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14門戸の提案
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結局、熱が下がるまで一週間ほどかかった。
翌日起き上がるだなんて、無理な話だったのだ。
一週間まともに食べられず、伏していたので体力の低下も著しかった。しかし、私は回復したし、期間限定で肩身の狭い身の上とはいえ、安全な環境にいるという安心感は何よりも大きいものだった。
「お前に身を隠す場所を与えてもいい」
体調が回復した私に、門戸は言った。
浦上住職のもとに、今だ居候しているが、体調が回復したのでこれ以上ここにはいられない。
しかし、門戸を目の前にすると、その秀麗さに目を奪われずにはいられない。
さらに痩せこけて血の気もなくなっている私とは対照的に、美しい顔だちに、恵まれた体格、髪の毛まで艶を放っているこの男を前にすると同業者がこいつを嫌う気持ちが改めてよく分かる。この男の真偽のまじった噂だけはよく聞いたものだが、「とんでもない男前である」という内容だけは一貫していた。
「これは仕事の依頼と引き替えだ」
私は頷く。そして、条件を聞いた。
「……依頼内容は理解しました。お引き受けします」
門戸の話を聞きおわり、何とか私は言った。
呆れた話だったが、正直な感想を云うと私は仕事を失い、ひいては身の安全を失うことになる。
(この男も随分愚かなことをするのだな…)
と思うと、多少目の前の男に人間味を感じなくもないが、その愚かさの尻拭いの依頼内容だから複雑である。救いがあるとすれば、この男がその愚かさを理解しているところだ。
しかし、依頼内容は私にとっては好条件である。
期間は明確ではないし、衣食住も担保されているのだ。何より、その間門戸に頼れるというメリットもある。
依頼内容は要約すると以下の通りだ。
以前門戸は依頼にて、5歳の子供に反魂の術を使った。しかし、最近この依頼主の回りで不審なことがあるので、様子を見て欲しいと。
(反魂の術ぅ……!?)
どうも、子供の時に恩のある人から依頼されてやってしまったようだが、私も生で見たことがない術だ。さすが、天才は違う……いやいや、違う、そうじゃない。正義面してるくせに、そんな外法に手を出していたのか。しかも、不審なことが出てるということは、もう悪影響出まくりじゃないか。そんなもの、土は土に、死体は死体に返せば済む話ではないのか?
もちろん、それができないから私に役目の機会が与えられているのだろうが……
建前上、心は入れ換えたと言っても長年悪徳集団と寝食を共にしていた私である。
(まあ、適当に仕事しているふりしとけばいいか…)
と、軽い気持ちで引き受けた。かなり依頼内容を楽観的に捉えており、反魂で甦った者やその家族など、私を追っている者たちに比べたら恐ろしくも何ともない、くらいに思っていたのだ。
翌日起き上がるだなんて、無理な話だったのだ。
一週間まともに食べられず、伏していたので体力の低下も著しかった。しかし、私は回復したし、期間限定で肩身の狭い身の上とはいえ、安全な環境にいるという安心感は何よりも大きいものだった。
「お前に身を隠す場所を与えてもいい」
体調が回復した私に、門戸は言った。
浦上住職のもとに、今だ居候しているが、体調が回復したのでこれ以上ここにはいられない。
しかし、門戸を目の前にすると、その秀麗さに目を奪われずにはいられない。
さらに痩せこけて血の気もなくなっている私とは対照的に、美しい顔だちに、恵まれた体格、髪の毛まで艶を放っているこの男を前にすると同業者がこいつを嫌う気持ちが改めてよく分かる。この男の真偽のまじった噂だけはよく聞いたものだが、「とんでもない男前である」という内容だけは一貫していた。
「これは仕事の依頼と引き替えだ」
私は頷く。そして、条件を聞いた。
「……依頼内容は理解しました。お引き受けします」
門戸の話を聞きおわり、何とか私は言った。
呆れた話だったが、正直な感想を云うと私は仕事を失い、ひいては身の安全を失うことになる。
(この男も随分愚かなことをするのだな…)
と思うと、多少目の前の男に人間味を感じなくもないが、その愚かさの尻拭いの依頼内容だから複雑である。救いがあるとすれば、この男がその愚かさを理解しているところだ。
しかし、依頼内容は私にとっては好条件である。
期間は明確ではないし、衣食住も担保されているのだ。何より、その間門戸に頼れるというメリットもある。
依頼内容は要約すると以下の通りだ。
以前門戸は依頼にて、5歳の子供に反魂の術を使った。しかし、最近この依頼主の回りで不審なことがあるので、様子を見て欲しいと。
(反魂の術ぅ……!?)
どうも、子供の時に恩のある人から依頼されてやってしまったようだが、私も生で見たことがない術だ。さすが、天才は違う……いやいや、違う、そうじゃない。正義面してるくせに、そんな外法に手を出していたのか。しかも、不審なことが出てるということは、もう悪影響出まくりじゃないか。そんなもの、土は土に、死体は死体に返せば済む話ではないのか?
もちろん、それができないから私に役目の機会が与えられているのだろうが……
建前上、心は入れ換えたと言っても長年悪徳集団と寝食を共にしていた私である。
(まあ、適当に仕事しているふりしとけばいいか…)
と、軽い気持ちで引き受けた。かなり依頼内容を楽観的に捉えており、反魂で甦った者やその家族など、私を追っている者たちに比べたら恐ろしくも何ともない、くらいに思っていたのだ。
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