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-第四章-オータムクラウド国編-

-第四章四十一節 フィロの意外な一面と当然の様に罠と忍者屋敷-

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某・サイレンが突如聞こえて来そうなホラーゲームチックな村に…生け垣に

身を隠しつつマサツグ達が先を進んで居ると、ふとマサツグの頭の中では

ある歌が…それもやはり某・サイレンが突如聞こえて来そうなホラーゲームに

使われている曲であり、里の雰囲気と何処かマッチしている事でマサツグと

しても不意に!…思わず口遊むようフィロを背中から降ろしてとにかく先を

進んで居ると、当然の如くフィロからツッコミを受ける!…


「……んんおぉ~~~~♪……

うぅ~やぁ~あまぁ~いい申~しぃ~上ぁ~げる♪~…

てぇ~んにおぉ~わすおぉ~すぅがぁたに♪…」


「……急に何をそんな不気味な歌を歌って居るのじゃ?…

疲労で壊れてしもうたか?…」


「ッ!……いや…何と無く…

なぁんかこの村を見てると屍人が出て来そうな気がしてさ?」


「……ッ?…屍人?…」


辺りには段々畑の水田にちょっと近代化?…した様な瓦屋根の家。それはそれは

マサツグが思って居た忍びの里とは違う!…普通に人が住んで居る集落を

思わせる様な風景を見せて居ると、マサツグはその様子に既視感を覚える!…

そしてそれを見たマサツグとしても思わず某・祝詞を口遊んでしまったのだが、

フィロから辛辣なツッコミを受けると心配され!…マサツグもそんなフィロの

問い掛けに対し戸惑った様子で返事をして見せ、そのネタとなって居るゲームの

話をフィロにするが!…当然フィロは理解出来ない様子で首を傾げる!…

そしてそんな無駄話を二人で物陰に隠れながらして居ると、突如として話は

前進する!…


__……ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


「ッ!!…シッ!……誰か来たな!…」


「その様じゃな!…」


「……あの要人には手荒な真似をするなよ?…

アレは迂闊に手を出すと国交問題になる!…

それこそ蒼月一派に代わって我々が御庭番衆になる話も

破談になる可能性が有る!……分かって居るな?」


くだらない話をフィロとして居ると遠方より何やら足音が…それに二人もハッと

気が付いた様子で直ぐに黙ると、耳を澄ませる様にして相槌を打ち合う…すると

次に聞こえて来たのは恐らくアヤの事だろうか、何やら要人と!…手を出すと

国交問題になる等のワードも飛び出し!…やはり国の裏切り者に雇われている

のか!…自分達の野望的な事を口にすると、他にも近くに仲間が居る様子で問い

掛け出す!…するとその問い掛けを受けた相手方も気を付けた様子で返事を

すると、更に気になる事を!…


「重々承知して居ます!……現在は座敷牢にて大人しくしている模様!…

あれだけの酒を飲んだのです!……当分は死んだように眠って居るのでは!…」


{……アヤぇ~~…}


「よし!…とにかく警戒を怠るな?…

幾ら姫と言っても一介の冒険者!…油断をして居ると足元をすくわれる!…」


「ハハァ!!……ですが少し心配し過ぎなのでは?…

あの方を連れて行ったのはあの首領の屋敷ですよ?…

…一度あそこに入れば手順を心得ていない者は一生出れない!…

まさに屋敷自体が牢獄と化しているのに!…」


続けて話を聞いて居ると近くにマサツグ達が居る事を知らずに情報を漏洩!…

何でも今アヤは投獄されて居るらしく、捕まった際も酒を飲んで居たとか!…

すると当然この話を聞いたマサツグにフィロは呆れた様子で思わずガクッと!…

首から崩れる様な反応を見せて居ると、更に話は警戒を強めるモノへと

変わって行く!…その際その受け答えをして居た者が返事をすると、同時に

何やら杞憂を口にし…その警戒を強める様に言って居た者に対して警戒し過ぎ

なのでは無いか?と進言をし、この時も気になる事にアヤの居場所を屋敷と!…

その屋敷にも色々と罠がある事を示唆する発言を口にし続け!…しっかりと

近くで聞いて居るマサツグも行き先は決まった!…とばかりにただ黙って話を

聞いて居ると、更に変な事を耳にする!…


{ッ!……首領の屋敷にアヤが居る!…

…てか更に気になる言葉も出て来た気が?…}


「……確かにそうではあるが…万が一に越した事は無い!…

…現にここで誰かに話を聞かれて居ると考えると!…」


{ッ!?…バ、バレてる!?…}×2


「ッ!!…曲者!!…」


屋敷自体が牢獄!…その言葉に気を掛けて思わず隠密の具合が疎かになって

居ると、何やら警戒を強めるよう言って居た者の口調が可笑しくなる!…

それこそこの者は心配性なのか、万が一と話すと辺りをキョロキョロと

始め!…更には今ここで誰かに話を聞かれて居ると想定した様子で話しを

続け!…その一言にマサツグとフィロがビクッと反応しては心の中で言葉を

思わずポロっと漏らして居ると、次にはその警戒して居た者が苦無を投げる!…

それはまさにマサツグ達の気配を察知した様に!……しかし!…


__フォン!!…ドシュッ!!…ぴぎぃ!!!…


「……何だ野兎か…」


「……敵襲かと思い焦ったではありませんか!…」


「……いやスマン!…

しかしこれももう直ぐ我らの悲願が達成できると思っての事!…」


{…ッ~~~~!!!…ぶねぇ!!!…危うく見つかったかと思った!!…}


その警戒して居た者が投げた苦無は生け垣を突き破る事無く野兎に!…それこそ

フィロの直ぐ後ろで腹部に深々と刺さっては痙攣して見せ!…警戒して居た者も

冷めた様子でその正体がウサギだった事に安堵すると、次にはその話をして居た

者も落ち着きを見せる!…それこそ突如苦無を投げ出した事で本当に敵襲!?と

警戒した様で、何でも無かった事にボヤキ!…すると警戒して居た者もそのボヤキ

に対して謝り出し!…気が焦って居たとばかりに言い訳をすると、改めて警戒を

強める様に指示を出す!…さてそんな話をしている一方でマサツグ達はと言うと、

自分達が見つかったのか!?と焦った様子で!…しかし蓋を開けてみるとその

標的は全然違い!…自分達が見つかった訳では無い事に驚きつつもホッと安堵して

居ると、くノ一達は解散する!…


「……とにかく細心の注意を頼む!…」


「ッ!…御意!!!」


__ザッザッザッザッザッザッザッ!……


「……フゥ~…ビビったぁ~!…見つかったかと思ったわ!…

でもこれでアヤの居場所は大体分かった!…じゃあ早速行くとするか!…

……って、フィロ?…」


最後に気を付けるよう指示を出すとそのくノ一達は駆けて行く様に解散し!…

マサツグも警戒が解けた事でホッと安堵すると、それと同時に次の行き先に

ついて目途が立ったと喜んで見せる!…と言っても小さくガッツポーズを

する位で特段喜びを露わにしている訳では無いのだが…とにかく先を急ぐ様に

フィロへ声を掛けて居ると、そのフィロからの返事が無い事に疑問を持つ!…

そしてフィロの様子を確かめる様にマサツグがそっと振り返って見ると、

そこには不思議な光景が…


__ふすぅ~…ふすぅ~…


「……可哀そうにのぅ?…

お主もちゃんと気配を断つ事が出来れば…

この様な事にはならなかったじゃろうに…」


__ふすぅ~…ふすぅ~……ボッ!…


「……せめて…苦しまずに逝け……これは餞別じゃ…」


マサツグが振り返るとそこではフィロが…この時フィロは絶命寸前のウサギを

前にして何かを重ねる様に憐れみ目で見降ろしており…次に口を開いたかと

思えば、まるでそのウサギが愛しい人に見えたかの様に憐みの言葉を口にし

始める!…この時そのフィロの様子からは今までの言動では想像出来ない程の

慈悲深いモノを何か感じ!…マサツグもそんなフィロの様子に驚いたよう目を

丸くして居ると、フィロはそのウサギに対して火を付け出す!…それこそ

苦しまない様にと言葉を口にすると、苦痛を感じない程にあっと言う間の

火葬を済ませ!…当然そんなフィロの様子を見てマサツグはただ困惑した

具合に硬直して見せ!…フィロもフィロで終わったとばかりにマサツグの方へ

振り向き、先を急ぐ様に声を掛けようとすると、そのマサツグの様子を見て

首を傾げる…


「………さて、先を急ぐかや?…マサツ……ッ?…

何じゃその顔は?…まるでハトが豆鉄砲を喰らった様な?…」


「…ッ!?…え?…あ、あぁ!!…いや何でも!!…気にせんでくれ…」


「……ッ?…そうか?…では行くとするか!…」


「あ、あぁ!……ッ…」


そのマサツグの驚いて居る顔を見るなりツッコミを入れ!…マサツグもその顔に

ついてツッコまれた事でハッとすると、慌てて返事をしては何でも無い!と口に

する!…この時マサツグから見たフィロと言うのは、如何にもあの悪逆非道の

魔王に見えず!…寧ろ何か悲しい過去を振り返る様な寂しい感じの女性に見え!…

これ本当にフィロ?…と言った具合にただ戸惑いを覚えると、返事をした後も

あのフィロの悲しいそうな表情が頭に残る!…そうしてマサツグがフィロの

あの表情について思わず何か考える様な事を隠そうとすると、フィロはフィロで

そんなマサツグを詮索せず!…キョトンとしては元のフィロの状態に戻って

見せ!…マサツグもそんなフィロに戸惑いを覚えつつ先を急ぐと、一旦は頭の

片隅にその事を置いておく!…さて盗み聞きした通りにとにかくその首領の屋敷を

目指して歩いて居ると、それっぽい建物を!…何やらデカい武家屋敷の様な物を

遠目に見つけ!…


「……ッ!…アレがそうじゃないか?…

見た感じ如何にもだし!…」


「ッ!…そうじゃの!……のうマサツグ?…

分かって居るとは思うが警戒を怠るでないぞ?…ここは忍びの里!…

更にはあの話にあった通りとするなら!…

侵入者を撃退する罠が仕掛けられておる筈じゃ!…

故に危険!!…最悪命を持って行かれるやもしれぬからな?」


遠方に見える武家屋敷を指差しつつ確認を取り!…フィロもそれっぽい!と

言った所で返事をすると、改めて潜入するに至っての注意を口にする!…

この時この里が普通でない事を挙げて見せると、次には相手が忍者だと言う

事をマサツグに言い聞かせ!…当然その屋敷にも何か罠が有ると!…本当に

気を付けないとあっと言う間にリスポーンさせられる様な事をフィロが懇々と

言い聞かせる様に注意をすると、マサツグもさも当然の様に返事をする!…


「ッ!…分かってるよ!…

この手の不法侵入はもう経験済みだ!…」


「ッ!…そうじゃったの!……と言うか…

改めて思ったのじゃが…今サラッとトンデモナイ事を言ったな?…」


フィロの話し掛けに対してマサツグも不敵に返事!…この時どの時の事を言って

居るのか分からないが経験済みと!…まるで手慣れた空き巣犯の様な態度で

フィロへ返事をして見せ、フィロもその場面をチラホラ見て居た様子でマサツグの

返事に同意をすると、改めてその武家屋敷の様な建物へと接近を試みる!…その際

フィロが改まった様子でマサツグの言葉を思い返すと、冷静にツッコミを入れ!…

するとマサツグはそのフィロのツッコミに対して声を出す事無く苦笑いをして

見せ!…恐らく巡回であろうくノ一達の目を掻い潜りつつ!…その武家屋敷の門の

前まで無事に辿り着いて見せると、マサツグは早速玄関からの潜入を試みる!…


__サッ!…サササッ!!……


「……ふぅ!…何とかここまでバレずにやって来れた!…

…さて?…早速潜入をば…」


「ッ!?…ま、待てマサツグ!!…何の警戒も無しに!!…」


それこそ無事にここまで辿り着けた事に安堵してか、何の警戒も無く玄関の

取っ手に手を掛け!…すると当然の様にフィロが慌ててマサツグを注意!…

先程の話を思い出す様に警戒の言葉を口にするのだが!…時既にお寿司と

言った具合にマサツグがやる!…それはフィロの注意を途中に覚えた違和感で

有り、引き戸である玄関を開けようと!…途中までは何事も無く玄関は開いて

見せるのだが、人一人分位通れそうな所まで開けて行くと、突如謎の

引っ掛かりがマサツグの腕を伝う!…


__クッ…ガラガラ……カチッ!…………


「……やっちゃった?…」


「ッ!?…ッ~~~~!!!…こ!…この阿呆~~~~ぅ!!!

なぁにをやっとるか!!!…

あれ程までに気を付ける様に言うたでは無いかぁ!!!…」


「ス、スマン!…つい気が…」


「…で、如何する!?…

このまま罠から逃れても奴らは罠が動いた事で反応する!…

警戒は必死じゃぞ!?…オマケにここはわっちらの知らぬ土地!…

生きて出て来れるかどうか!!…」


謎の感覚にマサツグも引き戸を手にしたまま固まり!…フィロもそんな様子に

思わず絶句してマサツグの事を見詰めて居ると、マサツグはフィロの方へ振り

返るなり青褪める!…その際やってしまった…と一言だけ言葉を口にすると、

当然の如くフィロはツッコミを入れ!…珍しくマサツグの事を罵倒し始め!…

先程までの話を聞いて居たのか!?と説教までしかねん勢いにフィロが地団太を

踏み出すと、マサツグもそんなフィロに対して戸惑いながらも謝って見せる!…

しかしやってしまったものは仕方が無いと言った様子でフィロも直ぐに

切り替えると、色々と如何するか?を考え!…まずは罠が起動した事で自分達の

身の危険を案じ始め、更には罠が起動した事で忍者達が警戒!…探索も更に

難しくなる事を続けて予想して見せ!…その打開策をマサツグに尋ねるよう

若干慌てた様子で声を掛けると、マサツグは慌てる事無くある行動に打って

出る!…


__…チラッ……チラッ……チラッ…


「……なるほど?…何が起きるか大体分かった!……刹那!…」


マサツグは動けない状態ながらも辺りを確認!…その際どの様な罠が発動するのか

確認すると、この引き戸のトラップだけでも約三つ位仕掛けられて有るのを

確認する!…まずは自身の脚元!…これはよく有る下から槍が突き刺して来る

パターンの奴で、よく見ると地面が掘り返された様に真新しく!…何なら既に

起動し掛かって居るのか矛先が少しだけ見えて居り、マサツグもそれを見て更に

引き戸が手放せなくなると、次を確認し始める!…そして次に見つけたのは中に

入って直ぐの土間で!…恐らく落とし穴が仕掛けられて有るのであろう土間には

まるでここから二つに裂けて開きますと!…不自然に土間の真ん中に段差の様な

縦線が入っており、これまたマサツグが感付いた様子でここも危険!…と言った

具合に確認をすると、最後にその奥にある通路に目を向ける!…するとさすがに

そこには罠が無いのか、至って何も見当たらず!…それらを確認した所で

マサツグも覚悟を決め出し!…いざ潜入!…と言った具合に突如刹那を発動すると、

フィロに向かい手を伸ばす!…


__ヴウン!!……ガッ!!…


「ッ!…ちょわ!!…」


__バシュン!!!…ボバババババ!!!…トンッ!…ガバアアァ!!…


「わわわ!!…マ、マサツグゥ~~~!!!」


マサツグが伸ばした手はフィロの首根っこを掴み!…フィロも気が付いた

様子でふと反応を示すが!…次にはマサツグに拉致されるよう屋敷の中へと

連れて行かれる!…その際マサツグは完全に罠が動き出す前にフィロと共に

まずは槍のトラップを越えて見せると、トラップは遅れて地面から槍を

突き出し!…次にマサツグは土間が縦に割れる前に一歩足を踏み入れ!…

土間を蹴って向かいの通路まで跳ねるよう駆けて行くと、これまた土間も

遅れて縦に割れては大穴を見せる!…すると当然そんな光景を目の前にして

フィロも戸惑った様子で声を上げるのだが、マサツグは構わず駆けて行き!…

とにかく最初の引き戸の罠は何とかなったのか!…マサツグの咄嗟の行動で

無事玄関を乗り越えて見せると、次には鳴子が突如鳴り出す!…


__スタンッ!…ザザアァァァ!!……カラカラカラカラ!!!…ッ!…


「ッ!!…侵入者だ!!!……いや脱走者か!?…」


「とにかく首領の屋敷に急げ!!!…あそこは今!…」


「……さすがにこれは見てなかったかな?…

てかホントこれ如何言う仕組みで動いてるんだ?…」


鳴子が鳴り響くと外に居たくノ一達に異常を伝え!…そしてその鳴子の音に

くノ一達も何かが有った事を悟ると、一気に里全体が警戒態勢に入り始める!…

その際とあるくノ一の声が聞こえて来ると、その者は侵入者か脱走者かを

疑い!…場所は首領の屋敷で鳴っている事でまずはアヤが疑われた様子で!…

とにかく逃がしてはいけない!と言った具合に危機迫る様な声が玄関の外より

聞こえて来ると、マサツグは慌てる事無く鳴子の存在に盲点と言う。さて

そうしてマサツグに首根っこを掴まれているフィロはと言うと、マサツグに

持ち上げられる様にしてぷらぁ~んと…


「……これマサツグ!…いい加減に降ろさんか!…」


「ッ!…え?…あ、あぁ…スマン!…」


「全く!…罠に引っ掛かるわ!…わっちを物の様に扱うわ!!…

マサツグでなければ今頃焼いて居るのだからな!?…

…とにかく!…ここからは慎重に!!…

…ホントはと言うとこの手のカラクリはもう少し見て居たい物じゃが…」


吊り下げられる様にしてマサツグに捕まって居る事で不服とし!…文句を言う

よう降ろせ!とマサツグに呼び掛けると、マサツグもハッと気が付いた様子で

返事をする…その際マサツグもこれはいかがなものか?と感じた様子でフィロ

に謝って見せると、フィロはフィロでマサツグの対しての文句が止まらず!…

マサツグである事が重要な様子で子供の様に怒り!…とにかく気を取り直して

再度気を付ける様に言葉を口にすると、その説教の最後の方でモソモソと…

何やらフィロにはカラクリに対して興味が有るのか、若干恥ずかしそうに

しながらも惜しいと言った具合に玄関の方を振り返って居ると、マサツグが

聞き取れな勝手様子で呼び掛ける!…


「……ッ?…最後なんか言ったか?」


「ッ!…いんや!…何でも無いのじゃ!…

さぁ!…小娘を助けにその座敷牢へ!!…」


「……ッ?……まぁそうだな!……にしても…

入ってみて分かるがこうもデカい屋敷だと何処から調べるか…

もはや一種のダンジョンなんじゃって思うわ…」


「……確かに!…面倒な位に広いのじゃ!……

まるでわっちが住んで居った昔の城みたいじゃな?」


最後の一文が聞き取れなかった様子でマサツグがフィロに声を掛けるのだが、

フィロは何でも無いと言って返事…その際改めて探索を再開するよう声を

掛けるとアヤを心配した様子で、マサツグもそんなフィロの様子に疑問を

持ちつつ!…とにかく同意して改めて辺りを見回すと、この屋敷のデカさに

思わずダンジョンなのでは?と零し出す!…この時マサツグの目に映った

光景と言うのは、とにかく廊下は四方に分かれているわ!長いわ!の面倒な

光景で!…廊下がそれだけ長いと言う事はその分部屋も多いと言う事で!…

とにかく探索のし甲斐がある!…何ならフィロも面倒と感じる程に広く!…

思わず自身が過去に住んで居た城と比べる様な事を口にして居ると、

マサツグの目の前にあるモノが表示される!…


  ------------------------------------------------------------------------

           「紅月衆の隠れ里・領主の館」

   紅月衆の隠れ里の一番奥にある武家屋敷。ここはその隠れ里の中

   でもトップクラス…首領が住んで居る砦とされて居り、その内部は

   罠だらけ!…容赦なく侵入者達に対して手厚い歓迎をしてくれる

   と言う。因みにその侵入者と言うのは同族であっても関係が無い

   らしく、迂闊に踏み込んだ者には死を!…そして屋敷に入って

   帰って来れるのも上忍の中でも指折りとされており…とにかく

   凶悪な場所として下忍達からは恐れられ!…通称「人食い館」とも

   呼ばれていたりするらしい!…尚これを無傷で踏破出来る者は代々

   首領の家系しか出来ないらしく、無名で達成した者は今だ居ないと

   されている!…

              推奨Lv.55

  ------------------------------------------------------------------------


「ッ!?…うわぁ~!……今一番見たくないモノを見てしまった!…」


「ッ!…何、何を見たと言う……ッ!…うわぁ~…

確かに今一番見たくないモノじゃな…面倒この上ない…」


__シュン……ッ!………


マサツグの目の前に表示されたのはこの館の観光案内!…この場合観光と言って

良いのか甚だ疑問なのだが!…とにかくそこには罠満載と表記されており、

終いには推奨レベルまで!…もはやダンジョンと言っても良い位の事がツラツラ

と表記されており、マサツグもそれが突如現れた事で戸惑い!…と同時にその

全文を読んで苦い顔をして見せ!…思わず本音をポロっと零して居ると、そんな

マサツグの言葉にフィロがスッと反応する!…その際マサツグの肩に飛び付いて

はマサツグが見て居るモノに目を向け、同じ様に苦い顔を!…面倒この上ないと

言っては耳を伏せっとして見せ、そんなフィロの様子にマサツグが思わず

癒されてしまうと、今度こそ気を入れ直す!…


「……ハアァ~…とにかく!…近くの部屋から調べてみるか…

幸いこの屋敷に入って来れるのは恐らく少人数!…

敵と遭遇する事は滅多に無いと思うが…」


「……それよりも厄介なのは罠の方じゃな?…

殺気の無い殺意と言うのは!…何とも厄介なモノじゃ!…」


__……ハアアアァァァ~~~……


「……こんな所で溜息を吐いて居ても仕方が無い!……感知サーチ!!」


溜息を吐きつつ無理やり気を持ち直し!…改めて敵との遭遇が少ない事を考える

と、まだマシか?…と考えてしまうのだが…フィロはフィロでやはり罠を警戒した

様子で!…とにかく教訓のよう罠が厄介である事を再度マサツグに言い聞かせる

よう言葉を口にすると、最終的には二人揃って溜息を吐き出す!…そして攫われた

アヤに対して何故ここに連れ去られたのだ?と考えてしまうのだが、考えた所で

好転する訳がなく!…何ならアヤ自身連れ去られたくて連れ去られた訳では無い

ので八つ当たりに近く!…マサツグも可笑しいと気が付いた所で何度目となるか

分からない気の引き締め様を見せると、感知サーチを発動する!…


__ピィーン!!!…ヴウン!!…


「ッ!…うわぁ!…分かってたけど罠がエグいな!…

ほぼ全室に有るじゃねぇか!…お陰でミニマップが真っ黄色!…」


マサツグが発動した感知サーチはミニマップ上で罠の場所を示し!…そして

マサツグの目にも一体如何言う罠が有るのか?を見せると、いとも簡単に

マサツグを戸惑わせる!…それは壁に埋め込まれては槍が飛び出して来る

物だったり!…或いは天井からギロチンが降って来る物だったり!…

とにかく辺り一帯からは殺意しか感じられず!…ミニマップの光景も目に

しつつマサツグがマジか!…と言葉を漏らして居ると、フィロは冷静に

見取り図の事から持ち出す!…


「……とりあえず見取り図の様な物が欲しい所じゃな?…

さすがに無策にこの屋敷を行ったり来たりするのは!…」


「……だな?…よし、とにかく最初の目的はそれで!…」


「…気を付けるのじゃぞ!!…もう先程の様な事は御免なのじゃ!…」


「ッ!…へぇ~い…すんません…」


珍しく真剣にフィロは考えた様子でまずは見取り図をと、それで大体の屋敷の

構造や罠を把握したい!と言い出し!…手早くかつ自分の身を護る的な意味でも

欲しいと言葉を口にして見せ、マサツグもそれに賛同するよう返事をすると、

いざ屋敷の中を一歩踏み出して行こうとするのだが!…フィロはマサツグが

動き出した事で突如反応!…信用出来ない様子で先程の様な事はウンザリと!…

マサツグに念押しするよう細心の注意を払う様に言葉を口にすると、フィロから

ツッコまれた事でマサツグもしょげて見せる!…さてフィロに謝罪した所で

まずは近くの部屋に!…しかしマサツグは直ぐに開けるのではなく何やら刀を

抜き出し!…


__……チャキッ!…スラァ!…


「……フィロ?…ちょ~っとこの引き戸から離れててくれ?」


「ッ!……何か有るのかや?」


「…あったらまず刀は抜かないと思うぞ?」


目の前の引き戸に対して正面に立つ事は無く!…端に避ける様にしてマサツグが

刀を構えて見せると、当然フィロはその様子に疑問を持つ!…そしてマサツグに

対して何をしようとして居るのか興味を持った様子で見て居ると、マサツグは

フィロに引き戸から離れるよう声を掛け!…その言葉に対してフィロは素直に

質問をし始め、分かって居ながらも何が有るのかについて言葉を口にすると、

マサツグはフィロにツッコミを入れるよう返事をする!…そしてマサツグが

そのツッコミを入れた所で引き戸に視線を戻すと、次には!…


「……せぇ~の!!」


__スウゥ…ズバン!!!…カチッ!…ボババババババ!!!……ッ!?…


「……これが何も無い様に見えるか?」


「……やはりカラクリと言うのは厄介なモノじゃ!…」


マサツグは掛け声を付けてその目の前の引き戸を真っ二つに!…すると仕掛けが

動いたのかまたカチッという不気味な音が聞こえ来て、次にはその部屋の壁から

斬った引き戸に向かい無数の苦無が!…しかし予め避ける様にして立って居た為

一本として被弾する事は無く!…そのまま壁に何本も突き刺さるよう!…それこそ

刺さり切らなかったモノは地面に転がり!…その点で来る苦無も一度は落ち着きを

見せると、マサツグがフィロに声を掛け出す!…それは意地悪をする様にかつ

驚いた様子で!…するとそんなマサツグの問い掛けに対してフィロは戸惑い!…

やはりカラクリと言うモノが恐ろしく見えたようただ改めて認識した具合に厄介と

言葉を口にすると、その飛んで来た苦無の一本を拾うのであった!…

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【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
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目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

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