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一歳児編
プロローグ
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俺の名前は竜胆兼。ゲームをこよなく愛するごく普通の高校生だった。
RPGも大好物な俺にとって、魔王という言葉はかなり耳慣れたものだ。
世界の果て、見るものを不安にさせるような居城の奥深くにある玉座に座り、世界を征服するという己の野望を叶えるために、その強大な力とカリスマに心酔した多くの配下を操り、平和な日常を混沌の渦へと叩きこむ。その願いの成就を妨げんとする勇者を亡き者にしようと数々の策略を用い、それでも目の前にまでやってきた勇者を自らの手で絶望に叩き落とそうと、王の名に恥じない桁外れな実力を見せつける。
そんな大きな存在感を放つ魔王は、その姿もそれ相応の、特徴的なものだ。
余裕のあるうちは禍々しくも高貴な出で立ちだが、本気を出したときは巨大な化け物の姿となるもの。
人々を欺くためにあえて神々しく見せながらも、本性を現し、偽りの姿の痕跡を残しながらも邪悪さを前面に出した歪んだ姿になるもの。
他にも様々なパターンがあるものの、どれも勇者を、画面の前のプレイヤーを恐怖させるような、そんな恐ろしくも魅力的な姿をしていた。
それが理想。
しかし現実。
「この方こそ、未来の大魔王となられるお方、カーネル様である!」
姿を見せたカーネル、すなわち俺に、招集させられた貴族の方々が拍手を送る。しかしその顔に浮かんでいる感情は、祝福よりも困惑の色が強い。それは俺の姿が、魔族の貴族でさえも冷静さを失うほど凶悪なものだったから……ではない。
多分俺も同じような表情をしているんじゃないかと思う。正直今すぐにでも逃げ出したい気分でさえあるけど、逃亡は物理的に不可能だった。
なぜなら今の俺は、先日一歳の誕生日を迎えたばかりの幼児だったからだ。
RPGも大好物な俺にとって、魔王という言葉はかなり耳慣れたものだ。
世界の果て、見るものを不安にさせるような居城の奥深くにある玉座に座り、世界を征服するという己の野望を叶えるために、その強大な力とカリスマに心酔した多くの配下を操り、平和な日常を混沌の渦へと叩きこむ。その願いの成就を妨げんとする勇者を亡き者にしようと数々の策略を用い、それでも目の前にまでやってきた勇者を自らの手で絶望に叩き落とそうと、王の名に恥じない桁外れな実力を見せつける。
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多分俺も同じような表情をしているんじゃないかと思う。正直今すぐにでも逃げ出したい気分でさえあるけど、逃亡は物理的に不可能だった。
なぜなら今の俺は、先日一歳の誕生日を迎えたばかりの幼児だったからだ。
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