転生して一歳児の俺が未来の大魔王として担ぎ上げられたんだけどこれなんて無理ゲー?

東赤月

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一歳児編

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「それじゃあヴァネッサ、カーネル様と仲良くするんだよ」
「うん!」
 げんきにへんじをすると、パパはあたまをなでてくれた! とてもひさしぶりだったから、すごくうれしい!

 よぉし、カーネルさまとなかよくなって、もっともっとパパにほめてもらおう!

 へえ、このこがカーネルさまかぁ。なんだかおとなしい。ここはおねーさんとして、いろいろあそんであげないと!

 あそんであげたおかげで、あたしのことをおせわやくだっていってくれた! パパ、ぜったいよろこんでくれる!

 ほんかぁ。あまりすきじゃないけど、カーネルさまがいうならしかたない。ママはこんなふうによんでたっけ?

 いいおはなしだったなぁ。あたしもこのほんのまおうさまみたいになれたらいいのに。

 まだほんをよむの? うーん。まあいまのおはなしはおもしろかったし、もういっさつだけならいっか!

 あれ? いつのまにこんなにほんをよんでたの? おはなしにむちゅうになっちゃってきづかなかった!

 え? このほんのおんなのこが、あたしみたい? ……たしかににてるかも。このおんなのこも、じぶんのことをだめだっておもってる。でも、そうじゃないってまわりのひとがおしえてくれた。

 ……もしかして、カーネルさま、あたしのことをなぐさめてくれているの? だからこんなにほんをよませて……。

 すごい! まだいっさいなのに、だからカーネルさま、つぎのだいまおうさまになるんだ!

 そういえば、カーネルさまによませてもらったほんのなかに、すごいまおうさまが、あまりすごくないひとをなかまにするおはなしがあったっけ。そのひとは、さいしょはすごくなかったけど、すごいまおうさまといっしょにいるうちに、すごくつよくなってたなぁ。

 ……あたしも、カーネルさまといっしょにいれば、すごくなれるかな?



「本日、カーネルさまのおせわをしにきました。エリーゼ・ウィントクロスです。よろしくおねがいします」
「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。どうぞ、お上がりになって」
 この人はたしか、カーネルさまの母、ウィンさまだ。わたしみたいな子どもにもれいぎ正しくしてくれるなんて、すこしおどろいた。

 いや、きっとこれも、わたしの父をこわがってのことだろう。なんとなく、そんなかんじがする。

 大きぞくであるわたしの父は、まかいの中でとてもえらい。さからったらひどい目にあわされるとおもって、みんなこわがってる。

 そんな父は、じぶんが大ま王になろうとしてるけど、まだ大ま王にはなれてない。だからこうして、わたしをここにこさせた。すこしでも大ま王になりやすくなるために。

 カーネルさまがいれば、わたしはつぎのつぎの大ま王になるためにがんばらなくてもいいとおもったのに。こんどはおせわやくになるためにがんばらないといけない。

 けっきょくわたしは、父の言うとおりになってる。たぶんずっとこうなんだろうな。

 カーネルさまはどんな子どもなんだろう。つぎの大ま王になるってことは、父よりすごいのかな?

 ……ううん、そんなことありえない。どうせカーネルさまも、そこらへんの大人みたいに、父にはさからえなくなる。そうにきまってる。

 ほら、やっぱりふつうの子どもだ。ことばだってまだわかってないだろう。わたしのはなしがわかるわけないし、おとなしくしてるならほっとこう。

 ……ふうん。あんなにたかくつめるんだ。子どものあそびだけど、すこしはみなおしてもいいかな。

 ……おどろいた。まだ一才なのに、こんなにむずかしい本をよんでる。さっきよめないって言ったわたしの本よりもむずかしいかもしれない。

「よめるの?」
「う、うん。あ……」
 その言ばがうそじゃないって、なんとなく分かった。本とうによめるんだ……!

 わたしよりもあたまがいい子どもなんて、おなじとしの子どもでも見たことがなかったのに、まだ一才のカーネルさまが、わたしよりもあたまがいいなんて……。

 もしかしたら、カーネルさまなら、父よりもすごくなれる?

 見たいとおもった。父よりもすごくなったカーネルさまを、だれよりもちかくで。



 うふふ、ついにチャンスがきましたわ!
 つぎのだいまおうさまになるというカーネルさまのおせわやくになれば、いままでわたくしたちをバカにしてきたひとたちをみかえせますわ!

 あ、でもおせわやくってメイドのようなものかしら? ならあまりえらくないかもしれませんわ。

 そうですわ! ならカーネルさまのおよめさんになればいいんですわ! そうすればぜったいにえらくなれますわ!

 そうときまれば、カーネルさまにわたくしのことをみとめさせてやりますわ。わたくしのほうがすごいってわかれば、カーネルさまもわたくしとけっこんするきになりますわ。

「あら、いがいとふつうのへやですのね」
 つぎのだいまおうさまになるひとのへやだから、もっとごうかだとおもってましたわ。カーネルさまも、みためはふつうのこどもですし……。

 こどもだから? それとも、ほんとうはそんなにえらくないから?

 ……まあいいですわ。わたくしのとくいなゲームで、わたくしのほうがすごいっておもいしらせてやりますわ。

 うふふ、またわたくしのかちですわ。やっぱりかてるとたのしいですわ。

 もう、どうしてカーネルさまはわかってくれないのかしら? まけたのにいうことをきかないなんてずるいですわ!

 やりましたわ! このけいやくしょがあれば、カーネルさまはわたくしのいうことをきいてくれますわ!

 う、うそですわ……! わたくしがまけるなんて……。いまのはナシですわ!

 そ、そんな……。またまけましたわ……。わたくしよりも、カーネルさまのほうがすごいんですの……?

 ……すきにさせて? どういういみですの? カーネルさまがすきになる? ……わたくしを?

 ……もしかして、わたくしに、もっとすごくなってほしいんですの? カーネルさまがすきになれるような、そんなレディになれるよう、がんばれっていってくださいましたの?

 ……わたくし、まちがえていましたわ。カーネルさまはつぎのだいまおうさまになるおかたですもの。いまのわたくしなんかがつりあうわけがありませんでしたわ。さいしょにわたくしがかてたのも、おかあさまがしたみたいに、わざとてかげんしてくれたんですわ。

 そんなすごいカーネルさまが、わたくしをおうえんしてくれましたわ!

 きめましたわ。わたくし、なにがなんでもカーネルさまにおつかえしますわ。そしていつかかならず、カーネルさまにふさわしいレディになってみせますわ!



(ふう。ようやく終わったみたいだな)
 メアリーと遊んだ次の日、実はもう一人のお世話役候補が急に、なんてことがあるかもしれないと心構えしていたけど、本当に昨日で最後だったみたいだ。ふうと一息つく。
(何を言っておる。あの中から一人世話役を選ばねばならんのだぞ?)
(そんなの周りが勝手に言ってるだけだ。選べって言われたとき、俺が誰にも興味を示さなければ、向こうも考えなおしてくれるさ)
(大貴族の子供も巻き込んだのだ。そう甘くはあるまい)
(いや、そうとも限らないと思うぞ)
(ほう? その根拠は?)
(理由はズバリ、俺が幼すぎることだ)
 傍から見れば俺は未だ物心ついていない幼児だ。当然、お世話役を選ばせようなんていう大人の事情を理解しうるはずもない。向こうもそれを分かっているから、俺には気が合った子を選んでくれれば、程度に考えているだろう。
 ここで重要なのは、選択権が俺にあるということだ。次期大魔王のお世話役を第三者が勝手に決めると政治的ないざこざが起こるから、なんて理由かどうかまでは分からないけど、少なくとも大人たちが俺に選ばせようとしているのは間違いない。
 ならば俺は誰も選ばなければいい。お世話役なんていらないとわがままを突き通せばいいんだ。これが五歳とかなら、わがままを言うなと説得されるかもしれないが、幼すぎる俺にはそれが許される。最悪嘘泣きでもすれば向こうも諦めるだろう。
 現実は、与えられた選択肢の中からどれかを選ばなければ時間が進まないゲームとは違う。お世話役の話が白紙に戻るまで待ちさえすれば、こちらの勝ちだ。
(それに、お世話役候補も幼いしな)
 貴族の娘といっても、所詮は五歳児だ。こちらが素っ気ない態度をとれば、早々に諦めてくれるだろう。
 ヴァネッサは、あの子がお世話役だとオウム返しした俺に嘘をつかれたと思うかもしれない。なんとなく素直そうだしな。
 問題はエリーゼだが、あの変わりようから考えるに、熱しやすく冷めやすいタイプなんだろう。あの時は俺に興味を持ったみたいだけど、すぐに熱も冷めるはずだ。もう既に冷めきっている可能性も高い。
 メアリーに至っては何の心配もない。プライドが高そうな子だったから、それを思いっきり傷つけた俺となんか一緒にいるのも嫌だろう。自ら辞退するんじゃなかろうか。
 そしてお互いに相手に関心がないなら、大人たちにもどうすることもできない。それでも無理にでしゃばってきたら、全力で怖がるフリをしてやろう。
(というわけで、俺に世話役はつかない!)
(成程な。しかしお主、自分の好きなように振る舞いながらも、ちゃんとあの子らを見ておったのだな)
(……まあ、ちょっとは興味あったからな。普通の子供ってどんな感じなのかって)
 あれが普通かどうかは怪しいけれど、あまり前世と違わなくて安心した。あの子たちは、全員ちゃんと幼かった。
 しかし俺は違う。十六歳、いや、こっちでも一年経ったから十七歳か? とにかくあの子たちよりも精神的には歳上なんだ。それがお世話なんてされてみろ。ウィンさんが相手でも恥ずかしいのに、それが五歳児ともなればもはや拷問に等しい。最悪精神崩壊するかもしれないじゃないか。
(別に良いではないか。高々十数年の違いなど、誤差のようなものだろうに)
(レイズにとってはそうかもしれないけれど、俺にとっては違う)
 とにかく、お世話役なんて絶対につけてたまるか! 俺は改めて強く決意する。
(くく、さてどうなるか。楽しみにさせてもらうぞ)
 そんな俺を面白がるレイズが、少し恨めしかった。
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