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3. 秘密
予選最終試合
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「次、チーム・ジュリアン、チーム・シルファ、前へ」
ついに予選最後の試合だ。緊張で心臓の鼓動が早まる。だけど不思議と、それが嫌に思えなかった。いつもは緊張なんてするなって自分に言い聞かせているのに。
相手チームは全員が男の先輩だった。そのリーダーであるジュリアン先輩は、僕よりも頭一つ分身長が高い。明るい緑色の髪や落ち着いた表情から怖い雰囲気はないけれど、どうしても威圧感がある。シルファはよく平気そうにしていられるな。
「これより、チーム・ジュリアンとチーム・シルファの対抗戦を始める。互いに、礼!」
「よろしくお願いします!」
「……ああ、よろしく」
ジュリアン先輩は不愛想に返事をして離れていく。他のメンバーもどこか気を張っているみたいだった。
その理由は、この最終試合の結果次第で本戦に行けるかどうかが決まるからだろう。
八勝一敗でグループ第一位のトマス先輩のチームは本戦に出場することが決まっている。グループ第二位のジュリアン先輩たちのチームは現在六勝二敗だ。そして僕たちは五勝三敗。ここで僕たちが勝てば、六勝三敗で同率二位ということになる。ちなみに、チーム・セシルも六勝三敗だ。
しかし予選では勝敗数が並んだ場合、そのチーム内の戦績によって順位が決まる。例えばチーム・セシルはチーム・ジュリアンに敗けているため、同じ勝敗数でもチーム・ジュリアンの方が上の順位になる。
ふと視界に、セシル先輩方の姿が映った。顔を覆う先輩の肩を、他のメンバーが慰めている。湧き上がってきた申し訳ない気持ちを黙殺する。
……ここで僕たちが勝てば、六勝三敗で同率二位になる。そして他の二位のチームには直接勝ったことになるから、僕たちのチームが本戦に出場できる。そうなれば退学になんてならない。僕の目標にも近づけるんだ。
でも地力は間違いなく向こうのほうが上だ。普通に戦ったら僕たちが負けるのは当然で――違う違う!
ブンブンと頭を振って暗くなりかけた気持ちを追い出す。地力で負けてるなんて元から分かっている。それでも僕らは勝ってきたじゃないか。だからこの試合もきっと、いや絶対、勝つんだ!
「さて、軽くおさらいするわよ」
試合開始位置に移動すると、シルファが腕を組んで僕たち一人ひとりと顔を見合わせた。
「ユート、相手チームの特徴は?」
「三人がかりの防御で攻撃を凌いで、その間に大規模魔法を発現させる魔術式を形成する、さっきの俺たちみたいな戦い方をするチームだ」
「その通りよ。今までもずっとその戦い方だったわ。恐らく今回も戦略は変えてこないでしょうね。そんな相手に対して、フルル、私たちの作戦は?」
「は、はい! ユートさんが前で注意を引いて、私が防御をして、シルファさんとシイキさんが大規模魔法の準備をします!」
「ええ。ジュリアン先輩の魔術式はシイキのものより大きいわ。大規模魔法同士のぶつかり合いになったらまず勝ち目はない。かと言ってやわな攻撃じゃ相手の防御は突破できない。だから二人で先に大規模魔法を発現させて、防御魔法ごと相手を倒すというのが今回の作戦よ。シイキ、できるわね?」
「……うん。大丈夫」
さっきの試合を思い出しながら、自分にも言い聞かせるよう口にする。あそこまで上手く発現させることは難しいかもしれないけど、あの時の光景を強く意識すれば、発現を失敗することはないはずだ。
「両チーム、準備はいいな?」
リュード先生の声がかかる。
「はい」
「はい!」
はい。
「それでは、試合、開始!」
パアン!
手を鳴らしたユート君が飛び出すのと同時に、魔術式の形成を始める。うん、問題なく形成はできてる。このまま完成させよう。
「………………」
静かな戦いだった。相手チームは本当に防御に徹しているようで、フルルが発現させた半透明の防御魔法はまだ一度も攻撃を受けていない。遠くの方から微かに光弾が炸裂する音が聞こえるのは、ユート君の仕業だろう。気を引かせるのと同時に、少しでも相手の防御魔法を削ろうとしているんだ。
「……あ、あの、私も攻撃したほうが……」
自分だけ何もしていないように感じられたんだろう。フルルがそんな提案をするも、少し離れた場所にいるシルファは首を横に振った。
「駄目よ。あなたの光弾じゃ向こうに届かせるだけで精一杯でしょう? それにあなたには大切な役目がある」
「……相手チームの大規模魔法を、一回だけでも受けること、ですよね」
「そう。私かシイキ、助けるのはどちらかでいいわ。少なくとも一度の大規模魔法で全滅なんてことにならないよう、フルルの防御魔法が必要なの」
「………………」
フルルは答えない。自分でも分かっているんだろう。ジュリアン先輩の大規模魔法を、フルルじゃ受けきるどころか逸らすこともできないって。
「合図よ!」
「っ!」
見ると、ユート君が打ち上げた光弾が飛んでいた。相手の大規模魔法、それを発現させるための魔術式の外枠が作り終わったことを報せるものだ。そしてそれは同時に、作戦開始を告げるものでもあった。
「頼んだわよ!」
フルルが防御魔法を消して新たな魔術式を形成し始めるのと同時、シルファは大きな魔術式を構えたままゆっくりと移動する。僕から距離を取り、まとめてやられることを防ぐためだ。あの大きさの魔術式を維持したまま動けるのは流石としか言いようがない。
「突き破れ、『アイス・ピラー』!」
先に魔術式が完成したシルファが魔法を発現させる。早さを優先したせいか若干見劣りするけれど、十分大きな氷塊が相手チームに向かって伸びていく。
ドォン!
やがて先端が届き、鈍い音が相手チームの方から聞こえた。けれど相手の防御を崩すには至ってないようで、シルファは歩いて移動すると二撃目の準備をする。それでもあれだけの魔法を受けたんだ。防御魔法は確実に消耗しているはずだ。
今までの試合でジュリアン先輩は、先に魔術式の外枠を形成し、その後で内側を詰めていく方法をとっていた。そしてどうも内側を作るのが苦手なようで、外枠が完成してからも結構な時間をかけて魔術式を完成させていた。その時間を稼ぐため、相手チームの一人は素早く防御魔法を、残りの二人はそこそこ時間をかけた防御魔法を発現させるという役割分担を行っていた。しかし簡単な防御魔法じゃシルファの攻撃は受けきれない。少なくとももう一人、早めに防御に参加させることに成功しただろう。
ただでさえ時間がかかる内側の形成。その矢先にシルファの魔法が届いて、想定した防御の形を崩す。至近距離で防御を削るユート君の存在も相まって、相手はかなり動揺するはずだ。そして益々、形成に時間がかかるようになる。ここまではシルファの作戦通りだ。
僕の魔術式ももう少しで完成する。そうすればきっと――
「え?」
二度目の光弾が打ち上がった。僕は一瞬、その光弾の意味を思い出せなかった。
それは、相手の魔術式が完成間近という意味のものだ。
そんな馬鹿な。あの大きさの魔術式を、こんな早さで形成できるなんて……。
現実から目を逸らそうとする僕の視界の奥で、魔術式が発する光を見た。直後、灰色の何かが光の許から飛び上がった。
それは段々と大きくなって、僕たちと相手チームの丁度真ん中辺りに落下する。
ズドォン!
着地と同時、地面が揺れた。生じた風が冷や汗を乾かす。
飛んできたのは、巨大な岩石だった。ゴツゴツとした不格好な灰色の塊の存在が、僕の視界から相手の姿を隠してしまう。
間違いない。ジュリアン先輩の大規模魔法、『ロック・ショット』だ。
「う……!」
最初の岩石がまだ消えぬ間に、二発目が打ち上がった。高く飛ぶ岩の軌道を自然と目で追ってしまう。
「シルファ!」
岩石はシルファの方へと向かっている。早く魔術式をかき消して逃げて。そんな思いで声を上げた。
だけどシルファは動かない。発現させた自分の魔法を相手に届かせようと魔術式に魔力を注いでいるままだ。
薄膜があるからと自らの身の危険を顧みない無謀な行動をした。審判のリュード先生にそう判断された場合、チームの敗北などといったペナルティーが課せられる。シルファがそのことを知らないわけないし、そもそもあれだけの魔法に押し潰されるようなことがあったら、薄膜があっても命の危険がある。
「シルファさん!?」
「逃げてよ!」
なのに、どうして動かないんだ。
ガッ!
「あ……」
高く上がった岩石が、障壁魔法の上部に当たった。当初の軌道を変えて落下する岩石は、地面に触れる前に消える。恐らくリュード先生の仕業だろう。
障壁魔法はあくまで戦いの場を限定するものだ。障壁魔法を利用して強引に魔法の軌道を変えるなどの行為は禁止されていて、故意に障壁魔法を攻撃するのはそれに準ずる行為であるとされ反則となる。今のは故意じゃないと判断されたのかリュード先生は何も言わないけれど、障壁魔法に当たった魔法は規則に触れたために消されたんだ。
「二人とも! 私の心配をしてないで自分の魔術式に集中しなさい!」
シルファの言葉にハッとする。魔法を相手に届かせたシルファは、再び移動しながら大声で続けた。
「今ので分かったでしょう? 相手も発現の早さを優先したの。だから魔法の精度が落ちている。打ち出す力も弱くなったのか、弾道も今までより高いわ。落ち着いて観察すれば、当たるか当たらないかは分かるはずよ!」
ズドォン!
シルファが言い終わらないうちに、三つ目の岩石が飛来した。けれど山なりに飛んできたそれも僕たちの前方に落ちた。確かに他の試合で見た時は、もっと低く、速く飛んできていた気がする。そこまで悟ってシルファは攻撃を継続していたのか。
ズドォン!
「くっ……!」
しかし流石は上級生。軌道も徐々に修正していって、今はシルファの伸ばした氷塊を根元近くで折った。シルファは魔法を霧散させると、魔術式を構えたまま岩を回り込もうと移動を始める。
「避けて!」
「っ!」
今度こそシルファは魔術式を放棄してその場から離れる。そこに、未だ空気に溶けきっていない岩も巻き込む形で新たな魔法が直撃した。
「シルファ!」
「私なら無事よ! いいから早く魔術式を完成させなさい!」
そんなやりとりをしている間にも、次の岩石が飛んでくる。それは僕たちの方に向かってくるようだった。
「あ」
まずい、これ、当たるんじゃ?
若干横にずれているけれど、あの大きさなら十分僕にもぶつかる。かと言って今から動くには、形成途中の魔術式をかき消さないといけない。
どうする? このまま動かなかったらペナルティーだ。でもこの魔術式を諦めてしまえば、相手の防御を突破する手段が無くなる。今だってシルファの攻撃を受けた消耗分を回復しているはずだ。ここで追撃しないと勝機はない。
どうすれば――!
「シイキさん、魔術式の形成に集中してください!」
「なっ……!」
僕の前に、大きめの魔術式を構えたフルルが移動する。そして壁のような大きな防御魔法を発現させた。
向かってくる大岩の軌道に対し、斜めに構える形で。
ゴッ! ズドォン!
「きゃあああ!」
「フルル!」
元々僅かにずれていたことに加え、フルルの防御魔法により岩の軌道が逸れ、僕はギリギリで事なきを得る。しかしフルルは相手の魔法を受けた防御魔法をその場に留めておけず、自分の魔法に押される形で突き飛ばされてしまった。本人は尻もちをついたくらいで済むも、衝撃を受けた薄膜は消えてしまう。
「わ、私は平気です! それよりも魔法を!」
「う、うん!」
魔術式はもう完成した。後はありったけの魔力を注ぎ込むだけだ。
けど、もう既に追撃が放たれている。大きな魔術式には、魔法を発現できるまでの魔力を注ぎきるまでにも時間がかかる。
間に合え、間に合え!
「突き進め、『アイス・ピラー』!」
ドッ! ズドォン!
宙にある岩石の横の方に、伸びてきた細い氷塊が当たる。それにより岩はまた軌道が変わり、さっきとは反対側に落下した。
「シルファ!」
「完全に照準を合わされたらどうしようもないわ! 早く発現させなさい!」
シルファの言葉通り、今度の魔法は狙いが完璧だった。真っ直ぐ正確に僕の方へと飛んでくる岩は、少し逸らしただけじゃ当たってしまう。
だけど、今はもう、逸らす必要なんてなかった。
形成が終わった過去最大の魔術式を、大きくなっていく岩と重ねると、僕は強い意志を込めて叫んだ。
「斬り進め、『ブレイド・タプルート』!」
その瞬間、巨大な一本の黒刃が魔術式から姿を現す。勢いよく伸びた刃は、落下し始めた岩に突き刺さった。
バガァン!
僕の魔法に貫かれた大岩は、空中で砕け散った。大小様々な破片の雨を眺めながら、苦も無く貫通させた手応えに笑みを浮かべる。
これなら行ける。相手の防御魔法も、僕の魔法で突破するんだ!
魔術式に魔力を込めて動きを制御し、斜め上から突き刺すような形で相手チームへと黒刃を伸ばす。
ギィン!
「うっぐ……!」
届いた。けれど防御魔法が強すぎる。さっき岩を貫いたことで多少勢いが落ちたことも影響したのか? でもあの場面ではそうするしかなかった。大丈夫、このまま――
ゴッ!
「あっ」
刃の上部に岩を当てられた。その衝撃で刃先が地面へと向かう。地面に刺さってしまったら、それ以上は伸ばせなくなる。
「まだ、まだぁっ!」
容量ギリギリまで魔力を込め、強引に軌道を変える。今度は正面からだ!
ガギィッ!
「うう……!」
それでもまだ、相手の防御魔法を貫くことはできなかった。上級生三人の、それも少なくとも一人は時間をかけて形成した魔術式からの防御魔法だ。容易に切り開けるものじゃないことは分かっている。でも、ここしかないんだ!
もっとだ! もっと魔力を込めるんだ! もっと――!
「……え?」
突然、世界が浮き上がった。訳が分からない中、膝とお尻へ衝撃を受けて、初めて自分がくずおれたことを悟る。
早く立たないと。そう思っても、足はがくがくと震えて言うことを聞かない。だらんと下がった腕にも、まるで力が入らない。
魔力欠乏症。そんな言葉が頭に浮かんだ。
バキィン!
呆けた僕の目の前で、黒刃が大岩に押しつぶされて砕けた。それと同時に魔法が、魔術式が、空気に溶けていく。
「あ、ああ……」
僕は自然と目だけを動かして、縋るようにシルファの方を見る。だけどシルファは魔術式を構えてすらいない。どころか、薄膜すら既になくなっていた。
どうして? 自問して、答えはすぐに出た。
僕が壊した岩の破片が、落ちて当たったんだ。
「……はは」
結局、こうなるのか。最後まで僕は、他人の足を引っ張ってばかりだ。こんな僕には、相応しい最後かもしれない。
……ああ、でも、なんだかすごく、悔しいな。
「ごめん、皆……」
◇ ◇ ◇
この時を待っていた!
消えかけるシイキの魔法に安堵の表情を見せる先輩方は、近くにいても大した脅威にならなかった俺のことを完全に意識から外していた。魔法の巻き添えにならないよう端に寄っていた俺は、新たに形成した右手の楕円形魔術式から防御魔法を、左手の楕円形魔術式から強化魔法を発現させる。
先輩方は、二人がシイキの魔法を防ぐため正面に範囲を絞った防御魔法を、一人が俺の攻撃を防ぐため全体を覆う防御魔法を発現させていた。そしてその全体を覆う防御魔法に、シイキの魔法を意識したためか、僅かな厚みの偏りが生じた。さっきまでの俺の攻撃なら、これでも防げると考えたんだろう。
その認識は正しい。目の前の防御魔法は光弾じゃ壊しきれない。
そして間違っている。俺の武器は光弾だけじゃなくなったんだ。
楕円形魔術式から発現した手のひら大の防御魔法が目の前を落下する。楕円形魔術式から落下する防御魔法を発現させるのはまだ安定しないけど、無事に成功したようだ。
そして寿命の短いそれを、強化魔法を付与した足を動かし、薄膜の及ばない靴の爪先を使って、思いっきり蹴った。
バガァン!
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
四人の視線が一斉にこちらを向く。ジュリアン先輩は仲間が一時的に空けた天井の穴から岩の魔法を放った直後だ。残りの三人も、そこそこの規模の魔術式を構えているせいですぐには動けない。広くはない空間に体を滑り込ませた俺は素早く魔術式を形成すると、そこから放った光弾で防御役の先輩方を倒していく。俺の魔法の大きさじゃ一発だけで薄膜は消えないけど、複数当てれば戦闘不能にすることはできる。
「こんにゃろ!」
「っ!」
その間にジュリアン先輩が小さな魔術式を形成し終えていた。光弾を放った直後の両手の魔術式に魔力を貯めるには時間が足りない。そうと分かっていつつも体の前で先輩に魔術式を向け、一歩を踏み込む。その目の前で魔力を込められた先輩の魔術式が光を放った。
ガッ!
「はっ?」
魔術式から放たれた光弾が、俺の体の上を通過する。そしてジュリアン先輩は、体勢を崩して地面に倒れた。
ボボン! パアン
そこに俺の放った光弾が炸裂し、ジュリアン先輩の薄膜が消える。
「そこまで! チーム・シルファの勝利!」
「……っ! ありがとうございました!」
勝利宣言を聞いた俺は、跳び上がりたくなる衝動を抑えて、先輩方に頭を下げた。
ついに予選最後の試合だ。緊張で心臓の鼓動が早まる。だけど不思議と、それが嫌に思えなかった。いつもは緊張なんてするなって自分に言い聞かせているのに。
相手チームは全員が男の先輩だった。そのリーダーであるジュリアン先輩は、僕よりも頭一つ分身長が高い。明るい緑色の髪や落ち着いた表情から怖い雰囲気はないけれど、どうしても威圧感がある。シルファはよく平気そうにしていられるな。
「これより、チーム・ジュリアンとチーム・シルファの対抗戦を始める。互いに、礼!」
「よろしくお願いします!」
「……ああ、よろしく」
ジュリアン先輩は不愛想に返事をして離れていく。他のメンバーもどこか気を張っているみたいだった。
その理由は、この最終試合の結果次第で本戦に行けるかどうかが決まるからだろう。
八勝一敗でグループ第一位のトマス先輩のチームは本戦に出場することが決まっている。グループ第二位のジュリアン先輩たちのチームは現在六勝二敗だ。そして僕たちは五勝三敗。ここで僕たちが勝てば、六勝三敗で同率二位ということになる。ちなみに、チーム・セシルも六勝三敗だ。
しかし予選では勝敗数が並んだ場合、そのチーム内の戦績によって順位が決まる。例えばチーム・セシルはチーム・ジュリアンに敗けているため、同じ勝敗数でもチーム・ジュリアンの方が上の順位になる。
ふと視界に、セシル先輩方の姿が映った。顔を覆う先輩の肩を、他のメンバーが慰めている。湧き上がってきた申し訳ない気持ちを黙殺する。
……ここで僕たちが勝てば、六勝三敗で同率二位になる。そして他の二位のチームには直接勝ったことになるから、僕たちのチームが本戦に出場できる。そうなれば退学になんてならない。僕の目標にも近づけるんだ。
でも地力は間違いなく向こうのほうが上だ。普通に戦ったら僕たちが負けるのは当然で――違う違う!
ブンブンと頭を振って暗くなりかけた気持ちを追い出す。地力で負けてるなんて元から分かっている。それでも僕らは勝ってきたじゃないか。だからこの試合もきっと、いや絶対、勝つんだ!
「さて、軽くおさらいするわよ」
試合開始位置に移動すると、シルファが腕を組んで僕たち一人ひとりと顔を見合わせた。
「ユート、相手チームの特徴は?」
「三人がかりの防御で攻撃を凌いで、その間に大規模魔法を発現させる魔術式を形成する、さっきの俺たちみたいな戦い方をするチームだ」
「その通りよ。今までもずっとその戦い方だったわ。恐らく今回も戦略は変えてこないでしょうね。そんな相手に対して、フルル、私たちの作戦は?」
「は、はい! ユートさんが前で注意を引いて、私が防御をして、シルファさんとシイキさんが大規模魔法の準備をします!」
「ええ。ジュリアン先輩の魔術式はシイキのものより大きいわ。大規模魔法同士のぶつかり合いになったらまず勝ち目はない。かと言ってやわな攻撃じゃ相手の防御は突破できない。だから二人で先に大規模魔法を発現させて、防御魔法ごと相手を倒すというのが今回の作戦よ。シイキ、できるわね?」
「……うん。大丈夫」
さっきの試合を思い出しながら、自分にも言い聞かせるよう口にする。あそこまで上手く発現させることは難しいかもしれないけど、あの時の光景を強く意識すれば、発現を失敗することはないはずだ。
「両チーム、準備はいいな?」
リュード先生の声がかかる。
「はい」
「はい!」
はい。
「それでは、試合、開始!」
パアン!
手を鳴らしたユート君が飛び出すのと同時に、魔術式の形成を始める。うん、問題なく形成はできてる。このまま完成させよう。
「………………」
静かな戦いだった。相手チームは本当に防御に徹しているようで、フルルが発現させた半透明の防御魔法はまだ一度も攻撃を受けていない。遠くの方から微かに光弾が炸裂する音が聞こえるのは、ユート君の仕業だろう。気を引かせるのと同時に、少しでも相手の防御魔法を削ろうとしているんだ。
「……あ、あの、私も攻撃したほうが……」
自分だけ何もしていないように感じられたんだろう。フルルがそんな提案をするも、少し離れた場所にいるシルファは首を横に振った。
「駄目よ。あなたの光弾じゃ向こうに届かせるだけで精一杯でしょう? それにあなたには大切な役目がある」
「……相手チームの大規模魔法を、一回だけでも受けること、ですよね」
「そう。私かシイキ、助けるのはどちらかでいいわ。少なくとも一度の大規模魔法で全滅なんてことにならないよう、フルルの防御魔法が必要なの」
「………………」
フルルは答えない。自分でも分かっているんだろう。ジュリアン先輩の大規模魔法を、フルルじゃ受けきるどころか逸らすこともできないって。
「合図よ!」
「っ!」
見ると、ユート君が打ち上げた光弾が飛んでいた。相手の大規模魔法、それを発現させるための魔術式の外枠が作り終わったことを報せるものだ。そしてそれは同時に、作戦開始を告げるものでもあった。
「頼んだわよ!」
フルルが防御魔法を消して新たな魔術式を形成し始めるのと同時、シルファは大きな魔術式を構えたままゆっくりと移動する。僕から距離を取り、まとめてやられることを防ぐためだ。あの大きさの魔術式を維持したまま動けるのは流石としか言いようがない。
「突き破れ、『アイス・ピラー』!」
先に魔術式が完成したシルファが魔法を発現させる。早さを優先したせいか若干見劣りするけれど、十分大きな氷塊が相手チームに向かって伸びていく。
ドォン!
やがて先端が届き、鈍い音が相手チームの方から聞こえた。けれど相手の防御を崩すには至ってないようで、シルファは歩いて移動すると二撃目の準備をする。それでもあれだけの魔法を受けたんだ。防御魔法は確実に消耗しているはずだ。
今までの試合でジュリアン先輩は、先に魔術式の外枠を形成し、その後で内側を詰めていく方法をとっていた。そしてどうも内側を作るのが苦手なようで、外枠が完成してからも結構な時間をかけて魔術式を完成させていた。その時間を稼ぐため、相手チームの一人は素早く防御魔法を、残りの二人はそこそこ時間をかけた防御魔法を発現させるという役割分担を行っていた。しかし簡単な防御魔法じゃシルファの攻撃は受けきれない。少なくとももう一人、早めに防御に参加させることに成功しただろう。
ただでさえ時間がかかる内側の形成。その矢先にシルファの魔法が届いて、想定した防御の形を崩す。至近距離で防御を削るユート君の存在も相まって、相手はかなり動揺するはずだ。そして益々、形成に時間がかかるようになる。ここまではシルファの作戦通りだ。
僕の魔術式ももう少しで完成する。そうすればきっと――
「え?」
二度目の光弾が打ち上がった。僕は一瞬、その光弾の意味を思い出せなかった。
それは、相手の魔術式が完成間近という意味のものだ。
そんな馬鹿な。あの大きさの魔術式を、こんな早さで形成できるなんて……。
現実から目を逸らそうとする僕の視界の奥で、魔術式が発する光を見た。直後、灰色の何かが光の許から飛び上がった。
それは段々と大きくなって、僕たちと相手チームの丁度真ん中辺りに落下する。
ズドォン!
着地と同時、地面が揺れた。生じた風が冷や汗を乾かす。
飛んできたのは、巨大な岩石だった。ゴツゴツとした不格好な灰色の塊の存在が、僕の視界から相手の姿を隠してしまう。
間違いない。ジュリアン先輩の大規模魔法、『ロック・ショット』だ。
「う……!」
最初の岩石がまだ消えぬ間に、二発目が打ち上がった。高く飛ぶ岩の軌道を自然と目で追ってしまう。
「シルファ!」
岩石はシルファの方へと向かっている。早く魔術式をかき消して逃げて。そんな思いで声を上げた。
だけどシルファは動かない。発現させた自分の魔法を相手に届かせようと魔術式に魔力を注いでいるままだ。
薄膜があるからと自らの身の危険を顧みない無謀な行動をした。審判のリュード先生にそう判断された場合、チームの敗北などといったペナルティーが課せられる。シルファがそのことを知らないわけないし、そもそもあれだけの魔法に押し潰されるようなことがあったら、薄膜があっても命の危険がある。
「シルファさん!?」
「逃げてよ!」
なのに、どうして動かないんだ。
ガッ!
「あ……」
高く上がった岩石が、障壁魔法の上部に当たった。当初の軌道を変えて落下する岩石は、地面に触れる前に消える。恐らくリュード先生の仕業だろう。
障壁魔法はあくまで戦いの場を限定するものだ。障壁魔法を利用して強引に魔法の軌道を変えるなどの行為は禁止されていて、故意に障壁魔法を攻撃するのはそれに準ずる行為であるとされ反則となる。今のは故意じゃないと判断されたのかリュード先生は何も言わないけれど、障壁魔法に当たった魔法は規則に触れたために消されたんだ。
「二人とも! 私の心配をしてないで自分の魔術式に集中しなさい!」
シルファの言葉にハッとする。魔法を相手に届かせたシルファは、再び移動しながら大声で続けた。
「今ので分かったでしょう? 相手も発現の早さを優先したの。だから魔法の精度が落ちている。打ち出す力も弱くなったのか、弾道も今までより高いわ。落ち着いて観察すれば、当たるか当たらないかは分かるはずよ!」
ズドォン!
シルファが言い終わらないうちに、三つ目の岩石が飛来した。けれど山なりに飛んできたそれも僕たちの前方に落ちた。確かに他の試合で見た時は、もっと低く、速く飛んできていた気がする。そこまで悟ってシルファは攻撃を継続していたのか。
ズドォン!
「くっ……!」
しかし流石は上級生。軌道も徐々に修正していって、今はシルファの伸ばした氷塊を根元近くで折った。シルファは魔法を霧散させると、魔術式を構えたまま岩を回り込もうと移動を始める。
「避けて!」
「っ!」
今度こそシルファは魔術式を放棄してその場から離れる。そこに、未だ空気に溶けきっていない岩も巻き込む形で新たな魔法が直撃した。
「シルファ!」
「私なら無事よ! いいから早く魔術式を完成させなさい!」
そんなやりとりをしている間にも、次の岩石が飛んでくる。それは僕たちの方に向かってくるようだった。
「あ」
まずい、これ、当たるんじゃ?
若干横にずれているけれど、あの大きさなら十分僕にもぶつかる。かと言って今から動くには、形成途中の魔術式をかき消さないといけない。
どうする? このまま動かなかったらペナルティーだ。でもこの魔術式を諦めてしまえば、相手の防御を突破する手段が無くなる。今だってシルファの攻撃を受けた消耗分を回復しているはずだ。ここで追撃しないと勝機はない。
どうすれば――!
「シイキさん、魔術式の形成に集中してください!」
「なっ……!」
僕の前に、大きめの魔術式を構えたフルルが移動する。そして壁のような大きな防御魔法を発現させた。
向かってくる大岩の軌道に対し、斜めに構える形で。
ゴッ! ズドォン!
「きゃあああ!」
「フルル!」
元々僅かにずれていたことに加え、フルルの防御魔法により岩の軌道が逸れ、僕はギリギリで事なきを得る。しかしフルルは相手の魔法を受けた防御魔法をその場に留めておけず、自分の魔法に押される形で突き飛ばされてしまった。本人は尻もちをついたくらいで済むも、衝撃を受けた薄膜は消えてしまう。
「わ、私は平気です! それよりも魔法を!」
「う、うん!」
魔術式はもう完成した。後はありったけの魔力を注ぎ込むだけだ。
けど、もう既に追撃が放たれている。大きな魔術式には、魔法を発現できるまでの魔力を注ぎきるまでにも時間がかかる。
間に合え、間に合え!
「突き進め、『アイス・ピラー』!」
ドッ! ズドォン!
宙にある岩石の横の方に、伸びてきた細い氷塊が当たる。それにより岩はまた軌道が変わり、さっきとは反対側に落下した。
「シルファ!」
「完全に照準を合わされたらどうしようもないわ! 早く発現させなさい!」
シルファの言葉通り、今度の魔法は狙いが完璧だった。真っ直ぐ正確に僕の方へと飛んでくる岩は、少し逸らしただけじゃ当たってしまう。
だけど、今はもう、逸らす必要なんてなかった。
形成が終わった過去最大の魔術式を、大きくなっていく岩と重ねると、僕は強い意志を込めて叫んだ。
「斬り進め、『ブレイド・タプルート』!」
その瞬間、巨大な一本の黒刃が魔術式から姿を現す。勢いよく伸びた刃は、落下し始めた岩に突き刺さった。
バガァン!
僕の魔法に貫かれた大岩は、空中で砕け散った。大小様々な破片の雨を眺めながら、苦も無く貫通させた手応えに笑みを浮かべる。
これなら行ける。相手の防御魔法も、僕の魔法で突破するんだ!
魔術式に魔力を込めて動きを制御し、斜め上から突き刺すような形で相手チームへと黒刃を伸ばす。
ギィン!
「うっぐ……!」
届いた。けれど防御魔法が強すぎる。さっき岩を貫いたことで多少勢いが落ちたことも影響したのか? でもあの場面ではそうするしかなかった。大丈夫、このまま――
ゴッ!
「あっ」
刃の上部に岩を当てられた。その衝撃で刃先が地面へと向かう。地面に刺さってしまったら、それ以上は伸ばせなくなる。
「まだ、まだぁっ!」
容量ギリギリまで魔力を込め、強引に軌道を変える。今度は正面からだ!
ガギィッ!
「うう……!」
それでもまだ、相手の防御魔法を貫くことはできなかった。上級生三人の、それも少なくとも一人は時間をかけて形成した魔術式からの防御魔法だ。容易に切り開けるものじゃないことは分かっている。でも、ここしかないんだ!
もっとだ! もっと魔力を込めるんだ! もっと――!
「……え?」
突然、世界が浮き上がった。訳が分からない中、膝とお尻へ衝撃を受けて、初めて自分がくずおれたことを悟る。
早く立たないと。そう思っても、足はがくがくと震えて言うことを聞かない。だらんと下がった腕にも、まるで力が入らない。
魔力欠乏症。そんな言葉が頭に浮かんだ。
バキィン!
呆けた僕の目の前で、黒刃が大岩に押しつぶされて砕けた。それと同時に魔法が、魔術式が、空気に溶けていく。
「あ、ああ……」
僕は自然と目だけを動かして、縋るようにシルファの方を見る。だけどシルファは魔術式を構えてすらいない。どころか、薄膜すら既になくなっていた。
どうして? 自問して、答えはすぐに出た。
僕が壊した岩の破片が、落ちて当たったんだ。
「……はは」
結局、こうなるのか。最後まで僕は、他人の足を引っ張ってばかりだ。こんな僕には、相応しい最後かもしれない。
……ああ、でも、なんだかすごく、悔しいな。
「ごめん、皆……」
◇ ◇ ◇
この時を待っていた!
消えかけるシイキの魔法に安堵の表情を見せる先輩方は、近くにいても大した脅威にならなかった俺のことを完全に意識から外していた。魔法の巻き添えにならないよう端に寄っていた俺は、新たに形成した右手の楕円形魔術式から防御魔法を、左手の楕円形魔術式から強化魔法を発現させる。
先輩方は、二人がシイキの魔法を防ぐため正面に範囲を絞った防御魔法を、一人が俺の攻撃を防ぐため全体を覆う防御魔法を発現させていた。そしてその全体を覆う防御魔法に、シイキの魔法を意識したためか、僅かな厚みの偏りが生じた。さっきまでの俺の攻撃なら、これでも防げると考えたんだろう。
その認識は正しい。目の前の防御魔法は光弾じゃ壊しきれない。
そして間違っている。俺の武器は光弾だけじゃなくなったんだ。
楕円形魔術式から発現した手のひら大の防御魔法が目の前を落下する。楕円形魔術式から落下する防御魔法を発現させるのはまだ安定しないけど、無事に成功したようだ。
そして寿命の短いそれを、強化魔法を付与した足を動かし、薄膜の及ばない靴の爪先を使って、思いっきり蹴った。
バガァン!
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
四人の視線が一斉にこちらを向く。ジュリアン先輩は仲間が一時的に空けた天井の穴から岩の魔法を放った直後だ。残りの三人も、そこそこの規模の魔術式を構えているせいですぐには動けない。広くはない空間に体を滑り込ませた俺は素早く魔術式を形成すると、そこから放った光弾で防御役の先輩方を倒していく。俺の魔法の大きさじゃ一発だけで薄膜は消えないけど、複数当てれば戦闘不能にすることはできる。
「こんにゃろ!」
「っ!」
その間にジュリアン先輩が小さな魔術式を形成し終えていた。光弾を放った直後の両手の魔術式に魔力を貯めるには時間が足りない。そうと分かっていつつも体の前で先輩に魔術式を向け、一歩を踏み込む。その目の前で魔力を込められた先輩の魔術式が光を放った。
ガッ!
「はっ?」
魔術式から放たれた光弾が、俺の体の上を通過する。そしてジュリアン先輩は、体勢を崩して地面に倒れた。
ボボン! パアン
そこに俺の放った光弾が炸裂し、ジュリアン先輩の薄膜が消える。
「そこまで! チーム・シルファの勝利!」
「……っ! ありがとうございました!」
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