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一歳児編
始まりは転生
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「……良かった……」
大作RPGのエンドロールを見ながら、俺はテレビの前で拍手をした。この名作を生みだしてくれた全ての製作者様、ありがとうございます。
『Fin』の字が浮かび上がってから時計を見ると、もう日付が変わりそうになっていた。
かなりのめりこんじゃったな。その価値はあったけど。
明日は休みだけど、睡眠不足は充実したゲームライフの敵だ。俺はクリアデータを保存してゲーム機の電源を落とすと、エンディングの余韻を胸にベッドに倒れこんだ。目を閉じると、さっきまでやっていたゲームの宿屋で流れるBGMが頭の中で再生される。
今日は良い夢がみられそうだ……。
…………
……………………
…………
おぎゃあ! おぎゃあ!
……やけにうるさいな。折角いい夢が見れていたような気がするのに。ただでさえ朝は苦手なんだ。確か今日は休みのはずだし、もう少し寝かせて……。
「―――――! ――――――!」
「――――――――――!」
続いて男女の声が聞こえる。日本語じゃない。何かの拍子でテレビがついて海外ドラマでも流れているのかな?
ぼんやりと考えている間にも二人の声は続く。念じれば聞こえなくならないかなあ、なんて思っても当然静かになったりはしない。
仕方ないなあ。俺はテレビを止めようと目を開く。
「おぎゃ、おぎゃあ!」
んんんんん!?
目を開けると、視界に映ったのは見慣れた白い天井じゃなく、綺麗な文様が描かれた高い天井だった。
そして、どこここ? と言ったつもりの俺の口から出てきたのは、さっき聞いた赤ん坊の泣き声だった。え、どういうこと!?
「―――――――――――!」
すると今度は外国語を喋る見慣れない男の人の顔がドアップで映る。ていうかどこの国の人だ!? なんかやけに耳が長く見えるんだけど!?
「おぎゃ、おぎゃあ!」
反射的に叫び声を上げるも、勝手におぎゃあに変換されてしまう。なんじゃこりゃ!?
完全に意思疎通ができないと悟っているうちに、緑色の髪の男の人が手を伸ばしてきた。どうにかそれを止めようと、俺もまた手を伸ばす。
「おぎゃあ!」
自分が伸ばした手を見て、愕然とする。
え、なにこの手。これが俺の手?
小さすぎる。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
状況が呑み込めないうちに胴を捕まえられた。途端に世界がぐるりと回る。視界が、重力の向きが変わった。
「―――――――!」
笑顔の男の人が下に見えて、僕はようやく、この信じられない状況を理解した。理解せざるを得なかった。
俺、赤ん坊に戻ってる……?
「おぎゃ、おぎゃ、おぎゃあ……」
そんな俺の呟きも、おぎゃあ変換されてしまった。
大作RPGのエンドロールを見ながら、俺はテレビの前で拍手をした。この名作を生みだしてくれた全ての製作者様、ありがとうございます。
『Fin』の字が浮かび上がってから時計を見ると、もう日付が変わりそうになっていた。
かなりのめりこんじゃったな。その価値はあったけど。
明日は休みだけど、睡眠不足は充実したゲームライフの敵だ。俺はクリアデータを保存してゲーム機の電源を落とすと、エンディングの余韻を胸にベッドに倒れこんだ。目を閉じると、さっきまでやっていたゲームの宿屋で流れるBGMが頭の中で再生される。
今日は良い夢がみられそうだ……。
…………
……………………
…………
おぎゃあ! おぎゃあ!
……やけにうるさいな。折角いい夢が見れていたような気がするのに。ただでさえ朝は苦手なんだ。確か今日は休みのはずだし、もう少し寝かせて……。
「―――――! ――――――!」
「――――――――――!」
続いて男女の声が聞こえる。日本語じゃない。何かの拍子でテレビがついて海外ドラマでも流れているのかな?
ぼんやりと考えている間にも二人の声は続く。念じれば聞こえなくならないかなあ、なんて思っても当然静かになったりはしない。
仕方ないなあ。俺はテレビを止めようと目を開く。
「おぎゃ、おぎゃあ!」
んんんんん!?
目を開けると、視界に映ったのは見慣れた白い天井じゃなく、綺麗な文様が描かれた高い天井だった。
そして、どこここ? と言ったつもりの俺の口から出てきたのは、さっき聞いた赤ん坊の泣き声だった。え、どういうこと!?
「―――――――――――!」
すると今度は外国語を喋る見慣れない男の人の顔がドアップで映る。ていうかどこの国の人だ!? なんかやけに耳が長く見えるんだけど!?
「おぎゃ、おぎゃあ!」
反射的に叫び声を上げるも、勝手におぎゃあに変換されてしまう。なんじゃこりゃ!?
完全に意思疎通ができないと悟っているうちに、緑色の髪の男の人が手を伸ばしてきた。どうにかそれを止めようと、俺もまた手を伸ばす。
「おぎゃあ!」
自分が伸ばした手を見て、愕然とする。
え、なにこの手。これが俺の手?
小さすぎる。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
状況が呑み込めないうちに胴を捕まえられた。途端に世界がぐるりと回る。視界が、重力の向きが変わった。
「―――――――!」
笑顔の男の人が下に見えて、僕はようやく、この信じられない状況を理解した。理解せざるを得なかった。
俺、赤ん坊に戻ってる……?
「おぎゃ、おぎゃ、おぎゃあ……」
そんな俺の呟きも、おぎゃあ変換されてしまった。
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