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全能の爆誕
003:クーデレな姉。
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もう少しで三歳になるアーサー・ランスロットです。
誰かしら付いてくるから一人でどこかに行けるわけではないが、それでも自由に動き回ることができるようになったお年頃になったわけだ。
「アーサー! 今日もお外に遊びに行こ!」
「うん!」
ルーシー姉さんに手を引かれて今日も屋敷の外に遊びに行く。
「今日も庭園を探検するわよ!」
「あそこ広くてたのしいよね」
「いくら探検しても迷子になりそうよね」
ルーシー姉さんの今の流行りは俺と一緒に庭園を探検することだ。
ランスロット家の広大な私有地には国で一番の庭と言われるほどの庭園があり、そこは子供の俺とルーシー姉さんが散歩するのにはかなりの広さを誇っているらしい。
他のところを見たことがないから分からない。
歩いているだけでかなり楽しそうなルーシー姉さんと手を繋いで歩いていると、正面から見覚えのある人が現れた。
「あ、お姉ちゃん」
「ん」
お父上様譲りの銀髪を腰まで伸ばしている無表情な女性、シルヴィー・ランスロットが模擬剣を携えて汗をかいている状態で正面から来た。
「騎士団と訓練をしてたの?」
「そう」
「私も早く騎士団と訓練したいわね……」
「すぐにできるようになる」
この国の貴族は騎士団を持っていることが多い。
ウチはランスロット騎士団としているが家名をつけていないところもあるそうだ。
「ルーシーはどこに行くの?」
「庭園よ。お姉ちゃんは……来ないか」
「行かない」
ルーシー姉さんはシルヴィー姉さんも誘おうとしたが俺の方をチラリと見てから、まるで俺がいるからシルヴィー姉さんも来ないみたいな言い方をした。
だがそうだ。
シルヴィー姉さんは俺と行動することはほとんどないし、俺がいると他のところに行ってしまうということはランスロット家では有名な話だ。
でも俺は何も気にしていない。
「じゃあね、お姉ちゃん」
「ん」
ルーシー姉さんは俺の手を引いてシルヴィー姉さんとすれ違った。
「何でお姉ちゃんはアーサーのことが嫌いなのかしら?」
「何でだろうね」
「何かした?」
「……何もしてない」
「そうよね。私もそう思う。お姉ちゃんの男嫌いって家族にも適応されるのね……」
「シルヴィーお姉ちゃんは、男の人が嫌いなの?」
「そうよ。男に何かされたとかじゃなくて、ただ嫌いみたいね」
あぁ、そういう人はいるよな。シルヴィー姉さんもそういう人だったのか。
でも俺はシルヴィー姉さんに嫌われているかもしれないとか思っていない。何も心配していないのだから。
「シルヴィー姉さんもいつかアーサーの良さが分かるはずよ。だから今は庭園に行くわよ!」
「うん!」
ルーシー姉さんはいつも元気だな。肉体的には問題ないが、精神的には追いつけない時がある。
☆
「んぅ……」
「アーサー様、少しお休みになられますか?」
「うん……そうする……」
俺の全能は何もしていなくても俺の体を最高の状態に持ってきてくれる。
だがそれだと怪しまれるから普通の赤ん坊のようにふるまい、今は睡眠を欲しているようにする。
これを本当にどうにかしないと、疲れはしないが色々と気を遣わないといけないからメンドウだと思っているところだ。
「時間になればお部屋に参ります」
「ぅん……」
「おやすみなさいませ、アーサー様」
俺が寝る演技をすると、ベラは俺の額にキスを落としてから部屋から出て行った。
何だかそれが大人な感じがして少しドキドキとしているところです。
これから本当に寝ることも可能だからこのまま寝ることにしようか、と思っていると部屋の扉がちょっとだけ開かれたことに気が付いた。
目を開かずに全能でそちらを確認すると、一切物音を立てずに部屋に入ってくるシルヴィー姉さんの姿があった。
部屋に入る前に俺が寝ていることを確認してから俺に近づいてくる。
眠っている俺の元に来て、大きなベッドに靴を脱いで俺の横に座ったシルヴィー姉さん。
「ふふっ……」
俺の頬を軽くツンツンと突きながら微笑んでいるシルヴィー姉さん。
いつもの無表情のシルヴィー姉さんでは考えられない表情を浮かべている。こんなところを他の誰かに見られたら、まず間違いなく偽物かと疑われるレベルだ。
「いつも何も喋れない……嫌われているかな……?」
シルヴィー姉さんは少しだけしょんぼりとした表情を浮かべながら俺の頭を撫でてくれる。
こうして俺がシルヴィー姉さんの本性を知ったのは最近ではない。むしろ最初からシルヴィー姉さんを嫌っているわけがなかった。
俺が生まれて間もない頃、たまたま部屋に俺しかいない時間があって、その時にシルヴィー姉さんが入ってきた。
そこで俺の顔を覗き込んでくるシルヴィー姉さんは一瞬で破顔させて、こう言った。
『私の、弟。……あなたは一生私が守る』
これを言われてからシルヴィー姉さんがどんな態度をとっていようが全く気にならなくなった。
シルヴィー姉さんは要はクーデレなのだ。
おそらく感情表現がど下手な女の子で、俺とどう接していいか分からない感じなのだろう。
……いや、何だよそれ。
前世で見たいつもはツンけんしている妹が寝ている時に布団に潜り込んできて思いを伝えてきているみたいなシチュエーションは!
いや全く一緒だけどね、今の状況と。
「アーサー、好き」
頬にキスを落としてくるシルヴィー姉さん。
「ずっと一緒にいたいくらいに好き。……でも、一緒にいられないかも」
うわっ、すっごいどういうことかを合いの手を入れて聞きたい……! ここで実は起きてました、ってなったらシルヴィー姉さんは困るだろうな。
だから黙ってシルヴィー姉さんの独り言に付き合うことにする。
「ランスロット家はペンドラゴン家の懐刀。ブリテン王国第一王子、アンリ・ペンドラゴンと婚約することは自然なことで国を考えれば最適な解……でもアーサーと一緒にいたいから、結婚したくはない」
シルヴィー姉さんはアンリ・ペンドラゴンと婚約しているのか。
でも俺と一緒にいたいから結婚はしたくない。でも公爵家だからしないといけない。みたいな感情になっているのか。
「……暗殺、する?」
俺と一緒にいたいがために第一王子を殺そうとしていますよ、このお姉様は。
「シルヴィー様……シルヴィー様……!」
「うるさい」
「ベラさんが来ちゃいますよ……!」
扉を少し開けてシルヴィー姉さんにそう言っているのはシルヴィー姉さんの専属メイドであるエルザ。
黒髪を左右で三つ編みにしている、いかにもドジっ子のような雰囲気のメイドであるエルザは、必死にシルヴィー姉さんにベラが来ることを伝えていた。
「何とかして」
「え、えぇー……!?」
でもシルヴィー姉さんの無茶な言葉に静かに驚いているエルザ。
「私はもう少し、アーサーと一緒にいたい」
「それなら堂々とお会いすればいいじゃないですか……!」
「それができていれば苦労はしない」
「そうですよね……! あっ、すぐそこまで、わ、分かりましたよぉ……!」
……エルザ、一番可哀想だな。
シルヴィー姉さんに無茶を言われて、ベラも足止めしないといけない。こんな役割を押し付けられたらやめる自信があるぞ。
でもシルヴィー姉さんの専属メイドをずっとしているらしい。まあ俺のこと以外なら普通なのかもしれないな。
「アーサー、お姉ちゃんが守るから」
まずその前に悲鳴を上げているエルザを助けてあげたらいいと思うよ? その言葉は嬉しいけどね。
誰かしら付いてくるから一人でどこかに行けるわけではないが、それでも自由に動き回ることができるようになったお年頃になったわけだ。
「アーサー! 今日もお外に遊びに行こ!」
「うん!」
ルーシー姉さんに手を引かれて今日も屋敷の外に遊びに行く。
「今日も庭園を探検するわよ!」
「あそこ広くてたのしいよね」
「いくら探検しても迷子になりそうよね」
ルーシー姉さんの今の流行りは俺と一緒に庭園を探検することだ。
ランスロット家の広大な私有地には国で一番の庭と言われるほどの庭園があり、そこは子供の俺とルーシー姉さんが散歩するのにはかなりの広さを誇っているらしい。
他のところを見たことがないから分からない。
歩いているだけでかなり楽しそうなルーシー姉さんと手を繋いで歩いていると、正面から見覚えのある人が現れた。
「あ、お姉ちゃん」
「ん」
お父上様譲りの銀髪を腰まで伸ばしている無表情な女性、シルヴィー・ランスロットが模擬剣を携えて汗をかいている状態で正面から来た。
「騎士団と訓練をしてたの?」
「そう」
「私も早く騎士団と訓練したいわね……」
「すぐにできるようになる」
この国の貴族は騎士団を持っていることが多い。
ウチはランスロット騎士団としているが家名をつけていないところもあるそうだ。
「ルーシーはどこに行くの?」
「庭園よ。お姉ちゃんは……来ないか」
「行かない」
ルーシー姉さんはシルヴィー姉さんも誘おうとしたが俺の方をチラリと見てから、まるで俺がいるからシルヴィー姉さんも来ないみたいな言い方をした。
だがそうだ。
シルヴィー姉さんは俺と行動することはほとんどないし、俺がいると他のところに行ってしまうということはランスロット家では有名な話だ。
でも俺は何も気にしていない。
「じゃあね、お姉ちゃん」
「ん」
ルーシー姉さんは俺の手を引いてシルヴィー姉さんとすれ違った。
「何でお姉ちゃんはアーサーのことが嫌いなのかしら?」
「何でだろうね」
「何かした?」
「……何もしてない」
「そうよね。私もそう思う。お姉ちゃんの男嫌いって家族にも適応されるのね……」
「シルヴィーお姉ちゃんは、男の人が嫌いなの?」
「そうよ。男に何かされたとかじゃなくて、ただ嫌いみたいね」
あぁ、そういう人はいるよな。シルヴィー姉さんもそういう人だったのか。
でも俺はシルヴィー姉さんに嫌われているかもしれないとか思っていない。何も心配していないのだから。
「シルヴィー姉さんもいつかアーサーの良さが分かるはずよ。だから今は庭園に行くわよ!」
「うん!」
ルーシー姉さんはいつも元気だな。肉体的には問題ないが、精神的には追いつけない時がある。
☆
「んぅ……」
「アーサー様、少しお休みになられますか?」
「うん……そうする……」
俺の全能は何もしていなくても俺の体を最高の状態に持ってきてくれる。
だがそれだと怪しまれるから普通の赤ん坊のようにふるまい、今は睡眠を欲しているようにする。
これを本当にどうにかしないと、疲れはしないが色々と気を遣わないといけないからメンドウだと思っているところだ。
「時間になればお部屋に参ります」
「ぅん……」
「おやすみなさいませ、アーサー様」
俺が寝る演技をすると、ベラは俺の額にキスを落としてから部屋から出て行った。
何だかそれが大人な感じがして少しドキドキとしているところです。
これから本当に寝ることも可能だからこのまま寝ることにしようか、と思っていると部屋の扉がちょっとだけ開かれたことに気が付いた。
目を開かずに全能でそちらを確認すると、一切物音を立てずに部屋に入ってくるシルヴィー姉さんの姿があった。
部屋に入る前に俺が寝ていることを確認してから俺に近づいてくる。
眠っている俺の元に来て、大きなベッドに靴を脱いで俺の横に座ったシルヴィー姉さん。
「ふふっ……」
俺の頬を軽くツンツンと突きながら微笑んでいるシルヴィー姉さん。
いつもの無表情のシルヴィー姉さんでは考えられない表情を浮かべている。こんなところを他の誰かに見られたら、まず間違いなく偽物かと疑われるレベルだ。
「いつも何も喋れない……嫌われているかな……?」
シルヴィー姉さんは少しだけしょんぼりとした表情を浮かべながら俺の頭を撫でてくれる。
こうして俺がシルヴィー姉さんの本性を知ったのは最近ではない。むしろ最初からシルヴィー姉さんを嫌っているわけがなかった。
俺が生まれて間もない頃、たまたま部屋に俺しかいない時間があって、その時にシルヴィー姉さんが入ってきた。
そこで俺の顔を覗き込んでくるシルヴィー姉さんは一瞬で破顔させて、こう言った。
『私の、弟。……あなたは一生私が守る』
これを言われてからシルヴィー姉さんがどんな態度をとっていようが全く気にならなくなった。
シルヴィー姉さんは要はクーデレなのだ。
おそらく感情表現がど下手な女の子で、俺とどう接していいか分からない感じなのだろう。
……いや、何だよそれ。
前世で見たいつもはツンけんしている妹が寝ている時に布団に潜り込んできて思いを伝えてきているみたいなシチュエーションは!
いや全く一緒だけどね、今の状況と。
「アーサー、好き」
頬にキスを落としてくるシルヴィー姉さん。
「ずっと一緒にいたいくらいに好き。……でも、一緒にいられないかも」
うわっ、すっごいどういうことかを合いの手を入れて聞きたい……! ここで実は起きてました、ってなったらシルヴィー姉さんは困るだろうな。
だから黙ってシルヴィー姉さんの独り言に付き合うことにする。
「ランスロット家はペンドラゴン家の懐刀。ブリテン王国第一王子、アンリ・ペンドラゴンと婚約することは自然なことで国を考えれば最適な解……でもアーサーと一緒にいたいから、結婚したくはない」
シルヴィー姉さんはアンリ・ペンドラゴンと婚約しているのか。
でも俺と一緒にいたいから結婚はしたくない。でも公爵家だからしないといけない。みたいな感情になっているのか。
「……暗殺、する?」
俺と一緒にいたいがために第一王子を殺そうとしていますよ、このお姉様は。
「シルヴィー様……シルヴィー様……!」
「うるさい」
「ベラさんが来ちゃいますよ……!」
扉を少し開けてシルヴィー姉さんにそう言っているのはシルヴィー姉さんの専属メイドであるエルザ。
黒髪を左右で三つ編みにしている、いかにもドジっ子のような雰囲気のメイドであるエルザは、必死にシルヴィー姉さんにベラが来ることを伝えていた。
「何とかして」
「え、えぇー……!?」
でもシルヴィー姉さんの無茶な言葉に静かに驚いているエルザ。
「私はもう少し、アーサーと一緒にいたい」
「それなら堂々とお会いすればいいじゃないですか……!」
「それができていれば苦労はしない」
「そうですよね……! あっ、すぐそこまで、わ、分かりましたよぉ……!」
……エルザ、一番可哀想だな。
シルヴィー姉さんに無茶を言われて、ベラも足止めしないといけない。こんな役割を押し付けられたらやめる自信があるぞ。
でもシルヴィー姉さんの専属メイドをずっとしているらしい。まあ俺のこと以外なら普通なのかもしれないな。
「アーサー、お姉ちゃんが守るから」
まずその前に悲鳴を上げているエルザを助けてあげたらいいと思うよ? その言葉は嬉しいけどね。
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