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-第一章-スプリングフィールド王国-
-第一章二十四節 救助と号泣-
しおりを挟む聖堂一階の信者、司祭を拘束及び討伐した事により一階の安全が確保されると
ギルドの職員が一階天井に吊るされた繭を救助する為に助っ人として入ってくる。
そして救助に参加する意思の無い冒険者達は逃げたアラクネ司祭と人キメラの掃討に
向かい始めるが聖堂二階、三階、大鐘楼と探すもアラクネ司祭の姿は何処にも無く、
各階には人キメラのみが巣食っていた。二階でガタガタと人キメラと暴れる冒険者を
利用し一階では救助に当たる冒険者が下で布を張り受け止めると言う不安が残る
方法で繭を回収していた。この行動にギルド職員も唖然とするが意外と効率よく
回収が出来ている事に驚く。中でもクランで参加しに来たのだろうか、
5m位の布を持って落ちてくる繭を次々にキャッチしていく。
「東に2!
北に5!」
リーダーの人だろうかメンバーに指示を出しながら布を張り、ゾロゾロと動く。
その光景は既に何処かで経験したのか迷いも無くスムーズに進んで行き、
リーダーが指定した場所で止まると繭が落ちてくる。
「弾着……今!!」
リーダーがそう言うと繭はクラン達の張る布の中心に見事落ち、静かに2,3回
跳ねる。それを見ていたマサツグとモツは他の冒険者の救助の邪魔にならない様に
隅っこの方で体育座りをしながら眺めていた。
「おぉ~!!
お見事!!」
「あの動きは慣れて無いと出来ない芸当だよな。」
マサツグとモツがそのクランに思わず拍手を送るとそのクランチームのメンバー
一人がこちらを向き、ペコっと頭を下げる。その間マサツグとモツは今の現状、
何も出来ない事に申し訳なさを感じつつもマサツグとモツはクランチームの
動きを見てある動きに似ていると二人で喋っていた。
「せめて、俺達もあんな風に大きい布を持っていたら参加出来たかもしれんが、
こればかりはなぁ…」
「そうだな…
…しかし、あのクランチームの動きを見ているとアレを連想するな。」
「…?
アレって?」
「ゲーム&○ォッチ。」
「……分かる奴居るのか?」
二人がそんな会話をしていると将軍とハイドリヒが二階の人キメラを殲滅し
終えたのか一階に降りて来て聖堂に入るとマサツグとモツに文句を言い始める。
「コラ、マサツグ!!っとモツ?
貴様達も二階の化物達の掃討に手伝いに来ないか!!」
後から将軍も兜を脱ぎ、聖堂に入ってくる。そして一階の救助の様子を見て
驚きだす。
「な…何と!!
繭をあのように回収しているのか!?
あれでは中の者が危ないではないか!!」
それはごもっとも…
マサツグとモツが目を細め、心の中で将軍の意見に賛同する。
将軍がショックを受けていると聖堂の扉を開け、中に入ってくるリンの姿を
見つける。リンの方も聖堂内を端から端まで見渡すとマサツグ達を見つけたのか
手を振りながら走ってくる。
「…あッ!!
マ~サツ~グさ、うわあッ!!」
しかし、こちらに向かって来る最中に盛大に頭からずっこける。
それはマンガのお手本の様なこけ方。マサツグ達がその一部始終を遠くから
見ているとリンが芝居を始める。暫くその場から動かないで倒れていると徐々に
体を起こしその場に座り込むと頭を撫でながら涙目でマサツグに文句を言う。
「いたたた…
ッ!?
マサツグさん!!
酷いじゃないですか!!」
「えぇ!!
何で俺!!」
「ここは駆け寄って来て、助けてくれる所じゃないですか!!」
「そんな事を俺に期待するな!!
第一、この何も無い所で何でそんなに盛大にスッ転ぶんだ!!」
「何も無い事無いです!!
確かに!…」
リンがマサツグに必死に抗議していると他の冒険者が後ろを確認しないで後退し
リンとぶつかりそうになる。リンは依然その場に座り込んだまま、
そのままぶつかればリンは潰され、怪我を負いかねない。更にその冒険者は装備が
何処かの世紀末ヨロシク刺々しい格好であった。それを見たモツ達が危機を感じて
声を上げ、リンに叫ぶ!
「危ない!!」
「…へ?」
リンと世紀末冒険者がぶつかる。冒険者はそのままバランスを崩し、リンに
倒れ掛かる。リンはその場から動く事が出来ずに目を閉じ、両腕をクロスさせ
防御体制になる。その場でズシーンと世紀末冒険者が倒れる音が響き、
モツ達が青ざめる。
「おい、大丈夫か!!」
周りの冒険者も気が付いたのかその場で足を止めると倒れた音の方を向く。
しかし、そこに倒れていたのは世紀末冒険者のみでリンの姿が無い。
世紀末冒険者が辺りを見渡し、何に躓いたのを確かめるが何も無い。
「……あれぇ~…
何かに躓いた気がしたんだが…」
周りの冒険者が只、こけただけの出来事にホッとしている中、モツ達は
リンの行方を捜す。その際モツが隣に居る筈のマサツグの方を向くとそこに
マサツグの姿は無く、一人分の空間が開いていた。それを見てモツが閃き、
安心するとハイドリヒがモツにどうなったかを尋ねる。
「お…おい、モツ?
どうなったんだ!?
さっきあの娘が冒険者に潰されそうに…?
そういえば、マサツグは?」
「あぁ、あのギルドの受付嬢は大丈夫だよ。
マサツグが何とかしたみたいだ…」
「そ…そうか…
そういえば、アイツは私の前でもいきなり消えたりしたな…」
「…ふぅッ…ヒヤッとした~。
もしあの棘に当たり判定が有ったと考えると…
考えたくも無いな…
…あぁ、後名前モツで合ってるから疑問系で聞かなくても良いよ…」
「そ…そうか。
承知した。」
モツとハイドリヒがその様な会話をしているその頃、マサツグは世紀末冒険者の
躓きから助けたリンを両腕に抱えながら大扉を越えてエントランスに一緒に
倒れていた。
「いつつつ…
ッふぅ~間に合ったか。
意外とやれるもんだな、瞬間集中状態からの刹那。
ただ…しんどいな…」
マサツグが独り言を呟いているとマサツグの両腕の中から消えそうな声でリンが
マサツグに離す様に訴えかける。
「……あの~…助けて頂いて申し訳ないのですが……
離して頂けないでしょうか?……」
この一言を聞きようやくマサツグがリンを慌てて離す。するとリンは顔を真っ赤に
しながらマサツグに改めて御礼を言い始める。
「あ…あの…助けてくれてありがとう御座います…
あのままだとどうなっていた事か…」
「いや、それは良いから。
お前の方は怪我は無いか?」
「あ…はい…
大丈夫です…」
「…?
さっきから顔が赤いが本当に大丈夫か?
無理してるんじゃ…」
マサツグがリンを心配して近づくとリンが慌ててマサツグから離れる。
そこから一定の距離を置き、近づくと離れ、離れると近づく、そんな
やり取りを大聖堂エントランスでやっていると玄関からクラリスが入ってくる。
そして、リンの顔を見るとクラリスの顔が般若の様に怒りに満ちた顔をし始める。
「リン…
貴女…
今まで何処に行っていたの?」
「せ…先輩…!!」
先ほどまで赤くなっていたリンの顔がクラリスに顔を見た途端、一瞬で真っ青に
になる。赤くなったり青くなったりと忙しいリンの様子を見てマサツグが安心
しているとクラリスがゆっくりリンに近づいて行く。
「貴女が今まで居なかったせいでギルドの受付が大変だったのよ?…
更に言うとギルドマスターのクエストを渡しに行くだけの事にどれだけ時間を
掛けていたの?私、詳しく知りたいわ…」
「ひッ!!…」
リンがマサツグに方を向き、助けを求める目をする。しかし、マサツグ自身今の
クラリスを止めれるかどうかは分からなかった。恐る恐るクラリスにマサツグが
話しかける。
「あ…あの~…
クラリスさん?」
マサツグが呼びかけるとクラリスはピタッと止まりマサツグの方を向く。
その顔はマサツグを見て微笑んでいる様に見える。がしかし、クラリスの後ろから
鬼の形相の仁王像がハッキリと見える位のオーラが見える。自分が一瞬、幽○紋を
発現した様な錯覚に襲われる。それを見たマサツグは心の中で決断する。
これ、何か言ったら俺が戦闘不能させられる奴や…
「な…なん…でも…ないです…
ただ…名前を呼んで見たくなった…だけです…」
マサツグがクラリスにそう言うとゆっくり首を横に向け、心の中でリンに謝る。
スマン!!俺にはレベルが高すぎる!!
初期装備でこのゲームのエンドコンテンツに挑む様なもんだ!!
そんなマサツグの姿を見たリンが泣き顔になりながらマサツグの方に手を伸ばすが
空しく空を切る。そしてマサツグから答えを聞くとマサツグの方を向きながら
微笑み、クラリスが返事をする。
「もう…マサツグさん…
そう言うのは後でお願いしますね…」
「…ハイ…」
マサツグが返事をするとクラリスは再び、リンにゆっくり歩み寄る。一歩一歩と
歩いて行く度にリンの顔が恐怖と絶望に染まる。そして、クラリスがリンの前に
立つとゆっくりリンを見下ろす。その姿からはもはや超一流の暗殺者のような
風格を感じるほどだった。オマケに顔は影で見えない上にメガネだけは光り更に
不気味さを醸し出す。そしてリンは何とも言えない顔になった状態でひたすら
小声で許しを請う声を発する。しかし、声が小さすぎてもはや掠れる音にしか
聞えない。
「リン…」
クラリスが両手を上げる、それを見たリンが目を閉じ、先ほど同様に両手を
クロスさせ防御態勢を取る。しかしクラリスが取った行動は目を閉じ、リンを
優しく抱きしめ、頭を撫でる。まるでリンを労る様な行動であった。
「この馬鹿!!
あれ程、経過報告を疎かにしないって言ったのに!!
心配したじゃない!!」
「せん…ぱい?…」
「貴女からの連絡が三日間も無かったのよ!!
予定では本日中もしくは二日!!
だから私…貴女も誘拐されたんじゃと思って心配していたんだから!!…」
リンを抱きしめる手は振るえ、クラリス自身も少し涙目になる。
その顔を見て釣られてリンの目にも涙が溢れ出す。
「まったく…手の掛かる後輩ね!…」
リンに優しく語り掛けるクラリスにリンが号泣し、クラリスに謝り出す。
「…ごめんなさい!!…ごめんなさい!!…ごめんなさい!!!」
それを頷きながら聞き、優しく撫でるクラリスにマサツグがホッとするがしかし…
次の瞬間、その安心が一気にぶち壊される。
「…よしよし…
ちゃんと反省してるようね…
でもね…」
この最後の一言にマサツグとリンが違和感を覚える。そしてリンが顔を上げ、
クラリスの顔を見ると先ほどまで動揺に微笑んではいるが後輩を心配する
優しい雰囲気は消え、また後ろ鬼の形相の仁王像がこんにちはする。
それを見てリンがまたもや青くなるとクラリスはリンの頭にゆっくり握り拳を
添える。
「それはそれ…
これはこれでやっぱりお仕置きが必要だと思うの?
分かるわよね?…」
「ヒィッ!!
せ…先輩?…」
この後は言うまでも無いクランベルズからギルドに入った時に見た
拷問ショーが目の前でまた起きる。そしてリンの顔から生気がなくなっていき、
クラリスが逆に生き生きとし始める。まるでHP吸収攻撃をするかのように。
そして、目の前で惨劇を見せられる事5分、ようやく開放されたリンからは
この世が絶望に満ちた人のような顔をし、クラリスは何故かツヤツヤになり、
やり切った感を出し、額の汗を拭う。
「ふぅ…
さて、マサツグさん。」
名前を呼ばれてマサツグがビクッとする。その場から起き上がり身構えながら
刹那を瞬時に発動出来るかを思わず確認する。しかし、それを見たクラリスが
マサツグの行動を見て驚き、理由を尋ねる。
「え?
ちょっと、マサツグさん!?
どうしたんですか?」
「え?
あ…いや、気にしないでくれ…」
目の前であのショッキング映像を見せられ、名前を呼ばれたら誰でもそうなると
思いながらも警戒を解くとクラリスは聖堂の大扉を開ける。
「すいませんがその子を連れて、一緒に来て貰えますか?
これから行方不明者及び誘拐被害者をギルドで管理している名簿と照らし合わさない
といけないので。」
リンは完全にグロッキー状態なのに連れて来いと…
やはりこの人鬼だな…
…まぁ、種を蒔いたのはリンだけど…
そんな事を考えながらもリンを丸太を担ぐ様に抱えると聖堂に入っていく。
聖堂内では繭を全部降ろし終えたのか天井には糸だけが垂れ下がり、繭はパッと見た
限りでは見当たらない。そして視点を戻すと冒険者達とギルドの職員が協力で繭を
破り、中の人の救助に当たっていた。繭に閉じ込められた町人、村人はやはり女性が
大半で後は子供であった。そしてその救助する中にはモツとハイドリヒと将軍の姿が
あった。
「お~い!
モツ~!!」
「ん?
お!
ようやく戻ってきたか。
随分と遅いご帰還で?」
モツが笑いながらマサツグに話しかけるとマサツグはゲッソリして見せる。
それを見て思っていた様子とは違うモツがマサツグの心配をする。
「お…おい、どうしたんだ?
何かあったのか?敵襲?」
「それよりヘビーな光景…」
マサツグの答えにモツが更に疑問を持つがマサツグはリンを降ろすとクラリスが
名簿を片手に助け出された人達一人一人に名前を聞いていく。その間、マサツグも
繭を斬ろうと刀を抜く、するとハイドリヒと将軍が驚きだす。
「お…おい?
マサツグ?
その剣、抜けたのか?」
「へ?」
「その剣は貴君が抜いたのか?」
「お…同じ質問をどうも…」
繭を片手に刀を握る、その光景は丸々と太った大根を切る様だったと後のモツが
語るがその話は後にして、ハイドリヒが驚きながらマサツグにどうやって刀を抜いた
カを尋ねる。
「その剣はスプリング大森林の奥、大樹の園にあった剣なんだが…
今まで誰にも抜けなかった上に誰にもまともに握れなかったのに…
どうやって抜いたんだ!?どうやって扱う剣なんだ!?」
「お…おちけつ!!
じゃなくて…落ち着け!!」
マサツグに好奇の目でマサツグに詰め寄るハイドリヒにマサツグがタジタジになる。
とりあえず、マサツグがハイドリヒを落ち着かせようとすると将軍が止めに入る。
「まぁ落ち着け、ハイドリヒ。
確かに気になるがお前がそんなにがっついては答え様にも答えられんだろ。」
将軍の一言にハッとするとハイドリヒは落ち着きを取り戻し、マサツグの前で
正座する。目の前で何故か目を輝かせ、待てをするハイドリヒが犬の様に見えるが
気にしないでマサツグが理由を話し始める。
「正直、理由は俺にも分からないけどある強敵の騎士と戦っている最中に剣を
弾き飛ばされたんだ。そして止めを刺そうとその騎士が飛び掛ってきたんだけど、
急に突風が吹いてその騎士を吹き飛ばしたと思ったらその時にはもう刀を
握っていたんだ。アイテムポーチから出した覚えは無いのにいつの間にか…
で、まだその騎士と戦っている最中だったから武器にならなくても身を守る位は
と思って柄を握ったら…」
「抜けたのか。」
将軍の問い掛けにマサツグが頷くとハイドリヒと将軍が悩みだす。
「う~~ん…
今の話を聞いた限り、刀に関して特別な何かがあったとは思えないが…」
「そうだな…
しかし、冒険者殿は戦う度に奇妙な事に助けられる様だな。
自身の命を突風に助けて貰うとは…
まるで御伽噺…」
そしてその話を繭を破りながら聞いていたモツが有る提案をする。
「それなら一回調べてみたらどうだ?
開放出来るようになったんだったら案外開放条件が書いてあるんじゃないか?」
マサツグと先ほどまで悩んでいた将軍とハイドリヒがモツの考えに賛同し、感心
する。マサツグが刀の詳細を開くとそこには、最初見た時には無かった項目が
増えていた。
------------------------------------------------------------------------
春風刀 壱式
レア度C
ATK+75 MDEF+10 SPD+30
[春風の加護]
一定時間ごとにHPを2%ずつ回復する。
開放条件:風を味方につける。
------------------------------------------------------------------------
「…風を味方につける?……
……まさか、あの突風?」
マサツグが答えると将軍とハイドリヒが驚き、モツは納得する。
初めて知った開放条件にマサツグが驚いていると突如、目の前の繭が揺れ動く。
動いた繭にマサツグと周りに居たメンバーが驚いていたが何を思ったかマサツグが
刀を握り、繭を斬り裂こうとする。それを見た、ハイドリヒが慌てて止めに入る。
「ま…待て!!
貴様正気か!?
ほかの繭は今まで動かなかったのだぞ!?
コイツだけ動くとなるとかなり怪しいぞ!!」
ハイドリヒがマサツグを止める中、マサツグは繭を斬り裂こうとする事を止めない。
ハイドリヒが再度止めようとするとマサツグがハイドリヒを説得し始める。
「まぁ、落ち着け!!
お前は一度落ち着く事をおぼえた方が良いぞ。」
「な!…
貴様、心配しているのだぞ!!」
「それは分かっている。
けど。コイツは大丈夫だと思う。
もしヤバければ嫌な予感がする筈なんだが、コイツからはしない。
だから大丈夫だと思う!」
「な!…
感だと!?
根拠があるのかと思えば感!?」
ハイドリヒがマサツグの根拠に納得しないで居るとモツがハイドリヒを
落ち着かせようとする。
「まぁ、落ち着け。
確かにマサツグの根拠はか!な!り!曖昧だが、意外と当たるんだ。
だから大丈夫だと思うぞ。
それに…
この状態は何を言っても頑なに強行する。
反対するだけ無駄だ。」
「…モツさん?
言い方如何にかならないかね?」
「事実だから仕方が無い。
ただし、やばい奴だった場合は幾ら言おうが始末するからな。」
「了解っと。」
モツが条件をつけるとマサツグが恐る恐る刀を繭に当てる。
その周りではモツとハイドリヒ、将軍が直ぐに動けるように剣を抜く。
そしてマサツグが斬り裂く繭は徐々に開いていき、中身が見えそうに
なった所でマサツグが刀を鞘に戻し、一気に繭の切り口を左右に広げる!
するとそこには見覚えの有る女の子がスヤスヤと繭の中で眠っていた。
それを見たマサツグとモツは無言で見つめるとお互いの顔を見合わせ、
静かにガッツポーズをする。そして感極まった二人が声を上げ、喜ぶ。
「……居たぁ~~~~~~~~!!!」×2
二人の声に周りが振り向き、宿屋のお嬢ちゃんも目を覚ます。
二人して最初は静かにしていたのにこの有様、宿屋のお嬢ちゃんが
眠い目を擦りながら繭から起き上がると二人に気付いて挨拶をする。
「……ふあぁ~…
あれ?…冒険者しゃん?…
あれ?…ここは…お母さんは?…」
「大丈夫。
もう安心だ!君をちゃんとお母さんの所に送り届けるからね!」
マサツグが寝起きで目を擦っているお嬢ちゃんにそう話しかけると
突如お嬢ちゃんがハッと目を覚まし、マサツグの両腕を掴むと取り乱し始める。
「ッ!?
そうだ!!
早くここから逃げないと!!
またあの白い人たちに捕まっちゃう!!」
小さい子ながらにマサツグの両腕を掴むと激しく揺さぶる。
意外と力があるのかそれともマサツグが気を抜いていたのか、マサツグが首を
カクンカクンと上下に揺らす。マサツグが首を揺らされ、モツが慌てていると
ようやく復帰したのかリンが起き上がり、お嬢ちゃんを後ろから抱きしめると
安心させる様にお嬢ちゃんに語りかける。
「…リコちゃん、もう大丈夫…
もう悪い人達は冒険者さん達が倒したから…」
「…本当に?
本当に倒したの?」
「そう大丈夫…
また出て来ても冒険者さん達が倒しちゃうよ。
だから、安心してね。」
リンが優しくリコを抱きかかえ、背中を撫でるとリコは緊張の糸が切れたのか
先ほどまでマサツグを揺さぶる位に気丈に振舞っていたが徐々に涙を目に溜め、
声も震え始める。
「じゃあ…お家に…帰れるの?…」
その問い掛けにマサツグとモツがリコにニカッと笑うとサムズアップをする。
それを見た途端リコがリンに抱きつき、泣き出すのであった。
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