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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-
-第三章三十節 テントの中身と案の定の敵襲と斥候のエルフ-
しおりを挟むユグドラドに居た時とは打って変わってマサツグの動きは機敏に!…アルスも
そんなマサツグに戸惑いつつも倒れて居る斥候を抱き起すと、マサツグから
渡された回復薬の封を切る。そして咽ないよう少しづつ与えると、生きる事を
諦めない様に声を掛け!…マサツグはマサツグで辺りに警戒しつつ!…他に設営
されて有るテントに手を掛けて行くと、一気に捲るよう中身を見る!…すると
そこに有ったのは…
__バサアァ!!……ッ!…
「……保存食?…見た感じ獣の肉っぽいけど?……こっちは?…」
__バサアァ!!…
三つ在る内一つ目を捲るとそこには食料らしき獣の死骸が積まれて有り、
まだ新鮮なのか捌かれた状態で放置されては地面に血溜りを作って居た…
その他にも魚や良く分からない物が積まれて有るのを見つけると、
腐食等は一切見られず…だがハエらしき虫は飛んでおり、とにかく衛生上
よろしくない雰囲気を見せては不快感を覚えさせられる…そんな有様に
対してマサツグも冷静に確認を終えると、次のテントに手を掛け出し…
これまた一気に捲って見せ!…テントの中身を確認すると、そこで今度は
そのモンスター達の武器か、棍棒と言った原始的な武器が保管されて有る
のを見つける。
「……ここには?……武器かね?…棍棒らしき物が置かれて有る…
数はざっと見て……十数本って言った所か……面倒だな…
……残りは一個!…頼むから全年齢対象であってくれよ?…」
__グッ!…バサアァ!!……ッ!…
乱雑に置かれて有る原始的な石槍や棍棒!…そこに置かれて有る武器の数に
目を向けると、ザっと十数は立て掛けられて有り!…それを見てマサツグが
これだけのモンスターが居るのか…と感じると、さっさと確認作業を終える
様に最後のテントに手を掛ける!…その際最後のテントはちゃんと見れる
物がある事を願うと、マサツグは一気に革を捲り上げ!…そこでこれまた
斥候のエルフが捕まって居る姿を見つけ!…こっちはまだ何もされていない
のかただ縛り上げられて気絶した状態で横たわって居るのを確認すると、
マサツグはアルスに声を掛ける!…
「ッ!!…アルスの嬢ちゃん!!…こっちにも居た!!…
まだ何もされていないみたいだ!!…」
「ッ!?…ほ、本当か!?…」
「…強いて言うなら縛られてる!…
でもそっちの子みたいに酷い事はされてないみたいだ!…
…とにかく縄を解…」
マサツグが斥候のエルフを見つけたと声を掛けると、アルスはハッとした
様子でマサツグの居る方へ振り向き!…その際無事である事も聞かされると、
安堵した様子で言葉を掛ける!…その言葉に対してマサツグは縛られている
事を話すが、怪我はして居ないと!…とにかく拘束を解く様に伝え!…
その捕まって居るエルフの縄に手を掛けようとすると、次の瞬間その斥候の
エルフは目を覚ましたのか!…マサツグは思いもよらない攻撃を受ける!…
__……ッ!?…ッ!?…ッ~~~!!!…ゴソゴソッ!…ドゴオォ!!!…
「どわあぁぁ!!!…な、何だ!?……ッ!…」
捕まって居たエルフは目を覚ますなり慌て出し!…更に自身が縛れらている
事にも気が付くと、状況が状況なので動転する!…オマケに見た事の無い男が
自分に迫って来て居るとあれば、更に血相を変え!…両足首を縛られながらも
両膝を曲げ!…その迫って来るマサツグに対して倒れながらも渾身の蹴りを
放つと、マサツグの胸部を蹴飛ばしては難を逃れようとする!…当然マサツグも
蹴り飛ばされた事で後ろに仰け反ると、威力はそんなに無いものの尻餅を着き!…
それでも突然蹴られた事には驚き戸惑い!…ただその拘束されているエルフに
驚きの視線を向けて居ると、そのエルフは芋虫の様に地面を這って居り!…
体勢を立て直した所でマサツグに威嚇をするよう息を大きく切らすと、懸命に
マサツグの事を睨む!…
__ウゴウゴ!…ウゴウゴ!…フゥ~!!…フゥ~!!…
「……え?……あっ…ま、待て!!…俺は敵じゃない!!…
ほら!…そこにお前さん達の仲間のエルフも居るだろ?…
それにアルスも!!…」
__フゥ~!!…フゥ~!!……チラッ?…ッ!!…
まるで猫の威嚇の様にフゥ~!!…と息を切らし、マサツグの事を睨み付ける
エルフの様子に!…マサツグは数秒フリーズするも直ぐにエルフの心情を
理解した様子で…慌てて自身が味方である事をエルフに説明すると、自身の
後ろに居る筈のアルス達の事を指差す!…その際マサツグはエルフに対して
両手を上げて敵意も無い事をアピールすると、何とか笑顔を作って見せ!…
そのマサツグの様子にエルフも警戒した反応で…マサツグの事をチラチラと
確認しつつ、マサツグが指差した背後に視線を向けると、エルフは目をパッと
見開いては驚きの表情を見せる。そしてそれを見てマサツグも安堵すると
再度そのエルフに話し掛けようとするのだが…
「……ふぅ…これで理解したか?…
さぁ!…今縄を解いてやるから大人しく…」
__ッ!!…ッ~~~!!!…ッ~~~!!!…
「ッ!…何!?…如何した!?…今度は何だって…ッ!?…」
再度縄を解こうと腕を伸ばし!…マサツグがエルフに触れようとした途端!…
エルフはマサツグに触れられまい!…と抵抗する!…その際同時に何かを
訴えるようマサツグに顎で何かを指し!…マサツグも目の前で唸るエルフに…
何なら抵抗するエルフに戸惑いを覚えると、意図を汲んだ様子で振り返る
のだが!…そこで目にした物はアルスの背後からリザードマンが迫って来て
いる様子で!…マサツグもそれに気が付くなり素早く刀に手を掛けると、
しゃがんだ状態ながらもアルスに声を掛ける!…
__チャキッ!!…
「アルス!!!…頭を下げろ!!!」
「ッ!?…何!?…」
「雷撃刃!!!…更に感知!!!」
マサツグが緊張感を持って慌てた様子で声を掛けると、アルスも気が付いたのか
戸惑いながらも指示に従い!…マサツグはすかさずその背後から忍び寄って来た
リザードマンに対して斬り上げるよう抜刀すると、同時に雷撃刃を放って見せる!…
この時そのリザードマンは既にアルスに対して得物を振り上げており!…
マサツグはその様子を見ながらレイヴンは何をしていたんだ!?…と考え!…
雷撃刃を放ったと同時に感知も発動し始め!…辺りの状況を素早く確認すると、
そこである事を理解する!…
__ピィーン!!…ヴウン!!…
「ッ!?…レイヴン達も交戦!?…後ろから攻撃を受けたのか!?…」
マサツグの感知が捉えたモノは、レイヴン達が交戦にある状態!…
数もそこそこ居るのかこちらに手が回らない様子で、自分達も徐々に
モンスター達から包囲されつつある状況にある事であった!…そしてそんな
状態を確認した所でマサツグもヤバい!と感じたのか、辺りを見回して慌て
始め!…その一方でマサツグが放った雷撃刃はリザードマンに突き刺さり!…
激しい放電をした後胸部辺りを輪切りにするよう通過すると、斬られた
リザードマンは腕を振り上げたまま絶命する!…
__バジュウゥ!!!…パギャワアアァァ!!!!…
「ッ!?……な、何がバチバチ?…ッ!?…こ、これは!?…
…ともかく!…」
__…スッ!……チャキッ!…
「おい!…これは如何言う!?…」
そして自身の背後で何かが放電!…更に倒れる音を耳にすると、アルスも
後ろを振り返っては様子を確認!…そこで今ある状態に気が付いたのか
介護していたエルフを置くよう慌てて立ち上がり!…自身の剣の柄に手を
掛け出すと、マサツグに説明を求める!…だが当然説明している暇など
無く、マサツグは辺りを依然として見回しており!…アルスの話等お構い
なしに!…自分達が危険な状態である事を示唆すると、注意だけはする
ようアルスに声を掛ける!…
「説明は後だ!!…援軍も望めない!…
とにかく切り抜ける事を考えろ!!!」
「ッ!…チィ!!…囲まれたのか!!…」
__ガサガサ!…グルルルル!……グギャギャギャ!!…
簡単にレイヴン達が交戦状態にある事を伝えると、大体の目星を付けたのか…
アルスが居る方向に対してマサツグは背を向け出し!…切り抜けるよう声を
掛けると、アルスもそんなマサツグの様子を見てか察する!…そうして舌打ちを
しながら文句を言うよう近くの藪に対して言葉を漏らすと、その言葉を合図に
ゴブリンやらリザードマンやら!…とにかく数にして約7~8頭!…マサツグ達を
囲む様にしてその藪から姿を現すと、吐息と一緒に鳴き声も零す!…そんな
モンスター達の様子にマサツグも警戒しながらその拘束状態のエルフに話し掛け
出すと、ある事を質問する!…
「……おいアンタ!…
今縄を切ったらあの倒れて居る子の所まで移動出来るか?…」
__ッ!……コ、コクッ!…
マサツグがそのエルフに質問をした事とは、動けるかどうかで!…それが
とっても重要と言った様子で辺りのモンスター達を睨みながら声を掛けると、
そのエルフは戸惑いながらもマサツグに頷いて返事をする!…この時その
エルフも何とかマサツグの居る所まで這って来ると、いつでも準備万端と!…
最初から助けて貰う気満々でスタンバっており!…マサツグもそれを見て
イケると踏むと、アルスに声を掛ける!…
「…よし!…じゃあ縄を切ったら直ぐ移動してくれ!…
その方が守り易い!……アルスも行けるか!?」
「ッ!…フン、誰に口を利いている!!…私はエルヴンナイツの副隊長!!…
[アルス・レオ・ダンディエル]だぞ!!…これ位の雑兵!!…
なんて事は無い!!!」
「ッ!…はは!…頼もしい限りだ!!……じゃあ…おっぱじめるぞ!!」
__クルッ!…ズダンッ!!…ッ!!…バッ!!…
準備が出来て居るかについてアルスに声を掛けると、アルスはマサツグの言葉に
対して不敵に返事をし!…これ位の敵訳は無いと!…余裕すら感じさせる様子で
笑みを浮かべながら自身の役職に名前を口にすると、同時に剣を抜いて見せる!…
そしてその返事を聞いた所でマサツグも笑って返事をして見せると、右手に刀を
握って構え出し!…アルスに対しておっぱじめると声を掛け!…構えて居た刀を
逆手に持ち替え!…すかさず足元でスタンバって居たエルフの足の縄に刀を突き
立てると、エルフもそれを理解したのか膝や足に力を入れる!…そしてマサツグに
言われた通り!…まずはその倒れているエルフの元へ向かい駆けて行くのだが、
それと同時にモンスター達も動き出し!…まるで阻止するようマサツグやアルスに
向かって飛び掛かり!…マサツグ達もそれに反応して動くと、二人のエルフを
護りながらの戦闘に突入する!…
__ゲギャギャギャギャギャアアアァァァ!!!!
「ッ!…ほい、来ましたよッと!!…」
__ズバンッ!!ズバンッ!!…ゲギャ!?…
「……ふぅ!…つくづくゴブリンに縁の有る!…レイヴン達の方は大丈夫かな?…」
奇声を上げながらゴブリン達はマサツグに向かって行く!…だがマサツグは
余裕とばかりに刀を握り直すと、飛んで来るゴブリン達を避けながら一太刀に
切り捨て!…その様子を見て居た他のゴブリン達はその呆気の無さに慌て出す!…
そして切り捨てられたゴブリン達も何もする事が出来ないまま地面に落ちると、
弾みながら光になって消え!…マサツグはマサツグで何かと縁が有ると呟き!…
同時にレイヴン達の事を心配すると、思わず隠れて居た岩場の方へ視線を
向ける!…そして同じ様にリザードマンに襲われたアルスの方はと言うと、
先程豪語していた通りに善戦しており!…ヒラリと身を躱しては一太刀入れ!…
次々襲って来るリザードマン達をモノともして居なかった!…
__スッ…ザシュッ!!…ドシュッ!!…
「……フン!!…こんな物か!!…
この程度!…幾ら数で来ようが問題では無い!!」
__パギャワアアァァ!!……ドサッ!…ドサッ!!…
「……言うだけの事はあるな!…まるで踊って居るみたいだ!…
脚運びがとても自然!……だとしたら余計に昨日の夜の事が引っ掛かるな?…」
アルスの方も余裕とばかりに笑みを見せると、その返り血で汚れる事すら
嫌がる様に避け切り!…大した事は無いと更に豪語し!…リザードマン達に
対して剣を再び構えて見せると、その様子に他のリザードマン達も警戒を
する。この時斬られたリザードマン達は不可思議な事に、その場で固まる
よう突如として動かなくなると、次にはダメージを受けた様に動き出しては
断末魔を上げつつその場に倒れ、ピクリとも動かなくなる…さながら時代劇の
殺陣を見て居るかの様な光景に、マサツグも感心をするのだが…その際気に
なるのは昨日の夜の出来事で、諸声に出して疑問を口にして居ると、その声は
アルスにも届いた様子で文句が飛ぶ!…
「ッ~~~!!!…おい聞こえて居るぞ!!
そっちこそ敵に集中しろ!!…窮地に追いやられても知らんぞ!!!」
「ッ!?…ありゃ声に出てたか…」
__グギャギャギャギャ!!!…ズバン!!……ドサァ…
「……まぁやられる気は無いけど?…てか、もう終わりだし…」
マサツグの何気ない疑問にむかっ腹を立てるよう!…アルスは剣を振り上げ
ながら怒り出すと、敵に集中するよう言い!…マサツグはマサツグで声に出して
言うつもりはなかったのか…ただ声に出て居た事に気が付くと、恍ける様な
口調で誤魔化そうとする。そしてその隙を狙って背後からゴブリンがまた襲って
来るのだが、マサツグは気付いて居るとばかりにバッサリ!…自分の所が残り
一体だけとなった所でもう終わりと零して居ると、ここでレイヴン達の方も
終わったのか!…慌てた様子でレイヴン達が駆けて来る。
__ザッザッザッザッザッザッ!!…
「マサツグ!!……あぁ~っと!…アルス!!…
とにかく無事か!?」
__ッ!!……
ゴブリンは残り一体!…リザードマンが残り二体!…そんな中更にレイヴン達が
合流し、モンスター側の旗色が大分と怪しくなると、モンスター達は後ろに
下がり出す!…さすがに状況が状況なので逃げ出そうと言った構えを見せており…
レイヴン達もマサツグ達と合流すると、まずは無事かどうかの確認を取る!…
その際レイヴンはアルスの事をどう呼ぶかで少し悩んだ様子を見せるのだが、
マサツグ同様時間が無いとばかりに苗字では無く名前で呼び!…その際アルスは
また名前で呼ばれた事に動揺しており!…マサツグがそんなアルスの事を構わず
返事をすると、合流して来たレイヴン達の事を労わる。
「ッ!…レイヴン!…そっちの方こそ大丈夫なのか?」
「あぁ、何とか!!…
まさか更に背後から襲われるとは思っても無かったけど!…
オーディックの嗅覚のお陰で難を逃れた!!…
…で、こっちも見た所直ぐに終わりそうだな!…
じゃあ俺達は治療に掛かるからさっさとこいつ等を蹴散らしといてくれ!!」
「ッ!…へいへい!…了かぁ~い!…」
「…オーディックはこの子の服を!…って言いたいけど…あぁ~……
この革を加工出来たりする?…」
ただ大丈夫かと声を掛けるのだが、これには二つの意味を込め!…レイヴンも
それを汲んだ様子でマサツグに返事をすると、奇襲に遭い掛けた事を話し出し!…
難を逃れた理由にオーディックの鼻が利いたと説明すると、その間にも倒れて
居るエルフの治療を進める!…その際マサツグとアルスの様子を確認すると、
直ぐに終わると判断し!…さっさと蹴散らすよう言っては治療に専念し始め、
そのレイヴンの言葉にマサツグもやる気が起きない様子で返事をすると、
レイヴンはオーディックにある事を尋ねる。因みにこの時シロはと言うと今だ
マサツグの言い付けを護っている様子で、オーディックに肩車をして貰っては
自身の手で目を隠しており…ただ事の終息をひたすらに待って居た。
{……まだかなぁ?…}
「…ッ!…あんだっで?…これでけ?…あぁ…まぁ出来ん事はねぇでが?…」
「ッ!…じゃあ簡単な物でも良い!…加工を頼む!…
あくまでもその場しのぎだからマントとかで!…」
「ッ!…だったら裁断する程度で済むから楽だでな!…
あぁじゃあ待っとってけれ?…直ぐに切っちまうだで!…」
オーディックの肩に乗りながら耳をピコピコと動かし…心の中でコソコソと
シロが呟いて居ると、シロの足元ではオーディックがレイヴンの問い掛けに
対して返事をする。その際何処で仕入れた情報なのか…オーディックは
出来ない事も無いと言うと、自身の頭を掻き出し…その際何故か反応に
困った様な表情を見せ…ふと辺りを見回し始めて居ると、レイヴンは更に
続けて簡単な物と説明をする。あくまでもこの子達を連れて町に戻るまでの
間で良いので!…マントなどで良いと説明をすると、オーディックも
それならと返事をし!…革を裁断するのに自身の斧を使い始め!…直ぐに
仕上げると言い出すと、その場に捏ねられて有る革に手を掛ける!…
さてそうしてレイヴン達の方は治療と衣服の確保をしている一方で、
マサツグ達の方はと言うと…最後のゴブリンは逃げ出そうとしており、
マサツグもマサツグでもう戦う気は無いのか溜息を吐いて逃げ出す事を
願って居ると、背後からは気合の入った声が聞こえて来る!…
__グギギギギ!!……はあぁ~…
{…もう逃げ腰なんだからさっさと逃げれば良いのに……
何でそんな微妙な頑張り様を見せるかな?…
…後ろからは威勢の良い声が聞こえて来てるし…}
「さぁ、如何した!!…これでもう終いか!!…
我が同胞を辱しめた罪!!…貴様達の死を持って償えぇぇ!!!」
__ザシュッ!!…ギャワアアアァァァ!!!…
マサツグの目の前のゴブリンは歯を食い縛りながら汗を掻きつつジリジリと
後ろに下がり…逃げる体勢を少なからず見せて居るのだがハッキリとは逃げ
出そうとしない!…そんな優柔不断?…の様子にマサツグも呆れた様子で
さっさと逃げるよう心の中で呟いて居ると、背後から聞こえて来るアルスの
叫ぶ声にもツッコミを入れ出す。そしてそのアルスももはやイケイケ状態
なのか、カウンターの姿勢から自ら出る様に動き出し!…二体居た内の
一体を斬り付け!…マサツグと同じく最後の一体だけを残すと、ジリジリと
迫って行く!…
「…これで終いだな!…あの世で後悔するが良い!!」
__ッ!?…ザシュンッ!!…パギュワアアアァァ!!!……ドサァ!!…
「…フンッ!!…口ほどにも無い!…
…それよりもレイヴンとか言った奴!…彼女の様子は!?…」
徐々に詰め寄るアルスに最後のリザードマンもタジタジ!…最後は大きく振り
上げられた剣によってアルスに止めを刺され!…そのままリザードマン達は
地面を這い蹲るよう全滅すると、音も無くただ血を流す…そして最後の仲間を
やられたお陰か、マサツグの方のゴブリンも漸く逃げ出し!…マサツグも
それを確認した所で血糊を払うよう刀を一振りすると、刀を鞘に仕舞う。
そうして戦闘が終わるとアルスは文句を言うよう一言だけ言葉を口にすると、
慌てた様子で治療するレイヴンの元へと駆けて行き!…同時にその治療をして
いるエルフの容態について尋ね始め!…レイヴンがそのアルスの問い掛け
に対して戸惑った反応を見せると、流した様子で答え出す。
「ッ!?…レ、レイヴンとか言った奴って!?……まぁいい…
状態は大分落ち着いてる…ただ心配なのは精神状態で…
本当に見たまんまの光景通りの事をされたのかと考えると…
正直かなり心配だ…見た感じかなり気も強そうな子だし…
もしかすると下手な事をするかも!…って…」
「ッ!!…そ、そうか…」
「……とにかくこの子達を連れて一旦ユグドラドに戻るぞ!…
…って、まだ解放されてなかったの?…」
レイヴンはその治療をしているエルフの容態について…怪我はしていないものの
精神的なダメージが大きい事を口にすると、もしあの通りのままの事を受けたの
なら心配と口にする!…その理由に見た目からプライドが高そうに見える事を
告げると、更に最悪の展開も予想されると話し!…俯いてはばつが悪そうな反応を
見せ!…そのレイヴンの話を聞いてアルスも困惑…酷い戸惑い様を見せ一言だけ
返事をすると、その倒れているエルフに視線を向ける…そしてその場が一気に
重苦しい空気になり始める一方で、マサツグは気分を切り替える様に全員に声を
掛け!…一度ユグドラドに戻るよう提案し!…全員が頷いた所で戻る手筈を整え
ようとすると、ここでまだ両手と猿轡をされているエルフに気が付き…問い掛ける
様にマサツグが声を掛けると、そのエルフは文句を言うよう吠え始める!…
__んむぅ~~!!…んむううぅぅぅ!!!…
「あぁ~!…あぁ~!…悪かったって!…
今解いてやるからジッとしてろ?…」
__チャキッ!……ブヅン!!…パサァ……シュルシュル…
「……んん~!!……はあぁ!…救援感謝いたします!…
このままどうなる事かと!…」
「あ、あぁ……それよりもこの状況は何だ?…
お前たち斥候に何が?…」
両手を後ろ手に縛られ猿轡をされて居るにも関わらず、懸命に文句を言う
エルフに!…マサツグはあやすよう笑いながら謝ると、再度刀を抜いては
両手の縄と猿轡を解き!…やっと自由になれた所でそのエルフも大きく
腕を伸ばして伸びをすると、マサツグ達!…と言うよりもアルスに感謝を
する!…その際捕まって居たのが心細かったのか、今更になって声を
震わせ!…アルスもそんなエルフの様子に戸惑いつつ…一体何が有った
のか?について質問をすると、そのエルフは涙を拭ってはアルスに敬礼を
しながら報告をし始める!…
「ッ~~!!……ハッ!…
我々斥候は門番達の話を聞いてその真偽を確認しに来たのですが…
その現場に来て見るとこの状態!…モンスター達が野営をしておりまして…
規模も先程倒された数!…とにかく二人では装備が心許無かったので!…
一度戻って対処をしようとして居た矢先!…後ろから奇襲を受けまして!…
二人揃って捕まった後この様な事に!…相方と離される様にテントの中で
拘束されて居た様なのですが……ッ~~~!!…
まさかこんな事になるなんて!!…」
泣くのを我慢するよう報告を始めると、エルフはここに来た理由に
見つけた時の状況と!…更に不意を突かれて捕まり!…仲間と離されて
気絶して居た事を続けて説明すると、徐々に恐怖が勝って来たのか!…
また涙ぐみながら後悔する様な言葉を口にする。その際まるで自分の
せいと言った様子で倒れている相方に目を向けると、俯いてはボロボロと
泣き出し!…アルスもさすがに鬼には成れない様子で!…慰めるよう
その泣きじゃくるエルフの肩に手を掛けると、最後に簡単な確認を取る。
「……現勢力はこれだけと見て良いのだな?……よし!…
ではすまないが一度ユグドラドに戻るとしよう!…この事を隊長に!…
こんな所で野営をする等!…何かが可笑しい!…」
__……ぉ~ぃ!…
「ッ!…何か聞こえる?……感知!!!…」
そのアルスの確認の言葉に対して泣きじゃくるエルフも頷いて返事をすると、
アルスは宥める様に一言声を掛け!…その後マサツグ達に町へ戻るよう再度
確認の声を掛け、リリーに報告を!と言った様子で焦りを見せると、何かが
可笑しいと続けて言葉を口にする!…まるで嫌な予感でも感じて居る様な
表情を見せると、その場で腕を組んで悩み出し!…そんなアルスの事など
御構い無しに!…何やら遠方より誰かの呼ぶ声が微かながら聞こえて来ると、
その声に反応したマサツグが感知を発動する。すると…
__ピィーン!!…ヴウン!!…
「……ッ!…友好モブ?…もしかして門番達が様子を見に来たとか?…」
「ッ!…何?…それは丁度良い!…この子達を保護して貰おう!…
……君、この事をちゃんと隊長に報告出来るか?…」
「ッ!…え?…あ、はい…」
マサツグの感知に反応が有ったのは青い丸のアイコン…つまり友好モブで、
様子を見に来たのか聞こえた声は門番達?…の物と理解すると、敵では無いと
マサツグが告げる。その際門番達かもしれないと付け添えると、悩む様子を
見せて居たアルスはハッとし!…丁度良いの言葉を口にすると、その門番達に
斥候のエルフ達の保護を任せようとする!…この時一人で勝手に物事決めると、
唯一その喋れるエルフに報告が出来るかを聞き!…その問い掛けに対して
エルフも戸惑いながらも返事をし…その返事を聞いた所でアルスが動き出すと、
マサツグの言う門番達を迎えに行く!…
「よし!…では保護して貰うよう私が彼らを呼んで来る!…
お前達はその子達の事を見ておいてくれ!…」
「ッ!?…え!?…ちょ、ちょっとぉ~!?…」
__タッタッタッタッタッ!!…
「……行っちゃったよ……何で勝手に話を進めるかね?…
別にこの子達を連れて一度戻っても良い筈なのに?…」
やはり女王様からの任務が最優先事項なのか、アルスは若干嬉々とした様子で
飛び出して行き!…その際マサツグ達に斥候のエルフ達の御守を任せ!…
一人岩場を越えて門番達を迎えに行くと、マサツグが慌てた様子でアルスを
呼び止めに掛かる!…だが一切効く耳を持たない様子でアルスはそのまま
岩場の陰に姿を消すと、一人行ってしまった事にマサツグはぼやき!…
その際不服とばかりに文句も漏らし!…それを聞いて斥候のエルフが若干
ショボンとした反応を見せると、レイヴンがマサツグに注意をする。
「…ッ……。」
「…ッ!…おいマサツグ?…
思って居てもあんまそういう事は言うな?…」
「ッ!…え?…あっ……」
「………。」
レイヴンがエルフ達の事を気遣う様に小声でマサツグに注意をすると、マサツグは
最初何の事か?と言った様子で反応するのだが…振り返って斥候のエルフ達の
光景を目にし…マサツグも理解した様子で言葉を漏らすと、慌てて自身の口を
抑える!…だが当然時既にお寿司!…斥候のエルフは何とも居た堪れない様子で
若干俯いては、奥歯を噛み締め!…自分達がもっとしっかりして居れば!…と
言った様子で握り拳を握って見せると、その場の空気は途轍もなく重い物に
なる!…こうしてアルスが門番達を迎えに行っている間!…マサツグ達も如何にも
居た堪れなくなり!…話し掛けようにも話題も無ければ掛ける言葉も見つからず…
ただ早く迎えに来るのをその場で待って居ては、その場は苦行と化す
のであった!…
因みにシロは今だ自身の目を隠しては見ない様に努めており、マサツグは
マサツグでそんなシロの事を忘れており…この後目隠しをしている理由に
ついてマサツグが不思議そうに質問をし、その質問を聞いたシロが一人
ショックを受けると、マサツグはシロから怒りのフェ〇スハガーを喰らう
羽目になるのであった!…
応援ありがとうございます!
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