上 下
250 / 696
-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-

-第三章四十九節 リリーの動機と頑固者マルティスと女王様の手紙-

しおりを挟む



マルティスの話にアルスは怒ったり戸惑ったり、そして核心に近付いた所で

更にトンデモナイ話を聞かされ!…マサツグ達全員が驚いた反応を見せて

居ると、そんなマサツグ達の事など御構い無しにマルティスは話を続ける!…

この時更に話し出されたのは更なるリリーとアルデミトフの話で、その最後を

話す内容で有り!…当然そんな話にアルスは戸惑い!…マサツグも思わずその

内容にシロの耳に手を当て聞こえない様子にすると、もはや何も言えない

様子でマルティスの話を聞いていた。


「……リリーは汝と同じ貧しき平民…と、言う訳では無いのだが…

このアルデミトフにせいでを失っている…」


__……ッ?…


「ッ!?…か、片目を失っているって!!…まさか!?…

…い、いや!…アレは生まれた時に特異!…呪術的な呪いを受けた者と!!…」


まず徐に話し出したのはリリーが何故そのアルデミトフと言う者を討ったのか、

その理由についての物なのだが…その動機と言うのはリリーの片目にある魔眼を

差し…アレはアルデミトフがやったものとマルティスが簡単に説明すると、

その話を聞かされたマサツグ達からは如何にも渋い反応が見られた…何故なら

その魔眼にされたと言う話を聞かされた上で殺すまでに発展するのか?と考えが

頭に有り、如何にも動機が薄く感じられ…更にはアルスも疑問を持った様子で!…

マルティスに戸惑いつつもアレは呪い!…と問い掛けようとすると、マルティスは

そのアルスの話を聞くなりツッコミを入れる。


「…フッ…何を馬鹿な…そんな呪術が自然に起きる訳がないであろう…

十中八九人の手に決まっているモノであり…

その呪術を発動させた者こそがそのアルデミトフと言う者だ…

理由は優秀な兵士を作る為…リリーはその先駆けとして

その片目に呪いを受け…今もなお苦しむ原因となって居る…

……あれは自身の命と引き換えに相手を意のままに操れるよう

術を掛ける魔眼であるのだが…如何やらその魔眼も失敗作の様だな…

出来る事はただ相手を眠らせる…あるいはそれに似た催眠を与える程度で…

本来の能力より劣化した物の様だ…

恐らくは本人の魔法抵抗力が高かったのだろう…故に魔眼は中途半端な

もので定着し…今だその命を奪おうとしている…」


「ッ!?…い、命を!?…

…た、確かにあの魔眼を使う度苦しそうにして居るのを見たが!!…」


「…あの目は潰す事も解呪する事も出来ん…文字通り呪い!…

故に禁術とされていた様だが…このアルデミトフ…

自分に掛けるのが怖くてそのリリーと言う娘で試し!…

運良く運べば他の者達にもその魔眼を施そうとしていた様にも伺える…

あくまでも征服…それしか考えては居なかった様だな?…」


マルティスはアルスを嘲笑う様に一呼吸挿むと、有り得ないとツッコミ!…

呪術と言うのは人為的にしか起きないと!…改めて理解させるよう更に

説明を続けると、今度はその魔眼についての説明をする!…何でもまず

その魔眼の呪いを掛けた理由についても如何しようもなく、ただ単純に

戦争の道具を作りたかっただけの様で!…だが結果としてその魔眼の呪術は

失敗に終わり!…残ったのは命を蝕む呪いと中途半端な能力だけが残された

と話されると、その話を聞いたマサツグ達は考えを改めさせられる。

そしてその命を蝕むと言う言葉を聞いてアルスも酷く驚いた反応を見せると、

その症状は度々見られたと言葉を漏らし!…更に魔眼についての説明は続き!…

アルデミトフの異常具合についても軽く触れるようマルティスが話を続けて

居ると、その場は見事なまでにマルティスの独壇場となって居た…


{……ま、マジかよ!…

…何度も確認して来たと思うがこれって全年齢対象だよな?…}


__……ッ?…


{な、中々にヘビーだぞ!…内容が!!…

滅茶苦茶ブラックじゃねぇか!!…}


「……志願した訳でも無いのに片目に呪い…

挙句の果てに家族を奪い戦争の口実を作る!……本当に…

どうしようもない魂だな?…汝は?…

…いっそここで完全に消滅させてやろうか?…

転生など許されぬ烙印をその身に!…」


完全にマルティスの話に飲まれてはただただその内容に驚き!…エルフ達の

社会が黒い事にも戸惑い!…何ならそのやって居る事もまるで旧帝国軍の

ファシズムで!…改めてマサツグが全年齢対象である事を確認して居ると、

シロは耳を塞がれてよく聞こえないのか…耳を押さえられたままマサツグの

戸惑う顔を見上げる…そしてその後ろではレイヴンもこれまた重いと言った

様子で衝撃を受けると、ただただ絶句し!…マルティスも粗方説明し終えた

のか、そのアルデミトフと言う者のやって来た事に対し軽蔑感を滲ませると、

またもや虚空を見詰め出す…その際罰を与えようと考えたのか言葉を徐に

零すと、スッと杖を構え出し…当然目の前でいきなりマルティスが杖を構え

出した事で、マサツグ達もそこに何か有るのかと言った様子で視線を向けるが、

何も見つける事が出来ないで居た…


__ッ!……チラッ?…


「……《この魂は穢れた魂…この魂は卑しき魂…

この様な者に転生の輪を潜る価値は無し!…未来永劫現世を彷徨い!!…

その身を焼かれ続けよ!!…地獄の業火の烙印!!…

ノットリバーシング!!!》」


__コオオオオォォォ!!!………シ~ン……ッ?…


幾ら杖を突き付けて居る先を見ようとも有るのは天井だけで、やはり何も見えず…

しかしその一方でマルティスは険しい表情を浮かべ出し、徐に魔法を唱えるよう

詠唱し始めると、次にはその虚空目掛けて魔力を収縮させる!…その際目の前では

そこそこな演出が披露されるのだが、最後にはまるで消えるかの様にポンと…

何事も無かったかの様に突如魔力は消え、その様子を見て居たマサツグ達も

困惑し何が有った?…と言った表情を浮かべて居ると、シロは徐にマサツグへ

質問をする。


「……ッ?…ごしゅじんさまぁ~?…今何が生きたのですか?…」


「…さ、さぁ?…霊感0なのでてんで分かりません…」


__……ッ?…


マサツグに耳を押さえられ尻尾を振りながら不思議そうに振り返ると、何が

有ったのかを尋ねるのだが…当然マサツグにも何が起きたのか分かっておらず、

そのシロの返答に対し戸惑いつつも自分には霊感が無い事を話すと、同時に

首を左右に振っては分からないと言った反応を見せる。するとシロはその

反応見るなり首を傾げて見せると、やはりマサツグの顔を不思議そうにジッと

見詰め…この時オーディックやアルスも何が起きたのか分かって居ない様子を

見せており、その際突然の事で虚空とマルティスを交互に見る様な素振りを

見せて居ると、一人だけ…レイヴンだけは何か見えて居たのか驚いた反応を

見せて居り!…明らかに焦った様な挙動をすると、若干引き気味の様子を

見せていた。


「ッ!?…ッ!?!?…」


「……ッ!…レイヴン?…」


「ッ!!…え?…あっ…あぁ…な、何でも無い…」


「いやいやいやいや!…あんな反応を見せられて普通ですって言われても!…」


当然そんな挙動を見せて居るのでマサツグも気が付き、戸惑いながらも声を

掛けると…レイヴンは何故か吃驚した様子で反応し、その際マサツグの問い掛けに

対して明らかに動揺した様子を見せながら何でも無いと答えると、マサツグも

そんなレイヴンに対してツッコミを入れる!…そして再度レイヴンに何が有った

のかを尋ねようとツッコミの延長線で尋ねようとするのだが、その後レイヴンは

何故か頑なに答えようとはせず…不気味に視線を逸らしては無言を貫いて居ると、

マルティスが話を終えようと声を掛ける…


「……さて、ここまでが汝の聞きたがっていた仇についてだ…

これ以上何を望む?…」


「ッ!……ッ…では……最初私に会った時…

対等な話をする気は無いと言って居たと思うが…急に何故?…」


「……あくまでも客人の話を聞く為に最優先しただけの事…

別に汝の為なのではない……それこそこの集落における一大事の話…

円滑に進めなくては……それに…」


__チラッ?…ッ!…


アルスが聞きたかった話は全部と言うと、マルティスは続けて他に何が聞きたい

のかを質問し…その問い掛けにアルスは一瞬戸惑うのだが、直ぐに気を取り

直した様子で質問をする…この時聞いた内容と言うのはマルティスの気持ちの

変わり様についてで、その事について問われたマルティスもやはり表情一つ

変える事無く…ただ淡々と集落の為と話し出すと、別にアルスの為じゃ無いと

言い…あのアルスのヒスリ様について何も言及しないで居ると、含みの有る

言葉を口にする…その際何故かマサツグの方に視線を向けると、ジッと見詰め…

マサツグもその視線に気が付いた様子でレイヴンからマルティスの方へ視線を

移すと、マルティスは何故かフッと笑う…


「……フッ!…やはり分からぬな?…」


「ッ!…それは如何言う?…」


「…汝には分かるまい…

今まで何でも分かって居たのが…たった一人だけそれが分からなくなる…

その奇妙な感覚を…」


「……は?…」


マサツグを見てフッと笑い…そして一言だけ分からないと言うと、その様子に

アルスが戸惑い出す…当然突如笑われたマサツグもそのマルティスの反応を

見て戸惑うのだが、マサツグが喋るよりも先にアルスが代弁し…そのアルスの

問い掛けに対してマルティスは微笑み続け…まるでマサツグの事が読めないと

言った事を口にすると、アルスは声に出して更に戸惑う…この時不思議と

アルスはマルティスと普通に接しており、先程までの殺気も何処かへ消え!…

だが本人は自覚が無いのかただマルティスの言葉に頭を抱え…マサツグもその

マルティスの言葉でへ?…と言わんばかりの表情を浮かべると、状況が飲み

込めず困惑するのであった…


…何て終わる訳もなく!…今度はこちらの番と言った様子でマルティスが再度

話を切り出すと、話の本題はここまで来て漸く和平の話へと進み始める!…


「……さて、ここまで来て漸くと言った所か…

マサツグとやら…我に文を…」


「ッ!…え、文?……ッ!…あっ…あぁ~ハイハイ!!…

ちょ~っと待っててくださいねぇ~?…」


__ゴソゴソ!…ゴソゴソ!…


「ッ!…あ、あったあった!……はいどうぞ!…

…ってかここまで来て漸くなのか…はあぁ~…」


全てが落ち着いたと言った所でマルティスも一息吐くと、マサツグに

声を掛け!…この時女王様からの手紙について尋ね!…マサツグも

突如問われた事で一瞬戸惑うと、その言葉の意味を理解するのに時間を

掛ける!…だが時間にして数秒、直ぐに思い出した様子で返事をし!…

自身のアイテムポーチを降ろしてはチャックを開け、中を弄りながら

マルティスへ近付き…マルティスの所へ辿り付く事には手紙を見つけ!…

改めてマルティスにこれがその手紙!と言った様子で手渡すと、漸く

話が進む事に溜息を吐く。ここまでの話に辿り着くまでの間、喧嘩を

売られたり気絶をしたりと!…とにかく疲れたと言った様子で

ぼやいてはスタートラインに立てた事で漸く安堵し…マルティスも

マサツグから手渡された手紙を受け取り、徐に封を切って早速中の手紙に

目を通すと、途端に神妙な表情を見せる…


__スッ…ピッ!…カサカサ…パサァ……


「………ほう?…」


「ッ!…ぞ、族長!…何と書かれて有るのですか?…」


「……和平を結ぶに当たって魔法の文を…

我がユグドラドに行かなくとも済む様に和平の契約書が入って居った…

……これは…随分と虚仮にされたものだな?…」


「ッ!…え?…」×2


手紙に目を通して約数十秒…直ぐに目を若干見開いては一言漏らし、その

マルティスの一言に反応した様子でベルベッタが声を掛けると、マルティスは

後ろに居る六森将達にも見えるようその手紙を見せ始める。その際中に入って

居た手紙を魔法の契約書と言うと、女王様に馬鹿にされて居ると言葉を口にし!…

当然その言葉にマサツグとレイヴンが戸惑い…互いに揃って困惑の声を漏らして

居ると、その言葉が聞き捨てならないのか!…当然の様にアルスが噛み付く!…


「ッ!!…虚仮にされている!?…その様な事は無いであろう!!…

寧ろ我々の女王陛下を愚弄する気か!!…」


「ッ!?…急にこっちも騎士に戻ったし!?…」


逆に虚仮にされたよう感じたのか、アルスは途端に怒気を強め!…この時

あの殺気染みたモノは感じられず!…ただ礼儀に則った様子で怒りを

露わにすると、マサツグ達はそのアルスの様子に驚く!…何故ならあの話を

するまでの間のアルスは、怒り=殺気立つ!みたいなもので…その殺気

立っている様子が感じられない事に!…まるで娘の成長を感じる様な謎の

感動をマサツグ達が覚えて居ると、更にそのアルスの怒気に対して

マルティスが返事をする。


「……ほう?…では尋ねるが…

何故文でこの様な決め事を決めようとして居るのだ?…」


「ッ!?…何だと!?…」


「長年の敵同士と思って居た相手に対して和平を結ぶ!…

すなわち早々簡単に事が進む筈が無い案件であろう?…

なのにこの女王は文で事を済まそうとして居る…

これは自ら出向かなくとも相手が屈すると考えての行動では無いかと…

普通はそうは考えられるのではないか?…」


「ッ!?…そ、それは!!…」


アルスの言葉に対してツッコミを入れるよう!…だがクールにあしらうよう質問を

し始めると、その問い掛けに対してアルスが戸惑いを露わにする!…その際言葉も

漏らす様に一言だけ口にすると、マルティスはそんなアルスに対して畳み掛ける様に

質問をし!…事の重大性を分かって居ないと言ってはアルスに続けて圧を掛け!…

アルスに答えを求めるよう手紙の事について同意を求めると、遂にはアルスが自信

なさげに折れてしまう…それはマサツグ達も初めて見るアルスの弱気な場面であり、

そんなアルスの様子に釣られてマサツグ達も戸惑って居ると…


「……やはり我自ら出向くしかないであろう……マサツグとやら…」


「ッ!?…ふぁ!?…」


「予てより話して居たユグドラドへの出立…これより三日後に出立とする…」


「ッ!?…ふぇ!?…」


若干思い詰めた表情でマルティスは言葉を呟き…徐にマサツグへ視線を移すと、

呼び付ける…そして呼ばれたマサツグも突如マルティスに声を掛けられた事で

驚くと、変な声を出して返事をし…マルティスもそんなマサツグに対し

相変わらずのマイペースで話し出すと、急遽そのユグドラドへの移動の日程を

決めてしまう!…これには更にマサツグも慌てた様子で更に変な声を出して

驚いて居ると、シロはそんなマサツグの顔を見上げては首を傾げ…話を一緒に

聞いていたレイヴンもその即決具合に驚いた反応を見せて居ると、マルティスに

声を掛ける!…


「ちょ!!…ちょっと待って下さい!!…本気ですか!?…」


「……何がだ?…」


「い…いやいや!……た、確かに言って居る事も分かるけど!!…

ワザワザ出向いて危険な目に遭わなくても!!…」


「……それはユグドラドが無法地帯と言う事か?…

かの地はそこまで危険なのか?…」


「いやそう言う事じゃなくて!!!…あぁ~もう!!!…

何でこんな聞かん坊やねん!!!」


マルティスの言葉にレイヴンも慌てた様子で声を掛けると正気かを確かめ!…

そのレイヴンの言葉にマルティスも全く意を汲み取って居ない様子で返事を

すると、レイヴンは更に話を続ける!…その際マルティスの考えを理解して

居る上で声を掛けると、そこはかとなく踏み止まるよう言葉を口にするの

だが!…マルティスは天然なのかそれとも天邪鬼なのか?…レイヴンの言葉に

対し反論するようユグドラドの治安について話すと、レイヴンはその

マルティスの話の聞かなさに怒りを覚える!…そうしてマサツグもそんな

レイヴンの様子を見て思わず「な?…」と言いたくなって居ると、六森将達も

慌て出し!…レイヴンに加担するようマルティスを止めに入り!…話を聞くよう

説得をするのだが、やはりマルティスは話を聞かない!…


「ちょ!!…ちょっと待って下さい!!!…

ワザワザ出向かなくても!…向こうがここに来ればよい話では無いのですか!!…

現にこの和平の話も向こうから持ち掛けて来た話!…

むざむざ命を粗末にしなくても!…」


「……ユグドラドと和平をすれば魔術の道具も充実させる事が出来ると思うが?…」


「ッ!?…ぐうぅ!?…」


まずはレイネがマルティスを止めに入ると、別の案を提示する!…その案と

言うのは逆に女王様から来て貰う事で、別にこちらから出向く必要性は無い!と

訴えるモノなのだが…マルティスはレイネの居る方へ振り向くなりまるで興味を

持たすよう!…魔術関連の道具が有る事をレイネに仄めかすと、心を擽りに

掛かる!…すると案の定レイネはその手の話に弱いのか、悶える様にして速攻で

折れ…その場で考える様な素振りで悩み出し!…その様子に他の六森将達が

戸惑った様子を見せて居ると、次鋒ジーナが止めに掛かる!…


「ま、魔術はともかくとして!!…あたしも反対だよ!!

正直何をされるか分かったもんじゃ!!…」


「…向こうから襲ってくれば正当防衛!…

…これはある意味暴れる事の出来る口実になるが?…」


「ッ!?…ハウッ!!…ッ~~~~!!!…」


「ッ!?…ちょ、ちょっと!!…そこは悩む所じゃないでしょ!?」


これまた速攻!…自分は魔術に興味無いと言った様子で言葉を口にすると、

改めてマルティスを止めに入るのだが…マルティスはジーナの性格を良く

知って居る訳で、もし襲われたら暴れる事が出来ると仄めかしに掛かると、

ジーナをも篭絡する!…ジーナもその事を告げられた瞬間まるで興味を

持ったよう言葉を口にすると、男らしく腕を組み出し!…そして項垂れる

ようその場で考え始め!…その様子にナターシャやベルベッタが戸惑って

居ると、マリーは止める事を諦めたのか呑気に欠伸をする…


「……ふあぁ~……あぁ!…」


「ッ!!…マリーちゃん!!…

呑気に欠伸をしてないでマリーちゃんもシャーマンを止めて!!…」


「…言った所で無駄でしょ?…シャーマンが私達の話を聞いた事…

一度でもあったっけ?…」


「ッ!?…あうッ!!…うっ…うぅ~~~…」


マリーが大欠伸をするとその様子にナターシャが大慌てでツッコミを入れ、

改めてマルティスを止めるよう訴えるのだが…マリーはそのナターシャの

言葉を聞き入れようとはせず!…寧ろ諦めた様子で眠そうな表情を浮かべると、

ナターシャに無駄だと言い始める…そして過去にもこう言った話が有ったのか、

その時の事を思い出させるようナターシャに問い掛けると、そのマリーの一言に

ナターシャはショックを受け!…その後モジモジとした様子でナターシャは

悩み出し…そんな二人の会話を聞いていたマサツグ達も苦笑いをすると、

心の中でツッコミを入れる…


{……その反応を見る限りなかったんですね?…}×2


「だから止めようとするだけ無駄無駄……ふあぁ~……あぁ!…

…あぁ…段々眠くなって来た…後は任せるね?…」


「あぁ!…ちょっと!!……もう!!」


{…あぁ…もう駄目だな?…}×2


もはや余りの収拾の着かない具合にマサツグが安心感を覚えてしまいそうになって

居ると、マリーは止めるだけ無駄だと言い…更に眠いのか再び大欠伸をし始め、

色々と面倒になったのか徐にその場を後にするよう席を立つと、周りの静止を

聞かないままマルティスの家を出て行く…その際去り際に[眠い]・[後は任せる]と

言った言葉だけを残して行くと、ベルベッタはそんなマリーに呆れ!…更に収拾が

付かなくなった所でもう駄目だとマサツグ達は悟り…如何したものかと様子を

見守って居ると、ここで何かに気が付いた様子でオーディックが声を掛ける!…


「……あのぉ~…ちょっと良いだでか?…」


「ッ!…え?…」


「いんや…その手紙さ見せて欲しいんだでが?…駄目だか?…」


「……構わん…」


オーディックは恐る恐るマルティス達に声を掛けると、申し訳なさそうな表情を

浮かべ…突如声を掛けられた事で六森将達!…特にベルベッタが戸惑った様子で

返事をすると、オーディックは徐にその手紙を見せるようお願いをし出す!…

ただ目的も分からず見せるよう言われた事に、六森将全員が一瞬戸惑った様な

反応を見せるのだが…別に見られて困る事は書かれていないので良しとし…

マルティスが手紙を差し出すよう腕を伸ばすと、オーディックはその手紙を

受け取りに向かう。


「あぁ!…如何も!…すまねぇだ!…」


__ダスッ!…ダスッ!…ダスッ!…ダスッ!……パサッ…


「…どれどれ……ッ!…

あぁ、やっぱりだでな?…これ偽物だで!…」


「ッ!?…に、偽物!?…ちょ、ちょっと待て!!

俺それ以外に受け取った物は!!…」


オーディックは片手で合掌をしながらマルティス達に謝ると、手紙を受け取り…

そして急に何かを確認するよう文面ではなく手渡された手紙の四方を見回し、

何かに気が付いた様子でやっぱりと口にすると、次には手紙を偽物と言い出す。

当然これには六森将達だけでなく手渡したマサツグやレイヴン達も慌て出すと、

マサツグは慌てて騙して無いと言うのだが!…オーディックはマサツグに対し

笑いながら手を振り…違うと言った様子で声を掛けると、その偽物と言った

理由について答え出す。


「あぁ!…違う違うだでよ!…オラが言った偽物って言うのは…」


__スッ…ビリィ~!!…ッ!?!?…パサッ…


「…これの事だでよ!…」


「ッ!…それは?…」


マサツグに対して大丈夫と言った様子で声を掛けると、オーディックは徐に

手紙の端を摘まみ!…その際まるで某・カードゲームのパックを開ける様に!…

その女王様からの手紙を破り始めると、その光景を見たマサツグ達!…及び

六森将達は驚いた反応を見せる!…しかしオーディックの言って居た意味は

次の瞬間分かる様に、その破いた手紙の中から紙切れが!…零れ落ちる様に

オーディックの足元へヒラヒラと…オーディックもやっぱり!…と言った

様子でその落ちて来た紙切れを拾うと、マサツグ達や六森将達に見せる!…

そして目的はこれ!と言った様子で言葉を口にすると、その紙切れに

マサツグ達は困惑し…マルティスもマルティスで初めて見ると言った様子で

オーディックに問い掛け、その問い掛けに対して答えるようオーディックも

笑って見せると、その紙切れに書いて有る事を読み出す!…


「…えぇ~っと…どれどれ?……ッ!…


【前略…かの陸に住まう黒き孤高の女王様へ

我らは互いに幾度となく衝突を繰り返し、その度に血を流して来ました。

そしてその規模は更に大きくなるものとなり、遂には関係の無い者まで

巻き込んでの戦争にまで発展し…今では冷戦状態。今一度この状態を

脱したく私、クレア・エルヴンフォードは筆を執らせて頂きました。

願わくば貴方様にこの冷戦状態を終える為に我々と和平を!

かの時より時間は経ち関係修復に時間が掛かるとは思いますが、

それでも何卒お考えの程をお願いしたくここに記しさせて頂きます。

…もう過ちを繰り返さないよう共に手を取り合ってくれる事を最後に!…

我らの待つ卓に来て下さる事を!…強く心待ちにしております!…

第2482代目ユグドラド最高指導者・クレア・エルヴンフォード】


……おぉ!…女王様もアンタと同じ考えの様だでよ?…ほれ?…」


「いやその前に…何が如何なって?…」


「ッ!…あぁ、簡単な事だでよ!…

ただ単に他人に見られない様にする為にこうしてあるだよ!…

いやぁ、オラも最初この手紙を渡された時吃驚しただでよ!…

読み終えたと思って囲炉裏さ入れたらこげな事!…

慌てて火ぃ消しただで!…」


「いやそうじゃなくて!…」


オーディックが拾った紙切れは如何やらマルティスに当てたもう一通の

手紙らしく、そこには強く和平を望む文章が書かれて有り!…

それを朗読するようオーディックは読み続け、最後の名前まできっちり

読み終えると、マルティスと同じ考えと言っては手紙を返す…そして

その手紙を受け取ったマルティスも再び目を通す様に黙読し始めると、

その一方でマサツグ達が疑問を持ち!…一体何故この様な面倒な事を

してあるのか?と疑問を口にすると、オーディックは他人に見られない

為と語り!…その際自分もされた時の失敗談を語ると、そのオーディックの

話にレイヴンがツッコミを入れる!…当然聞きたいのはそう言う事ではなく、

ただ単純にこの二重封筒の方法を取ったかについてであり!…するとその

疑問に覚えが有るのか、アルスがハッとした様子で言葉を口にし始める…


「……ッ!……なるほど…そう言う事か……」


「ッ!…と言いますと?…」


「…単純な話だ…女王様は我々の事を信用して居なかったと言う事だ…

ルティナもダークエルフだがダークエルフを毛嫌いをしている…

そして私はそんなダークエルフ達に復讐心を抱いていた…

そんな者達がこの遜る様な女王様の文章が書かれて有るのを目にした

如何思う?……まぁ、間違いなく私なら書き換えるだろう…

…和平を認めたとしても我々が上!…そんな文面にしただろう…

だがそれをさせない為にも最初をフェイク…

中に本当の手紙を仕込んだのだろう……まんまとしてやられたと言う事だ…」


「ッ!………」


納得した様子でアルスが言葉を零すと一人冷め…そのアルスの言葉に反応するよう

マサツグが声を掛けると、アルスは自身が納得した理由について話し出す。

その理由と言うのは反ダークエルフ派の妨害を受けても大丈夫な様に!…つまりは

アルス対策で二重封筒になって居たと!…手紙を読まれても大丈夫な様に

偽装されていたのだとアルスが話すと、自分で言って更にショックを受けたのか

若干項垂れる…確かに今までの言動や行動を見る限り不安があった事は事実で、

アルス自身も非を認めており!…だがそれにしてもやはり理由が違う様な気がし、

それでも確証がない分何も言えない様子でマサツグ達が口籠って居ると、手紙を

読み終えたのかマルティスも再度判断を決定する!…


「……これには驚いた…まさかこの様な事をされるとは…

しっかり引っ掛かってしまったのが悔しいが…これで決断は決まった!…

我はユグドラドに立つ!…そこでしかと女王を見定めねばなるまい!…」


「ッ!?…や、やっぱりですか?…」


「ついては六森将全員も付いて来る事!…そこで共に見聞を広める!…」


「ッ!?…えぇ~~!?!?…」×4


改めて手紙を読み直し、驚かされたと言葉を口にすると若干だがムッとする…

恐らくムッとしている原因はその手紙の構造を看破できなかった事で、やはり

悔しいのか言葉にして漏らし!…だがそれでも決断は決まった様子で、改めて

ユグドラドに向かう事を公言すると、そのマルティスの言葉にベルベッタと

ナターシャがゲンナリする…そして確認を取るようマルティスに声を掛ける

のだが、更に驚く事にマルティスは六森将全員参加と言い!…その理由に

見聞と言うのだが、明らかに手紙に対してムッとしており!…当然全員参加と

言われた事にマリーと言い出しっぺを除く六森将全員が驚いた声を上げると、

その反応にマサツグ達は同情をする事しか出来ないのであった…

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

課金ガチャアイテムだけで生き抜く!異世界生活‼︎

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:148

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,659pt お気に入り:2,211

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:101

女神と称された王子は人質として攫われた先で溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:1,598pt お気に入り:148

天才中学生高過ぎる知力で理不尽をぶっ飛ばす!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:114

【完結】幸せしかないオメガバース

BL / 完結 24h.ポイント:511pt お気に入り:1,868

処理中です...