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5. 欲求
ヴィクトルさんとお話しです
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「俺様は負けました。どうぞ踏むなり蹴るなりしてください」
「止めろよショーゴ兄さん。本気で戦ったわけじゃないだろ?」
「負けは負けだ。この程度のけじめはつけるさ」
ショーゴさんは立ち上がると、二人でこちらに向かってきます。
最後ショーゴさんは、自分で動いたように見えました。負けたとは口にしていましたけど、これって……?
「えっと……僕たち、勝ったんだ、よね?」
「……そうだと思います、けど」
シイキさんもまだ実感が湧いていないようでした。ですが、私たちの薄膜が消えていないのに、ショーゴさんは歩いています。なら、
「私たちの勝ち、でいいのよね?」
「おう、その通りだ」
歩いてきたショーゴさんが笑みを浮かべ、パチパチと拍手しました。
「完敗だ。まさか俺様の防御を正面から打ち破るなんてな。やるじゃねぇか」
「……どうも。それで、私たちの実力は認めてくれたのかしら?」
「ああ。お前らは俺様に勝った。まだ危なっかしいところはあるが、今は十分だ。良い仲間を持ったな、ユート」
「だろ?」
笑い合うお二人を前にして、ようやく安心できました。シルファさんとシイキさんもホッとした様子で、薄膜を消します。
「さぁて、ユートの周りに頼もしい仲間がいることも確認できたし、歓迎パーティーでも開くとするか!」
「え、実力は十分なんじゃ……」
「別にユートを引き入れるためのもんじゃねぇよ。俺様の弟分のために、遠路はるばるやってきて実力を示してくれたお人好し共に向けたもんだ。嫌なら無理にとは言わねぇが」
ショーゴさんの視線を受けたシルファさんは、少し考えてから答えました。
「嫌と言うわけではないけど、まだ宿を取れていないの。一度外に出させてもらうわ」
「宿だぁ? んなもんここに泊まりゃいいだろ」
「ここに? 部屋があるの?」
「当たり前だ。こっちから呼んでおいて寝床も用意しねぇなんてふざけた真似するかよ」
そう言えば、ここに来るまでのお金はユートさんが用意してくれていたのでした。ショーゴさんから渡されたと言って。まさか泊まる場所まで用意してくれるだなんて。
「で、でも、ピアサさんたちは……?」
「あいつらは俺様が呼んだわけじゃねぇし、モネが言うには観光のついでみてぇな話だったからな。部屋は空いてるが、向こうで用意してんだろ」
「……そういうことなら、パーティーの件も含めて、好意に甘えさせてもらうわ」
シルファさんが、私たちに軽く目配せしてから了承すると、ショーゴさんは笑みを深くします。
「そうこなくっちゃな。ヴィクトル」
「はい」
突然、背後から声が上がりました。驚いて振り向くと、ピアサさんたちを送っていったはずの二角族の男の人が舞台の下で立ってます。
いつからそこに居たんでしょう? 全然気がつきませんでした。
「この四人を来賓室に連れてってくれ。俺は舞台を直してから行く」
「かしこまりました。皆さま、こちらへ」
ヴィクトルさんの案内に従って、舞台を降りた私たちは外に向かいます。
建物から出ると、シイキさんが大きく息を吐きました。
「はぁあ……。何とかなったね……」
「皆のお陰よ。ありがとう。急に作戦を変えて悪かったわね」
「そう言えば、どうして変えたんですか?」
最初は舞台に開いた穴を狙って、ショーゴさんの足元を崩すという作戦でしたのに。
「ショーゴがそれを誘っていると悟ったからよ。一歩動かせば勝ちと言う条件自体が罠だったの。ユートから話を聞いてなかったら気づかなかったわ」
「だから一点突破のプランBだったわけだね。練習の成果を出せて良かったよ」
「成程な。ごめん、それは俺が気づくべきだった」
「いいのよ。作戦を決めるのは私なのだから。それにもしかしたら、ショーゴは更に裏を読んでいたかもしれなかったのだし。あなたはしっかりと自分の役目を果たしてくれたわ」
「そ、そうです! ユートさん、最後何をしたんですか? 体が光って、すごい速さで……」
「あ、それそれ! 僕もすっごく気になってた」
シイキさんと頷き合います。あんなユートさんは見たことがありませんでした。
「あれは連成だ。夏季休暇が始まる前からシルファと二人で特訓しててさ。成功確率は半々くらいだったけど、上手くいって良かった」
「連成!?」
「え、え? でもそれじゃあ、いつもより効果が小さくなっちゃうんじゃ……」
「普通に作ったらそうだな。けど手だけじゃなくて体全体から魔力を出して、その魔力を留めておくことで、魔術式の維持に使う魔力を省いたんだ」
「維持に使う魔力を、省く?」
「要はこういうことよ」
それからシルファさんは、ユートさんの連成方法を氷に例えて説明をしてくれました。原理はなんとなく納得できましたが、それでもそんなことができるなんて信じられません。
「信じられない?」
「だ、だって、魔力を操るのに、手を使わないってことですよね? そんなこと……」
「操ると言っても、魔術式に干渉しない程度の魔力を、維持したい魔術式がある場所に流し続けるといったものよ。魔力の放出さえできれば不可能ではないわ」
「で、でもさ! 魔術式の周りの魔力量ができるだけ均一になるよう調整しないといけないわけでしょ? 偏りがあったら、魔力が少ない方から魔術式が崩れちゃうかもしれないし、逆に多すぎちゃったらそこだけ魔術式に干渉しちゃうし、なのにそんな、川の中で絵を描くみたいなこと……」
「魔力が外に洩れる状態だから、調整は確かに至難の業ね。だけどユートは足でも魔術式を作れるほどの技術を持っているのよ。不安定な楕円形魔術式ならともかく、普通の魔術式を数秒維持する程度の調整はできてもおかしくないわ」
「結構難しかったけどな」
「……でも、できたんですね……」
「シルファが付き合ってくれたお陰だ。本当にありがとな、シルファ」
「付き合っ……! んんっ。私は別に、チームリーダーとして当然のことをしたまでよ。礼は要らないわ」
「素直じゃないなぁ……」
ユートさんには本当に、いつも驚かされます。シイキさんも苦笑いしていました。
ですが、それからすぐ、シイキさんは何か悩んでいるような表情になります。
「……ところで、さ。ユート君」
「ん?」
「本当に良かったの? その、ショーゴさんの誘いを断って」
「あ……」
それは、私も気になっていたことでした。気になっていて、でも怖くて訊けなくて、考えないようにしていたことでした。
確かに私たちはショーゴさんに勝てました。でも一人ひとりの実力で見たら、まだまだショーゴさんたちの方が上だと思います。
ユートさんが言っていたように、危ない場所に訪れる機会は多くなるかもしれません。それでも、ユートさんなら大丈夫な気がします。それにそういう場所の方が、ユートさんは強くなれるのではないでしょうか?
考えれば考えるほど、ユートさんはショーゴさんたちと一緒に居た方が良いように思えてきてしまいます。だけどそれを口にするのは怖くて、結局私は、黙ってユートさんの答えを待つだけでした。
「ああ。俺は多分、シイキたちと一緒に居る方が合ってる」
「どうして? 実力は向こうが上だし、環境的にも靴を脱げるこっちの方が良いと思うのに」
シイキさんは控え目にシルファさんを見ながら尋ねます。そのもっともな指摘に、けれど、ユートさんは首を振って返しました。
「確かにショーゴ兄さんは強いし、靴を脱いだままでいられるのも良いかもな。けど多分、それだと昔に戻るだけなんだ」
「昔に?」
「ああ。いつ危険な目に遭っても問題ないようずっと緊張して過ごしていた、昔に」
「……それは、ダメなの? 大変だろうけど、その方が強くなれる気がするんだけど」
「前はその方が良いって思ってたんだけどな。けどそれだと気が休まらないだろ? 余裕が無くなると視野が狭まって、袋小路に入っちゃう。すぐに実力がつく方法ばかりを追い求めて、戦い方に幅が無くなる。それじゃダメなんだ」
答えて、ユートさんはシルファさんに笑いかけました。シルファさんは髪を軽く払います。
「動く防御魔法も、連成も、じっくり実力をつけられるグリマール魔法学院だから身に付けられたんだ。だから俺は今の環境を変えるつもりはないよ」
「誤解の無いよう言っておきますが、ここもそこまで気が休まらないわけではありませんよ」
そこで初めて、私たちを案内してくれているヴィクトルさんが反応しました。ヴィクトルさんは前を向いたまま、柔らかな口調で続けます。
「もっとも、ユートさんは特別かもしれませんけどね。ショーゴ様は随分と、あなたを気に入っているようですから」
「ヴィクトルさんも結構気に入られていると思いますよ? 昔のショーゴ兄さんは、自分に関わることは全部自分でやりたがってたし」
「おっと、これは一本取られましたね。ユートさんの言う通り、初めは何もさせてもらえませんでした」
「俺なんか最後まで、兄さんに何もできなかったですよ。ヴィクトルさんはどうやってショーゴ兄さんと仲良くなったんですか?」
「そうですね……。俺は何度もショーゴ様に挑んで、認めてもらいました」
「じゃあ俺と同じですね。再戦するの難しくなかったですか?」
「はい。最初は相手にされませんでした。ですが何度も申し込むうちに、次第に稽古をつけてくれるようになったんです」
「最初のハードル高くなかったです?」
「それはもう。かなりの無理難題を出されました」
ショーゴさんという共通の知り合いがいるというのもあるでしょうけど、ユートさんは初対面のヴィクトルさんとも楽しそうにお話ししています。私は黙って、お二人のお話しに耳を傾けます。
「それでも、こんな俺をここまで強くしてくれたので、とても感謝しているんです。だから、あまり悪く言わないでくださいね」
「それは向こう次第ね」
「……あのっ」
振り向かないヴィクトルさんにシルファさんが答えた後の間、他の人がお話ししようとしないことを確認してから、私は声を上げました。
「何でしょう?」
「ヴィクトルさんは、その、どうしてショーゴさんと仲が良いのですか? 私、えっと、角が折れた鬼人族の方は、周りから良く思われないって話を聞いたことがあって、それで……」
その話は、イデアさんから聞いたものでした。角は鬼人族の誇りで、それを失った人は失角者と呼ばれて蔑まれてしまうそうです。
ショーゴさんは、角が二本とも折れていました。それにも関わらず、ヴィクトルさんたちはショーゴさんを慕っています。きっとミリアさんが尊敬されているみたいに、角のことが気にならなくなるほどの理由があるはずです。それが何なのか、私は訊かずにいられませんでした。
ヴィクトルさんは、軽く頷いてから答えます。
「確かに珍しい光景かも知れませんね。実際この学校の外には、ショーゴ様を失角者と罵る輩も数多くいます。口にした瞬間、叩きのめしますが」
最後の方は、声が低くなりました。耳元に伸びようとする手を、服を掴んで抑えます。
「っと、失礼しました。俺たちがショーゴ様を尊敬している理由ですよね? それは簡単です」
ヴィクトルさんは、迷いなく続けました。
「ショーゴ様が強いからですよ」
「……え?」
予想外の答えに、声が詰まります。胸に渦巻いた疑問は、シルファさんが言葉にしました。
「つまり、仮にショーゴが弱くなったら尊敬することもなくなるということ?」
「はい。少なくとも俺は、相手の強さにこそ尊敬を払うべきと考えてますから」
「そんな……」
「逆に訊きたいんですが、あなた方は相手に敬う点が失くなっても尊敬を続けるのですか? 自分で自分の食べ物も確保できないような弱者に成り下がった者を、それでも大切に思うのですか?」
「そ、れは……」
「思います!」
強く答えたのは、シイキさんでした。
「自分を育ててくれた相手なら、大切に思うのは当然です。もしその人が動けなくなったとしたら、お世話になった分、今度は僕が支えます」
「支えるとまで言いますか。美徳ですね。ですが現実的でない」
ヴィクトルさんが鼻で笑います。
「他人を養うというのは大変ですよ。負担も責任も重くのしかかります。それら全てを背負い込んで尚、尊敬の念が微塵も揺るがないというのなら大したものですが、俺なら我慢できないでしょうね」
「随分と冷たいのね」
「俺からしたら、そちらは残酷ですよ。もし俺が動けなくなったら、殺してほしいと思います。自分が他人の足枷になるなど羞恥に堪えませんから。あなた方はどうです? 誰かに支えてもらわなければ生きていけない身に堕ちたとして、他人に迷惑をかけてまでのうのうと生きていけますか?」
「っ……!」
静かな問いが、鋭く胸を刺しました。頭は勝手に幻を見せてきます。
大怪我をした私は病院で生活するようになって、お見舞いに来てくれるシルファさんたちは、でも段々と忙しくなって来なくなって、私は、誰にとっても『お荷物』になって……!
「ユートさんはどうですか? もし自分が動けなくなったとしたら、一生ショーゴ様に面倒を見てもらおうなどと考えていたりするのでしょうか?」
「まさか」
即答でした。俺も殺してほしい。そう続く気がして、両手が耳を閉じようとして、でも間に合わなくて――
「たとえ動けなくなったとしても、俺は俺の自由にします」
……自由、に?
「それはどういう意味です?」
「その時の俺にできることをするって意味です。死ぬまでは自分に何ができるか考えて、したいことをします」
「周りのことは考えないと?」
「動けない状態だと、気にかける余裕もなさそうですから。なので周りの人にも好きにしてもらいます。俺を助けたい人は助ければいいし、殺したい人は殺せばいい」
「殺……っ!?」
あまりに残酷な言葉に思考が停止します。殺したい人は、殺せばいい? それは、それは……。
「俺は俺の人生を生き抜くだけです。自力で生きていけなくなっても、生きている内はできることをします」
「……成程」
ユートさんの答えに、ヴィクトルさんは安堵したような声を洩らしました。
「安心しました。ユートさんも強いのですね」
「俺はまだ、そこまで強くないですよ」
「実力ではなく、心の話ですよ。俺がショーゴ様を尊敬しているところも、そういった部分ですから」
「こ、心の強さ、ですか……?」
角の無いショーゴさんを尊敬する理由。それは戦いでの強さではなかったのでしょうか?
「はい。二角族の奴らは大抵、自分の角にプライドを持っています。角こそが自身の存在証明とさえ思っている者も珍しくありません。根拠も何もありませんがね。そしてそういう輩ほど、角を失うと腑抜けるんですよ。五体満足であるにも限らず、生きた屍になるんです」
その声音には、嘲りの色が見えました。
「ですが、ショーゴ様は違いました。角を失っているにもかかわらず自信に満ち溢れ、その上器も大きく、角がどうのという下らない考えは持っていません。そんな揺るぎない自分を持つショーゴ様だからこそ、俺は尊敬してるんです」
勿論、実力が伴ってこそではあるのですが、とヴィクトルさんは付け足します。
「結局、実力が無ければ尊敬はしないということね」
「それはそうですよ。口だけ大きくても仕方ないですから」
「そこに関しては、同意見だわ」
「ならそういう理解で問題ないです。俺に限らず、鬼人族は強者を尊敬します。未だに角を盲信する者も少なからずいますが、最終的にはそこに落ち着くはずです。……長くなってしまいましたけど、質問の答えはこれで良いですか?」
「はい……。ありがとう、ございました」
強いから、尊敬される。じゃあ、ミリアさんも強いのでしょうか? 心の強さ、志の強さならとてもすごいと思いますけど、それだけで尊敬されるのでしょうか? 分かりません。
でも、心の強さ、それが大切だというのは理解できました。私は、魔法という力は持っていますけど、お昼に襲われた時、怖がって使えませんでした。それじゃあいけないんです。
……強く、ならないと。
私は胸の前で、両手をぎゅっと重ねました。
◇ ◇ ◇
「楽しめたか?」
魔法石に魔力を注いで舞台の修復をする俺様は、振り向かずに尋ねた。
「……いつから気づかれていましたか?」
「舞台の中央に立って、少ししてだな。隠密魔法、上手くなったじゃねぇか」
「ありがとうございます」
「で? 楽しめたか?」
「あまり楽しいとは思えませんでした」
「へぇ」
修復を終えて振り返る。モネは眼鏡越しに不満そうな視線を向けていた。
「最後、どうして避けたのですか? 防御魔法でも間に合ったはずです」
「そりゃ、俺様が出した勝利条件より難しいことをして見せたからだな。潔く負けを認めただけだ」
「そもそも、早い内から攻勢に出ていればすぐに勝負はついていたはずです」
「それじゃあユートたちの実力が見れねぇだろうが」
「それで負けるようであれば、その程度の実力だったということです」
「一理あるが、俺様が本気出したらお前だって何もできねぇだろ」
「………………」
モネは黙って口を尖らせる。まったく、可愛い奴だな。
「失望したか? そろそろ独立してもいいんだぜ?」
「いいえ。たとえショーゴ様が動けなくなったとしても、私は最期まで支え続ける所存です」
「んなことすんな。強さにこそ敬意を払えって、何度も言ってんだろが」
「その度に私も、この信条を変えるつもりはないと返しているはずです」
やれやれ、相変わらず強情だな。一時の恩で人生決めちまいやがって。
ま、俺様も似たようなもんだが。
「だったら一度負けたことくらい、大目に見てくれ」
「それとこれとは話が別です。ショーゴ様が不甲斐ない姿を見せるなら、私たちが抑止力として振る舞うことになりますよ?」
「そりゃ困るな。俺様はお前らほど頭が良くねぇんだ」
「でしたら、今度はもう少し上手い落とし所を見つけてください」
「へいへい」
頭を掻いて出口に向かう。モネは静かに後に続いた。相変わらず、出会った時からずっと同じ立ち位置だな、こいつは。ちったぁ意識が変わったかと思ったんだが。
「ん? そう言や、鐘はどうなったんだ?」
「ヤンに任せました」
「……俺様がやっとくから、お前はヴィクトルを手伝え。今度は投げんなよ」
「はい」
生意気にはなったか。俺様は苦笑いして、モネの頭に軽く手刀を落とした。
「止めろよショーゴ兄さん。本気で戦ったわけじゃないだろ?」
「負けは負けだ。この程度のけじめはつけるさ」
ショーゴさんは立ち上がると、二人でこちらに向かってきます。
最後ショーゴさんは、自分で動いたように見えました。負けたとは口にしていましたけど、これって……?
「えっと……僕たち、勝ったんだ、よね?」
「……そうだと思います、けど」
シイキさんもまだ実感が湧いていないようでした。ですが、私たちの薄膜が消えていないのに、ショーゴさんは歩いています。なら、
「私たちの勝ち、でいいのよね?」
「おう、その通りだ」
歩いてきたショーゴさんが笑みを浮かべ、パチパチと拍手しました。
「完敗だ。まさか俺様の防御を正面から打ち破るなんてな。やるじゃねぇか」
「……どうも。それで、私たちの実力は認めてくれたのかしら?」
「ああ。お前らは俺様に勝った。まだ危なっかしいところはあるが、今は十分だ。良い仲間を持ったな、ユート」
「だろ?」
笑い合うお二人を前にして、ようやく安心できました。シルファさんとシイキさんもホッとした様子で、薄膜を消します。
「さぁて、ユートの周りに頼もしい仲間がいることも確認できたし、歓迎パーティーでも開くとするか!」
「え、実力は十分なんじゃ……」
「別にユートを引き入れるためのもんじゃねぇよ。俺様の弟分のために、遠路はるばるやってきて実力を示してくれたお人好し共に向けたもんだ。嫌なら無理にとは言わねぇが」
ショーゴさんの視線を受けたシルファさんは、少し考えてから答えました。
「嫌と言うわけではないけど、まだ宿を取れていないの。一度外に出させてもらうわ」
「宿だぁ? んなもんここに泊まりゃいいだろ」
「ここに? 部屋があるの?」
「当たり前だ。こっちから呼んでおいて寝床も用意しねぇなんてふざけた真似するかよ」
そう言えば、ここに来るまでのお金はユートさんが用意してくれていたのでした。ショーゴさんから渡されたと言って。まさか泊まる場所まで用意してくれるだなんて。
「で、でも、ピアサさんたちは……?」
「あいつらは俺様が呼んだわけじゃねぇし、モネが言うには観光のついでみてぇな話だったからな。部屋は空いてるが、向こうで用意してんだろ」
「……そういうことなら、パーティーの件も含めて、好意に甘えさせてもらうわ」
シルファさんが、私たちに軽く目配せしてから了承すると、ショーゴさんは笑みを深くします。
「そうこなくっちゃな。ヴィクトル」
「はい」
突然、背後から声が上がりました。驚いて振り向くと、ピアサさんたちを送っていったはずの二角族の男の人が舞台の下で立ってます。
いつからそこに居たんでしょう? 全然気がつきませんでした。
「この四人を来賓室に連れてってくれ。俺は舞台を直してから行く」
「かしこまりました。皆さま、こちらへ」
ヴィクトルさんの案内に従って、舞台を降りた私たちは外に向かいます。
建物から出ると、シイキさんが大きく息を吐きました。
「はぁあ……。何とかなったね……」
「皆のお陰よ。ありがとう。急に作戦を変えて悪かったわね」
「そう言えば、どうして変えたんですか?」
最初は舞台に開いた穴を狙って、ショーゴさんの足元を崩すという作戦でしたのに。
「ショーゴがそれを誘っていると悟ったからよ。一歩動かせば勝ちと言う条件自体が罠だったの。ユートから話を聞いてなかったら気づかなかったわ」
「だから一点突破のプランBだったわけだね。練習の成果を出せて良かったよ」
「成程な。ごめん、それは俺が気づくべきだった」
「いいのよ。作戦を決めるのは私なのだから。それにもしかしたら、ショーゴは更に裏を読んでいたかもしれなかったのだし。あなたはしっかりと自分の役目を果たしてくれたわ」
「そ、そうです! ユートさん、最後何をしたんですか? 体が光って、すごい速さで……」
「あ、それそれ! 僕もすっごく気になってた」
シイキさんと頷き合います。あんなユートさんは見たことがありませんでした。
「あれは連成だ。夏季休暇が始まる前からシルファと二人で特訓しててさ。成功確率は半々くらいだったけど、上手くいって良かった」
「連成!?」
「え、え? でもそれじゃあ、いつもより効果が小さくなっちゃうんじゃ……」
「普通に作ったらそうだな。けど手だけじゃなくて体全体から魔力を出して、その魔力を留めておくことで、魔術式の維持に使う魔力を省いたんだ」
「維持に使う魔力を、省く?」
「要はこういうことよ」
それからシルファさんは、ユートさんの連成方法を氷に例えて説明をしてくれました。原理はなんとなく納得できましたが、それでもそんなことができるなんて信じられません。
「信じられない?」
「だ、だって、魔力を操るのに、手を使わないってことですよね? そんなこと……」
「操ると言っても、魔術式に干渉しない程度の魔力を、維持したい魔術式がある場所に流し続けるといったものよ。魔力の放出さえできれば不可能ではないわ」
「で、でもさ! 魔術式の周りの魔力量ができるだけ均一になるよう調整しないといけないわけでしょ? 偏りがあったら、魔力が少ない方から魔術式が崩れちゃうかもしれないし、逆に多すぎちゃったらそこだけ魔術式に干渉しちゃうし、なのにそんな、川の中で絵を描くみたいなこと……」
「魔力が外に洩れる状態だから、調整は確かに至難の業ね。だけどユートは足でも魔術式を作れるほどの技術を持っているのよ。不安定な楕円形魔術式ならともかく、普通の魔術式を数秒維持する程度の調整はできてもおかしくないわ」
「結構難しかったけどな」
「……でも、できたんですね……」
「シルファが付き合ってくれたお陰だ。本当にありがとな、シルファ」
「付き合っ……! んんっ。私は別に、チームリーダーとして当然のことをしたまでよ。礼は要らないわ」
「素直じゃないなぁ……」
ユートさんには本当に、いつも驚かされます。シイキさんも苦笑いしていました。
ですが、それからすぐ、シイキさんは何か悩んでいるような表情になります。
「……ところで、さ。ユート君」
「ん?」
「本当に良かったの? その、ショーゴさんの誘いを断って」
「あ……」
それは、私も気になっていたことでした。気になっていて、でも怖くて訊けなくて、考えないようにしていたことでした。
確かに私たちはショーゴさんに勝てました。でも一人ひとりの実力で見たら、まだまだショーゴさんたちの方が上だと思います。
ユートさんが言っていたように、危ない場所に訪れる機会は多くなるかもしれません。それでも、ユートさんなら大丈夫な気がします。それにそういう場所の方が、ユートさんは強くなれるのではないでしょうか?
考えれば考えるほど、ユートさんはショーゴさんたちと一緒に居た方が良いように思えてきてしまいます。だけどそれを口にするのは怖くて、結局私は、黙ってユートさんの答えを待つだけでした。
「ああ。俺は多分、シイキたちと一緒に居る方が合ってる」
「どうして? 実力は向こうが上だし、環境的にも靴を脱げるこっちの方が良いと思うのに」
シイキさんは控え目にシルファさんを見ながら尋ねます。そのもっともな指摘に、けれど、ユートさんは首を振って返しました。
「確かにショーゴ兄さんは強いし、靴を脱いだままでいられるのも良いかもな。けど多分、それだと昔に戻るだけなんだ」
「昔に?」
「ああ。いつ危険な目に遭っても問題ないようずっと緊張して過ごしていた、昔に」
「……それは、ダメなの? 大変だろうけど、その方が強くなれる気がするんだけど」
「前はその方が良いって思ってたんだけどな。けどそれだと気が休まらないだろ? 余裕が無くなると視野が狭まって、袋小路に入っちゃう。すぐに実力がつく方法ばかりを追い求めて、戦い方に幅が無くなる。それじゃダメなんだ」
答えて、ユートさんはシルファさんに笑いかけました。シルファさんは髪を軽く払います。
「動く防御魔法も、連成も、じっくり実力をつけられるグリマール魔法学院だから身に付けられたんだ。だから俺は今の環境を変えるつもりはないよ」
「誤解の無いよう言っておきますが、ここもそこまで気が休まらないわけではありませんよ」
そこで初めて、私たちを案内してくれているヴィクトルさんが反応しました。ヴィクトルさんは前を向いたまま、柔らかな口調で続けます。
「もっとも、ユートさんは特別かもしれませんけどね。ショーゴ様は随分と、あなたを気に入っているようですから」
「ヴィクトルさんも結構気に入られていると思いますよ? 昔のショーゴ兄さんは、自分に関わることは全部自分でやりたがってたし」
「おっと、これは一本取られましたね。ユートさんの言う通り、初めは何もさせてもらえませんでした」
「俺なんか最後まで、兄さんに何もできなかったですよ。ヴィクトルさんはどうやってショーゴ兄さんと仲良くなったんですか?」
「そうですね……。俺は何度もショーゴ様に挑んで、認めてもらいました」
「じゃあ俺と同じですね。再戦するの難しくなかったですか?」
「はい。最初は相手にされませんでした。ですが何度も申し込むうちに、次第に稽古をつけてくれるようになったんです」
「最初のハードル高くなかったです?」
「それはもう。かなりの無理難題を出されました」
ショーゴさんという共通の知り合いがいるというのもあるでしょうけど、ユートさんは初対面のヴィクトルさんとも楽しそうにお話ししています。私は黙って、お二人のお話しに耳を傾けます。
「それでも、こんな俺をここまで強くしてくれたので、とても感謝しているんです。だから、あまり悪く言わないでくださいね」
「それは向こう次第ね」
「……あのっ」
振り向かないヴィクトルさんにシルファさんが答えた後の間、他の人がお話ししようとしないことを確認してから、私は声を上げました。
「何でしょう?」
「ヴィクトルさんは、その、どうしてショーゴさんと仲が良いのですか? 私、えっと、角が折れた鬼人族の方は、周りから良く思われないって話を聞いたことがあって、それで……」
その話は、イデアさんから聞いたものでした。角は鬼人族の誇りで、それを失った人は失角者と呼ばれて蔑まれてしまうそうです。
ショーゴさんは、角が二本とも折れていました。それにも関わらず、ヴィクトルさんたちはショーゴさんを慕っています。きっとミリアさんが尊敬されているみたいに、角のことが気にならなくなるほどの理由があるはずです。それが何なのか、私は訊かずにいられませんでした。
ヴィクトルさんは、軽く頷いてから答えます。
「確かに珍しい光景かも知れませんね。実際この学校の外には、ショーゴ様を失角者と罵る輩も数多くいます。口にした瞬間、叩きのめしますが」
最後の方は、声が低くなりました。耳元に伸びようとする手を、服を掴んで抑えます。
「っと、失礼しました。俺たちがショーゴ様を尊敬している理由ですよね? それは簡単です」
ヴィクトルさんは、迷いなく続けました。
「ショーゴ様が強いからですよ」
「……え?」
予想外の答えに、声が詰まります。胸に渦巻いた疑問は、シルファさんが言葉にしました。
「つまり、仮にショーゴが弱くなったら尊敬することもなくなるということ?」
「はい。少なくとも俺は、相手の強さにこそ尊敬を払うべきと考えてますから」
「そんな……」
「逆に訊きたいんですが、あなた方は相手に敬う点が失くなっても尊敬を続けるのですか? 自分で自分の食べ物も確保できないような弱者に成り下がった者を、それでも大切に思うのですか?」
「そ、れは……」
「思います!」
強く答えたのは、シイキさんでした。
「自分を育ててくれた相手なら、大切に思うのは当然です。もしその人が動けなくなったとしたら、お世話になった分、今度は僕が支えます」
「支えるとまで言いますか。美徳ですね。ですが現実的でない」
ヴィクトルさんが鼻で笑います。
「他人を養うというのは大変ですよ。負担も責任も重くのしかかります。それら全てを背負い込んで尚、尊敬の念が微塵も揺るがないというのなら大したものですが、俺なら我慢できないでしょうね」
「随分と冷たいのね」
「俺からしたら、そちらは残酷ですよ。もし俺が動けなくなったら、殺してほしいと思います。自分が他人の足枷になるなど羞恥に堪えませんから。あなた方はどうです? 誰かに支えてもらわなければ生きていけない身に堕ちたとして、他人に迷惑をかけてまでのうのうと生きていけますか?」
「っ……!」
静かな問いが、鋭く胸を刺しました。頭は勝手に幻を見せてきます。
大怪我をした私は病院で生活するようになって、お見舞いに来てくれるシルファさんたちは、でも段々と忙しくなって来なくなって、私は、誰にとっても『お荷物』になって……!
「ユートさんはどうですか? もし自分が動けなくなったとしたら、一生ショーゴ様に面倒を見てもらおうなどと考えていたりするのでしょうか?」
「まさか」
即答でした。俺も殺してほしい。そう続く気がして、両手が耳を閉じようとして、でも間に合わなくて――
「たとえ動けなくなったとしても、俺は俺の自由にします」
……自由、に?
「それはどういう意味です?」
「その時の俺にできることをするって意味です。死ぬまでは自分に何ができるか考えて、したいことをします」
「周りのことは考えないと?」
「動けない状態だと、気にかける余裕もなさそうですから。なので周りの人にも好きにしてもらいます。俺を助けたい人は助ければいいし、殺したい人は殺せばいい」
「殺……っ!?」
あまりに残酷な言葉に思考が停止します。殺したい人は、殺せばいい? それは、それは……。
「俺は俺の人生を生き抜くだけです。自力で生きていけなくなっても、生きている内はできることをします」
「……成程」
ユートさんの答えに、ヴィクトルさんは安堵したような声を洩らしました。
「安心しました。ユートさんも強いのですね」
「俺はまだ、そこまで強くないですよ」
「実力ではなく、心の話ですよ。俺がショーゴ様を尊敬しているところも、そういった部分ですから」
「こ、心の強さ、ですか……?」
角の無いショーゴさんを尊敬する理由。それは戦いでの強さではなかったのでしょうか?
「はい。二角族の奴らは大抵、自分の角にプライドを持っています。角こそが自身の存在証明とさえ思っている者も珍しくありません。根拠も何もありませんがね。そしてそういう輩ほど、角を失うと腑抜けるんですよ。五体満足であるにも限らず、生きた屍になるんです」
その声音には、嘲りの色が見えました。
「ですが、ショーゴ様は違いました。角を失っているにもかかわらず自信に満ち溢れ、その上器も大きく、角がどうのという下らない考えは持っていません。そんな揺るぎない自分を持つショーゴ様だからこそ、俺は尊敬してるんです」
勿論、実力が伴ってこそではあるのですが、とヴィクトルさんは付け足します。
「結局、実力が無ければ尊敬はしないということね」
「それはそうですよ。口だけ大きくても仕方ないですから」
「そこに関しては、同意見だわ」
「ならそういう理解で問題ないです。俺に限らず、鬼人族は強者を尊敬します。未だに角を盲信する者も少なからずいますが、最終的にはそこに落ち着くはずです。……長くなってしまいましたけど、質問の答えはこれで良いですか?」
「はい……。ありがとう、ございました」
強いから、尊敬される。じゃあ、ミリアさんも強いのでしょうか? 心の強さ、志の強さならとてもすごいと思いますけど、それだけで尊敬されるのでしょうか? 分かりません。
でも、心の強さ、それが大切だというのは理解できました。私は、魔法という力は持っていますけど、お昼に襲われた時、怖がって使えませんでした。それじゃあいけないんです。
……強く、ならないと。
私は胸の前で、両手をぎゅっと重ねました。
◇ ◇ ◇
「楽しめたか?」
魔法石に魔力を注いで舞台の修復をする俺様は、振り向かずに尋ねた。
「……いつから気づかれていましたか?」
「舞台の中央に立って、少ししてだな。隠密魔法、上手くなったじゃねぇか」
「ありがとうございます」
「で? 楽しめたか?」
「あまり楽しいとは思えませんでした」
「へぇ」
修復を終えて振り返る。モネは眼鏡越しに不満そうな視線を向けていた。
「最後、どうして避けたのですか? 防御魔法でも間に合ったはずです」
「そりゃ、俺様が出した勝利条件より難しいことをして見せたからだな。潔く負けを認めただけだ」
「そもそも、早い内から攻勢に出ていればすぐに勝負はついていたはずです」
「それじゃあユートたちの実力が見れねぇだろうが」
「それで負けるようであれば、その程度の実力だったということです」
「一理あるが、俺様が本気出したらお前だって何もできねぇだろ」
「………………」
モネは黙って口を尖らせる。まったく、可愛い奴だな。
「失望したか? そろそろ独立してもいいんだぜ?」
「いいえ。たとえショーゴ様が動けなくなったとしても、私は最期まで支え続ける所存です」
「んなことすんな。強さにこそ敬意を払えって、何度も言ってんだろが」
「その度に私も、この信条を変えるつもりはないと返しているはずです」
やれやれ、相変わらず強情だな。一時の恩で人生決めちまいやがって。
ま、俺様も似たようなもんだが。
「だったら一度負けたことくらい、大目に見てくれ」
「それとこれとは話が別です。ショーゴ様が不甲斐ない姿を見せるなら、私たちが抑止力として振る舞うことになりますよ?」
「そりゃ困るな。俺様はお前らほど頭が良くねぇんだ」
「でしたら、今度はもう少し上手い落とし所を見つけてください」
「へいへい」
頭を掻いて出口に向かう。モネは静かに後に続いた。相変わらず、出会った時からずっと同じ立ち位置だな、こいつは。ちったぁ意識が変わったかと思ったんだが。
「ん? そう言や、鐘はどうなったんだ?」
「ヤンに任せました」
「……俺様がやっとくから、お前はヴィクトルを手伝え。今度は投げんなよ」
「はい」
生意気にはなったか。俺様は苦笑いして、モネの頭に軽く手刀を落とした。
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