上 下
466 / 696
-第五章-ウィンタースノー連邦-スノーピース~ドワーフファミリア編-

-第五章七十一節 珍しいソリと送別会と狼の遠吠え-

しおりを挟む



まさかの型破りな方法でマサツグがアダマンタイトを切断!…徐々にソリの

パーツを切り出し!…と、その凄まじい勢いにドワーフ達も驚きっぱなしで!…

改めてその切り出されたパーツをマジマジと見て!…やはりマサツグが人間か

どうか?と疑い出す様な感嘆の言葉を口にし出すと、一方では好き勝手に言葉を

続けて見せて行く!…それはモツであったりオリハであったり…とにかく

マサツグの事を化け物扱いして行くと、後にマサツグからツッコミを受ける事に

なってしまう!…


「…にしても……つくづく驚かされるのぅ!…

岩を寸分の狂い無く切り出すだけでなく、

まさかアダマンタイトまでこうも切り出してしまうとは!…

…それも掘りテクの工業機械より正確に切り出しおる!…」


「ここまで来るともはやマサツグ殿自体が機械ではないか?と考えてしまうな!…」


「…そうなると豪く高性能な機械だな…

…宛ら兄さんはドラ○エのキ○ーマシーンと言った所かな?…

実際色々とやるし…」


「ッ!!…誰がキ○ーマシーンだぁぁぁああああああ!!!!」


ドワーフ達が思い思いに感嘆の声を挙げる中…オリハはマサツグの事を某・大作

RPGに出て来るモンスターの様に!…さも青い四足歩行のロボットの様に言って

見せ!…マサツグもそれを言われた事で聞こえていたのか!…アダマンタイトを

切りながらオリハにツッコミを入れて行くと、その様子にドワーフ達を更に驚かせて

見せて行く!…その際何の事か分からないリーナは不思議そうに首を傾げて

見せて居ると、モツもこれには苦笑いと…と、その一方で徐々にドワーフ達の

方でも異変が!…と言ってもエンジンが掛かり始め!…今日はとことん驚いた!と

ばかりに言葉を漏らして笑って見せると、早速動きを見せて行く!…


「……本当に今日は驚かされてばかりの一日じゃわい!…

助けが来たと思ったらその冒険者達が規格外に強いし…

アダマンタイトを切り出しているのも関わらずツッコむだけの余裕もある……

…長生きはするもんじゃなぁ……」


「その気持ちは分かるが今はこの努力を無駄にしない為にワシ等も一肌脱がねば!…

さっさとマサツグ殿が切り出したパーツを加工するぞ!!」


「おぉ!…こんな面白そうな事!!…そうそう体験出来る筈が無いからのぅ!!…」


只でさえアダマンタイトを切るだけで精一杯の筈なのに!…オリハにツッコミを

入れるだけの元気をまだ見せて居る訳で!…と、たった一日で何度驚かされる事に

なるのやら!…そう言うと更にドワーフ達が驚きを露わにし始め!…と、同時に

マサツグの気持ちを無駄にしない様に!…早速頼まれた事を実現するよう動きを

見せて行き始めると、目の色を変えて熱意を燃やす!…その際切り出されたパーツを

ドワーフ達が回収すると、更に一工夫入れる様にその手にノミを!…


__カラン…カラン…カラン…


「ほい!…ほい!…ほい!……よし!!…これらを頼む!!」


「よし来た!!…ワシの鑿捌きの真髄を見せてやろう!!」


__コーン!!…コーン!!…コーン!!…コーン!!…


素早い検品をした後!…別のドワーフの手にパーツが渡り、パーツを受け取った

ドワーフもすぐさま行動し始め!…鑿でホゾを作ったりホゾ穴を掘ったり!…

とにかく組み立てる為のアレコレを何とか掘り出して見せて行くと、ここで

ドワーフ達にもある異変が!…と言うのもやはり硬度の関係上で作業が難航!…

思う様に作業が進まない様子を露わにして見せ!…しかしドワーフは諦める事無く

鑿を手に抗い続け、何とか意地でそのホゾとホゾ穴を作って見せると、更に別の

工程へと渡して行く!


「…ッ~~~!!……さすがに硬いのぅ!…手が痺れるわい!…

…じゃがこれで!……よし!!…モツ殿!…オオカミの嬢ちゃん!!…

スマンがこれを組み立てて行ってくれ!!…

この通りに組み立て行けばソリが出来る筈じゃ!!!」


「ッ!…あ、あぁ!…分かった!…

じゃあオリハ、リーナ!…手伝ってくれ!!」


「あぁ!!」


「了解です!!」


苦悩の言葉を口にしつつも満足の行く仕事が出来たのか、ドワーフは笑顔を見せると

今度はモツ達に協力を仰ぎ!…と言うのもモツ達に組み立ての作業を任せて行き!…

モツもその取っ掛かりが出来たパーツを受け取りオリハとリーナにも協力を仰いで

見せて行くと、三人はやる気を見せる様に協力をする!と返事!…世にも珍しい

アダマンタイト製の犬ぞりを組み上げ始める!…さてそこからの手順は上記の通り…

休むことなくドンドン進み!…


「おい、そっちを持ってくれ!」


「分かった!!」


__コーン!!…コーン!!…


「……よし!!…さすがドワーフ!!…

あんなに苦戦しながら加工していたのに噛み合わせはピッタリだな!!…

ビクともしない!!…」


「……よし!

この調子で組み立てて行くぞ!!」


モツ達は協力してソリを組み立てて行くのだが、その際ドワーフ達の技術力に

改めて驚かされる!…と言うのもあんなに加工するのに苦戦していたにも

関わらず!…いざホゾとホゾ穴を組み合わせる様に当てて行くと、それは

ピッタリと嵌まって見せる!…何ならどんなに乱暴に振り回しても外れない

様子を気配を見せており、これのはモツもさすが!とばかりに感心し!…

と、そんな感動を覚えつつ作業は続き!…全員が一丸となって犬ゾリの完成を

目指して動いて居ると、ここでマサツグもパーツの切り出しを終えて行く!…


__ズガガガガガガガ!!!!…


{……さすがにキツイ!!…

でもまぁ何とかパーツはこれで全部だな?…後はこの残ったアダマンタイトだが…

…えぇ~い!!…こうなりゃ自棄だ!!…いっそ全部お手頃サイズに切り分けて!!…

使い易い運び易い様にしてやるぜ!!!…}


「ッ~~~~!!!…ウオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!…」


さすがにTPの消耗の激しさに歯を食い縛り!…が、パーツを切り出した事で

肩の荷は下り…しかしまだ残っているアダマンタイトに未練タラタラ!…何だか

勿体なく感じると途端に自棄を!…いっそ全部綺麗に切り分ける根性を突如

燃やすと、そのまま技を続行する!…となるとマサツグも気合を入れる様に

絶叫し出し!…無我夢中で刀を振り!…そして時間にして約数十分後の事!…

遂に世にも珍しいアダマンタイト製の犬ゾリが!…完成すると同時にマサツグの

切り分け作業も終わりを迎える!…


__数十分後……


「「「……よし!!…出来た!!!」」」×6


__ズガガガガガガガ!!!!…ズバァン!!!……コオオォォ…ドシャアァ!!…


「ゼェヒュウ!!…ゼェヒュウ!!……ガハッ!!…はぁ!…はぁ!…

こ、こっちも!…ぜぇ!…何とか…ぜぇ!…やったぞ!!……」


数十分の時間を掛けてドワーフ達とモツ達がソリを組み立てると、そこには人

一人を余裕で寝かせたまま運べるアダマンタイト製の犬ソリが一つ出来ていた!…

そしてその完成した犬ソリにモツ達が達成感を感じて天井に拳を突き上げて居る

一方!…その隣ではマサツグが最後まで技を放ち終えた様子で地面に倒れ!…

激しく息を切らしながら言葉を口にして行くと、同じ様に達成感を感じていた!…

その際マサツグが作業して居た辺りにはレンガ状に斬られたアダマンタイトが!…

ゴロゴロと散乱しており!…と、その様子に気が付いたモツもピクっと反応!…

その光景を目にしてギョッとした様な表情を見せて行くと、恐る恐る声を掛ける!…


「…ッ!?…ヤ、ヤブ!…まさか結局全部斬ったのか!?…」


「ぜぇ!…ぜぇ!…何とかな!…

…ただ!…俺も!…動ける様に!…なるのに!…

時間が!…掛かり!…そう!…ハァ……」


「ッ!?…お、おいそのまま倒れるなよ!?…

これはアヤを乗せる為のソリなんだからな!?…」


ある種凄惨な光景にモツは驚愕!…やったのか!?と声を!…するとマサツグは

息も絶え絶えの様子で返事!…さすがに無理し過ぎた様子で言葉を零し!…

動ける様になるのに時間が掛かる事を口にすると、モツが更に慌てて見せる!…

と言うのもこのソリは一人用と!…マサツグを乗せる事を想定して居ない!と

続け!…するとそのモツの言葉にマサツグも更に気合を!…何とか仰向けから

うつ伏せに!…寝返りを打つ様に体勢を変えて大丈夫!と返事をして行くと、

ふとを話し出す!…


「ゼェ!…わ、分かってるよ!!…こ。これ位!!…

一時期の事シロとのじゃれ合いを思えばまだまだ!……」


「……何を考えているかは分からないが…とにかくその意気でまだ頼むぞ!?…

あと出来るだけ無理するな?…本当にヤブまで倒れたら最悪置いて行くからな?…」


「……ひでぇ…」


息を切らしながらも分かって居る!と…そしてふと思い出す一時期の事シロとのじゃれ合い

この時マサツグは何故か遠い目をして居り!…モツもそんなマサツグの様子を見て

戸惑った反応を見せて行くが、次には無慈悲な!…TP切れだろうと関係無い!と…

最悪置いて行く様なアヤを優先した具合に言葉を零すと、マサツグも不満そうに

言葉を漏らす…さてそんな話をして居る一方ではリーナがアヤを抱き抱えると、

その出来立てのソリの上に寝かせ!…その際寒くない様にアヤを毛布で包み込み!…

そのソリを引くのにシルビィーナ!…元・銀子にソリを引かせるようおんぶ紐で

繋いで行くと、帰宅の準備を整えていた!…因みにシルビィーナの名前に変わった

理由と言うのは可哀そうと!…全員が改めて改名を求めたが為であり!…命名は

リーナが付け直し!…全員が納得した所で以降はシルビィーナと!…シルビィーナ

も気に入ったのか?…ヴォン!と一鳴きして見せると、上機嫌に尻尾を振るので

あった!…


さて着々と帰宅の準備が進んで居る中…もう一方の方でもある騒ぎ事が起きて

居て!…


「グスッ!!…チネット!!…旅に出でも元気でな!!!…

いづでも俺っぢ達ば家族だがらな!!!…」


「親方!!……」


「チネットちゃん!……スンッ!…

契約をしたからには立派にアヤさんの事を守るのよ!…

大丈夫!…貴方なら出来るわ!…」


「女将ざん!!…」


「体にば気を付げろよぉ!!…

俺達はいづでもお前の帰りを待っでいるからな!!…」


「先輩!!……」


「…チネット!…そんなに簡単に泣くもんじゃないよ!…

そんな調子じゃアヤさんが心配だよ!…」


「ッ!…おばぢゃん!!……」


「いいかい?…

今からお前はあの立派な精霊使い様の守護精霊になるんだ!…

胸を張って!…大手を振って!…立派になってくるんだよ!!…

アヤさんがお前を自慢する位に立派にお勤めを果たすんだよ?……」


「…ッ!!……う゛ん!!……」


と言うのもチネットはアヤの守護精霊になった訳で!…アヤと一心同体で有り!…

となるとそれを今になって理解したノーム達が送別会と!…ドンドンやランラン!…

ポロポロにウッツンと…ノーム婦人会から励ましの言葉を一心に掛けられ続けて

いた!…その際いつの間に作ったのかそんなドンドン達の後ろには看板が立てられ!…

そこには「チネットを笑顔で見送ろう!!」と言葉が!…そして彼らは当然涙脆い

訳で有り!…聞き取れない位に涙声でとにかくチネットの事を励まして居ると、

チネットも貰い泣きした様子で返事をして居た!…さてそんな様子に気が付いた

マサツグ達もピクッと反応!…その際思わず言葉を口に!…


「……なぁ、モツ?」


「ん?…如何した?…

何か忘れ物か?…」


「…いや、そうじゃないけどさ…

あの看板って何時用意したのかな?…」


「…あぁ~…

気にしたら負けなんじゃないのかな?…」


「……そうか…」


疑問と言うのもその後ろに立て掛けられて居る看板に有り、アレはいつ作った

のだろう?と…と言うのもその完成度は簡易で作られたにしては出来が良く!…

さも予めから作られて有った様に感じてしまうと、マサツグがモツに質問を…

するとモツもその呼び声に気が付いた様子で返事をして見せ!…地面に寝ている

マサツグに声を掛けて行くと、一応警戒した具合に返事をする!…が、内容と

しては大した事ではない為、マサツグもそこまででは無いと…ただ疑問に感じた

事をモツに話し、モツもそれを聞いて納得した様な…薄々自分も感じて居た様子で

言葉を漏らすと、簡単にマサツグに答えて行く。するとマサツグもそれを聞いて

納得した様子であり…徐に自身のアイテムポーチを弄り出すとポーションを

取り出し!…


__……ゴソゴソ…ズボッ…きゅぅ~…ポン!…ゴクゴクゴクゴク!……


「……ダハァ~!!…よし!…これで動けるようになったかな!?…」


「ッ!?……また器用な事をして!…まぁとにかく無理はしないでくれよ?…

戦闘は俺達に任せて良いから!…ヤブは頑張って付いて来て!…」


「ッ!…へ~い…」


封を切るとうつ伏せのままポーションを飲み出し!…動けるまでに何とかTPを

回復すると、自力で自慢から立って見せる!…その際若干歯を食い縛る様な

反応を見せると、モツも気が付いた様子で言葉を…と言うのもその行儀の悪さに

呆れた様で…それでも無理はするな!と、心配した具合に護衛は任せるよう

言葉を口にして行くと、マサツグも若干疲れた感じで返事をする!…さてそうして

回復した所でマサツグもソリの方へと移動して行き!…送別会の方も徐々に

終わりの様子を見せ!…


__…ゴシゴシゴシゴシ!…クルッ!!…


{ッ!…お?…}×2


「皆!!…ッ!!…ッ~~~!!!…行って来゛るぅぅぅ~~!!!」


__ダアァァァ~!……ステーーン!!!……


チネットは頑張って涙を拭うと次には真剣な表情を!…さも大人になるよう

振舞って見せ!…と、気丈に振舞おうとする姿にマサツグ達もハッと!…

チネットが成長をしよう!として居る場面を見て改めて何か強くなったのか?

と感じて居ると、チネットもお別れの言葉を口にし出す!…それこそカッコ

よく「行って来る!」と言いそうな雰囲気ではあるのだが、如何にも徐々に

雲行きが怪しく!…と言うのもやはり感極まった様子でチネットは涙目に!…

それは徐々に徐々にと気丈さを崩壊させ!…やはり最後には号泣した様子で

ノーム達にお別れの言葉を口にすると、そんな様子を見てしまったマサツグ達は

芸人張りのズッコケようを!…オリハとリーナを心配させる!…


「ッ!?…ど、如何したと言うのだ!?…マサツグ!?…

やはりアダマンタイトを切った事による疲労が!?…」


「モツさんも大丈夫ですか!?…

兄さんと同タイミングで転けましたけど!?…」


「…い、いや…何でもない!……」


「ただ、ここまでお約束と言わんばかりのテンプレを見せられて

思わず二人で転けてしまっただけだ……」


「「……え?」」×2


リーナはマサツグの見事なまでの転けようを見て慌てて心配!…まだ体力が

戻っていないのでは!?と本気で慌て!…と、オリハも同タイミングで転けた

モツに対して戸惑いを感じ!…一体何事!?と同じ様に心配した様子で声を

掛けると、モツはオリハに何でも無いと…苦笑いをした表情で返事をする。

するとその一方でもただテンプレを見ただけだとマサツグが代わりに説明する

よう話をすると、そんなマサツグの返事に戸惑って見せ!…とにかくそんな

様子を見せて居るマサツグ達の様子にドワーフ達も困惑!…一体何が何だか?

と互いに顔を見合わせる様なそんな戸惑い様を見せて居ると、やっとここで

チネットが合流!…アヤが寝ているソリの上へと着地する!…


__ふよふよふよふよ……スチャッ…


「マサツグさん!…モツさん!…スンッ!…

待っていてくれてありがとう御座いました!!!…スンッ!…

では…行きましょう!!!…スンッ!…」


「そ…そうか…」


「じゃあ、行きますか…」


合流するなりチネットは鼻を啜りながらお礼を!…その際二人が転けて居る事に

何の疑問も持たず…と、そんなチネットの様子に二人も思わず戸惑ってしまい!…

自力で何とか地面から起き上がって埃を払って見せると、やっと工房へと向かい…

ドワーフファミリアにへと向かって歩き出し始める!…その際ソリを中心に輪形陣を

敷く様に洞窟の出口へと向かって行くと、そのマサツグ達の後方ではノーム達が

まるで港から船を見送る様に手を振り!…何時までもチネットの名前を呼び続けて

おり!…その声に答えるようチネットも手を振りながらまた涙を流して見せて

居ると、徐々に徐々にとその様子は遠ざかり…最終的にはそのチネットを呼ぶ声も

聞こえなくなる…そうしてノーム達に見送られたマサツグ達は陣を保ったまま

洞窟の出口へ…すると外は時間を掛け過ぎたのかまた夜に!…しかし妙に明るい

光景が広がっており、マサツグ達もアレ?…とばかりに戸惑って居ると、次には

ドワーフ達が一斉に珍しがる!…


「ッ!…あれ?…もう夜明け?…

え、そんなに時間を掛けたか?…」


「……いや…まだ時間は夜の八時だぞ?…

夜明けじゃない筈だが?……」


「ほほぅ!…これは珍しいな!…」


「そうじゃの~!…

これを見るのは何時以来かの~!……」


「え?…」


とにかく夜だと言うのに外が明るい光景にマサツグ達は困惑!…しかしドワーフ達は

珍しい!と、一概にも各々が言葉を口にして行き!…となるとそんなドワーフ達の

反応を目にして当然戸惑い始め!…一体何が?とばかりにマサツグやモツが思わず

言葉を漏らして行くと、ドワーフ達もピクっと反応!…その際何が珍しいのか?を

話す様にマサツグ達の方へと振り向いて行く。そしてマサツグ達の顔を見るなりふと

指で空を差し!…徐に言葉を…


「アレじゃよ!…[白狼の咆哮]と呼ばれる自然現象じゃ!…

…ほれ?…霊峰の方を見て…っと言っても霊峰との距離が近過ぎて分からんか…

本来この[白狼の咆哮]が起きた状態で霊峰を見るとまるで狼が空に向かい白い息を

吐いている様に見える事から付いた名なんじゃが…」


{……ッ!……なるほど?…つまりは白夜って事を言いたいのか?…

確かに丁度時間的にも現象的にも似てるし…何ならそう見えても可笑しくない!…

…それにしてもシベリアに居る訳でもないのに…

まさかこの世界ゲーム内で白夜を見る事が出来るとは……}


何でもドワーフ達が言うには今起きているこの現象を[白狼の咆哮]と言うらしく、

空と霊峰を指差しながらマサツグ達に説明を…と、同時にマサツグ達もハッと

気が付いた様子で理解を示し!…要は[白夜]の事であると色々と納得が言った

様子を見せて居ると、まさかの白夜に思わず感激!…その幻想的な光景に思わず

目を輝かせて見せる!…さてそうして色々と話を聞いて各々がまるで時間が

止まったかの様な反応を見せて居ると、更にドワーフがある話を!…


「しかし、これは運が良いのう!…」


「…と言うと?……」


「…かの者が旅立つ時にこの光景を見ると!…

その者は霊峰の守護者に祝福をされている!…と、言う言い伝えがあってな?…

丁度このノームがアヤ殿の守護精霊として旅立ち始めた事じゃし!…

霊峰もノームの事を祝福しているのかもしれんなぁ!…っと

老いぼれながらに言い伝えを思い出しただけじゃ!…」


「ッ!…へぇ~!…なるほどな!…」


「白狼の咆哮!……」


ドワーフが話し出した話と言うのも伝承の様なモノで、ドワーフはそれを語りながら

縁起が良いと!…さもタイミング的にもバッチリだとマサツグ達に話して行き!…

その言い伝えを聞いたマサツグ達も更に納得したよう相槌を打って見せて居ると、

チネットも白狼の咆哮!と…空を見上げては嬉々とした様子で見詰めていた!…さて

そうしてマサツグ達が足を止め、暫くの間空を眺め始めると…徐々に冷えて来たのか

アヤがブルッ!と何か震える様なそんな反応を見せて行くと、次にはクシャミをして

見せる!…


「…ッ!…ッ~~……クシュン!!…」


「ッ!…おぉ、いかんいかん!!…

確かに綺麗だけど今は急ぐぞ!…

アダマンタイマイの背中から降りる際、

ソリが横転しない様に気をつけろよ!!…」


「……まだアダマンタイマイが穴の中に埋まっていてくれて助かったぁ!…

もし移動を始めたら如何やって降りるかで考えないといけなかったからな!…」


可愛らしい小さなクシャミが静寂を打ち破る!…するとそのクシャミに反応して

マサツグ達も慌て出し!…本来の目的を思い出した様に移動を再開!…その際

シルビィーナを一旦ソリから外して行き!…この時その運搬方法についても上と

下で別れて見せ!…下の者はソリを支え!…上の者はおんぶ紐で速度を調整と!…

様は引っ張りつつ徐々に下ろす様な形で難所を越し!…無事地面に着地をして

見せて行くと、改めてシルビィーナにソリを曳かせる!…


__ズルズルズルズル…ズシャ!!…


「……ふぅ~、よし!!…無事着地!!…

じゃあ、シルビィーナ!!…またソリは任せたぞ!!」


「ヴォン!!」


無事下り切った所で一同安堵!…そして改めておんぶ紐でシルビィーナとソリを

連結して行き!…と、同時に何本も結んでいたおんぶ紐も解いて行き!…更に

マサツグもシルビィーナに任せた!と…シルビィーナの頭を撫でて移動を再開し

始めて行くと、シルビィーナもヴォン!と鳴いて返事をする!…さてそこからは

また高原を越える様に雪道を掻き分け!…と同時にふと妙な疑問も感じ始め!…


__シャーー……


「……変だな?…

モンスターの影一つ無い?…」


「昼間もそうだったが何でだ?…

確かにモンスターが居ないならそれに越した事は無いが……」


「確かに静か過ぎるな……

いつもならウザい位にスノーゴーレムが出て来る筈じゃが……

これは?……」


この時感じた疑問と言うのもその道中にあるモノで、何故か一向に接敵しないと

言うのもであり!…と言うのも地元民であるドワーフ達も可笑しい!と、スノー

ゴーレムなる物が出て来る筈!と言葉を零して辺りを見回し警戒をするが!…

やはりそれらしい影を見つける事が出来ないで居た!…とまぁ確かに接敵しない

と言うのは良い事なのだが、あまりにも静かすぎる故に不気味に感じ!…その間

にもマサツグ達はドンドン前に!…やはり静か過ぎる高原の様子に嫌な気配を

感じて居ると、それは突如として聞こえて来る!…


__ザック!…ザック!…ザック!…ザック!……


「……ふむ…ここまで約二~三時間と言った所か?…

もう帰り道の行動が見えて来た!…

…何も無かったから良かったと考えるべきか?…それとも…」


__……アオオオォォォォン!……


「ッ!?…お、狼の遠吠え!……何故こんな所で!?……」


遠目ながらも目の前には一番坑道の出入り口が、その際杞憂だったか?と言った

具合にドワーフが言葉を漏らし…しかし次には何処からともなく狼の遠吠えが

聞こえ始め!…その遠吠えが聞こえて来た事でドワーフ達は途端に警戒を強め!…

辺りを機敏に見回しとにかく不味い!と言った表情を浮かべて見せると、次には

言葉を失ってしまう!…この時失うと言っても声帯が枯れたとかではそうでは

なく、一言も喋らなくなってしまうと言う意味で有り!…


__ババッ!!…キョロ…キョロ…


「………。」


「…ッ?…何、如何した?…狼の遠吠えがそんなに珍しいのか?…」


とにかく雪原の方から狼の遠吠えが聞こえてくると、何故かドワーフ達が機敏に

反応を見せて行く!…それこそ後ろを振り返り狼がこっちに向かって来ていない

事を確認しながら移動して行き!…そんなドワーフ達に今まで幾度と無く狼の相手

をしてきたマサツグがそんなに珍しい事か?と尋ねて行くと、ドワーフ達はその

理由をマサツグに話し始める。因みにこの時シルビィーナも耳をピクッと反応

させると、その狼の遠吠えが聞こえてくる方を振り向き…何か聞き耳を立てる様に

耳をピンと、そしてジッと雪原の方を見詰める様子を見せて居た…


__…ッ!………


「……この雪原は確かに霊峰に住む狼達の庭の様なモンなのじゃが…

アダマンタイマイがウロウロして居るからまず滅多に霊峰から

降りてくる事は無い!…

迂闊に降りればアダマンタイマイに踏み潰されてしまうからなぁ…

だからよっぽどの事がない限り狼が降りて来る事は無いのじゃが?…」


「……ッ!…じゃあ?…

アダマンタイマイが産休だから降りてきたとかは?…」


「いや、それも無い筈じゃ!…幾らアダマンタイマイが大きく!…

霊峰から見つける事が容易であるとは言え…

アダマンタイマイが産気付いて卵を産みに行ったとまでは分からん筈じゃ!…

…もしかすると本当に非常事態なのかもしれんなぁ?……

縄張り争いか?…はたまた侵入者が現れての警戒態勢か…」


宛らシルビィーナはその遠吠えの意味を知るかの様にジッと後方を見詰め!…

数秒間脚を止め…と、その一方でドワーフ達が狼に警戒する理由を口に!…

やはり滅多に起きない事が起きて居る事を口にすると、徐にモツが自身で考えた

仮説を口にする!…と言うのも原因であるアダマンタイマイが動いて居ない!と、

その隙に狩りをする様な事では無いのか?と…が、それを聞いたドワーフは

やはり否定!…その理由についてもやはりアダマンタイマイがネックである様な

事を口にすると、マサツグもそれを聞いて一応警戒!…急ぐ事を口にする。


「ほぉ~……だとすると一応巻き込まれない様に急いだ方が良いか?…」


「ッ!…そうじゃな!…この坑道に在るもう使われていない休憩所まで

急いだ方が良さそうじゃ!…

或いはさっさとこの坑道を抜けて町に逃げ込むか!…

今の状況でもし襲われでもしたらかなり不味い事になる!!…」


「……じゃあ急ぎますか!…

…シルビィーナ!…スマンが少し急ぐぞ!…」


「ヴォン!!」


マサツグの問い掛けにドワーフ達は全員頷き、更には奥まで逃げよ!と…と、余程

警戒をして居るのかドワーフ達からは当然焦りの色が見受けられ!…その様子に

マサツグも感化された様子で若干慌てた反応を見せた後!…徐にシルビィーナを

呼んで少し急ぐ様に申し訳無さそうな感じで指示を出すと、シルビィーナは一吠え

して返事をする!…さてそこからは一気に移動速度を上げて一番坑道に入って行く

と、その際シルビィーナが曳くソリは坑道のデコボコ道でガタガタと激しく揺れ!…

となると寝ているアヤも激しく揺すられ寝辛そうに唸り声を!…するとマサツグが

気が付いた様子でアイテムポーチを弄り出し!…そこから幻影コートでズボっと

取り出してアヤの頭に囲いを作ると、せめてもの揺れだけでも防いで行く!…さて

そうしてマサツグ達は一気に駆け込み!…何とかあのゴブリン達が根城にして居た

休憩所にまで辿り着くと、漸く何とか落ち着きを見せて行くのであった!…

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

課金ガチャアイテムだけで生き抜く!異世界生活‼︎

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:148

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,659pt お気に入り:2,211

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:101

女神と称された王子は人質として攫われた先で溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:1,669pt お気に入り:148

天才中学生高過ぎる知力で理不尽をぶっ飛ばす!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:114

【完結】幸せしかないオメガバース

BL / 完結 24h.ポイント:511pt お気に入り:1,868

処理中です...