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全能の爆誕
013:才ある息子。
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ベラの授業が終わり昼食をはさんで、今日のメインディッシュであるお父上様との授業の時間になった。
動きやすい服装に着替え、広大な敷地内にある外の訓練所に向かっていた。
何故メインディッシュかと聞かれれば、一番手加減することができないかもしれない授業だからだ。
まだ体を鍛える授業なら、俺の体は未完成だから鍛えれば鍛えられる。
やろうと思えば俺の体を大人の体にすることは簡単にできる。だがそれはアーサー・ランスロットとして生まれた子供の責務として、お父上様とお母上様に子供として振る舞わなければならない。
ただ、武器を持てば俺の才能を隠すことはできない。
魔法を使っていて感じたが、何かをしようとすれば最高の結果以上に才能を使ってしまうという構図が出来上がる。手加減、下手な真似をすることができなくなっている。
つまり才能はバレることは大前提であるから……天才という言葉を受けなければならないということだ。何か細工しようとしてもそれをずっと続けるのはしんどい。
まあ……公爵家だからそうなっても問題ないと思いたい。
時間よりも少し早く外の訓練所にたどり着くと、すでにお父上様が待っていた。
「もう来たのかい、アーサー」
「まだ、時間じゃないよね?」
「うん、僕が早く着すぎただけだよ。……アーサーのそういうところをルーシーとシルヴィーに見習ってほしいものだ」
「あー……」
二人は本当にマイペースな感じがして納得した。
「まだ早いが、早速始めよう」
「うん、何からするの?」
「まず体を温めるために走り込みだね」
「うん!」
早速お父上様との走り込みが始まった。
こうして並んで走るなんて前世でもなかった。お父上様は俺の様子を見ながら走る速度を見極めてくれているようだ。
ここで気を付けないといけないところは、走るという行為も十分に才能が発揮されてしまう。才能のオンオフ、才能の大幅な加減ができないというところがこの全能の欠点、否、呪いだ。
だがしかし、走るだけならまだやりようがある。
さすが全能と言ったところで、デバフの類の魔法はすべてできる。そしてそれを自身に向けることも可能というわけだ。
ただそれを常時すると、魔法抵抗力と魔法干渉力がせめぎ合って周りに気が付かれてしまうから一時的にしかできない。
ちなみに戦闘の時にこれをやると動きから何かやっているとバレてしまうから走る時にしか使えない。
一定の速度で、一定の体力を消費する演出をして走り込みは終わった。
「四歳にしてはかなり体がいい状態だね」
「えっ、そう?」
「……まあ、いいに越したことはないか。いや、喜ばしいことだ」
結構抑えた方なんだが、これでも少し四歳にしてはやり過ぎたか。
普通の人なら百回は死んでいるくらいのデバフを自身にかけたんだが、これ以上は無理だが、これからは段々解放していくだけだ。
「さて、まずは今後の方針を話しておこうと思う」
「方針?」
「体を鍛えることを項目に追加しているんだけど、基本は実戦形式で俺と戦って学ぶことを重点に置く。体を鍛えることにそれほど時間はかけないつもりでいる」
それはまあ助かるな。あまり才能を使い過ぎると才能が抑えれなくなる。
「相手はお父さん?」
「僕は仕事で忙しいからね。僕の手が空いていたら僕がするけど、ベラやルフェイ、スザンヌに任せることが多くなるよ」
「……ベラやルフェイなら分かるけど、お母さんも?」
「言っておくが、スザンヌもあれでかなり魔法と剣を極めているよ。才能は僕以上だね」
「へぇ……」
人は見かけによらないということか。魔法ならともかく剣もとは。
「実戦形式で使う武器はすべてだ」
「すべて?」
「そうだよ。ランスロット家の人間はすべての武器を使いこなし極めなければならない。刀剣から始まり長物や弓矢、暗器もすべてだ」
「お姉ちゃんたちもしているの?」
「そうだよ。どんな状況であろうと完璧に対応してこそのランスロット家。それは戦闘や政治、領地についても例外はない」
おぉ、かなりストイックな家だなぁ。俺の欠陥全能がなければ嫌になって投げ出したくなるレベルだな。
「それからアーサーの固有魔法についてだけど……いや、これはまだ置いておこう」
「前に僕に渡してきたあれだよね?」
「うん。ルーシーとシルヴィーなら固有魔法の鍛錬も加えるんだが、アーサーの場合はかなり状況が変わってくる。あの感じだとグリーテンに任せた方が良さそうだが、正体が分かった時にでも考えよう」
「はーい」
これはルフェイさんと魔法の特訓をしている時に固有魔法を無意識に発動してしまい、『創造』という固有魔法を知らせるという道筋が見えたな。
「まずは剣だ。僕は受けに徹するから振ってくるといい」
本を出したルフェイさんと同様、魔法陣から木剣を二本取り出して一本を俺に渡してきた。
「ルフェイもしてたけど、魔法だよね?」
「グリーテンに教えてもらわなかったのかい」
「今日は魔法の原理を教えてもらったよ!」
「それもそうか。これは空間魔法。限りはあるが物を出し入れすることができる」
「その魔法って誰でも使えるの?」
「いや、この無属性魔法はセンスがいるから誰でも使えるわけではない。ルーシーは使えるようだが、シルヴィーは使えない」
何だかイメージだとシルヴィー姉さんができそうな感じがしたが、そこは持って生まれた才能ということか。
「さぁ、お喋りはこれくらいにして打ち込んでおいで。情けない剣だと反撃してしまうよ」
「はい!」
いや、剣を持つのが初めてな四歳に何を言っているのか。
まあお父上様だから怪我はしないと思うから、適当に踏み込んで剣を振る。
「ッ!?」
俺の鋭い攻撃に目を見開いて急いで剣で防いだお父上様。さらに三度剣を振ったことで、お父上様は俺から距離を取った。
「どうしたの?」
俺は演技の才能を使って心底不思議そうな顔をしてお父上様に聞いた。
「は、ははは……」
対するお父上様は驚きながらも少し笑っていた。そしてお父上様は俺の方に早足で戻ってきて、俺の両肩をつかんだ。
「アーサー、キミは天才だ。神など僕は信じていないが、それでもこう言ってしまう。神から授けられた才能がアーサーにある。素晴らしいことだ」
まあ、本当に神さまもとい魔神から与えられたんですけどね。
それにしても本当に今まで見たことがないくらいに嬉しそうにしているお父上様を見て、この欠陥全能であったことも少しは役に立ったと思った。
「アーサーはきっとこの世で一番強い騎士になれる」
「ホント!? 嬉しいな!」
「あぁ。もしかしたら剣の他の才能があるかもしれないから、他にもやってみよう!」
「うん!」
子供にとてつもない才能があった時、親はこうして喜ぶんだと思いながらお父上様が出した武器たちを一つ一つ試していった。
もちろんさっきの剣の時のように才能を適当に発揮して、まるで嬉しそうな父親に応えるように頑張る健気な子供の演技もした。
「これは、予想以上だね……!」
気味悪がられる、とかはないと思いつつ怪しまれるかと思ったが、まあ才能があればこれくらいのことはできるから怪しまれることはないか。
「すごい、のかな?」
「もちろんだ! 俺も小さい頃は色々と鍛錬してすべての武器を扱えるようになったが、それとは比較にもならないくらいにアーサーには才能がある。……魔法も才能があって、武器も才能がある。しかもあの固有魔法。……ふっ、とんでもないな」
俺の今出している情報を考えたお父上様は笑いながらも、どこか呆れたような表情をしていた。
「ちょっと休んでいてくれ。少し考える」
「えっ、うん。分かった」
何か考え事をしているお父上様から少し離れて、離れた場所に立っているベラの元に向かう。
「お疲れさまです、アーサーさま。お飲み物がございます」
「うん、ありがと」
細長い容器に入った水を受け取って飲んでいると、ベラが流れている汗をタオルで拭いてくれた。
「先ほどのアーサーさまの武器の扱い、見ていました。大変素晴らしいものでした」
「そう? それなら良かった!」
「さすがは公爵家の次期当主でございます。ただ……」
「ただ?」
「これから忙しくなるかもしれません」
「えっ?」
忙しく? どういうことだ。これ以上忙しくされたらもう鍛錬しかしていないことになるぞ。
動きやすい服装に着替え、広大な敷地内にある外の訓練所に向かっていた。
何故メインディッシュかと聞かれれば、一番手加減することができないかもしれない授業だからだ。
まだ体を鍛える授業なら、俺の体は未完成だから鍛えれば鍛えられる。
やろうと思えば俺の体を大人の体にすることは簡単にできる。だがそれはアーサー・ランスロットとして生まれた子供の責務として、お父上様とお母上様に子供として振る舞わなければならない。
ただ、武器を持てば俺の才能を隠すことはできない。
魔法を使っていて感じたが、何かをしようとすれば最高の結果以上に才能を使ってしまうという構図が出来上がる。手加減、下手な真似をすることができなくなっている。
つまり才能はバレることは大前提であるから……天才という言葉を受けなければならないということだ。何か細工しようとしてもそれをずっと続けるのはしんどい。
まあ……公爵家だからそうなっても問題ないと思いたい。
時間よりも少し早く外の訓練所にたどり着くと、すでにお父上様が待っていた。
「もう来たのかい、アーサー」
「まだ、時間じゃないよね?」
「うん、僕が早く着すぎただけだよ。……アーサーのそういうところをルーシーとシルヴィーに見習ってほしいものだ」
「あー……」
二人は本当にマイペースな感じがして納得した。
「まだ早いが、早速始めよう」
「うん、何からするの?」
「まず体を温めるために走り込みだね」
「うん!」
早速お父上様との走り込みが始まった。
こうして並んで走るなんて前世でもなかった。お父上様は俺の様子を見ながら走る速度を見極めてくれているようだ。
ここで気を付けないといけないところは、走るという行為も十分に才能が発揮されてしまう。才能のオンオフ、才能の大幅な加減ができないというところがこの全能の欠点、否、呪いだ。
だがしかし、走るだけならまだやりようがある。
さすが全能と言ったところで、デバフの類の魔法はすべてできる。そしてそれを自身に向けることも可能というわけだ。
ただそれを常時すると、魔法抵抗力と魔法干渉力がせめぎ合って周りに気が付かれてしまうから一時的にしかできない。
ちなみに戦闘の時にこれをやると動きから何かやっているとバレてしまうから走る時にしか使えない。
一定の速度で、一定の体力を消費する演出をして走り込みは終わった。
「四歳にしてはかなり体がいい状態だね」
「えっ、そう?」
「……まあ、いいに越したことはないか。いや、喜ばしいことだ」
結構抑えた方なんだが、これでも少し四歳にしてはやり過ぎたか。
普通の人なら百回は死んでいるくらいのデバフを自身にかけたんだが、これ以上は無理だが、これからは段々解放していくだけだ。
「さて、まずは今後の方針を話しておこうと思う」
「方針?」
「体を鍛えることを項目に追加しているんだけど、基本は実戦形式で俺と戦って学ぶことを重点に置く。体を鍛えることにそれほど時間はかけないつもりでいる」
それはまあ助かるな。あまり才能を使い過ぎると才能が抑えれなくなる。
「相手はお父さん?」
「僕は仕事で忙しいからね。僕の手が空いていたら僕がするけど、ベラやルフェイ、スザンヌに任せることが多くなるよ」
「……ベラやルフェイなら分かるけど、お母さんも?」
「言っておくが、スザンヌもあれでかなり魔法と剣を極めているよ。才能は僕以上だね」
「へぇ……」
人は見かけによらないということか。魔法ならともかく剣もとは。
「実戦形式で使う武器はすべてだ」
「すべて?」
「そうだよ。ランスロット家の人間はすべての武器を使いこなし極めなければならない。刀剣から始まり長物や弓矢、暗器もすべてだ」
「お姉ちゃんたちもしているの?」
「そうだよ。どんな状況であろうと完璧に対応してこそのランスロット家。それは戦闘や政治、領地についても例外はない」
おぉ、かなりストイックな家だなぁ。俺の欠陥全能がなければ嫌になって投げ出したくなるレベルだな。
「それからアーサーの固有魔法についてだけど……いや、これはまだ置いておこう」
「前に僕に渡してきたあれだよね?」
「うん。ルーシーとシルヴィーなら固有魔法の鍛錬も加えるんだが、アーサーの場合はかなり状況が変わってくる。あの感じだとグリーテンに任せた方が良さそうだが、正体が分かった時にでも考えよう」
「はーい」
これはルフェイさんと魔法の特訓をしている時に固有魔法を無意識に発動してしまい、『創造』という固有魔法を知らせるという道筋が見えたな。
「まずは剣だ。僕は受けに徹するから振ってくるといい」
本を出したルフェイさんと同様、魔法陣から木剣を二本取り出して一本を俺に渡してきた。
「ルフェイもしてたけど、魔法だよね?」
「グリーテンに教えてもらわなかったのかい」
「今日は魔法の原理を教えてもらったよ!」
「それもそうか。これは空間魔法。限りはあるが物を出し入れすることができる」
「その魔法って誰でも使えるの?」
「いや、この無属性魔法はセンスがいるから誰でも使えるわけではない。ルーシーは使えるようだが、シルヴィーは使えない」
何だかイメージだとシルヴィー姉さんができそうな感じがしたが、そこは持って生まれた才能ということか。
「さぁ、お喋りはこれくらいにして打ち込んでおいで。情けない剣だと反撃してしまうよ」
「はい!」
いや、剣を持つのが初めてな四歳に何を言っているのか。
まあお父上様だから怪我はしないと思うから、適当に踏み込んで剣を振る。
「ッ!?」
俺の鋭い攻撃に目を見開いて急いで剣で防いだお父上様。さらに三度剣を振ったことで、お父上様は俺から距離を取った。
「どうしたの?」
俺は演技の才能を使って心底不思議そうな顔をしてお父上様に聞いた。
「は、ははは……」
対するお父上様は驚きながらも少し笑っていた。そしてお父上様は俺の方に早足で戻ってきて、俺の両肩をつかんだ。
「アーサー、キミは天才だ。神など僕は信じていないが、それでもこう言ってしまう。神から授けられた才能がアーサーにある。素晴らしいことだ」
まあ、本当に神さまもとい魔神から与えられたんですけどね。
それにしても本当に今まで見たことがないくらいに嬉しそうにしているお父上様を見て、この欠陥全能であったことも少しは役に立ったと思った。
「アーサーはきっとこの世で一番強い騎士になれる」
「ホント!? 嬉しいな!」
「あぁ。もしかしたら剣の他の才能があるかもしれないから、他にもやってみよう!」
「うん!」
子供にとてつもない才能があった時、親はこうして喜ぶんだと思いながらお父上様が出した武器たちを一つ一つ試していった。
もちろんさっきの剣の時のように才能を適当に発揮して、まるで嬉しそうな父親に応えるように頑張る健気な子供の演技もした。
「これは、予想以上だね……!」
気味悪がられる、とかはないと思いつつ怪しまれるかと思ったが、まあ才能があればこれくらいのことはできるから怪しまれることはないか。
「すごい、のかな?」
「もちろんだ! 俺も小さい頃は色々と鍛錬してすべての武器を扱えるようになったが、それとは比較にもならないくらいにアーサーには才能がある。……魔法も才能があって、武器も才能がある。しかもあの固有魔法。……ふっ、とんでもないな」
俺の今出している情報を考えたお父上様は笑いながらも、どこか呆れたような表情をしていた。
「ちょっと休んでいてくれ。少し考える」
「えっ、うん。分かった」
何か考え事をしているお父上様から少し離れて、離れた場所に立っているベラの元に向かう。
「お疲れさまです、アーサーさま。お飲み物がございます」
「うん、ありがと」
細長い容器に入った水を受け取って飲んでいると、ベラが流れている汗をタオルで拭いてくれた。
「先ほどのアーサーさまの武器の扱い、見ていました。大変素晴らしいものでした」
「そう? それなら良かった!」
「さすがは公爵家の次期当主でございます。ただ……」
「ただ?」
「これから忙しくなるかもしれません」
「えっ?」
忙しく? どういうことだ。これ以上忙しくされたらもう鍛錬しかしていないことになるぞ。
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