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-第四章-オータムクラウド国編-

-第四章三十四節 決闘者と剣士の道と剣神をも騙す奇策!…-

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紅葉彩る平原で狼娘と青いイケメンが睨み合い!…今まさに戦闘が始まる一歩

手前の所で固めって居ると、その様子を青年と老人が見守って居た!…それこそ

取り返しのつかない事態にならない様に!…その青年の近くでは小さな観客達も

心配した様子で見守って居り!…何が合図で始まるのか!…ただその仕合の結末を

見届けるよう風の音だけが耳に入る中全員が緊張した様子で止まっていると、

遂に火蓋は斬って落とされる!…


__スウゥ…ババッ!!…


「ハアアアアァァァ!!!」


「ッ!!…愚直にも突っ込んで行った!?」


「……ハアァ!!…」


オリハはいつものスタイルを崩さないよう木刀を下段に構えると、グレイに

向かって突貫を開始!…その際掛け声を付けて一気にグレイとの間合いを

詰め!…マサツグもそんなオリハの様子を見て驚いたよう言葉を零して居ると、

グレイもそれに合わせて動き始める!…その際グレイはオリハの動きに合わせて

一歩後ろに下がる様な素振りを見せると、オリハの攻撃が飛んで来るであろう

軌道を読み!…更にそれに合わせて若干腰も落として出すとガードの体勢を

固めて見せ!…まずは相手の力量を図る意味で鍔迫り合いへ持ち込もうとする

と、オリハは構わずそのガードするグレイにぶつかって行く!…


__…フォン…カアアアァァン!!!……


「ッ!?…グッ!!…」


「こっちは伊達に[決闘者デュエリスト]選んでねぇんだああ!!!」


「ッ!…決闘者デュエリスト?…

…はて?…決闘者デュエリストとは何じゃ?…」


辺り一帯に木刀同士がぶつかる甲高い音が響くと、グレイは圧され!…

オリハはそんなグレイに対して構わず更にパワーでゴリ押し!…自身の

職業である決闘者デュエリストについて語るよう叫ぶと、そのオリハの言葉に興味を

持ったヴェルが質問をする!…その質問した相手の言うのがマサツグ

なのだが、マサツグも突如問われた事で戸惑ってしまい!…


「ッ!?…えぇ!?…こっちその話振って来る!?…

…まぁ簡単に言うと…剣闘士って意味に近いかな?…

勿論どこぞのカードゲームみたいな事をするんじゃなくて…

…あぁ~っと…俺も説明を呼んだ程度だからなぁ……うぅ~ん…

…自分なりに説明すると[]が正しいのかな?…

剣闘士って言うとよく闘技場とかを連想するけど…

決闘者デュエリストは何処でも!…

それこそ街中だろうが郊外だろうが山ん中だろうが!…

何処でも挑まれたら戦うのが職業みたいな?…」


戸惑いながらもマサツグは自身の知っている[決闘者デュエリスト]についての説明を

ヴェルに話す!…決闘者デュエリストと言うのは言わば[喧嘩師]の事であり、攻撃

特化の職業で!…同時に対人用の職業でもあり!…主にPVPをやる者が

選ぶ職業なのだが…オリハは何故かこれをメインに選んでおり!…

マサツグも軽く説明を読んだ程度でしか職業を知らず…詳しい事まで

分からないと言った具合に簡単に説明を終えると、ヴェルは納得した

様子で頷いて見せる!…その際マサツグが口にしたネタには当然全く

気が付いていない様子で…とにかく新鮮と言った具合にオリハを見ると、

自身の思った事を口にする!…


「ッ!……ふむふむ、なるほど…喧嘩師か…

だからあの様にごり押しに近い攻撃になって居るのか!…

確かにただ単純にパワーで押すだけでも時として凶悪に!…

しかしあれではグレイに一太刀を当てる所か…最悪逆に反撃を…」


「ッ!!…グッ!!…何と言う力だ!!…

それもただ圧して来るのでは無くて!!…

剣を振り抜き難い様に!!…」


「既に剣士系のプレイヤーとは数戦やってる!!…

嫌な攻撃の仕方ぐらい心得てるっての!!」


冷静にオリハの動きを見てはマジマジ観察!…その際マサツグの言って居た言葉を

理解したのか、オリハの戦闘スタイルを見て学習をし始め!…ゴリ押す事も一つの

戦術と認めるよう言葉を口にすると、それだけではグレイに勝てないと言おうと

するのだが!…肝心のグレイはと言うと意外?…にもオリハに苦戦をしており!…

振り抜けないと若干の慌て様を見せて居ると、オリハはその言葉に対して対策済み

と豪語する!…そしてオリハに押されてまた一歩!…また一歩とグレイが押されて

行くと、遂には弾かれ!…


__グググッ……カアアァァァン!!!…


「ッ!?…」


「ッ!!…貰った!!!」


「ッ!?…馬鹿!!…それは罠だ!!!」


それこそグレイが耐え切れなくなった様子で体勢を崩し!…持っている木刀を

握ったまま思いっきり頭上へ弾かれると、胴体に掛けて防御がガラ空きとなって

しまう!…するとその状態にオリハもチャンスとばかりに追撃を放とうとする

のだが、マサツグはそれを見るなり反射的に罠だと叫び!…しかしマサツグが

叫んだところで時既にお寿司!…オリハは既に軌道を斬り返して追撃の一撃を

放つ体勢に入って居り!…グレイもそれを見て掛かった!とばかりに真剣な

表情を浮かべると、次には反撃の一撃をオリハに繰り出す!…


__ッ!!…グルッ!!…ギュン!!…


「ッ!?…なっ!!…」


__フォンッ!!…ビタアァ!!!………


「…チェックメイトだ!!…」


それこそ先程までよろけていた筈なのに!…グレイはそのよろけすら感じられない

程に突如瞬時に背を屈めて見せると、次にはオリハが木刀を振り被って来た所で

カウンターの一撃をビタ止めする!…そのカウンターを放つまでに掛かった時間は

たったの数秒!…突然の出来事にオリハも戸惑い!…グレイが放ったカウンターは

オリハの体を真っ二つにするよう横一閃!…丁度胸と腹の辺りに掛けて斜めに入る

ようビタ止めされると、オリハもやられた!と感じたのか固まってしまう!…

そしてグレイ自身もこれで勝ったとばかりにチェックメイトと言葉を口にすると、

そのビタ止めした木刀をスッと外し…次には固まるオリハをそのままに放置して

仕舞う動作を!…まるで刀の扱いを知って居る様に!…木刀を一振りして鞘に

仕舞う様な仕草をマサツグ達の前でキチッとこなして見せると、オリハも漸く

動く気になったのか木刀を降ろす…


__フォンッ!!…スッ…スウゥ……


「……これで分かっただろう?…

私は男や女と言う意味で君を馬鹿にした訳では無い!…

…と言うより君を馬鹿にしたつもりもない!…ただ単純に!…

単純に練度の問題で付いて来れないと言ったのだ!…」


「……ごしゅじんさまぁ…オリハ叔母さん…負けちゃったです?…」


「……だな?……スマンが慰めてやってくれるか?」


ただやられたと言う事がショックなのか、オリハは俯いたまま木刀を降ろし…

その一方でグレイは一息吐いて弁明を始め!…改めて自身が言いたかった事に

対して説明をすると、これまた改めてオリハの実力不足を指摘する!…そうして

改めて突き付けられた現実にオリハが一歩も動けず固まって居ると、シロは

オリハを心配した様子でマサツグに質問をし始め!…そのシロからの質問に

対してマサツグも苦笑いしつつ肯定し見せ!…シロにお願いをするようオリハの

ケアに向かうよう指示を出すと、シロはそれを聞いて頷き返事をする!…


「ッ!…は、はいです!」


__…テテテテテテ!…


「……パワーこそ有れど技術がイマイチ!…

しかしそれももし克服出来れば!…

彼女はもっと化けるやもしれんのぉ?…

…ふぉっふぉっふぉ!…将来有望な者が多き事かな!…」


「…少なからず良いきっかけにはなったと思いますよ?…アレは?」


マサツグに返事をするとシロは一直線にオリハの元へ!…そしてマサツグに

言われた通りにオリハの心のケアをし始めると、その一方でヴェルがオリハの

反省点を口にする!…この時ヴェルが言った言葉と言うのは、単純に技術が

足りないと!…しかしそれも補えば後に化け物になりうる可能性が有ると

口にし!…今後に期待を寄せる言葉を続け、それを聞いてマサツグも良い

きっかけになったと話して居ると、その一方でシロがオリハに話し掛け始める!…


「……オ、オリハ叔母さぁん?…大丈夫ですかぁ~?…」


__…ズル…ズルズル…ペタンッ!…ッ!…


「ま…負けた?…俺が?…しかもあんな一瞬で?…」


「お、叔母さん?…大丈夫…」


まるで事切れたかの様に硬直するオリハにシロが恐る恐る声を掛けると、オリハは

突如ズルズルと崩れ…そして次には信じられないと!…あっさり負けた事に対して

受け入れられない様子で言葉を口にして居ると、そんなオリハの様子にシロが

戸惑う!…しかしそれでもオリハの事が心配なのは変わらないので、再び恐る恐る

オリハに声を掛けるのだが!…次の瞬間オリハは覚醒したよう突如としてシロを

捕まえ始め!…掴まったシロも更に困惑したよう慌てて逃げようとするのだが、

オリハに拘束されると抱き締められる!…


__……ガバァ!!…ッ!?…ガッシ!!…ギュムゥ~~!…


「ッ~~~!!…ぷはぁ!!…オ、オリハ叔母さん!!…」


「ごめん!…シロちゃん!!…」


「ッ!…」


「…暫くの間…こうさせて?…」


「ッ!…は、はいです……よしよぉ~し…」


オリハに抱き締められた事で顔が埋まり!…それでも何とか藻掻いて呼吸を

取り戻すと、シロは落ち着く様に声を掛ける!…この時シロはオリハが

錯乱した!?…と感じるのだが、如何にも違うらしく!…本気で悔しいのか

オリハは涙を流しており!…その際シロに突然の事を謝る様に言葉をポツリと

呟くと、シロもハッと気が付いた様子で承諾する。そして高い所が駄目な

マサツグの時同様ギュッと優しく抱き締めると、オリハの頭を撫でて宥め出し!…

するとオリハも徐々に負けた事に対して受け入れ始めたのか…鼻を啜り泣くのを

必死に堪えようとすると、逆に涙が溢れて来ては泣きそうになる!…


さてオリハとグレイの仕合も終わった所で今度はマサツグ!…互いに無事

終わった事を見届けると移動し!…オリハとグレイ同様互いに木刀を構え出し!…

ヴェルに対してやる気を漲らせた表情を向けると、昨日のリベンジとばかりに

仕掛けようとする!…


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


「……ジッチャン!!…準備は良いかい!」


「ふぉっふぉっふぉ!!…いつでも構わんよ?…

ッ!…じゃがその前に一つアドバイスじゃ!」


「ッ!?…な、何!?…今仕掛けようとしたのに!…」


「スマンスマン!…じゃが耳寄りじゃぞ?…

相手の動きを看破すると言うのはずばり!…闘気の流れを見ると言う事じゃ!…

それは攻撃を仕掛ける時!…攻撃を避ける時にもしかと見える!…

…勿論相手の動きも見て!…視野を広く持つ事が重要じゃ!…分かったか?」


それこそマサツグがヴェルに対して覚悟を決める様に言葉を掛けると、速攻を

仕掛けようとするのだが!…ヴェルは返事をするなり思い出したよう!…突如

としてマサツグにアドバイスを口にすると、身構えて居たマサツグはズッコケ

そうになる!…しかし寸での所で転けそうになるのを耐えて見せると、慌てて

ヴェルに文句を言い!…そんなマサツグからの文句に対してヴェルは苦笑いを

して見せ!…しかし今ここでコツを教えるとばかりにマサツグへレクチャーを

すると、実践して見せる様に身構え始める!…さて、マサツグに理解したか

どうかを尋ねる様に声を掛けると、二人は仕切り直し!…マサツグも言われた

通りにその闘気を見ようとし!…目を細めるなり何なりして見せるが!…

マサツグの目にはそのヴェルの闘気らしきモノが見えない!…


__スチャッ!!……じぃ~~~……


「…どうじゃ?…見えるか?」


「ぜ、全然!…全く見えない!!…」


「ッ!…ふぅ~む…仕方ない!…

では今一度こっちから仕掛けて見るとするか!…

…しっかり捉えるのじゃぞ?」


「ッ!…え?…」


幾ら目を凝らし見詰めようとも全く見えず!…ヴェルも何の気なしに木刀を

構えながら質問をすると、マサツグは素直に見えないと答える!…その際

マサツグから若干の焦りと戸惑いを感じると、ヴェルは何やら考えた様子で…

次にはマサツグに仕方が無いと言うと剣を振り被り!…マサツグに攻撃を

仕掛ける事を事前に伝えてから思いっきり木刀を振り下ろして見せると、

次にはマサツグが驚き戸惑う!…何故なら!…


__ゴウッ!!!…


「ッ!?!?…どわあああぁぁ!!!…」


__ズシャアアァァァン!!!!……パラパラ…パラパラ…


「ッ~~~!!!……ッ?…お、収まった?…

…ふぅ~!…ビビった……ッ!?…」


ヴェルが振り下ろした木刀からは特大の剣圧が!…勿論マサツグに向かいそれが

飛来するとマサツグも慌てて横っ飛び回避!…悲鳴を上げながら何とか剣圧を

回避して見せ!…それでも風圧に煽られたようその動きを身を護る様に止めて

しまうと、次には何やら土埃を被る!…そしてそんな音が聞こえると思いながら

恐る恐る目を開けると、そこには剣圧が通って行ったであろうラッセル痕が!…

幅にして約1~2m!…奥行約5mと言った所か、地面を抉る様にして一直線に

太い線が出来て居る事に気が付くと、当然そんな光景を目にしてマサツグは

戸惑う!…


__ヒュオオォォォ!!……


「…え?…ええぇ!?…」


「ッ!…いかん…ちぃ~っとばかりやり過ぎた!…

おぉ~い、大丈夫かぁ~?」


「大丈夫かじゃないでしょ!?…死ぬかと思ったわ!!!」


そこだけ不自然に地面が抉れては空しく風が…マサツグもただ戸惑ったよう

声を漏らしては目を見開き、ヴェルもハッとした様子で軽くやり過ぎたと

言うと、次にはマサツグの心配をする!…その際もまるで相手が転けたかの様に

心配をすると、マサツグは慌てたままヴェルにツッコミ!…ヴェルもヴェルで

マサツグのツッコミに対して頭を掻き…やはりしまったとばかりに笑って

見せると話しを続ける!…


「いやぁ~!…スマンスマン!…つい力を入れ過ぎた…

しかし相手の動きを看破すると言うのはそういう事!…

こればかりは才覚センスの問題じゃて…覚悟せねばならん!…」


「にしたって今のはビビったっての!!…

大体不意打ちとかヒデェじゃねぇか!!…」


「……お主も最初ワシに速攻を掛けようとして居った様に見えたが?…」


「ウグッ!?……ッ~~~!!…」


笑いながらマサツグに謝り!…やり過ぎた事を認めつつ習得には覚悟が要る事を

話すと、マサツグは更に続けてツッコミを入れる!…この時持っている木刀を

振り上げ子供の様に文句を言うと、いきなりの攻撃に不服を口にし!…しかし

最初の事を思い出すとマサツグも似た様な事を仕掛けようとしており!…

ヴェルがそれを思い出すようマサツグにツッコみを入れると、マサツグは

途端に言い返せない様子で固まってしまう!…そうしてそんなコントの様な

光景を見せて居ると、外野では呆れた様子でその光景を見守る様子が…


「……ハアァ~…アイツは真面目に訓練を受ける気は有るのか!?…

先程の私達のやり取りを見て居なかったと言うのか!?…

師匠から技を盗み自分のモノにする!…それが命懸けだと言う事を!!…」


「……案外分かっては居なさそうじゃな?…

なんせ今までもあの様にのらりくらりとやって来て居ったからな?……

…だがあの者の言う通りマサツグには素質は有る!…

何ならあのヴェルと言う者もマサツグに似た何かを感じる!…

確かにその練度こそ違えど根っこの部分は似て居る!…

まるであの者はマサツグの将来の様な!…」


グレイはそのヴェルに稽古をつけて貰って居る事にヤキモチを焼いたが如く、

マサツグの様子に呆れては文句を言い出し!…それと同時にマサツグのその

受ける態度に対しても不服を口にし!…オリハとのやり取りでヴェルに

稽古をつけて貰う事が!…いかに大変な事なのかを理解して居ない事に更に

続けて文句を言うと、奇妙な事にフィロがその言葉に対して乗っかり始める!…

この時フィロはマサツグの様子を見て察して居ない事を肯定すると、今までの

マサツグの事を話す様にグレイへ語り…その際視線はマサツグとヴェルの方に

向けられており、ただ淡々と自身が感じている事について独り言を話すが如く

グレイに話すと、そのフィロの言葉にグレイが反応を示す!…


「ッ!?…あの者が師匠!?…馬鹿馬鹿しい!!…

冗談も休み休み言って欲しいモノだ!!…」


「…果たしてそうかのぅ?…見た所お主…

命のやり取りは然程しては居ないようじゃな?…」


「ッ!……それが?…」


フィロの感性をグレイは真っ向から否定!…マサツグとヴェルは似て居ないと

若干不機嫌そうにフィロへ文句を言い!…しかしフィロはそんなグレイに対して

怒る事は無く、ただ子供が我儘を言って居る程度でしか無いとばかりに話を

流すと、静かに笑みを浮かべては改めて尋ねる様に声を掛ける!…その際グレイに

命のやり取りについて察したよう言葉を口にすると、グレイは図星を突かれた様に

反応し!…それでも虚勢を張る様にフィロへ返事!…そのグレイからの返事に

対してフィロは意地悪そうに笑って見せると、次にはその運命を知っている

かの様に言葉を続ける!…


「……少なからずこう言う事をして居れば必ずいつかは選択を迫られる!…

人を斬るか!…斬らぬか!…」


「ッ!!……」


「…結局のところ剣術と言うのは何処まで行っても殺人術!…

決して護身術と言った優しいモノに転じる事は無い!…

…それはお主の師匠が話していた通りであって!…

更に高みを目指すと言うのであればその道は!…血塗られたモノと!…

それこそ修羅に落ちるか落ちないかの道だと!…覚悟して置く事じゃな?」


「……クッ!…子狐如きが!…分かった様な口を!…」


さながら試すようグレイに言葉を続けるとある選択を…それを聞いてグレイも

ハッとしたよう足元に居るフィロに視線を向けると、フィロは達観した様子で

言葉を更に続ける!…それはヴェルが言って居た言葉と同じ物で、ヴェルより

も重く!…まるでその場面を幾度となく見て来たかの様に聞こえ!…グレイも

思わず驚いた様子でその話を聞いて居ると、最後にフィロは覚悟するよう

グレイに話す!…するとそんな言葉を言われた事でグレイもグッと苦虫を噛んだ

様な表情を見せると、フィロに噛み付き!…しかしフィロはその噛み付いて

来た事に対しても無関心で有り、ただマサツグ達の訓練の様子に目を向けると、

その一方では改めてマサツグ達が訓練を再開しようとしていた!…


「……では改めてこちらからも仕掛ける!…

見た所…動きは非常に良い!…後はその先に在る景色を見るに!…

開眼出来るかに掛かっておる!…ワシは先程より手加減を…

更に攻撃もカウンターだけとするかの?…」


「ッ!…」


「と言っても場面に置いて悪手と感じた所を指摘する程度じゃ!…

…こう言う事は直に体感する事によってより深く学習をする物じゃ!…

お主は今まで通りワシに攻撃を打ち込んで来るがよい!…」


「……あんなモン見せられて手加減とか…

あん時はムカついたのに今は物凄く有難く感じる!!…

…何なんだこの気持ち!!……ッ~~~!!!…

あぁ~!!…モヤッとする!!」


仕切り直すに当たって訓練のルールを変更!…ヴェルは動きが良い事を褒めると、

後は訓練だけと言い!…その際開眼するに当たって自分からも攻撃を仕掛ける事を

口にすると、マサツグはその言葉にピクっとする!…何故ならあの攻撃が毎回

飛んで来るのか!…と感じると、もはや恐怖でしか無く!…しかしヴェルはその

攻撃についてはカウンターだけと!…それもマサツグが仕掛けて来る上で悪手!…

つまり悪いと感じたとこだけ指摘するよう言葉を口にすると、遠慮なく仕掛けて

来るよう手を振って見せる!…するとその言葉を聞いてマサツグも思わずホッと

胸を撫で下ろすと、次にはハッとし!…昨日は手加減をされた事で怒ったにも

関わらず今回は安堵していると!…自分に情けないと感じる一方でやはり有難いと

感じてしまい!…自分でも何が正しいのか分からずモヤモヤとし始めると、

訓練は中断される事なく幕を開ける!…


「……んん~?…何じゃ?…何か有ったかのう?」


「ッ!!…えぇ~い、ままよ!!…

こうなりゃ本気でぶっ倒すつもりで!!!」


__スウゥ…バシュン!!…


「ッ!!…きおったか!!…良い良い!…それで良い!…

若い者は何も考えずに突っ走ってこそじゃ!……そして!…」


頭を抱え悶えるマサツグにヴェルは気の抜けた様子で声を掛け!…そのヴェルの

問い掛けに対してマサツグもいつもの如く自棄を起こすと、愚直にヴェルへ

向かって駆け出して行く!…その際一切の手加減無しで攻める事を決めると、

最初からトップスピードで間合いを詰め!…その向かって来るマサツグに対して

ヴェルは笑顔で褒め始め!…それでこそ教え甲斐が有るとばかりに木刀を

構えると、早速マサツグの攻撃に合わせてカウンターを狙う!…


「ハアアアアアアアアアアァァァ!!!!」


「……ふむ!…その気迫は良し!…じゃが…」


__フォンッ!!…スウゥ……ッ!?…フォンッ!!…


「それは余りにも愚直過ぎはせんか?…確かに向かって来いと入ったが…」


マサツグはヴェルに向かいダッシュ斬り!…その際下段から斬り上げる様に

木刀を振るのだが、ヴェルはそれを半歩ズレて余裕の回避をして見せると、

マサツグに一撃を加える事無く動きを止める!…この時ヴェルがやった事とは

あのグレイがやって見せたビタ止めで、半歩ズレた後マサツグの背後に

回るよう!…背後を取るとマサツグの背中に向かって水平斬り!…回り込む際

ステップを踏みよう勢いを付けて反撃を許さない綺麗な一撃を入れようとすると、

マサツグもそれを感じてか動けなくなってしまう!…そして愚直に突っ込んで

来たマサツグに対しヴェルがツッコミを入れると、マサツグは戸惑った様子で

構えを解き!…次には何も考えて居なかった様子で頭を掻き!…仕切り直すよう

一旦ヴェルから距離を取って見せると、マサツグは徐にこう語る!…


__……スッ……ボリボリボリボリ……ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……スチャッ…


「……ゴメン!…今脳死してたわ!…

本当に何も考えず突っ込んでた!…」


「ッ!…ほほぅ?…」


「…でもこっから本気!!…今ので目が覚めた!!…

さぁ!…目一杯足掻かせて貰うぜ!!!」


さも何事も無かったかの様に仕切り直し!…ヴェルに対して再び木刀を構えて

見せると、マサツグは言い訳を口にする!…その際に何も考えて居なかった

苦笑いしながら話すと、ヴェルはそのマサツグの言い訳に呆れて見せ!…しかし

マサツグも先程のカウンターで目を覚ましたと目を擦り!…改めてこの訓練に

対して本気で挑む事を口にすると、ヴェルもマサツグに対して木刀を構える!…

この時マサツグも相手が格上である事を自覚して居るのか、ヴェルに対して

足掻くと言い!…するとそんなマサツグの言葉に対してヴェルはピクッと

反応すると徐にニヤッと笑って見せ!…改めてマサツグが如何仕掛けて来る

のかを見るようジッと視線を他に動かす事無く見詰めて居ると、マサツグは

ある奇襲に打って出る!…


「………。」


「………。」


__…じぃ~~~~……………パチッ…ッ!…ゴウッ!!…


「ッ!?…ほほぅ!?…考えたな小僧!!」


マサツグは本気で行く!と言うとヴェルに対して正眼の構え!…するとヴェルも

それに答えて正眼の構えでマサツグを迎え撃とうとするのだが!…マサツグは

本気で行くと言った限りで全くその場から動かず!…ヴェルもそんなマサツグに

対して視線を逸らす事無く構え続けて居ると、目が乾いて来たのか瞬きをする!…

するとその瞬間を待って居た!とばかりにマサツグは突如動き出し!…ヴェルも

その隙を突かれて思わず戸惑ったよう反応すると、面白いとばかりにツッコミを

入れる!…この時マサツグの事を悪ガキと言った様子で言葉を口にすると、

音だけでマサツグの気配を悟り!…すぐさま向かって来るであろう方向に対して

ガードを固め!…何が来ても大丈夫な様に構えて見せるのだが!…マサツグの

攻撃は…


「……ッ!!…攻撃が飛んで来ない!?…

ッ!?…しまったこれはブラフか!…」


__パチッ!…キョロ!…キョロ!…


「ッ!?…バ、馬鹿な!?…姿を消した!?…」


「……ジッチャン!…こっちこっち!…」


勢いで目を閉じたまま事の対処をしようとするが、マサツグからの攻撃は

飛んで来ず!…するとヴェルもそれに対してすぐに不信感を抱き出し!…

慌てて目を開きマサツグの事を探し始めるのだが、目を開いた所で辺りに

マサツグの姿は何処にもない!…当然これにはヴェルも更に驚き戸惑って

見せると、必死にマサツグの姿を探し!…しかし辺りを幾ら見回そうとも

マサツグの姿は何処にもなく!…その一方で突如自身の脚元よりその

マサツグのしてやったり!…とばかりの声が聞こえて来ると、ヴェルも

慌てて足元を確認し始める!…すると!…


「てい!…」


__ボスッ!!…


「ッ!!…ングッ!!…」


「……まずは一撃ィ~♪」


「……こ、こ奴め!!…虚を突いて来るか!!…

ワシを相手にまさかこの様な手を!!……ブッ!!…

ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!!…面白い!!!」


ヴェルが視線を下に向けた所でマサツグを見つけ!…マサツグもそれを確認して

ヴェルにニタァっと笑って見せると、ヴェルの腹部に突きを繰り出す!…この時

突きと言っても軽く小突く程度でツンと突くと、ヴェルは若干腰から折れる様に

後ろへ下がり!…当然そんな様子を見ていた周りは呆気に取られ!…マサツグは

マサツグでまずは一本!…ヴェルから先制を取れたとばかりに笑って見せると、

次には立ち上がってドヤ顔を決める!…するとそんな子供騙しな不意打ちを

喰らったヴェルはと言うと、怒るどころか自分が引っ掛かった事に対して笑って

しまい!…しかしこれが結果としてヴェルを認めさせるきっかけともなり!…

ヴェルが本気でマサツグに対して面白い!と豪語すると、この後の訓練はより

一層激しいモノになってしまうのであった!…

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