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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-
-第三章四十四節 不服のマリーと覚悟のナターシャと不幸は二度起きる!…-
しおりを挟む最後の最後でマサツグが乱入し…シロも本気でマリーに対してキレる事無く
五分間逃げ切り勝ちを得るのだが…当然この結果に納得が行かないマリーは
マルティスの元まで歩いて行くと、物申し始める!…その際怪我を庇う様に
して歩いて行く姿は如何にも痛々しく、誰もが見てられないと言った様子を
見せるのだが!…当本人はそれ所ではない位に怒っており!…アドレナリンで
痛覚がボケて居るのか、とにかく文句の言葉を口にするとマルティスを
呆れさせる…
「ちょっと、シャーマン!!…マリーはまだやれるわよ!!!
だから続きを!!…」
「…最初のルールで決めたであろう…制限時間は五分…
その間に相手へ触れる事が出来れば鬼は変わると…
確かに汝の攻撃は可能性を見せていた…しかし有効打では無い…
故に我は最初から最後まで汝が鬼だったと判断し…
汝の負けを宣言したのだ……最も…
あの娘に汝が勝てるとは思っても居なかったがな?…
寧ろ必然と言うべきか…」
「ッ!?……ちょっと!…それ如何言う意味よ!!…
幾らシャーマンとは言え許せないんだけどぉ!!!…」
左肩を押さえながら右足を引き摺り…額も切ったのか出血が見られると、顎に
向かって真っすぐ流れてはまるで軽い滝の様に血が流れる!…その際片目を
経由して血が流れるとマリーは片目を閉じ!…そんな状態でもまだやれる!と
マルティスに文句を言うのだが、マルティスは判断を覆さない!…それこそ
最初のルールから説明をすると、今までのマリーの攻撃はカウントしないと
話し!…結局の所シロに対しての有効打は無かったと!…シロが無傷である事を
指す様に改めてマリーの敗北を言葉にすると、マリーがシロに勝てる訳が
なかった…と言葉を続ける!…だが当然その言葉を聞いてマリーはピクッ!と
反応すると、更に怒りを覚えた様子で!…満身創痍ながらもマルティスに対して
ダガーを構え!…その言葉の意味について如何言う事か?と強い口調で尋ね出すと、
周りのダークエルフ達はその様子に驚き戸惑う!…
__どよッ!?…ッ!?…チャキッ!!…
「……よい…」
「ッ!?…け、けど!!…ッ~~~~!!…」
マリーが反抗的な意思を見せた事で辺りは騒然とし、この時当然止めに入ろうと
他の六森将もマリーに対して身構えるのだが!…マルティスはその六森将達に
対して手を突き出し助けは要らないと言った態度を見せると、ベルベッタ達を
戸惑わせる!…今にもマリーに襲われそうだと言うのにマルティスは冷静!…
これには身構えつつも助けようか助けまいかとベルベッタ達はマゴマゴし!…
その間にもマリーはマルティスに詰め寄るようジリジリとその距離を詰めると、
更に口調を強くしては如何言う事かと尋ねる!…
「答えなさいよ!!!…マリーちゃんが!!…
私が勝てない事知ってたって如何言う事!?…」
「……知れた事…汝が相手にした幼子…アレは何に見える?…」
「ッ!?…はぁ!?…この期に及んで何を!?…」
「答えよ!…汝には如何見える!?…」
「ッ!?……ただの犬の獣人!…」
興奮した様子を見せると肩で息をする様に全身を震わせ!…もはや一人称も
マリーから私に変わる程!…余程先程の言葉に対して拒絶的な何かを感じた
のか、怒りを露わにするよう口調を強くすると、更にダガーを突き付けよう
とする!…しかしマルティスはダガーを突き付けられても尚涼しい顔を
しており!…寧ろ更に呆れた様子でマリーに突如シロを如何見て居るかに
ついて尋ねると、その言葉にマリーは戸惑う!…その際もマリーは誤魔化
されて居ると感じたのか、やはり怒りを露わにするのだが!…しかしそれに
対抗するよう!…マルティスもここに来て初めて声を荒げ、もう一度マリーに
如何見えるかを尋ねると、マリーもそのマルティスの言葉に驚いたのか…
ビクッとした様子で反応し、シロの居る方へ振り向くなり率直に感じた事を
口にすると、マルティスはそのマリーの考えを改めさせる!…
「……まだまだ未熟よな?…そして覚えておくと良い…
アレは…フェンリルだ!…」
「ッ!?…はあぁ!?…」
「ッ!?…ちょ!?…ちょっと待って!?…今何て!?…」
マルティスはマリーの事をまだまだ子供と言うと心して聞くよう声を掛け…
シロの正体を教えるようその名前を口にすると、マリーは怒りを忘れた様子で
戸惑い!…魔獣使いであるベルベッタもその話を聞いて信じられない様子で
酷く驚くと、聞き間違いかも知れないとばかりにもう一度訪ねる!…しかし
幾ら聞き直した所で帰ってくる答えは同じで…マルティスは詳しい話をする
ようもう一度シロをフェンリルと話し!…マリーが勝てなかった理由について
軽く触れ出すと、マサツグに興味を持った視線を向ける。
「……あの娘はフェンリル…かの北の大陸に棲む狼達の絶対なる王!…
…マリーお前はそんな者を相手にしたのだ…
幾ら小さくとも子供であろうとその力は強大!…
その気になればここに居る者全てを死に至らしめる事も容易!…
そしてそれを手懐けて居るのがあの男……故に実力あると認めた…
…今のお前ではあの娘に一太刀入れれるかどうか…
何方にせよ勝てる見込みはなかったと言う事だ…」
この時マルティスは気絶しているマサツグに視線を向けると、初めて軽く微笑み…
まるでそのシロとのやり取りを微笑ましく見るよう表情を柔らかくするのだが、
他の者達から見れば如何にも情けない格好をして居る様にしか見えず…と言うのも
マサツグの今の格好は今だ樹にぶつかった時のままの姿で固まっており、まるで
頭から落ちて来た人の様な体勢で樹にもたれ掛かり気絶して居ると、その隣では
シロが泣きながらマサツグの体を揺すって居た。当然フェンリルと聞いて思い
浮かぶのはあのカッコいい狼の姿で、今の様にケモミミ幼女がワンワン泣いて居る
姿は全然想像出来ず!…ただ目の前に居るのがあのフェンリル?…と信じられない
様子で頭の上に疑問符を浮かべ…目の前の現実を受け止める事が出来ない様子で
六森将達が固まって居ると、マリーはハッとした様子で話を戻す!…
「ッ!?…ッ~~~!!…だ、だとしてもまだやれる!!…
競技は鬼ごっこ!!…まだ私は!!…ッ!!…ッ~~~~!!!…」
「……その傷でもう一度やれば汝が死ぬ…
それと言っておくが幾ら嫉妬心を燃やそうともその心の靄が消える事は無い…」
「ッ!?…ッ~~~~……」
マリーは我に返るなりもう一度やり直す様にマルティスへ説得を試みる!…
この時自分は大丈夫と言う事をアピールするのだがやはり傷が痛み!…
耐えれない様子で苦痛の表情を浮かべ、その場に蹲るようついしゃがんで
しまうと、マルティスから無理と断言される!…傷の具合から見て今度は
死ぬとマルティスに断言をされると、更に続けてマルティスはマリーの
嫉妬心に気が付いて居た様子で声を掛け…そのマルティスの言葉にマリーは
やはり認めたくない様子で表情を曇らせ!…今にも泣き出しそうな様子で
目をウルウルとさせ始めると、今度はマルティスが説得するよう言葉を
掛ける!…
「…負けを素直に認めるのもまた成長……
ここから先汝が如何歩んで行くかによっては…或いが有るかも知れん…
だが今はその時ではない…今一度触れ合ってみるのも…
一興だと我は思うが?…」
「ッ!……え?…」
__びえええぇぇぇん!!!…ハイハイ怪我人が通りますよぉ~!!…
「……えぇ~……ッ!!…ッ~~…」
マリーの成長を促す様に言葉を掛けると、更にはまだ未来が有ると言い!…
そのマリーの成長のきっかけにと言った様子で!…マサツグやシロと触れ合う
事をマルティスはマリーに勧めると、ただマサツグ達に視線を向け続け!…
そんなマルティスの言葉にマリーも戸惑いながら言葉を漏らすと、また
マサツグ達の居る方に視線を向けるのだが…そこで見たのはレイヴンと
オーディックに回収されているマサツグの様子で、そのマサツグのお腹の
上では自分を負かした小娘…泣きじゃくって居るシロの姿を見つける…
レイヴンが周りのダークエルフ達に注意喚起をしながら担架で運んで行き…
オーディックも慌てた様子で担架を握り!…とにかく締まりの無い様子を
マリーは目にし、アレと関わるの?…と言った戸惑いの言葉を漏らして居ると、
遂にはマリーも気絶する…
__スゥ…パタッ…
「ッ!?…マリー!!」
「マリーもあの者達と一緒に治療を…我は次の試練を見届ける…」
興奮と出血からか…突如何かが切れた様にマリーは倒れ、それに反応して
ベルベッタ達が慌てて駆け出しマリーの元へと寄って来ると、首に手を当て
脈を確かめる!…その際マルティスだけはただ気絶しているだけと分かって
いる様子で、マリーを連れてマサツグ達と共に治療するよう言い…当然その
突然の指示にベルベッタは戸惑い!…だがそれでも了承した様子で返事を
すると、気絶するマリーをお姫様抱っこする!…
「ッ!…わ、分かりました!……よっと!…
…ッ!…ナターシャは残りなさい!…」
「え!?…で、でも!…」
「次は誰が出て来るか!……ナターシャも分かるでしょ!…」
「ッ!……」
ベルベッタはマリーをマサツグ達と一緒の所へ連れて行こうとするのだが、
その際着いて来ようとして居たナターシャに残るよう言葉を掛ける!…すると
ナターシャはその言葉に対して戸惑いを覚え!…マリーの事を心配した様子で
反論をしようとするのだが、次には一蹴される!…何故なら次の戦いは必然的に
アルスの番で、ナターシャに思い出させるよう言葉を掛け!…そのベルベッタの
言葉にナターシャもハッとした反応を見せ!…理解した様子で項垂れると、
ベルベッタは続けて声を掛ける!…
「なぁに大丈夫よ!!…この子はそんな柔じゃない!…
なんせあの化け物と戦って生き延びられたんだから!」
「ッ!?…でもあれは逃げられたからで!!…」
「それでも生きようとする意志は有る!…」
__ッ!…スッ!……
マリーの事が心配で仕方がないナターシャは浮かない顔で項垂れており…
そんなナターシャを安心させるようマリーの武勇伝か何かをベルベッタが
口にすると、その武勇伝に対してナターシャがツッコミを入れる!…
その武勇伝も過去の事なのかそれとも先程のシロの事なのか?…とにかく
何方とも取れそうな事を口にして居ると、ベルベッタはマリーの回復力を
信じる様にナターシャへ言い聞かせる。その際ベルベッタはマリーの生きる
事への気力こそが何よりも大事!と言った様子で話すと、ここで先程の
武勇伝の意味を理解したのか!…ナターシャは顔を上げるなりベルベッタに
対してパッと目を見開き!…ベルベッタもそれを確認した所で再度安心させる
よういつもの事なのか玩具にされている事を口にすると、最後に集中するよう
言葉を掛ける…
「…また直ぐに回復したらナターシャの事を玩具にして来るって!…
……今は自分の事に集中しなさい!!…良いわね?…」
「ッ!……は、はい!…」
「じゃあ頑張って!!…私も直ぐに戻るから!…じゃ!…」
__タッタッタッタッタッタッ!!…
そのベルベッタの台詞に対してナターシャは苦笑いをすると、ベルベッタに
戸惑いながらも返事をし!…ベルベッタもその返事が聞けた所で安堵し!…
再度マリーをマサツグ達の所へ連れて行くよう駆け出して行くと、その場を
後にしてマサツグ達の後を追い駆ける!…そのベルベッタの後ろ姿を
ナターシャはいつまでも見詰め続けると、まるでマリーの事を妹か何かと
思って居る様子で心配し続け!…自身の背後にアルスが立つまで…ただその
ベルベッタが駆けて行く姿を見詰めて居ると、アルスは気を利かせた様子で
ナターシャに声を掛ける!…
「……着いて行かなくても良かったのか?…」
「ッ!……えぇ、大丈夫です!…」
「…私としてはそのまま棄権してくれても良かったのだが……
覚悟は出来て居るか?…」
「……それは…こちらの台詞です!…」
アルスは名乗り出るまでも無くその円の中心に向かい歩いて行くと、背を向ける
ナターシャに対して声を掛け…そのアルスに言葉に対し!…ナターシャも覚悟を
決めた様子で背を向けたままアルスへ返事をすると、静かに振り向く!…そんな
ナターシャにアルスは続けて止めても良い…と言った様子で挑発をすると、剣の
柄に手を伸ばし!…ナターシャもナターシャで静かに身構え!…自身が穿いて
いるスリットスカートから二本のダガーを瞬時に取り出して見せると、それを
逆手に握っては構えて呼吸を浅くする!…まさにその構えは暗殺者!…利き足を
前に突き出しては腰を落として低くし…腕をクロスさせる様にダガーを構えると、
一点にアルスを見詰める!…今にも周りに有る影に溶け込みそうな雰囲気を
見せており!…アルスもその様子に警戒した反応を見せると、剣を抜き!…
ナターシャに決闘を挑む様に構えて見せると、突如始まる戦闘の雰囲気に周りの
ダークエルフ達も戸惑った反応を見せる!…そんな血気盛ん?…な二人に
マルティスも呆れた様子で一度溜息を吐くと、渋々二人に声を掛ける!…
「……はぁ……
その様子からもう何をするかは大体察しは着いて居るが…一応尋ねる…
汝、挑戦する者…試練の内容は?…」
「……決闘!…
何方かが降参…或いは手負いになったら終了の一対一の何でも有り!…
…あの時の様な不覚はもう取らない!…覚悟は良いか!!」
当然この時マルティスが二人に聞いた内容は、その勝負の内容であり!…
その様子からは察しては居るものの言質を取る様に!…改めて何をするかに
ついて質問をすると、挑戦者であるアルスが決闘と答える!…まぁ両者共
すでに武器を構えている時点で決闘しか無いのだが、アルスはナターシャを
見詰めたまま細かいルールを設定し!…最後に意気込みを口にするよう!…
あの夜襲を受けた時の事を言葉にし、更にナターシャに対して同意を求める
よう覚悟の有無について尋ねると、ナターシャも既にスイッチが入っている
様子で答える!…
「……いつでも!…何処からでも構いませんよ!…」
「……ふぅ…了承した…では……もう既に構えているな?…」
この時そのナターシャの表情からはあの弱々しい感じが全く見られず、ただ
冷徹な眼光だけがアルスに向けられ!…アルスもそれを感じてか不足無しと
ばかりに!…ナターシャに対して眼光鋭くいつでも動けるよう身構えると、
その場の空気を一触即発の緊張感で包んでしまう!…エルフVSダークエルフ!…
そんな因縁の様な試合に周りの者達も固唾を飲み!…マルティスも始めるよう
ルールを了承し!…二人から少し離れて構えるよう言葉を口にしようとする
のだが、当然二人は既に構えており!…そんな二人の様子に自分でもツッコミを
入れるよう!…言葉を口にしながらマルティスは持っている杖を徐に掲げ
始めると、合図のタイミングを伺う!…
__……スッ…チャキッ!!………
「ッ!…遂に始まるか!…あの二人の戦い!…
…で、こっちはと言うと?……」
__チィ~~ン!!…ごしゅじんさまぁ~~~~!!!…
「……大馬鹿者が一名気絶…で、その腹の上では幼女が泣いて居て?…
更にその隣では今だ蒸気が抜け切らない様子…現在進行形で一人煮えて居て…
更にボロボロの幼女の患者も増えて何が何やら!…
とにかく忙しいって言った所か?……はあぁ~……ったく!…
しゃ~ねぇ~なぁ~!!…」
マルティスが杖を掲げた際その光景は一人治療をして居るレイヴンの目にも
しっかりと映り!…遂にアルスの戦いが始まるか!と興味を持った様子で
見守ろうと思うのだが!…そう言う状況にはなれないで居た…今だマサツグは
気絶して白目を剥きながらその場に倒れ、シロはそんなマサツグの腹の上で
今だ泣きじゃくり!…一緒に治療をと運んで来たジーナも今だ赤面したまま
頭から蒸気を発し!…ベルベッタもマルティスの言い付けを護りレイヴンの
元へまた幼女の患者を一人増やすと、レイヴンは人手が足らずに現実放棄を
し掛けて居た…だが当然現実放棄をする訳には行かないので!…
まずは重症度から見てマリーの治療に掛かり!…その際ベルベッタにも協力
するよう声を掛けると、手早く事を済ませようとする!…
「ベルベッタ手伝ってくれ!…止血と包帯を巻く位は出来るだろ?」
「ッ!…え、えぇ…でも物資が…」
「それはこっちで渡すから頼む!…
…後、体力もそこそこ減ってるな!…まぁあの勢いでスッ転んだんだ!…
感覚で言えば高速で車に撥ねられたって所か!…普通に死んでるっての!!…
まぁそれでもこれで済ませたって事はある意味奇跡だな!…
とにかく包帯と止血剤!…後ポーションも!…ゆっくり飲ませてやってくれ!!…
…で、こっちは!…」
突如レイヴンに声を掛けられた事でベルベッタは戸惑うのだが、問われた事に
対しては直ぐに返事をし!…この時物資がこの場に無い事を続けてレイヴンに
話すと、レイヴンは直ぐに用意するよう自分のアイテムポーチを開き!…
そこから包帯や止血剤、更にHP回復のポーション等を取り出すと、まとめて
ベルベッタに手渡す!…その際そのマリーの容態を見ては、自身なりの例えを
口にしつつ重体具合に驚き!…ベルベッタにアイテムを一式渡した際、自分は
自分で人手を確保する為にある人物を叩き起こす事を決めると、その手に
小瓶を持ち!…そしてその気絶している人物の鼻元にその小瓶を持って行き!…
徐に封を開け出すと!……
__…スッ……きゅ~!…ぽん!…
「……おら、さっさと起きろ!…」
__ふわあぁ!……ッ!?…
レイヴンが手にして居たのは気付け薬!…その効果は気絶状態からの回復なのだが…
プレイヤー達の中ではあまりお世話になりたくないアイテムの一つであり、そんな
アイテムを何の躊躇いも無くマサツグの鼻元でその封を切ると、文句を言う様に
言葉を口にする!…すると如何だろう!…時間にして約三秒!…マサツグはその
強烈な臭いで目を覚ましたのか、自身の腹の上にシロが居るにも関わらず慌てて
上体を起こすと、自身の鼻を押さえる!…
「ふがあっが!!…くっさあぁ!!!…え!?…何!?…」
「ッ!?…きゃあああぁ!!……」
__コロコロコロコロ!…ドサァ!!…
「ッ~~!!…あたたたた……ッ!?…
ご、ご主人様ぁ!?…ッ~~~!!!…」
その際マサツグは酷く驚いた様子で目を見開くと、自身の鼻を抑えたまま途端に
辺りを見渡し!…シロはシロでマサツグが急に飛び起きた事で転がって行き!…
驚いた様子で悲鳴を上げると、マサツグの体の上から落ちてしまう!…この時
マサツグに転がされた事でシロは怒る事はなく、マサツグが突如目を覚ました
事で驚き!…何処か打ったのか自身の後頭部を摩ってはマサツグが目を覚ました
事に気が付き!…更に歓喜した様子で起きたてのマサツグ目掛けてシロが
いつもの様に跳んで行くと、マサツグの胸部目掛けてハートブレイクショットを
放つ!…
__ンバッ!!…ドゴオォォ!!…ッ!?…
「ごしゅじんさまぁぁ~~~~!!!!」
「ッ!?!?……ガッハァ!!!…」
「シ、シロちゃあ~~~~ん!?…」
ほぼゼロ距離!…シロが歓喜した様子でマサツグに飛んで行くと、見事に
マサツグの胸部を撃ち抜き!…当然起こしたのにシロがまた再起不能にし!…
レイヴンが驚いた様子で思わず仰け反って居ると、辺りにシロの歓喜の声が
響き渡る!…響き渡ると言っても辺りに聞こえる程度で、肝心のマサツグは
と言うと心臓を撃ち抜かれた様な痛みを覚えると、吐血し!…レイヴンも
レイヴンでそんなシロに!…ツッコミを入れるようシロの名前を叫んで居ると、
マサツグはまた地面に倒れては白目を剥く事になるのであった…
さてそんなマサツグ達の様子を余所に円の中央では今だ睨み合いが続き!…
マルティスからの合図を今かと!…互いに緊張した様子で固まり!…かつ
いつでも動ける様に神経を研ぎ澄ませて居ると、遂に時は満ちる!…
__……フォン!!…ッ!!…
「開始!!…」
__バババッ!!…
「はあああああああぁぁぁぁ!!!!」×2
マルティスが勢い良く杖を振り下ろすと開始の声を上げ!…その合図を聞いて
アルスとナターシャの二人が飛び出すと、得物を握る手に力を入れる!…この時
同時に掛け声を上げると互いに自身の攻撃間合いに相手を入れ!…そのまま振り
被りぶつかるよう!…まずは小手調べと言った様子で小細工無しに力比べへ
向かうと、剣とダガーがぶつかった瞬間!…辺りに激しい剣戟音が鳴り響く!…
__フォンッ!!…ギイィィン!!!…わあああああぁぁぁ!!!…グンッ!!…
「ッ!?…やはり接近戦は苦手の様だな!!…」
「ッ~~!!…クッ!!…」
「苦手でありながら真っ向から向かって来た勇気!…
それは称賛する!!…だが!!…」
辺りに激しい剣戟音が響くとダークエルフ達は活気付き!…アルスとナターシャが
その声援を背に鍔迫り合いを始めると、ナターシャは目に見えて分かるよう
アルスに押されて行く!…この時アルスはナターシャの戦闘スタイルを予め読んで
居た様子で、接近戦が苦手である事を改めてナターシャに突き付け!…
ナターシャもアルスに押されて行っては苦戦の様相を周りに見せ!…その際返事も
出来ない程に振り解く事も困難な状態に立たされると、アルスは更にナターシャへ
言葉を掛ける!…その言葉と言うのも自分に真っ直ぐ向かって来た事を称賛する
言葉なのだが、それも直ぐに愚策と!…腕に力を入れてはナターシャを弾き
飛ばそうと身構え出し!…勝負を一気に決めようとするのだが!…次の瞬間ある
違和感を覚える!…
__グッ!!…クンッ!…
「ッ!?…軽い!!…まさか!!…」
「ッ!…バレてしまいましたか!…」
__ガギャギャ!!…ギイィィン!!!…
アルスはそれこそナターシャの事を思いっきり弾き飛ばそうとするのだが、その際
重さに違和感を覚え!…普通人一人弾き飛ばそうとするならその負担は当然自身の
腕に掛かるのだが、如何にもその重さが軽く!…まるで向こうがこちらの動きに
合わせて負担を軽くしているよう…そんな手応えが感じられアルスが困惑し直ぐに
弾き飛ばす事を止めると、ナターシャもバレたと漏らしては逆にアルスを弾き
飛ばす!…弾き飛ばすと言っても軽くフラ付かせる程度で然程威力は無いのだが、
仕切り直すには十分で!…その際刃同士が激しく摩耗!…ぶつかり合う音が辺りに
響き!…そんな駆け引きが有った事に!…誰一人気付いて居ない様子でダーク
エルフ達が湧いて居ると、その一方では再度マサツグを起こそうと気付け薬が
その手に握られていた!…
「……はあぁ~…まさか起こした後からまた気絶するとは…
とにかく早く起こさないと…」
「あうぅ~…ごめんなさいです…」
「ッ!…あぁ、良いんだよシロちゃん?…
悪いのは耐えられなかったヤブが悪いんだから!…
…さて、もう一回目を覚ませぇ~?…」
今度は泡を吹いて倒れているマサツグに…レイヴンは再び気付け薬を持って
溜息を吐くと、まさかと漏らし…そのレイヴンの呆れ様にシロも反省した
様子で隣に正座をするよう座ると、ショボンとした表情を見せる…そして
レイヴンに先程の事について謝るよう言葉を口にすると、ションボリとした
表情だけでなく耳や尻尾をペシャッとさせて落ち着かせ…そんなシロの
謝罪にレイヴンは大丈夫と返事をし!…先程の事に関してはマサツグが悪い
と言った風に言葉を口にすると、再度気付け薬の封を切る。そしてまた
マサツグの鼻元にその気付け薬を持って行っては、その匂いを嗅がせる
のだが…今度は若干効きが悪い様子で直ぐに反応するのではなく…若干の間を
置いた後!…これまた臭いと言った様子でマサツグが飛び起きると、先程
同様の反応を見せる!…
__ふわあぁ!……………ッ!?…
「んばっは!!!…くっさ!!…クゥッサ!!!…
え!?…何!?…何事!?…」
「シロちゃん?…落ち着いて抱き着く様に!…
そうすればマサツグも気絶しない!…」
__ガバァ!!!…ッ!!…………ッ!…
時間にして約数秒…マサツグはまた自身の鼻を押さえては慌てた様子で
上体を起こし!…その匂いの元凶を探すよう機敏に辺りを見回すと、
ただ戸惑った反応を見せ続ける!…そして状況も分かって居ない様子で
同時に困惑もし始めると、呆れるレイヴンの姿と正座しているシロの
姿を見つけ!…マサツグが目を覚ました事でシロはまた喜び!…レイヴンも
同じ過ちを繰り返さないようシロに注意をすると、シロは今度こそ勢いを
付けて飛び付かないよう努める!…だが飛び付く事には変わらず!…
いきなりシロが飛んで来た事でマサツグは更に戸惑い!…自分が気絶する
前の事をふと思い出し!…徐々に自身の記憶をハッキリさせると、シロの
頭を徐に撫で始める。
__……ポンッ!…なでなで…なでなで…
「……あぁそっか…俺気絶してたんだ…
…確かシロを抱えて樹にぶつかって………ッ?…
…にしても胸が痛いんだが?…何で?…」
「さぁ?…何ででしょうね?…」
「え?…」
円の中央ではアルスとナターシャが真剣勝負を繰り広げて居るにも関わらず、
マサツグは暢気に構えており!…徐々に思い出しては自身が気絶して居た
理由も思い出し…その際先程の事は記憶から抜けたのか胸に痛みを感じると
零すと、その理由をレイヴンに尋ねる。しかしレイヴンに理由を聞いた所で
レイヴンはスラッ恍ける様にして返事をすると、続けて悩ませる様に言葉を
口にし…そのレイヴンのスラッ恍け様にマサツグも困惑し…ただ戸惑った
様子で言葉を口にすると、元凶であり若干の慌て様を見せるシロの頭を撫で
続けるのであった…
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妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
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ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
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ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
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魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
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捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
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