77 / 139
3. 秘密
失敗の報告
しおりを挟む
「それでね? 彼はジグザグに落ちていってね?」
「ほほう、それはまた興味深いですな」
帝がお帰りなさったということで、先の招待失敗の件で呼び出された俺は玉座の間に足を踏み入れる。そこでは、大きなソファーのような、相変わらず帝に不釣り合いな大きさの玉座に腰を下ろした帝様が、その脇に立つ初老の男、『宰相』に向かって楽しそうに話をしていた。
帝のあんな笑顔を見るのは随分と久しぶりだ。今回の劇はよっぽど上手くいったらしい。演者たちには感謝しないとな。不機嫌な帝に今回の失敗を報告することになったら、益々機嫌を損ねてしまっていた。楽しそうな表情を曇らせることにはなるだろうが、今なら今後の楽しみとして納得してもらえるかもしれない。
「あ、ケージ。やっと来たんだ」
「帝様を待たせるとは、いい身分だな」
既に姫と将軍はその場にいた。裾の短い白い和服に全身を覆う銀の甲冑と、相変わらずの身なりだ。かく言う俺も緑のローブを身にまとっているわけだが。
「部下が集めてくれた情報を聞かないわけにもいかないだろう」
「そんなもの、後でいくらでも聞けるだろうに」
「後では困る。帝様に報告する可能性があるものなのでな」
「……ふん」
これから話す内容に関わるものだと分かると、将軍は大人しく引き下がる。実際は直接話すほどの重要性もなく、報告書に記載する程度の情報なのだが。
「帝様、お話しはこの辺りで。王から報告があるそうです」
「あら、何かしら?」
帝の視線が俺を射抜く。俺はフードを脱いで顔を晒すと、深々と頭を下げた。
「先日行った招待について、報告いたします」
「ええ。顔を上げて、続けてください」
言われるがまま頭を上げる。笑顔のままでいる帝と目が合った。これからその表情を崩すことを考えると、少しばかり億劫になる。が、ここで止めることなどできない。俺はそんな気持ちを表に出さぬよう努めながら言葉を続けた。
「招待客の候補はグリマール魔法学院高等部の一年生。姫の暗示と魔法石を用いて従わせた魔物を引き連れ、他の魔物の討伐にやってきた彼らを招待する予定でした」
「グリマール魔法学院? ……そう。それで、成果は?」
「魔物の七割が楽園へ。招待客はおりません」
俺の言葉が終わらないうちに、帝の笑みが消え、目が細められる。同時にその体から噴き出した魔力がこの空間内を支配し始めた。
「……言い訳があるなら聞くわよ?」
おっと、レイが出てきたか。さて、どこまで詭弁が通じるか。
「強いて申し上げるならば、学院の用意した魔導士が予想以上に優秀であり、こちらの計画が狂ったのです。事実その者一人に三割近い魔物が楽園へと送られ、将軍ですら満足に足止めできなかったそうですから」
「そうなの? 将軍」
「はい。……誠に申し訳ございません」
「謝罪なんて求めてないわ。ワタクシが聞きたいのは、この失敗をどう埋め合わせするのかよ」
「それは……」
将軍の言葉はそこで止まる。まあ答えられないだろうな。
将軍の兜の中の目が俺に向いていることを想像しながら、俺は将軍の言葉を引き継ぐ。
「次回の招待を、必ず、実りあるものといたします」
「ふぅん、根拠はあるのでしょうね?」
今まで散々程度の低い招待客に期待を裏切られてきたレイの目は冷たい。しかし強い言葉を使ったためか、真っ向から信用されないという最悪の事態は避けられた。
「勿論です。今回の招待は元々、帝様にご満足いただけるような魔法使いを候補にしたものでした。そして失敗した結果、彼らは我々の想像以上に優秀であること、つまりは帝様のご期待に沿える魔法使いであることが証明されたのです」
「……続けて」
「現に学生の中には、単独で我々の用意した魔物を倒す実力者が何人もいました。まだ成長途上の身にしてそれだけの能力を有するのであれば、招待した後でさらに強くなる可能性もあります。まさに金の卵というものです。その在り処が判明した今、名声ばかりが高く実力が伴わない魔導士になど用はありません。今後は彼らのような、未来ある若者たちを招待して見せます。それは間違いなく、帝様の希望に沿ったものとなるでしょう」
「………………」
レイは思案顔になり、俺は心中で笑みを浮かべた。有象無象の招待客に失望ばかりしていたところに、これまでで一番期待が持てる話を持ってこられたんだ。招待自体に興味が無くなっていたならどうしようもなかったが、僅かばかりでも望みを持っているのなら、今回の収穫に食いつかないわけがなかった。
「帝様、私めにも発言の許可を頂けますでしょうか?」
「ええ、いいわ」
「王よ、素晴らしい招待客の目星をつけたのはいいが、そもそも招待は可能なのかね? 元々彼らが実力者だということは分かっていた。そのために貴殿ら三人を派遣したというのに、結果はこの様だ。招待客がいないばかりか、我々の存在も知られた。その上で、できもしないような空論で帝様を惑わせ保身に走ったというのなら、……称号剥奪では済みませんぞ?」
宰相の重い言葉にレイも落ち着きを取り戻す。ふむ、流石にそう甘くはないか。
「保身のための空論とは、宰相殿は面白いことを仰る。先ほども申し上げました通り、今回の失態の大きな理由の一つは、学院の用意した魔導士の実力によるものです。学生たちも実力は高いですが、所詮は学徒の身、我々に敵うような者はまず存在しないでしょう」
「ならば貴殿は、たった一人の魔導士の力で、三人の働きを完全に抑えられたと、そう言いたいのですか?」
自分たちがその程度の実力だという自覚を持っているなら、全員の称号は剥奪だ。宰相の目は雄弁に語っていた。
三人がかりで成果がないのだ。追及が厳しくなるのは当然だった。できる限り穏やかに済ませたいが、どう納得させたものか。
「いいえ、他にも理由はございます。学院の用意した魔導士の存在はあくまで、大きな理由の一つですので」
「御託はいいわ。早く言いなさい」
「失礼しました。次に大きなものは教師たちの対応の早さでしょう。こちらの妨害をいち早く察知、対応し、指揮系統の混乱を早急に回復させたようです。また魔物に太刀打ちできない生徒の救出に関しても迅速でした。ただこれらも外部の魔導士の活躍あってこそのものだったでしょうが」
「貴殿ら三人は、その教師たちを抑えることは不可能だったのかね?」
「顔が割れるわけにはいきませんでしたので。外部の魔導士と戦ったのも、足止め役の将軍ただ一人です」
「残りの二人は遊んでいたの?」
怒気の込められたレイの追及に、姫は目に見えて狼狽する。
「あ、あたしはペットちゃんたちに言うこと聞かせてたの! ちゃんと言われた通りにしたのよ!?」
「ええ、姫は自身の仕事を全うしました。責は魔導士を足止めできなかった将軍と、招待役でありながら誰一人招待できなかった私にあります」
「潔いですな。しかしながら、招待役と自負しておりながら誰一人招待できていない貴殿の責任は重くなりますぞ、王よ。聞けば此度の招待の前日、一生徒に姿を見られたとも聞いておりますが」
「仰る通りで、宰相。その件も含め、如何様にも罰してくださって構いません。ただその前に、話に出てきた一生徒について報告させていただければと思います」
「それはワタクシにとって聞く価値があるものなの? 報告書に載せるような下らない内容だったら、どうなるか分かってるわよね?」
声音から判断するに、レイの怒りは燃え上がる寸前といったところだな。さてこの話題、水となるか油となるか。
「お耳に入れる価値は間違いなくあります。先ほど、我々に敵うような者はまず存在しないと申し上げましたが、彼はその枠外に位置する逸材です。是非とも、お聞きいただければ」
「……いいわ。話して」
「ありがとうございます。実はその生徒、私が別の生徒を招待しようとした際にも現れ、招待の妨害をしてきました。そして戦闘の結果、私の魔衣を剥がしてみせたのです」
「ふぅん?」
「何ですと?」
どうやらその件についてはまだ宰相も知らされていなかったらしい。ここが弁の弄しどころだな。
「別の生徒との協力もあって、ではありますが。ともあれ、学生らしからぬ実力であったことは確かです」
「余程大きな魔術式を使えるのか? まさか、魔界を展開したとでも?」
「いいえ、彼が扱える魔術式自体は大変小さなものです。それだけを見れば帝様が満足するには程遠い凡夫でしょう」
「小さな魔術式……。けれど実力者……?」
「王よ、勿体ぶらずに早く言いなさい」
冷静さを取り戻した宰相の言葉に従い、俺は胸を張って続けた。
「彼の魔術式は小さいですが、代わりに形成速度と精度が並外れています。宰相殿は、楕円形魔術式をご覧になったことがおありで?」
「楕円形魔術式……!」
何か思い当たるものでもあるのか、楕円形魔術式など知らないであろうレイが息を呑む。
「楕円形魔術式? 見たことはありますが、あれは殆ど魔法の失敗のようなものでしょう」
「それが彼が使うものに関しては違うのです。魔法が維持される時間を極限まで削り、その分性能を強めた魔法を当然のように使いこなしていました。それも、私が妨害する隙が無いほどの早さで形成から発現を行った上でのことです」
「俄かには信じがたいですな。仮にそれが本当の話だとして、貴殿の魔衣を破るほどの力を出せるものなのかね?」
「単なる光弾の類でしたら何の問題もなかったでしょう。ですが彼が発現させた魔法は強化魔法でした。そして自らの肉体をも使って、私の魔衣を破ったのです」
「………………」
宰相はついに何も返さなくなった。下手な作り話だとでも思われたか? 確かに俺自身、この目で見ていなければ到底信じられなかっただろう。あいつについて話したのは失敗だったか――
「ねえ、その生徒、まさか、ユートって名前?」
む?
「その通りでございますが、何故帝様が知っておられるので?」
「やっぱりそうなのね!」
レイが勢いよく立ち上がる。その顔は、先ほどの怒りとはうって変わって喜びの表情を見せていた。
「帝様、どうなされました?」
「ユートよ! 宰相にもさっき話したでしょう? 今回の劇の主役!」
「……なんと。そういうことでしたか。これはまた、面白い偶然ですな」
そのやり取りを聞いて、思わず笑みが浮かんだ。
くく、まさか既に帝と接触していたとはな。それもどうやら相当気に入られたようだぞ。やはりお前は面白い。
「成程ね。確かにユートが相手なら、招待が上手くいかなくても仕方ないか」
「お待ちください帝様。そのユートという若者は、それほどまでに強いのですか? 王の力をもってして招待できないなど」
「強さはそれほどではないけれど、招待ができないことはありえるのよ。ね? アイ」「そうね、レイ。もし彼が逃げに徹したのなら、この三人でも捕らえるのは容易ではないでしょう。それに今回は招待するのが目的ですもの。誤って楽園に送らないよう手加減しながら実力を窺っていたら時間切れになった。そんなところではなくて?」
「流石はアイ様。ご推察の通りでございます」
最初は死んだら諦める程度の気持ちで戦っていたのだが、都合よく解釈してくれて助かる。
「ユートさんがいたことを考えると、今回の結果は複雑ね。ユートさんを招待できなかったのはとても惜しいけれど、もしできていたら劇がどうなっていたか分からないし」「そうね……。今回の劇にはかなり力を入れていたし。ただそれとこれとは別問題じゃない?」「そうとも言い切れないわ。他の生徒を招待していたら、ユートさんは依頼を受けられなかったかもしれないのだし」「たとえそうであったとしても、失敗は失敗よ。何かしらの罰は受けさせるべきだわ」「……その通りね。分かったわ」
二人の帝が一つの口で話し合う。やがてその口が閉じられると、アイが俺に向き直った。
「それでは、処分を言い渡します。王、貴方は暫くの間、学園で働いてください。成果を上げるまで戻ってくることは許しません」
「承りました」
反抗的な奴らへの教育活動か。一ヶ月以上席を空けると称号は剥奪されるが、この場で没収されることに比べればかなり良心的だ。ユートの話題が相当利いたらしい。
「良いのですかな? 帝様」
「ええ。成果がないことは事実ですが、何の魅力も感じない魔導士を連れてこられた時よりかは希望が持てましたもの。それに罰するのは、なにも王だけではありませんから」
「っ!」
「ええっ!?」
おっと、そう来たか。まあ既に罰が決まった俺には関係ないことだな。可能な範囲で庇いはしたし、俺を恨むなよ。
「将軍に告げます」
「……はっ」
「近々戦闘訓練を行いますので、公園に赴き民にそのことを周知してください。訓練では指揮も勤めるように」
「かしこまりました」
将軍は深く頭を下げる。
「姫に告げます」
「………………」
「グリマール魔法学院の生徒について調査してください。ユートさん以外の生徒も含め、招待に値する実力を持つかどうか、貴女の目で確かめてくるように」
「調査ぁ? そんなつまらないことしたくない! あたしはちゃんと仕事したんだし、メーエンで遊んでもいいでしょ?」
「姫! 帝様に口答えする気か!?」
「だってぇ……」
将軍の怒りを浴びても、姫は不満を隠そうとしない。そこに帝が、ゆっくりとした口調で語りかける。
「姫、落ち着いて聞いてください。貴女の指揮下であった魔物は、誰一人として招待できぬまま、大勢楽園へと向かわれました。そうなってしまった責任は貴女にもあるはずです。部下に手伝わせてもいいですし、次のお仕事が無事に終わったら名園に行ってもいいですから、どうか納得してくれませんか?」
「ヤダ! 王か将軍に行かせればいいじゃん。他にも手が空いてる人はいるでしょ? あたしは沢山のペットちゃんに言うことを聞かせて疲れたの。それなのにまたお仕事だなんて――」
「ミリア・プリズム」
文句を垂れ流していた口が、帝の言葉で閉じられた。ハッとした表情の姫はようやく、自分が帝の魔力に取り囲まれていることに気がついたらしい。
「アイ・ロス・ルン・エクリプスが命じます。グリマール魔法学院の生徒を調査しなさい」
「わ、分かり、ました……」
震える声で姫が了承すると、囲っていた魔力が薄まる。それでも未だ部屋全体に帝の魔力が立ち込めているため落ち着かない。
「よろしくお願いしますね。あそこの生徒は依頼を受けて遠出することがあるようですから、その道中で魔物に襲わせればいいと思うわ。他人の目が無い場所なら、その場で招待してくれても構わないですし」
「……何人くらいの実力を見ればいいですか?」
「そうですね……。少なくとも二十人程でしょうか。勿論、多ければ多いほど良いですよ」
それを聞いた姫は、不満を顔に出さないよう我慢しているかのような複雑な表情をする。面倒くさい。そう思っているのは明らかだった。
「そういうことでしたら、より効率的な手段がございますよ」
そこで助け舟を出してやる。重要性が低い情報だと思っていたのだが、まさかこの場で報告することになるとは。
「あら、それは何かしら?」
「グリマール魔法学院では来週末、対抗戦と呼ばれる生徒同士の試合が開かれるそうです。どうやらその一部は一般人にも見られるとのことで」
「まあ! ならその対抗戦とやらを見るのが一番ね。生徒同士なら実力も近いでしょうし、魔物を楽園に送られた挙句実力の一部しか分からなかった、なんてことにもならないわ」
「………………」
喜ぶ帝を前に、姫が僅かにこちらを向く。よしよし、多少は恩を売れたようだな。これで八つ当たりされることもないだろう。
しかし可能なら、俺自身の目でその対抗戦を見てみたかったがな。今回は姫に任せるか。
「さて、他に報告することは無いわね? それなら今回はこれでおしまい。各自、言われたとおりにね」
「はい」
「はっ!」
「はぁい……」
レイの言葉に三者三様の返事をして、玉座の間を出る。暫く歩いたところで、将軍が大きく息をついた。
「……称号剥奪も覚悟していたが、あの程度の罰で済むとはな」
「ああ、ユート様様だ。あいつが帝に気に入られたお陰で、俺も暫くは王のままでいられる」
「どうしてあたしまで……」
胸を撫でおろす俺たちとは対照的に、姫は未だに不満を口にする。
「姫。帝様の命に背くつもりではあるまいな?」
「そんなことしないけどさぁ。あたしは何も悪くないのに……」
「まあそう言うな。帝様の言う通り、三人がかりで成果が挙げられなかったのは事実だ。その処分が一週間足らずで終わる仕事で済んだことを喜べばいい。将軍は少なくとも三週間は動けないだろうし、俺に至ってはどれだけかかるか分からないのだからな」
「……分かったわよ。納得してあげる。そのユートって奴も気になるしね」
姫が不満を飲み込む理由にもなったか。つくづくいい働きをするな、ユートよ。
「貴様から話を聞いた時にはどれだけ尾ひれをつけたかと思っていたが……。疑って悪かったな」
「気にするな。信じられないのも無理はない話だ」
「帝様が気に入るって、すごく珍しいよね。ちょっと楽しみになってきたかも」
姫の切り替わりの早さに苦笑いしつつ、奴に傷をつけられた場所を撫でる。
俺たちにこれだけ期待されているのだ。どうか失望させないでくれよ? ユートよ。
「ほほう、それはまた興味深いですな」
帝がお帰りなさったということで、先の招待失敗の件で呼び出された俺は玉座の間に足を踏み入れる。そこでは、大きなソファーのような、相変わらず帝に不釣り合いな大きさの玉座に腰を下ろした帝様が、その脇に立つ初老の男、『宰相』に向かって楽しそうに話をしていた。
帝のあんな笑顔を見るのは随分と久しぶりだ。今回の劇はよっぽど上手くいったらしい。演者たちには感謝しないとな。不機嫌な帝に今回の失敗を報告することになったら、益々機嫌を損ねてしまっていた。楽しそうな表情を曇らせることにはなるだろうが、今なら今後の楽しみとして納得してもらえるかもしれない。
「あ、ケージ。やっと来たんだ」
「帝様を待たせるとは、いい身分だな」
既に姫と将軍はその場にいた。裾の短い白い和服に全身を覆う銀の甲冑と、相変わらずの身なりだ。かく言う俺も緑のローブを身にまとっているわけだが。
「部下が集めてくれた情報を聞かないわけにもいかないだろう」
「そんなもの、後でいくらでも聞けるだろうに」
「後では困る。帝様に報告する可能性があるものなのでな」
「……ふん」
これから話す内容に関わるものだと分かると、将軍は大人しく引き下がる。実際は直接話すほどの重要性もなく、報告書に記載する程度の情報なのだが。
「帝様、お話しはこの辺りで。王から報告があるそうです」
「あら、何かしら?」
帝の視線が俺を射抜く。俺はフードを脱いで顔を晒すと、深々と頭を下げた。
「先日行った招待について、報告いたします」
「ええ。顔を上げて、続けてください」
言われるがまま頭を上げる。笑顔のままでいる帝と目が合った。これからその表情を崩すことを考えると、少しばかり億劫になる。が、ここで止めることなどできない。俺はそんな気持ちを表に出さぬよう努めながら言葉を続けた。
「招待客の候補はグリマール魔法学院高等部の一年生。姫の暗示と魔法石を用いて従わせた魔物を引き連れ、他の魔物の討伐にやってきた彼らを招待する予定でした」
「グリマール魔法学院? ……そう。それで、成果は?」
「魔物の七割が楽園へ。招待客はおりません」
俺の言葉が終わらないうちに、帝の笑みが消え、目が細められる。同時にその体から噴き出した魔力がこの空間内を支配し始めた。
「……言い訳があるなら聞くわよ?」
おっと、レイが出てきたか。さて、どこまで詭弁が通じるか。
「強いて申し上げるならば、学院の用意した魔導士が予想以上に優秀であり、こちらの計画が狂ったのです。事実その者一人に三割近い魔物が楽園へと送られ、将軍ですら満足に足止めできなかったそうですから」
「そうなの? 将軍」
「はい。……誠に申し訳ございません」
「謝罪なんて求めてないわ。ワタクシが聞きたいのは、この失敗をどう埋め合わせするのかよ」
「それは……」
将軍の言葉はそこで止まる。まあ答えられないだろうな。
将軍の兜の中の目が俺に向いていることを想像しながら、俺は将軍の言葉を引き継ぐ。
「次回の招待を、必ず、実りあるものといたします」
「ふぅん、根拠はあるのでしょうね?」
今まで散々程度の低い招待客に期待を裏切られてきたレイの目は冷たい。しかし強い言葉を使ったためか、真っ向から信用されないという最悪の事態は避けられた。
「勿論です。今回の招待は元々、帝様にご満足いただけるような魔法使いを候補にしたものでした。そして失敗した結果、彼らは我々の想像以上に優秀であること、つまりは帝様のご期待に沿える魔法使いであることが証明されたのです」
「……続けて」
「現に学生の中には、単独で我々の用意した魔物を倒す実力者が何人もいました。まだ成長途上の身にしてそれだけの能力を有するのであれば、招待した後でさらに強くなる可能性もあります。まさに金の卵というものです。その在り処が判明した今、名声ばかりが高く実力が伴わない魔導士になど用はありません。今後は彼らのような、未来ある若者たちを招待して見せます。それは間違いなく、帝様の希望に沿ったものとなるでしょう」
「………………」
レイは思案顔になり、俺は心中で笑みを浮かべた。有象無象の招待客に失望ばかりしていたところに、これまでで一番期待が持てる話を持ってこられたんだ。招待自体に興味が無くなっていたならどうしようもなかったが、僅かばかりでも望みを持っているのなら、今回の収穫に食いつかないわけがなかった。
「帝様、私めにも発言の許可を頂けますでしょうか?」
「ええ、いいわ」
「王よ、素晴らしい招待客の目星をつけたのはいいが、そもそも招待は可能なのかね? 元々彼らが実力者だということは分かっていた。そのために貴殿ら三人を派遣したというのに、結果はこの様だ。招待客がいないばかりか、我々の存在も知られた。その上で、できもしないような空論で帝様を惑わせ保身に走ったというのなら、……称号剥奪では済みませんぞ?」
宰相の重い言葉にレイも落ち着きを取り戻す。ふむ、流石にそう甘くはないか。
「保身のための空論とは、宰相殿は面白いことを仰る。先ほども申し上げました通り、今回の失態の大きな理由の一つは、学院の用意した魔導士の実力によるものです。学生たちも実力は高いですが、所詮は学徒の身、我々に敵うような者はまず存在しないでしょう」
「ならば貴殿は、たった一人の魔導士の力で、三人の働きを完全に抑えられたと、そう言いたいのですか?」
自分たちがその程度の実力だという自覚を持っているなら、全員の称号は剥奪だ。宰相の目は雄弁に語っていた。
三人がかりで成果がないのだ。追及が厳しくなるのは当然だった。できる限り穏やかに済ませたいが、どう納得させたものか。
「いいえ、他にも理由はございます。学院の用意した魔導士の存在はあくまで、大きな理由の一つですので」
「御託はいいわ。早く言いなさい」
「失礼しました。次に大きなものは教師たちの対応の早さでしょう。こちらの妨害をいち早く察知、対応し、指揮系統の混乱を早急に回復させたようです。また魔物に太刀打ちできない生徒の救出に関しても迅速でした。ただこれらも外部の魔導士の活躍あってこそのものだったでしょうが」
「貴殿ら三人は、その教師たちを抑えることは不可能だったのかね?」
「顔が割れるわけにはいきませんでしたので。外部の魔導士と戦ったのも、足止め役の将軍ただ一人です」
「残りの二人は遊んでいたの?」
怒気の込められたレイの追及に、姫は目に見えて狼狽する。
「あ、あたしはペットちゃんたちに言うこと聞かせてたの! ちゃんと言われた通りにしたのよ!?」
「ええ、姫は自身の仕事を全うしました。責は魔導士を足止めできなかった将軍と、招待役でありながら誰一人招待できなかった私にあります」
「潔いですな。しかしながら、招待役と自負しておりながら誰一人招待できていない貴殿の責任は重くなりますぞ、王よ。聞けば此度の招待の前日、一生徒に姿を見られたとも聞いておりますが」
「仰る通りで、宰相。その件も含め、如何様にも罰してくださって構いません。ただその前に、話に出てきた一生徒について報告させていただければと思います」
「それはワタクシにとって聞く価値があるものなの? 報告書に載せるような下らない内容だったら、どうなるか分かってるわよね?」
声音から判断するに、レイの怒りは燃え上がる寸前といったところだな。さてこの話題、水となるか油となるか。
「お耳に入れる価値は間違いなくあります。先ほど、我々に敵うような者はまず存在しないと申し上げましたが、彼はその枠外に位置する逸材です。是非とも、お聞きいただければ」
「……いいわ。話して」
「ありがとうございます。実はその生徒、私が別の生徒を招待しようとした際にも現れ、招待の妨害をしてきました。そして戦闘の結果、私の魔衣を剥がしてみせたのです」
「ふぅん?」
「何ですと?」
どうやらその件についてはまだ宰相も知らされていなかったらしい。ここが弁の弄しどころだな。
「別の生徒との協力もあって、ではありますが。ともあれ、学生らしからぬ実力であったことは確かです」
「余程大きな魔術式を使えるのか? まさか、魔界を展開したとでも?」
「いいえ、彼が扱える魔術式自体は大変小さなものです。それだけを見れば帝様が満足するには程遠い凡夫でしょう」
「小さな魔術式……。けれど実力者……?」
「王よ、勿体ぶらずに早く言いなさい」
冷静さを取り戻した宰相の言葉に従い、俺は胸を張って続けた。
「彼の魔術式は小さいですが、代わりに形成速度と精度が並外れています。宰相殿は、楕円形魔術式をご覧になったことがおありで?」
「楕円形魔術式……!」
何か思い当たるものでもあるのか、楕円形魔術式など知らないであろうレイが息を呑む。
「楕円形魔術式? 見たことはありますが、あれは殆ど魔法の失敗のようなものでしょう」
「それが彼が使うものに関しては違うのです。魔法が維持される時間を極限まで削り、その分性能を強めた魔法を当然のように使いこなしていました。それも、私が妨害する隙が無いほどの早さで形成から発現を行った上でのことです」
「俄かには信じがたいですな。仮にそれが本当の話だとして、貴殿の魔衣を破るほどの力を出せるものなのかね?」
「単なる光弾の類でしたら何の問題もなかったでしょう。ですが彼が発現させた魔法は強化魔法でした。そして自らの肉体をも使って、私の魔衣を破ったのです」
「………………」
宰相はついに何も返さなくなった。下手な作り話だとでも思われたか? 確かに俺自身、この目で見ていなければ到底信じられなかっただろう。あいつについて話したのは失敗だったか――
「ねえ、その生徒、まさか、ユートって名前?」
む?
「その通りでございますが、何故帝様が知っておられるので?」
「やっぱりそうなのね!」
レイが勢いよく立ち上がる。その顔は、先ほどの怒りとはうって変わって喜びの表情を見せていた。
「帝様、どうなされました?」
「ユートよ! 宰相にもさっき話したでしょう? 今回の劇の主役!」
「……なんと。そういうことでしたか。これはまた、面白い偶然ですな」
そのやり取りを聞いて、思わず笑みが浮かんだ。
くく、まさか既に帝と接触していたとはな。それもどうやら相当気に入られたようだぞ。やはりお前は面白い。
「成程ね。確かにユートが相手なら、招待が上手くいかなくても仕方ないか」
「お待ちください帝様。そのユートという若者は、それほどまでに強いのですか? 王の力をもってして招待できないなど」
「強さはそれほどではないけれど、招待ができないことはありえるのよ。ね? アイ」「そうね、レイ。もし彼が逃げに徹したのなら、この三人でも捕らえるのは容易ではないでしょう。それに今回は招待するのが目的ですもの。誤って楽園に送らないよう手加減しながら実力を窺っていたら時間切れになった。そんなところではなくて?」
「流石はアイ様。ご推察の通りでございます」
最初は死んだら諦める程度の気持ちで戦っていたのだが、都合よく解釈してくれて助かる。
「ユートさんがいたことを考えると、今回の結果は複雑ね。ユートさんを招待できなかったのはとても惜しいけれど、もしできていたら劇がどうなっていたか分からないし」「そうね……。今回の劇にはかなり力を入れていたし。ただそれとこれとは別問題じゃない?」「そうとも言い切れないわ。他の生徒を招待していたら、ユートさんは依頼を受けられなかったかもしれないのだし」「たとえそうであったとしても、失敗は失敗よ。何かしらの罰は受けさせるべきだわ」「……その通りね。分かったわ」
二人の帝が一つの口で話し合う。やがてその口が閉じられると、アイが俺に向き直った。
「それでは、処分を言い渡します。王、貴方は暫くの間、学園で働いてください。成果を上げるまで戻ってくることは許しません」
「承りました」
反抗的な奴らへの教育活動か。一ヶ月以上席を空けると称号は剥奪されるが、この場で没収されることに比べればかなり良心的だ。ユートの話題が相当利いたらしい。
「良いのですかな? 帝様」
「ええ。成果がないことは事実ですが、何の魅力も感じない魔導士を連れてこられた時よりかは希望が持てましたもの。それに罰するのは、なにも王だけではありませんから」
「っ!」
「ええっ!?」
おっと、そう来たか。まあ既に罰が決まった俺には関係ないことだな。可能な範囲で庇いはしたし、俺を恨むなよ。
「将軍に告げます」
「……はっ」
「近々戦闘訓練を行いますので、公園に赴き民にそのことを周知してください。訓練では指揮も勤めるように」
「かしこまりました」
将軍は深く頭を下げる。
「姫に告げます」
「………………」
「グリマール魔法学院の生徒について調査してください。ユートさん以外の生徒も含め、招待に値する実力を持つかどうか、貴女の目で確かめてくるように」
「調査ぁ? そんなつまらないことしたくない! あたしはちゃんと仕事したんだし、メーエンで遊んでもいいでしょ?」
「姫! 帝様に口答えする気か!?」
「だってぇ……」
将軍の怒りを浴びても、姫は不満を隠そうとしない。そこに帝が、ゆっくりとした口調で語りかける。
「姫、落ち着いて聞いてください。貴女の指揮下であった魔物は、誰一人として招待できぬまま、大勢楽園へと向かわれました。そうなってしまった責任は貴女にもあるはずです。部下に手伝わせてもいいですし、次のお仕事が無事に終わったら名園に行ってもいいですから、どうか納得してくれませんか?」
「ヤダ! 王か将軍に行かせればいいじゃん。他にも手が空いてる人はいるでしょ? あたしは沢山のペットちゃんに言うことを聞かせて疲れたの。それなのにまたお仕事だなんて――」
「ミリア・プリズム」
文句を垂れ流していた口が、帝の言葉で閉じられた。ハッとした表情の姫はようやく、自分が帝の魔力に取り囲まれていることに気がついたらしい。
「アイ・ロス・ルン・エクリプスが命じます。グリマール魔法学院の生徒を調査しなさい」
「わ、分かり、ました……」
震える声で姫が了承すると、囲っていた魔力が薄まる。それでも未だ部屋全体に帝の魔力が立ち込めているため落ち着かない。
「よろしくお願いしますね。あそこの生徒は依頼を受けて遠出することがあるようですから、その道中で魔物に襲わせればいいと思うわ。他人の目が無い場所なら、その場で招待してくれても構わないですし」
「……何人くらいの実力を見ればいいですか?」
「そうですね……。少なくとも二十人程でしょうか。勿論、多ければ多いほど良いですよ」
それを聞いた姫は、不満を顔に出さないよう我慢しているかのような複雑な表情をする。面倒くさい。そう思っているのは明らかだった。
「そういうことでしたら、より効率的な手段がございますよ」
そこで助け舟を出してやる。重要性が低い情報だと思っていたのだが、まさかこの場で報告することになるとは。
「あら、それは何かしら?」
「グリマール魔法学院では来週末、対抗戦と呼ばれる生徒同士の試合が開かれるそうです。どうやらその一部は一般人にも見られるとのことで」
「まあ! ならその対抗戦とやらを見るのが一番ね。生徒同士なら実力も近いでしょうし、魔物を楽園に送られた挙句実力の一部しか分からなかった、なんてことにもならないわ」
「………………」
喜ぶ帝を前に、姫が僅かにこちらを向く。よしよし、多少は恩を売れたようだな。これで八つ当たりされることもないだろう。
しかし可能なら、俺自身の目でその対抗戦を見てみたかったがな。今回は姫に任せるか。
「さて、他に報告することは無いわね? それなら今回はこれでおしまい。各自、言われたとおりにね」
「はい」
「はっ!」
「はぁい……」
レイの言葉に三者三様の返事をして、玉座の間を出る。暫く歩いたところで、将軍が大きく息をついた。
「……称号剥奪も覚悟していたが、あの程度の罰で済むとはな」
「ああ、ユート様様だ。あいつが帝に気に入られたお陰で、俺も暫くは王のままでいられる」
「どうしてあたしまで……」
胸を撫でおろす俺たちとは対照的に、姫は未だに不満を口にする。
「姫。帝様の命に背くつもりではあるまいな?」
「そんなことしないけどさぁ。あたしは何も悪くないのに……」
「まあそう言うな。帝様の言う通り、三人がかりで成果が挙げられなかったのは事実だ。その処分が一週間足らずで終わる仕事で済んだことを喜べばいい。将軍は少なくとも三週間は動けないだろうし、俺に至ってはどれだけかかるか分からないのだからな」
「……分かったわよ。納得してあげる。そのユートって奴も気になるしね」
姫が不満を飲み込む理由にもなったか。つくづくいい働きをするな、ユートよ。
「貴様から話を聞いた時にはどれだけ尾ひれをつけたかと思っていたが……。疑って悪かったな」
「気にするな。信じられないのも無理はない話だ」
「帝様が気に入るって、すごく珍しいよね。ちょっと楽しみになってきたかも」
姫の切り替わりの早さに苦笑いしつつ、奴に傷をつけられた場所を撫でる。
俺たちにこれだけ期待されているのだ。どうか失望させないでくれよ? ユートよ。
0
お気に入りに追加
215
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる