うん、お願いね!」
「お任せください」
パスカルの尊厳を砕くようなことがどんなことなのかを探りつつ、鍛錬をするか。
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