41 / 181
2. 依頼
帰り道でお話しです
しおりを挟む
「何だか、随分とあっさり終わったね」
「元々、こんなに多くの魔導士が必要になる依頼じゃなかったのよ。最初は少しイレギュラーがあったけど、なんとなくこうなるんじゃないかとは予想していたわ」
「まあ何にしろ、何事もなく終わって何よりだ」
「そうですね。皆さんが無事なのが一番です」
「にゃはは、その通りだにゃ。あっさり終わるくらいが丁度いいんだにゃ」
荷物を背負いながら林の中を歩く私たちに、ヌヌさんが声をかけてくれました。出発した時は前の方にいたはずでしたが、わざわざ最後尾にまで来てくれたみたいです。
「ヌヌさん、探知魔法は使わないのですか?」
「今は別の魔導士が使っているにゃ。ただ昨日倒した分と今日倒した分で全部だと思うのにゃ。念のため行きとは違う道で帰っているけどにゃ」
「ど、どうして全部だって分かるんですか? もしかしたら他にもいるかもしれないじゃないですか」
「一匹のジョオウアリグモから産まれるオオアリグモの数には限りがあるにゃ。私が見てきた数と、他の魔導士に聞いた、村の近くに現れた数も合わせれば、ほぼほぼ限度一杯にゃ。これ以上のオオアリグモはいにゃいにゃ」
珍しいことだけどにゃ、とヌヌさんは続けました。
「そういうことでしたか。だからキャンプに戻ってくるのも早かったんですね」
「そういうことにゃ。オオアリグモはもうそれ以上いにゃいと分かったから戻ってきたのにゃ。住処を変えようとしてたのか、予想よりも早くジョオウアリグモを見つけられたという理由もあったけどにゃ」
「オオアリグモ以外の魔物がいるという可能性は?」
「にゃいとは言い切れにゃいけど、かにゃり低い確率だろうにゃ。他の魔物が奴らの縄張りに入ったら、集団で襲われることににゃるにゃ。それをものともしにゃい魔物がやってきたのにゃら、あの山までの道中で、逃げてきたジョオウアリグモに会ってたはずにゃ」
ヌヌさんの言葉に、ユートさんも納得したようでした。ヌヌさんがそこまで言うのなら、本当にもう魔物はいないのでしょう。私はほっと息をつきます。
「ところで、竜神様にはお会いしましたか?」
シルファさんの質問に、ヌヌさんは首を横に振ります。
「会ってにゃいにゃ。個人的には気ににゃるところだったけど、今回の依頼はあくまで魔物退治だったしにゃあ」
「え? じゃ、じゃあ村の人たちは、竜神様が無事なのかどうか、分からないままってことですか?」
「ま、そうにゃるにゃ。ただ元々、竜神様は滅多に人前に姿を現さにゃいそうにゃ。最後に姿を見せたのは、三十年も前だという話だしにゃあ」
「……確かに竜は長命だけど、そんなに前から……」
シイキさんが何かを考えるように呟きます。シルファさんも、僅かに表情を曇らせました。きっと私と同じ考えを持っているのだと思います。
その竜神様は、もう……。
「ならこの後、竜神様に会ってみないか?」
ユートさんが、いつもと変わらない声でそう言いました。
「この後って、依頼が終わった後ってこと?」
「ああ。滞在予定期間はもう一日あるんだし、魔物もいないなら、行って戻ってくることくらいならできるだろ」
シルファさんの問いに、ユートさんは笑って頷きました。けれど――
「ダメよ」
「どうしてだ?」
「私たちは荷物運びの依頼を受けるという名目で、学外での行動を許されているの。そしてその目的が果たされた以上、一刻も早く学院に戻らなければならないわ。それが学院の規定よ」
「少しくらい融通利かないのか? 会えばどうして魔物が現れたのかについて何か分かるかもしれないし、今回の依頼が発生した原因を探ることにも繋がる。言わばこの依頼の延長みたいなもんだろ?」
「たとえそうであったとしても、私たちが受けたのは荷物運びの依頼よ。その役目が終わった私たちに、これ以上できることはない、いいえ、これ以上のことはしてはいけないのよ」
「それは、学院の決まりだから?」
「そうよ」
「ふーん」
ユートさんはつまらなそうに頭の後ろで手を組みました。
「僕もユート君の気持ちは分かるけど、こればっかりはね……。それに竜神様があの山のどこに棲んでいるかも分からないし、一日で村と往復するのは難しいよ」
「……それもそうだな」
ふうと息をつくユートさんの肩を、ヌヌさんが軽く叩きます。
「その気持ちだけでも立派だにゃ。ユートちゃんたちはもう十分頑張ってくれたんだし、後のことは他の魔導士に任せるのにゃ」
「……はい」
「で、でもこれで、あの村の人たちも喜んでくれますよね。魔物はもういなくなったんですし」
「そうね。きっと喜んでくれるわ」
「アイさんも安心してくれるだろうね」
「アイさんって、あのおにぎりを差し入れてくれた子かにゃ?」
「はい。僕とフルルとユート君は、その前にも会って話をしてたんです。ね、フルル」
「は、はい! 実はこの依頼を出したのもアイさんだそうで」
「にゃんと! この人数を集めるほどのお金を、一人で出したのかにゃ? 随分とお金持ちにゃんだにゃあ」
「あ、それは、その……」
私はアイさんが貴族であることと、どうしてこの村に滞在しているのかを説明しました。
「にゃるほどにゃあ。いい子だとは思ってたけど、 そこまで見上げた子だったかにゃ。ユートちゃんじゃにゃいけど、私ももっとあの村のために頑張りたくにゃってきたにゃ」
「ですよね。俺も同じ気持ちです」
「ユート」
「分かってるよ。行動には移さないさ」
「よろしい。……確かにアイさんは立派だけど、だからといって私たちがそれに張り合わないといけないわけじゃないわ。私たちは私たちができることをしたのだから、胸を張って帰りましょう」
シルファさんの言葉に、シイキさんが腕を組んで頷きます。
「そうだね。まあ僕にしてみれば、ちょっと物足りなかったけど」
「行きも帰りも、運んでいる荷物は私たちの中じゃ一番少ないのに、よくそんなことが言えたわね。フルルはどう思う?」
「わ、私ですか? えっと、その……」
急に話を振られた私は、なんて答えればいいのか分からず、言いあぐねてしまいます。
「何も迷うことはないわ、フルル。感じたままを答えればいいのよ」
「そ、そうだよ。僕なら何を言われても平気だから」
「そ、そうですか? なら……」
私はどこかひきつった笑みを浮かべているシイキさんと顔を合わせると、正直な感想を言いました。
「シイキさんって、その、あまり力持ちじゃないんですね」
「うぐっ!」
シイキさんが胸を押さえて呻きました。私は慌てて言葉を続けます。
「で、でも、シイキさんは魔物を倒していましたし、その分疲れていましたから、仕方ないというか、あ、でもそれだと、シルファさんたちもそうですし……」
「……うん、ありがとう……。もう大丈夫だから……」
シイキさんは弱々しく手の平を向けました。シルファさんがくすくすと笑います。
「それを言うと、フルルはかなり力持ちだよな」
「そ、そうなんですか? 自分では普通だと思っていたんですけど」
「ぐふっ!」
「フルル、それ以上はやめてあげて。……ふふっ」
「あ、す、すみません! そんなつもりじゃ」
「き、気にしてないよ……」
なんとかフォローする言葉を探していると、ヌヌさんも口元に手を当てて笑います。
「皆本当に仲がいいにゃあ。やっぱりチームはこうあるべきにゃ」
「あ……」
私はそれを聞いて、この依頼を受けた理由を思い出しました。
「………………」
「んにゃ? 皆どうかしたのかにゃ?」
急に静かになった私たちに、ヌヌさんは首を傾げます。
「えっと、その……」
「ヌヌさん、私たちは四人のチームじゃありません。私とユートが二人のチームで、シイキとフルルはチームに所属してないんです」
口ごもるシイキさんに代わって、シルファさんが言いました。
「にゃにゃ、そうにゃのかにゃ!? てっきり全員同じチームだと思っていたにゃ。丁度四人だしにゃ。どうしてチームを組まにゃいのにゃ?」
ヌヌさんはチームのことについても知っているようでした。私はヌヌさんの質問に答えられず、下を向きます。
「……率直に言えば実力の問題です。今回の依頼も、フルルが私たちのチームに入れるかどうか、確かめるために受けたという側面があります」
「その結果はどうだったのにゃ?」
「…………受け入れられません」
「そんなっ!」
「シルファ!」
「いいんです! ……私の、ことですから」
私はユートさんを止めます。前を歩く人の何人かがこちらを振り返りました。それを見てユートさんも口を閉じます。
「ふむ、どうしてにゃ?」
「元々、フルルと私たちの実力に差があることは分かっていたんです。そして今回、改めてそのことを確信しました。それが理由です」
「確かに私も、シイキちゃんはともかく、今のフルルちゃんとは実力に差があると思うにゃ」
「……っ」
そのことは、自分が一番よく分かっているつもりでした。けれど改めて言われると、心にくるものがありました。
「でもにゃあ、フルルは依頼をきちんとこにゃしたはずにゃ。どんにゃチームでも、全員の実力が全く同じにゃんてことはにゃいんだし、多少の実力差には目を瞑ってもいいんじゃにゃいかにゃ?」
「……私には、目指す場所があります。チームメンバーの実力に関しては、妥協できません」
「……そうかにゃ。まあ私は部外者だし、これ以上は言わにゃいでおくにゃ」
それっきり、話は途絶えました。私は足元を見たまま歩き続けます。
……そう、ですよね。今思い返してみても、この依頼中、私は何一ついいところを見せられませんでしたし、それどころか皆さんの足を引っ張るばかりで、そんなメンバーを欲しがるチームなんてあるわけありません。シルファさんの判断は、とても正しいことです。
だから、これでいいんです。
「総員、警戒しろ!」
「っ!」
ボルドさんの言葉に、弾かれたように顔を上げました。前を歩いていたヌヌさんが魔術式を形成するのを見て、私も急いで魔術式を作り出します。
形成が終わってから、私は不思議なことに気が付きます。近くに魔物の姿はありませんし、魔物と戦う音も聞こえてきません。魔物が襲ってきたんじゃないのでしょうか?
そんな疑問を抱いていると、前の人たちが魔術式を保ったまま歩き始めました。私たちもその後に続きます。
いつの間にか、林の出口に辿り着いていたようでした。木の幹の間から、曇り空が見えます。
「え……?」
その下にある光景を見て、私は一瞬、頭が真っ白になりました。
村がボロボロになっていたのです。
「元々、こんなに多くの魔導士が必要になる依頼じゃなかったのよ。最初は少しイレギュラーがあったけど、なんとなくこうなるんじゃないかとは予想していたわ」
「まあ何にしろ、何事もなく終わって何よりだ」
「そうですね。皆さんが無事なのが一番です」
「にゃはは、その通りだにゃ。あっさり終わるくらいが丁度いいんだにゃ」
荷物を背負いながら林の中を歩く私たちに、ヌヌさんが声をかけてくれました。出発した時は前の方にいたはずでしたが、わざわざ最後尾にまで来てくれたみたいです。
「ヌヌさん、探知魔法は使わないのですか?」
「今は別の魔導士が使っているにゃ。ただ昨日倒した分と今日倒した分で全部だと思うのにゃ。念のため行きとは違う道で帰っているけどにゃ」
「ど、どうして全部だって分かるんですか? もしかしたら他にもいるかもしれないじゃないですか」
「一匹のジョオウアリグモから産まれるオオアリグモの数には限りがあるにゃ。私が見てきた数と、他の魔導士に聞いた、村の近くに現れた数も合わせれば、ほぼほぼ限度一杯にゃ。これ以上のオオアリグモはいにゃいにゃ」
珍しいことだけどにゃ、とヌヌさんは続けました。
「そういうことでしたか。だからキャンプに戻ってくるのも早かったんですね」
「そういうことにゃ。オオアリグモはもうそれ以上いにゃいと分かったから戻ってきたのにゃ。住処を変えようとしてたのか、予想よりも早くジョオウアリグモを見つけられたという理由もあったけどにゃ」
「オオアリグモ以外の魔物がいるという可能性は?」
「にゃいとは言い切れにゃいけど、かにゃり低い確率だろうにゃ。他の魔物が奴らの縄張りに入ったら、集団で襲われることににゃるにゃ。それをものともしにゃい魔物がやってきたのにゃら、あの山までの道中で、逃げてきたジョオウアリグモに会ってたはずにゃ」
ヌヌさんの言葉に、ユートさんも納得したようでした。ヌヌさんがそこまで言うのなら、本当にもう魔物はいないのでしょう。私はほっと息をつきます。
「ところで、竜神様にはお会いしましたか?」
シルファさんの質問に、ヌヌさんは首を横に振ります。
「会ってにゃいにゃ。個人的には気ににゃるところだったけど、今回の依頼はあくまで魔物退治だったしにゃあ」
「え? じゃ、じゃあ村の人たちは、竜神様が無事なのかどうか、分からないままってことですか?」
「ま、そうにゃるにゃ。ただ元々、竜神様は滅多に人前に姿を現さにゃいそうにゃ。最後に姿を見せたのは、三十年も前だという話だしにゃあ」
「……確かに竜は長命だけど、そんなに前から……」
シイキさんが何かを考えるように呟きます。シルファさんも、僅かに表情を曇らせました。きっと私と同じ考えを持っているのだと思います。
その竜神様は、もう……。
「ならこの後、竜神様に会ってみないか?」
ユートさんが、いつもと変わらない声でそう言いました。
「この後って、依頼が終わった後ってこと?」
「ああ。滞在予定期間はもう一日あるんだし、魔物もいないなら、行って戻ってくることくらいならできるだろ」
シルファさんの問いに、ユートさんは笑って頷きました。けれど――
「ダメよ」
「どうしてだ?」
「私たちは荷物運びの依頼を受けるという名目で、学外での行動を許されているの。そしてその目的が果たされた以上、一刻も早く学院に戻らなければならないわ。それが学院の規定よ」
「少しくらい融通利かないのか? 会えばどうして魔物が現れたのかについて何か分かるかもしれないし、今回の依頼が発生した原因を探ることにも繋がる。言わばこの依頼の延長みたいなもんだろ?」
「たとえそうであったとしても、私たちが受けたのは荷物運びの依頼よ。その役目が終わった私たちに、これ以上できることはない、いいえ、これ以上のことはしてはいけないのよ」
「それは、学院の決まりだから?」
「そうよ」
「ふーん」
ユートさんはつまらなそうに頭の後ろで手を組みました。
「僕もユート君の気持ちは分かるけど、こればっかりはね……。それに竜神様があの山のどこに棲んでいるかも分からないし、一日で村と往復するのは難しいよ」
「……それもそうだな」
ふうと息をつくユートさんの肩を、ヌヌさんが軽く叩きます。
「その気持ちだけでも立派だにゃ。ユートちゃんたちはもう十分頑張ってくれたんだし、後のことは他の魔導士に任せるのにゃ」
「……はい」
「で、でもこれで、あの村の人たちも喜んでくれますよね。魔物はもういなくなったんですし」
「そうね。きっと喜んでくれるわ」
「アイさんも安心してくれるだろうね」
「アイさんって、あのおにぎりを差し入れてくれた子かにゃ?」
「はい。僕とフルルとユート君は、その前にも会って話をしてたんです。ね、フルル」
「は、はい! 実はこの依頼を出したのもアイさんだそうで」
「にゃんと! この人数を集めるほどのお金を、一人で出したのかにゃ? 随分とお金持ちにゃんだにゃあ」
「あ、それは、その……」
私はアイさんが貴族であることと、どうしてこの村に滞在しているのかを説明しました。
「にゃるほどにゃあ。いい子だとは思ってたけど、 そこまで見上げた子だったかにゃ。ユートちゃんじゃにゃいけど、私ももっとあの村のために頑張りたくにゃってきたにゃ」
「ですよね。俺も同じ気持ちです」
「ユート」
「分かってるよ。行動には移さないさ」
「よろしい。……確かにアイさんは立派だけど、だからといって私たちがそれに張り合わないといけないわけじゃないわ。私たちは私たちができることをしたのだから、胸を張って帰りましょう」
シルファさんの言葉に、シイキさんが腕を組んで頷きます。
「そうだね。まあ僕にしてみれば、ちょっと物足りなかったけど」
「行きも帰りも、運んでいる荷物は私たちの中じゃ一番少ないのに、よくそんなことが言えたわね。フルルはどう思う?」
「わ、私ですか? えっと、その……」
急に話を振られた私は、なんて答えればいいのか分からず、言いあぐねてしまいます。
「何も迷うことはないわ、フルル。感じたままを答えればいいのよ」
「そ、そうだよ。僕なら何を言われても平気だから」
「そ、そうですか? なら……」
私はどこかひきつった笑みを浮かべているシイキさんと顔を合わせると、正直な感想を言いました。
「シイキさんって、その、あまり力持ちじゃないんですね」
「うぐっ!」
シイキさんが胸を押さえて呻きました。私は慌てて言葉を続けます。
「で、でも、シイキさんは魔物を倒していましたし、その分疲れていましたから、仕方ないというか、あ、でもそれだと、シルファさんたちもそうですし……」
「……うん、ありがとう……。もう大丈夫だから……」
シイキさんは弱々しく手の平を向けました。シルファさんがくすくすと笑います。
「それを言うと、フルルはかなり力持ちだよな」
「そ、そうなんですか? 自分では普通だと思っていたんですけど」
「ぐふっ!」
「フルル、それ以上はやめてあげて。……ふふっ」
「あ、す、すみません! そんなつもりじゃ」
「き、気にしてないよ……」
なんとかフォローする言葉を探していると、ヌヌさんも口元に手を当てて笑います。
「皆本当に仲がいいにゃあ。やっぱりチームはこうあるべきにゃ」
「あ……」
私はそれを聞いて、この依頼を受けた理由を思い出しました。
「………………」
「んにゃ? 皆どうかしたのかにゃ?」
急に静かになった私たちに、ヌヌさんは首を傾げます。
「えっと、その……」
「ヌヌさん、私たちは四人のチームじゃありません。私とユートが二人のチームで、シイキとフルルはチームに所属してないんです」
口ごもるシイキさんに代わって、シルファさんが言いました。
「にゃにゃ、そうにゃのかにゃ!? てっきり全員同じチームだと思っていたにゃ。丁度四人だしにゃ。どうしてチームを組まにゃいのにゃ?」
ヌヌさんはチームのことについても知っているようでした。私はヌヌさんの質問に答えられず、下を向きます。
「……率直に言えば実力の問題です。今回の依頼も、フルルが私たちのチームに入れるかどうか、確かめるために受けたという側面があります」
「その結果はどうだったのにゃ?」
「…………受け入れられません」
「そんなっ!」
「シルファ!」
「いいんです! ……私の、ことですから」
私はユートさんを止めます。前を歩く人の何人かがこちらを振り返りました。それを見てユートさんも口を閉じます。
「ふむ、どうしてにゃ?」
「元々、フルルと私たちの実力に差があることは分かっていたんです。そして今回、改めてそのことを確信しました。それが理由です」
「確かに私も、シイキちゃんはともかく、今のフルルちゃんとは実力に差があると思うにゃ」
「……っ」
そのことは、自分が一番よく分かっているつもりでした。けれど改めて言われると、心にくるものがありました。
「でもにゃあ、フルルは依頼をきちんとこにゃしたはずにゃ。どんにゃチームでも、全員の実力が全く同じにゃんてことはにゃいんだし、多少の実力差には目を瞑ってもいいんじゃにゃいかにゃ?」
「……私には、目指す場所があります。チームメンバーの実力に関しては、妥協できません」
「……そうかにゃ。まあ私は部外者だし、これ以上は言わにゃいでおくにゃ」
それっきり、話は途絶えました。私は足元を見たまま歩き続けます。
……そう、ですよね。今思い返してみても、この依頼中、私は何一ついいところを見せられませんでしたし、それどころか皆さんの足を引っ張るばかりで、そんなメンバーを欲しがるチームなんてあるわけありません。シルファさんの判断は、とても正しいことです。
だから、これでいいんです。
「総員、警戒しろ!」
「っ!」
ボルドさんの言葉に、弾かれたように顔を上げました。前を歩いていたヌヌさんが魔術式を形成するのを見て、私も急いで魔術式を作り出します。
形成が終わってから、私は不思議なことに気が付きます。近くに魔物の姿はありませんし、魔物と戦う音も聞こえてきません。魔物が襲ってきたんじゃないのでしょうか?
そんな疑問を抱いていると、前の人たちが魔術式を保ったまま歩き始めました。私たちもその後に続きます。
いつの間にか、林の出口に辿り着いていたようでした。木の幹の間から、曇り空が見えます。
「え……?」
その下にある光景を見て、私は一瞬、頭が真っ白になりました。
村がボロボロになっていたのです。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる