私が悪役令嬢になるまでの物語

それはおとぎ話のような①

ときどき思うことがある。
あのとき、ああしなければよかった、ああすればよかった……と。
過去は変えられないが、それでも思わずにいられなかった。
今思えば、私はおとぎ話のような幸せな世界にいた。
優しい母がいて、母を愛する父がいて、可愛い弟がいて、私はその辺を駆け回ることのできる健康な体があった……。
幸せな日々を終わらせたのは、幸せが当たり前で延々に続くものだと信じて疑わなかった、幼く愚かな私だった。