(仮)異世界で私に家族ができました

影との戦いⅠ ロイドside

ピー!ピー!

目の前で鳴いているクリウォーンの雛に驚きが隠せない。
いつもなら庭園にいるはずだ

......迷ったのか

さっきまで近づいてくる音をスイと共に警戒していたが正体が雛鳥だったとは
たまに、庭園から抜け出して迷子になる幼い動物がいるのは珍しくないが精神的に悪いから勘弁してほしい
警戒を解いて雛を抱き上げる


.......それがいけなかった


「危ない!!」


スイの声が聞こえたと同時に、体制が崩れる。スイが押したと分かったが、なぜこんなことをするのか分からず押された方を向くと


......安堵したように微笑んでいた。


何故微笑しているのかなどの疑問が頭の中を埋めつくす
......でも次の瞬間には、なにも考えられなくなった



グサッ


「はっ？」

スイの左肩に黒い何かが貫通している。スイは一瞬痛みに顔を歪めたかと思えば、次の瞬間には足元から崩れ落ちるように倒れ、黒い何かはズルリと音を立てて抜ける。

「スイ!!」

倒れるスイの体を抱きとめる。苦しそうに顔を歪めて浅い呼吸を繰り返しているスイの姿は見るに耐えない。
傷口から流れる血を見て自分の中で、ある感情が膨れ上がるのを感じた。
このままでは他の事を考えることができなくなると判断した私はクリウォーンの雛が入ることができるぐらいの大きさの転移空間を出し庭園と繋ぐ。

それを見た雛は私に頭を下げ、ピーと鳴くと転移空間へ入っていった。

「......そこに居るのは分かっている。出て来い。」

転移空間を閉じ、先ほどから感じている気配に声をかける。

「これはこれは最高神様。お元気そうで何よりです。」
「惜しかったな～。もうちょっとで殺せたかもしれないのに～。」

姿を消していたであろう２人が現れる。
どちらも声は男のものだ
姿は羽織っているローブで隠され、顔も同じくフードと黒い仮面によって隠されていた。

「お前達、邪神の手先か。」

邪神、それは元は負の感情を処理する役割をもつ神であったが、世界に住む者たちの負の感情を処理していくうちに壊れていき、ついには負の感情に支配され強力な力を得て他の者たちに危害を加えるようになっていた。
そんな邪神は、私の手により力を奪われ今は姿を隠している。おそらく力を蓄えているのだろう。
邪神はそれ以来、部下を自分の代わりに行動させている。

最近は動きがなかったから油断していた。

「正解～！僕達は邪神様の忠実なる家臣！」
「今日は最高神様のお力を邪神様のために.....いただきに参りました。」

２人の声には邪神への忠誠、邪神に尽くすことができる喜びが表れていた。

「私の力を奪う？.....お前達２人にそこまでの力があるとは思えないな。」
「何をおっしゃいますか。そのような足手まといを抱えていながら戦えるほど私達は弱くないですよ。」

“足手まとい”スイに向けて言われたことに腸が煮えくり返るほど腹が立った。
スイの呼吸は最初よりも浅く、弱々しくなっていた。流れる血は左手を伝って地面に落ちる。

「この程度の傷など、私の力で癒すことができる。」

そう言ってスイの傷を癒そうとする。だが、