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-第二章-サマーオーシャン連合国-前編
-第二章七節 爆破採掘と古い刀-
しおりを挟むワイバーンを倒し、ワイバーンの素材とインゴットと化した鉱石を集めると、
いよいよ本来の目的の最深部の鉱脈を探し始める。マサツグが黒コゲとなった飛竜
の巣や大空洞の壁を調べるもワイバーンのブレスで溶けてインゴット化した鉱脈と
煤けた壁しか見当たらない。マサツグがこれはやっちまったか?と一人悩んでいると
それは見つかった。
「ッ!?
な…何だ?…今何か光を感じたような……」
突如、飛竜の巣の真後ろの壁に光り輝く亀裂があるのを見つける。それはキラキラと
輝き、人の目を眩ませるには光力が足りないものの人に気付かせるには十分な光で
あった。マサツグが何か有るのかと亀裂を覗き込むとそこには今まで掘ってきた鉱脈
とは明らかに違う色で光る鉱脈があり、マサツグは一発でこの鉱脈に目を付ける。
「おいおい!
これがあのモジャ男が言っていた鉱脈じゃないのか!!
諦め掛けていた時に見つけるとは……テンション上がりますわ~!!」
マサツグが一度仕舞っていた鶴嘴をアイテムポーチから取り出すとまずは亀裂を
広げ、鉱脈を良く見える様に掘ろうと構える。そして鶴嘴を握ったまま亀裂を
眺めているとここでマサツグに謎のプレッシャーが掛かり始める。
「……何か緊張するな……今まで鉱石掘るのにこんな緊張する事無かったのにな…
……ッ!!ッ!!
えぇい!!ままよ!!」
マサツグが戸惑いながらも頭を横にブンブンと振り、雑念を振り払うと意を決して、
その亀裂に鶴嘴を振り下ろす!しかし、次にマサツグを襲ったのは硬い物で硬い物を
殴った時に来るあのじ~んとした鈍い痺れが腕全体に響き渡り、マサツグのTPを
大きく消費する。
「あっ!……いっ!……うっ!……えっ!……おぉぉ~~……」
__ガランッガランッ…ガランッ……
思わず握っていた鶴嘴を落とす位にじ~んとした痺れに耐えて、亀裂を見てみるが、
そこに有ったのはほんの少ししか削れて居ない壁。更にワイバーンとの戦闘を終えて
から完全回復したTPが一振りで一気に1/5減っている事実にマサツグが衝撃を
覚える。
「ま…ま…マジかぁ~~……
…とは言え、早々簡単に諦めるマサツグさんではありませんよ~。
さて、如何したものか……」
目的の鉱脈を目の前にして手が出せない岩盤の強度にマサツグが肩からガックリと
落ち込むとショックを受ける。しかし、マサツグは簡単に諦めないで岩盤を突破する
方法を考え始める。まず、鶴嘴の刃が通らない為、鶴嘴を横に置くと何か使える物は
無いかとアイテムポーチを物色し始める。色々と拾った物がアイテムポーチ内で
ごった返しているのを、徐々に中々道具が見つからない某未来の猫型ロボットの様に
アイテムを引っ張り出しては捨てを繰り返す。そしてここである物がマサツグの目に
止まる。
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ワイバーンの灼熱器官
レア度 C
ワイバーンが炎を吐く為に使う臓器。
この臓器には可燃性の脂が分泌され、この脂に一度火を付けると瞬く間に火を
噴き、燃え尽きる。武器や防具の加工に良く使われるの物の扱いを間違えると
爆発及び瞬く間に燃え尽き、自身を滅ぼす危ない臓器である。
-----------------------------------------------------------------------------------
「あっぶな!!
こんな危ない物……ッ!」
ワイバーンを倒した時に手に入れたで間違いないがこんな危ない物を拾った事に
マサツグが驚く。だが、マサツグはこの説明文に書いてある一言を見つけると
ここで一計閃く。マサツグはワイバーンの灼熱器官を手に持つとその中にある脂を
ワイバーンと睨めっこしていた岩場まで線を引く様に撒いて行く。以外にも器官の
中にある脂はサラサラとしており、まるでサラダ油の様に見える。そして灼熱器官
本体を亀裂の前に置くと急いで隠れ場の岩場まで戻る。
「発破準備完了……
これより爆破採掘に入る……
カウント三秒前!!3…2…1…点火!!」
その際、まだ脂が残っているのか灼熱器官がだらだらと脂を零している。マサツグが
徐に鶴嘴を構え、線の様に引いて来た脂の近くで軽く地面を叩き、火花を散らすと、
その火花が脂に着火し、瞬く間に脂の線に燃え移って行く!そして瞬きする頃には
導火線のように引いた脂は灼熱器官の直ぐ傍まで一気に燃えていき、それを見た
マサツグが慌てて岩場に隠れると次の瞬間、大空洞内に爆音が響き渡り、岩越しでも
分かる衝撃がマサツグを襲う!
__ドグオォォォォォォンンン!!
「うおあぁぁ!!!……」
マサツグは少し吹き飛ばされ、その灼熱器官の威力にただ驚く。マサツグが岩場か
らおっかなびっくり顔を出し灼熱器官のあった場所を確認すると、威力にしてダイナ
マイト3本分位の威力で辺りには硝煙が立ち上る。
「……爆発するって書いてあったけどここまでか?……
爆発の衝撃で池に居たピチピチがまた浮かんできたぞ……
雷撃刃撃っていないのに……」
池に浮かぶピチピチを見ながらも爆発跡の地面には最初見た時の竜の巣に更に窪地が
形成され、目的の亀裂は見事に破壊され、硝煙が晴れていくと探していた鉱脈が
その姿を現す。しかし、ここでまたある疑問が出てくる。
「さっきの爆発で鉱脈が出て来たのは良いけど…これって掘れるのか?…
さっきの爆発で壊れたのは亀裂だけで本体の鉱脈は無傷……
これって岩盤より鉱脈の方が硬いって事じゃ……」
マサツグが隠れていた岩場から出て来ると本命の鉱脈に近づき、鶴嘴を構えると
思いっきり鉱脈に振り下ろす!しかし、次にマサツグを襲ったのは岩盤を叩いた時
より更にキツイじ~んとする痛みであった。
「かっ!!……きっ!!……くっ!!……けっ!……こぉぉぉぉ~~~~!!!」
マサツグが握っていた鶴嘴は見事に弾かれ、マサツグの後ろに飛んで行く。そして、
マサツグが痺れを通り越した腕の痛みに耐えながら鉱脈を確認すると傷が付いて
いない上に先ほど岩盤を叩いた時はTPの減りが1/5だったのが1/3減っている事に
気が付く。
「じょ…冗談じゃねぇぜ!!……まるでダメージ反射を貰ったみたいに痛いぞ!!…
これ…本当に掘れるのか?……」
先ほどの様にワイバーンの灼熱器官を使うにも灼熱器官はもう品切れ。鶴嘴は
全く歯が立たず、反射ダメージが痛くて振るう気を失いそうになるが、ここまで
来て諦める事が出来ないマサツグはここで何を思ったか大剣を装備し直すと
鉱脈相手に大剣を構え、大きく振りかぶる。
「こうなりゃヤケクソだ!!今まで何をやっても傷一つ刃毀れ一つしなかった
コイツで!!!
うおりゃあああ!!!」
自棄を起こしたマサツグが大きく振りかぶり、鉱脈に斬り掛かる!すると以外にも
効果があったのか軽い傷が鉱脈に付く。しかし、鶴嘴ほどでは無いものの弾かれ、
TPを消費する。だが、嬉しい事に鶴嘴で叩いた場合はダメージを反射したが、
大剣だと腕が痺れる位で済んでいる事にマサツグが安堵する。
「おっ…おっ…おぉぉ~~……
鶴嘴よりはマシだけどこれはこれで腕に来る~~……」
マサツグが大剣で鉱脈に攻撃した際のTP消費を見る。すると鶴嘴で叩いた時より
大幅にTPの消費を抑える事が出来、これが分かった途端マサツグは鉱脈をセンター
に入れて大剣を構えると怒涛の攻撃を放ち始める!
「…うおっし!!これならイケるやもしれん!!
いっくぜーーー!!!!」
鉱脈にはマサツグが攻撃した際に出来た傷が徐々に増えていくと同時にひびが
入り始める。それにマサツグが気が付くと更にやる気になり、もはや採掘と
言うよりはただの剣の修行に見え始める。無我夢中で大剣を振るうマサツグの
姿は採掘とはかけ離れるが、それでもマサツグは鉱脈に弾かれながらも攻撃し、
ダメージを与え続けると遂に鉱脈に大きくひびが入る!
「ッ!?
これで!……どうだーーーー!!!!」
マサツグが鉱脈に大きなひびが入った事にテンションが上がると大きく飛び上がり、
大剣を上段に構え、鉱脈に狙いを定める。そしてマサツグがジャンプから徐々に
落ちてくると攻撃範囲内に鉱脈が入り、マサツグが力を込めて思いっきり兜割りを
鉱脈相手に繰り出す!!すると、辺りに大剣と鉱脈がぶつかった音が響き渡り、
ひびから亀裂が入るとその鉱脈からゴロッと遂に念願の鉱石が塊で落ち、
マサツグの足元に転がる。マサツグは息を切らし、腕の痺れに耐えながら大剣を
仕舞うとその鉱石を拾い、鑑定をしてみる。
-----------------------------------------------------------------------
オリハルコン鉱石
レア度 S
オリハルコン神鉄の原料。武具作成に用いられる。
ただし、並みの職人では扱えない。
-----------------------------------------------------------------------
「………シャッーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
{オリハルコンキターーーーーーーーーーーーーー!!!!!
やったぜ!!上級武具作成の定番鉱石!!
しかも、大量に!!}
漸く手に入れた鉱石にワイバーンを倒した時より大きくガッツポーズをすると
大きく叫ぶ。大空洞内にマサツグの声が響き渡ると何故か池からピチピチが
跳ねると池の水をバチャバチャと揺らす。そうして折角苦労して手に入れた
鉱石をまだ落ちてないかと指差し確認をしていると掘った鉱脈の奥に一本の刀を
見つける。見た感じ、かなり古い刀に見えるが…
「…?これは?…
見た所刀の様に見えるけど……かなりボロボロだな……
それにオリハルコンの鉱脈に刺さってるし、抜けるのか?」
マサツグがその奥の方に見える刀に手を伸ばし、引き抜こうと試みる。しかし、
元々オリハルコン鉱脈に埋まる様に刺さっていた為、抜こうにもガッチリと
切っ先の方が固まり中々抜けない。しかし、左右に振れば少しではあるが動く事
からマサツグが柄をしっかりと握ると一気に引っ張り出そうとする。
「…いっせ~の!!……憤怒怒怒怒怒怒!!!!」
今にも折れそうな刀をマサツグが無理やり引っ張ると徐々に刀が音を立てて抜け
始める。それに合わせてマサツグの顔も徐々に険しくなって行き、鼻息も荒くなる。
その時の表情はまるで縄張り争いをするゴリラのようになり、とてもではないが
見れた物ではない。そうして、何時折れても可笑しくない刀にマサツグが興味を
持ち、引き抜こうとする事数十分、刀が遂に鉱脈から姿を現し始め、最後の
引っかかりに差し掛かるとマサツグが改めて力を入れ直す!
「…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ
こ…これで止めえぇぇぇええええ!!」
__ガコンッ!!
大空洞内に鈍い音が響き渡ると同時にマサツグが引き抜く反動で後ろに倒れ、
そのまま後頭部を強打する。その際、マサツグの手から握っていた刀がすっぽ抜け、
何処かへ転がるが、マサツグが頭を抱えて悶える。
「おぉぉぉ~~~……
……お?」
自分の頭を抱え、痛みに悶えていると目の前に先ほどまで鉱脈に刺さっていた刀の
柄が転がっているのを見てここで漸く自分が鉱脈に刺さっていたボロボロの刀を
引き抜いた事に気が付く。痛い頭を摩りながら立ち上がって見てみるとそこには本当
に風化?でボロボロの刀が転がっており、今マサツグが持っている春風刀より
酷い有様であった。マサツグが何故自分でもこんなボロボロの刀に興味を持ったのか
と手に取り眺め、鑑定をする。
-----------------------------------------------------------------------
古い風化し錆びた刀
レア度 F
ATK+5
古く風化して更に錆びた刀。ボロボロでまともに斬れない。
-----------------------------------------------------------------------
{やっぱりボロボロだな……
まともに振るう事も出来そうに無いし……
何故意味有りげにこんな所に?……}
マサツグがマジマジと眺めながらも何かに使えるのではないかとアイテムポーチに
そのボロボロの刀を仕舞うと大空洞を後にしようと出口に向かい歩き始める。
初めての採掘に初めてのワイバーン、軽い初めて尽くめの体験にマサツグは楽しみ
ながらも急いでシロの待つモジャ男キャンプに戻り始めるのであった。
そしてキャンプに戻る帰り道、マサツグが徐にアイテムポーチ画面を開くと
今まで掘った鉱石とアイテム類を確認し始める。アイテムポーチ内には色々な鉱石
がゴロゴロと身を寄せ合い、その他のアイテムはぶつかる度にガチガチと音を
たてる。
「え~っと……大体、鉄鉱石×40 マラカイト鉱石×30 ダマスカス鉱石×15
オリハルコン鉱石×10……後はワイバーンの素材に、使うかどうか分からない
ゴブリンの素材多数っと……これだけ掘ればシロの分も十分に作れるよな?」
マサツグがアイテムポーチの中を見ながら歩いていると突如何処からか妙な視線を
感じ取るとマサツグが警戒態勢に入る。そしてゆっくりと辺りを見渡し始めるが
一本道の洞窟で隠れれそうな場所は無く、更に感知を発動するも反応は何処にも
無い。
「……あれ?何か嫌な気配がした様に感じたんだけど……
気のせい?…」
頭を掻きながらマサツグが変だなぁと感じながらまた歩き始めるが実はこの時、
ある者に付き纏われている事をマサツグはまだ知らないのであった。マサツグが
その場から離れて数分後全身を隠すローブを身に纏う謎の人物が一人静かに笑い
ながら呟くのであった……
「くふふ……
あやつめ……一丁前にわらわの気配を感じ取るとは……
ほんに面白き者よのう……ますます気に入った……
どれ…そろそろ動くとするかの?くふふ……」
そうしてマサツグが先ほどの場所から少し離れた所でマサツグが有る物を見つける。
それは行きしなには無かったのか気付かなかったのかどちらかは分からないものの
珍しい物であった。
「…? 本?…
何でこんな所に?…」
マサツグが通路の真ん中に落ちている本を手に取るとパラパラと中身を確認する。
するとそこには鍛冶に関しての記述が書かれており、マサツグが読み進めていると
突如、スキル通知が鳴り響く。そしてマサツグは何が起きたのかと驚くのであった。
__ピロリン♪
「おわ!?な…何だ?」
[マサツグは鍛冶Lv,1を習得しました。]
「へ?…スキル?……
あっ!!あれまさかスキルブック!?
てか、このゲームってスキルブックなんて物も有るのか!?」
マサツグはここで初めてスキルブックの存在を知ったが実はこのゲーム内に有る
スキルブックはとてもレアなアイテムなのである。本来スキルを覚えるには
条件達成、もしくは伝授と新しくスキルを覚えるにはそこそこ面倒な手順がある。
しかし、このアイテムを使うと手順を省いて一発で覚えられると人気のアイテムで
個人の露店等で高値で取引されるアイテムである。
更にスキルを覚えるにも上限がある為、制限内でスキルを吟味しないといけない
のだが、このスキルブックに置いては関係なく、スキル上限一杯一杯でも簡単に
覚える事が出来ると言う公式チートアイテムでもある。
そんな事を知らずにマサツグはスキルブックを読んでしまうと
スキルブックは突如光になって、マサツグの手元から消えてしまうのであった。
「……あれ?これって結構貴重な物なのでは?……」
マサツグが偶然にも生産スキルのスキルブックを呼んだ事に戸惑いながら歩いて
行くと徐々にどうでも良くなり始める。そして無くなった物は仕方が無いと諦め、
歩き続けると徐々に遠方から光が見え始める。それは、洞窟内で発光している水晶
とは違い、火の光がマサツグの視界に入り始める。
「ふぅ~…色々あったけど漸く戻ってこれたな……
一本道だから迷う心配もないし……」
マサツグが無事に戻って来れた事に安堵していると何やら聞き覚えのある声がその
進む方向から徐々にこちらに向かい大きくなって聞えてくる。マサツグが誰だと
思い前を見つめるも逆光で見えず、目を細める。
「ッ!~ッ!~ッ!~ッ!~ッ!!!」
「…え?」
マサツグが思わず聞き返すと今度はハッキリと聞こえ、洞窟内に反響する。それと
同時にマサツグが思わず瞬きをすると次の瞬間、シロがマサツグに向かい両腕を
広げ、飛び掛っていた。そして、マサツグが気が付いた時には既に遅かった。
「ご~しゅ~じ~ん~さ~ま~!!!」
「…あれ?シロ…
ングハッ!!」
シロがマサツグの腹にタックルを決める。さながらボールを持ったラグビー選手を
仕留める様に…マサツグはシロを辛うじて抱き止める反応を見せるも踏ん張る反応は
出来ずそのまま後ろに押し倒されるとその一連の光景が刹那を使っていないにも
関わらずスローモーションに見える。
「嗚呼…これが俗に言う走馬灯?……」
「ご主人様!」
そしてマサツグがシロに押し倒されるとシロは漸くマサツグの顔を確認する。
そこには顔面蒼白のマサツグに後頭部からは出血が見られる。それでもマサツグは
出迎えてくれた事に感謝をし、シロに返事をする。
「た…ただいま……シロ……」
「キャーーー!!ご…ご主人様、ごめんなさい!!!」
それを見たシロが慌ててマサツグを抱え起こすとひたすらに謝り始めるのであった。
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