全能で楽しく公爵家!!

山椒

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全能の爆誕

011:全能の片鱗。

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「ここだ。今はルーシーがいる時間か」
「ルーシーお姉ちゃんが?」

 そういえばこの家に来ている魔法の先生を見たことがなかったな。

 お父上様でもお母上様でも公爵家にふさわしい実力は持っているが、それ以上の先生だとパスカルから聞いた。

「失礼するよ」

 お父上様に続いて魔導室に入ると、机に向かって手を出して苦戦している表情を浮かべているルーシー姉さんが座っておりその前には一人の女性がいた。

 紫色の髪が腰まであり、今までに見たことがないほどのプロポーションでボンキュッボンなナイスボディで艶かしい女性だった。

「あら、アルノさま。どうされましたか?」
「あれ、アーサーじゃない」

 俺が来たことにいち早く魔法の先生が反応して、続いてルーシー姉さんが顔を上げる。

「突然すまないね。少しアーサーの魔力量と魔法適正を見てもらいたい」
「アーサーさまは四歳になられたばかりでは?」
「少し早いがアーサーにも鍛練をつけてほしい」
「それはまたどうしてですか?」
「アーサーのためだ。そのためには時間が惜しい」
「そうですか……」

 魔法の先生はお父上様の隣にいた俺に視線を合わせるようにしゃがんだ。

「お初にお目にかかります、アーサーさま。私は七聖法が一人、グリーテン・ルフェイと申します。以後お見知りおきを」
「うん、よろしくね!」

 ていうか七聖法? 七聖剣と七聖法が一人ずついるんだな、ここ。

 うん? 何だかルフェイがジッとこちらを見てきたかと思ったら、じりじりと寄ってくる。

 引き下がるという選択肢はあったが、めっちゃ美人な女性に寄られて悪い気はしないから俺もルフェイの目をジッと見る。

「……いい」
「えっ?」

 その〝いい〟はどっちのいいだ。良い方のいいなのか、悪い方のいいなのか⁉

「さいっっっっこう!」
「んっ⁉」

 ルフェイのお胸とお胸に俺の頭がサンドされてルフェイに包み込まれたぁ⁉

 いや最高だけれども、急にされたら驚いてしまう。それにどういうわけで俺は最高の心地を味わっているんだ?

「アルノさま、この子を私にください!」
「何を言っている、ダメに決まっているだろ」
「もうこの子は最高ですよ! とてつもない数の才能、とてつもない質の才能、これだけのものを持って生まれるのは過去現在未来においていないと言ってもいいほどです! もうアヴァロンに連れて帰りたいくらいです!」

 アヴァロン、話には聞いたことがあるな。

 神秘が満ち足りている場所で天国のような楽園だと。それが本当にあるのかは分からないと聞いた気がする。

 このルフェイはアヴァロンの出身なのか? ていうか俺のことほぼバレてね?

「アルノさまどうですか? アーサーさまをアヴァロンのリンゴと交換しませんか?」
「アーサーはものではない。どうしても連れていきたいのなら、アーサーが成人してから誘うことだ」
「……そうですね。それくらいの時間は待ちましょう」
「それよりも、アーサーはそれくらい才に愛されているのか?」
「それはもちろん。アヴァロンの九姉妹である私が保障しましょう」
「……そうか、それは何よりだ」

 何だかホッとしているお父上様の声だが、未だにルフェイのお胸さまに挟まれて視界が真っ暗なんだが。

 この真っ暗な空間は柔らかくていい匂いで、とても幸せな空間ですね。だけど周りが見えないのはあれだから周りが見えるようにした。

「ちょっとグリーテン! アーサーを放しなさいよ!」

 弟大好きなルーシー姉さんとこの状況を許すわけがなく、ルフェイから俺を引き剥がそうと動くが、ルフェイは立ち上がってひらりと避ける。

 ルフェイが立ちあがったから、俺の足はぷらーんとなって密着しているから余計にルフェイの体の柔らかさを感じてしまう。

「ルーシーさまはいつもアーサーさまと一緒なのですからこれくらい許してくださいよ」
「それとこれとは関係ないわよ! いいから放しなさいよ! 私がアーサーを抱きしめるわ!」

 あー、引っ張られるぅ。

 ルーシー姉さんから俺を取られまいとルフェイが少し力を入れて抱きしめているからマジでここがアヴァロンじゃん。

 それはお父上様が止めるまで続き、ようやく本題に入ることになった。

「この水晶に手を置けば魔力保有量と魔法適性が分かるようになっています」

 椅子に座っている俺の目の前に置かれたのは俺の頭くらいある大きな水晶だった。

 ちなみに今は隣にルーシー姉さんが陣取っていて、正面に水晶を置いたルフェイ、お父上様はルフェイの横に立っている。

「どうぞ手を」
「うん」

 ルフェイに促されて水晶に手を置く。

 俺の全能の性質上、ここで何か誤魔化そうとしても俺自身の能力を変えることはできない。

 何よりルフェイにすでにバレている様子だから何もしない、というか何もすることができない。

「これで、いいの……?」


 俺が手を置いてもうんともすんとも言わないからルフェイに問いかけた。

「もしかしてと思ったけど、この水晶でもダメなのね……。心配しないでください、これはアーサーさまの才をこの水晶では測れないだけですから」
「えっ、これって測定範囲がSランクの水晶でしょ?」
「それだけアーサーの力が大きいということだね」

 ふむ、この魔道具のことを俺だけが知らされていないようだ。

「ではアーサーさま、私と手を合わせてもらえますか?」
「こう?」
「はい、大丈夫です」

 ルフェイと手のひらを合わせ、ルフェイは指を絡めてきたから、俺も絡めて手を繋ぐ。

 ルーシー姉さんがその手をジッと見ているが、スルーすることが一番いいと思ってスルーした。

「ちょっと体が怠い感じがするかもしれませんが、我慢してください」
「うん」

 何をするのかと思えば、俺の魔力がルフェイに吸い取られていた。

 俺の意思で止められることはできるし、何なら俺が吸い取ることも可能だが、今は吸われ続けよう。

「平気ですか?」
「平気だよ」
「これでも?」
「平気だよ」
「……ふぅ」

 吸われ続けている俺が平気でも、延々と魔力を吸い取っているルフェイの方は大丈夫ではなさそうだ。

「んふっ……んっ……アーサーさま、すごい……」

 ほんのりと顔を赤らめて色っぽい声を出しているルフェイ。

 何だかいけないことをしているようでたまりませんね。

「ぐ、グリーテン? 何してるの……?」
「グリーテン? 大丈夫か?」

 ルーシー姉さんは引いており、お父上様は少し引きながら心配していた。

 ただ普通に考えれば急にこんな状況になっていればエロくても分からないという感情がまず最初に来るだろう。

「ごめんなさい、もう少しだけこのままで……んっ」

 どんどんと魔力を吸い取っているルフェイだが、これくらいで俺の魔力の底が見えるわけがないからルフェイの色っぽい顔をジッと見て待つことにした。

「アーサーさまはぁ……平気、ですかぁ……?」
「僕は平気だよ。ルフェイは……大丈夫そうじゃないけど……」
「ちょっと……アーサーさまのがすごくて、体がビックリしているだけですぅ……アーサーさまのが私の中でいっぱいになってぇ……たまりませんっ……」

 この人、絶対にわざとこう言っているだろ。四歳にそういうことをしても、しかも保護者の前でそれをする度胸、図太さを称賛せざるを得ない。

「グリーテン、やめろ」
「えぇ? どうしてですか?」
「それ以上するのなら金輪際アーサーには近づかせないよ」
「それはイヤですからやめておきますね。はい、終わりましたよアーサーさま。ありがとうございます」

 お父上様から注意されたルフェイは色っぽい態度をやめて俺の手を放した。

「アーサー怖かったわよね。こんなババアに手を繋がれて色っぽい声を出しているとか地獄だったのは分かるわよ」
「誰がババアですか~?」
「いったぁ!?」

 横から抱き着きながらもルフェイから俺を守ろうとしているルーシー姉さんはルフェイにゲンコツされていた。

「それで? 何をしていたんだい?」

 ルーシー姉さんが痛みに耐えながらもルフェイを牽制している中、お父上様が話を切り出した。

「魔力と魔法適性を測っていました」
「あれで?」
「あれはアーサーさまの魔力を限界まで吸い取り。そこから魔力の質から魔法適性を測ろうとしていました」
「結果は?」
「そうですね……先ほど吸い取ったのが、数値で表すのならば大体三千くらいです」
「三千⁉」

 驚きの声を上げたのはルーシー姉さんだった。

 数値化した魔力がどれほどの物か、聞いておくべきだろう。

「三千って、すごいの?」
「すごいってものじゃないわよ! そんな数値聞いたことがないわ!」
「そうなの?」
「今の私が300くらいなんだからその十倍って異常よ」
「僕は950。平均くらいだね」
「私は1800くらいですから、三千という数値はとてつもなくすごいことです。それにその三千という量を吸ってもなお、アーサーさまは疲れた素振りを見せていないということは、三千すらも軽く上回っていることになります」
「へぇ……そうなんだね……」

 誰もが俺に視線を向けているから少しむずかゆくなる。

「魔法適性の結果ですが、すべて適性アリです。しかもすべての適性において、過去見たことがないくらいに一つ一つの適性が高いです。ランク付けするのなら……いえ、ランク付けできませんね。七聖法の私の適性を百倍しても足りないくらいですね」

 ……あの魔神、普通にやり過ぎだろ。

 ルフェイの言葉を整理するなら、測定不能の魔力、ランク付けできない魔法適性ということになるな。アホだろ。

 ルーシー姉さんは俺にいいところを見せたいお姉ちゃんだが、俺が凄いとなってもさすがは私の弟みたいな感じで褒め殺してきた。

 その中でお父上様が何やら考えているのが少し不気味に感じたけど。
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