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学園編

第十六話

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「さて、リリメアール嬢よろしいでしょうか?」

「あっ、はい!」

やばい……いつの間にかオリビア様が退出していたよ……。


「さて、まず初めに今回の事件はあまり大事にしたくありません。なので被害にあった貴女には申し訳ありませんが……エヴリー嬢を大きく罰せることができない事を深くお詫び申し上げます。」


そう言って王太子様は私に頭を下げた。

「あっ、頭を上げてくださいっ!王太子殿下のせいではありませんし、私の怪我も大した事ないですから!!」

王太子様に頭を下げさせたままなんて、心臓に悪いわ………。モブにはやめてほしい。切実に。

「ありがとう。そう言ってもらえて助かります。」

「いえ……大丈夫ですが、理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

「勿論です。まず、覚えていないと思うので今回の事件を初めからおさらいしますね。
貴女がアラン殿の所へ訪れ、2人でお昼を食べに向かおうとした所にエヴリー嬢が現れました。
エヴリー嬢はアラン殿に何か特別な品物を売って欲しいと言ってアラン殿に詰め寄ったみたいで……
でもアラン殿は取り扱いが無いからと断っていたらしいんですよ。」

そうだったんだ………駄目だ、アラン君の事しか覚えてない……。アリアさんいたっけ?

「アラン殿と影響が少なかった人からの話なので、まだ聞き取りが不十分なんですけどね。
それでその後、エヴリー嬢は怒って、何故かリリメアール嬢を突き飛ばしました。そして動かなくなったリリメアール嬢を見て、アラン殿がキレちゃって、教室の窓やら扉やらを破壊し、周りの人々もなぎ倒した……っというのが今回の事件です。」

なるほど……ツッコミたいですな。何故私を突き飛ばしたとか、アラン君が破壊やらなぎ倒すやら……色々とツッコミしたい!!
でも王太子様にツッコミとかやめとこう……。命を大事に……。

「混乱していると思いますが、続けますね。早くオリビアの所へ帰りたいので。」

「あっ、はい、お願いします。」

この王太子様はちょいちょい惚気るな……。てか今更だけどゲームの設定と違うんだね。ゲームではオリビア様とは完全に政略的で王太子様は乗り気ではなかったもんね~。


「今回よ事件の問題点は、貴重な光と闇魔法の適性者が中心人物という点と、あと覚えている人が少ないという点です。
先程オリビアが言った通り、闇魔法は光魔法よりも適性者が少ないのでとても貴重なんです。ただ、エヴリー嬢も光魔法の適性者としてはとても強いので貴重な存在……。
良くも悪くも今注目されている2人なんですよ。」

「へぇ~……アラン君って凄いんですね~」


いや、まじでアラン君ってモブだよね……?


「その一言で済ませれる貴女も凄いですね……。
まぁ、そういった事情もあり、あまり大事にはしたくないんです。なので2人には1週間の謹慎処分を言い渡しました。すみません。」

「分かりました。アラン君が罰せられちゃうのも嫌ですし……。私はかまいません。」

正直覚えてないけど、突き飛ばされたのはちょっとムカつくけど仕方ないね。
………というか大きな問題にならないのは、ヒロイン補正ではないよね……?


「ありがとうございます。……まぁ次は無いが……」

「えっ?」

「なんでもありませんよ。」

なんか怖い声が聞こえたような……?そしてやっぱりこの笑顔の王太子様怖いわ……


「それよりも……ここから本題です。
リリメアール嬢、貴女は日本という国をご存知ですか?」

「え゛っ?!」

今、目の前のお方は、なんと、おっしゃいました、か?
聞き間違いかな……?

「あれ?もしかして違う国かな?地球はご存知ですか?」

「え゛っ?!………知っています。日本も知ってます」


聞き間違いではなかったー!!!
えっ?もしかして……王太子様も……?


「やはりそうでしたか!先程学校の保健室みたいと仰っていましたので…もしかしてと思ったのですが、そうですか~!」

「えっ?あの、王太子殿下も……もしかして日本人でしたか?」

「えぇ、私も日本人でした。平成生まれで、令和に事故で死んでしまったみたいなんですが……気付いたらこの国の王太子になっていて笑っちゃいました。」


ははは~って笑ってるけど、こっちは笑えないよ……。

「私はあまり前世のことは覚えてないんです。5歳くらいの時にふと前世は女子大生で、この世界がゲームにそっくりな世界だって思い出したんですが……あまりゲームの内容も朧げで……」

「やっぱりこの世界はゲームなのか!?」

「えっ?えぇ……ヒロインは分かりませんが、王太子様は攻略対象でしたよ。」

「まじか………」

王太子様がっくり項垂れちゃった………。大丈夫かな?

「あまり覚えていなくて申し訳ありません。」

「いえ、それだけでも助かります……。はぁ………。」

「大丈夫ですか……?」 


項垂れたまま溜め息を吐き続けてるよ………。


「さて、もう少し話を聞きたいところですが…オリビアの所へ行きたいので私は戻りますね。治癒師の方を呼んできますので安静にしていてください。」

「凄い切り替えの早さですね……。
というか、王太子殿下とオリビア様とは政略的という訳では無いのですね。」

「記憶を思い出す前はあまり乗り気ではなかったですよ。思い出したらオリビアは前世の俺のどストライクだったから……ツンデレ巨乳っ娘さいこー」

「王太子様めっちゃダダ漏れてますよ~
……ってどいつもこいつもみんなおっぱい大きいのが好きなのか……」

ちくしょう……いや、私だってこれから育つ予定だしね!

「嫌いな男はいないですね!」

「はっきり言わなくていいです!」

とどめ刺すなこんにゃろー!!!





……王太子様ははっはっはっーって笑いながら退出していった。結構愉快な性格の人なのかな?



「なんか……疲れたな……」


結局午後の授業は休みか~ちょっと残念だな。あと、後で改めてアラン君の様子を聞いてみよう……。差し入れとか持っていけるかな?何がいいかな………駄目だ。眠い。

治癒師の方が来てくれるけど(王太子様が忘れてなければ)少しだけ………目を瞑らせてもらう………起きたら………また考えよ………。





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ヒロイン(笑)しぶとい……
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