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-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-

-第二章四十五節 没収された物と恍惚の笑みと奇妙な緊張-

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ノーマの案内で自身の装備を取りに行く道中…シロを抱えて王宮の通路を

歩いて居ると、その内装にマサツグはまるでアラビアンな所に来ている様な

気分を味わい始める。壁は吹き抜けになっていてそこから庭園の様子が

見えており、その庭園には南国の植物が青々と茂り…良く見るとバナナの

樹が植わっているのか、見覚えの有る木の実が成っている。そんなちょっと

した何処かのオアシスの様な風景に近い…ある意味幻想的な庭園の様子を

目にしつつ、マサツグがふと思い出した様に疑問を持ち出すと、先を歩いて

いるノーマに声を掛け出す。


__コッ…コッ…コッ…コッ…


「ッ!…そう言えば…ノーマは手伝わなくて良かったのか?…

女王陛下の付き人って事は…あの着替えも手伝わないと?…」


「ッ!…あぁ…その事でしたら問題はございません…

この案内は女王陛下のご命令でやって居る事ですので…

寧ろこっちを優先する様に伺っております。」


「ッ!…そ、そうなのか……」


マサツグがふと思った疑問と言うのはノーマの事であり、あの着替えの現場に

居なくて良いのか?と言うちょっとしたものであった。ノーマは女王陛下の

付き人の様なものでそう言う場面に立ち会わないと色々と不味いのでは?と

マサツグは考え…自分達の事は後でいいと気を使ったつもりでノーマに質問を

するのだが、ノーマはマサツグの方に振り返るなりクールに問題無いと答え、

この案内は女王陛下の命令と更に返事をする。その際やはり何処か感情が

掛けている様な表情を見せるノーマに、マサツグは若干戸惑いを隠し切れない

様子で返事をすると、黙ってノーマの後を歩き続ける。そして何とも気まずい

空気になりつつマサツグが如何したものか?と困惑して居ると、マサツグの

装備が用意されて有る部屋は意外と近かったのか…ノーマがスッとフィアナの

部屋から数m離れた扉の前で足を止めると、マサツグの居る方に振り返って

右手でその扉を指し示す。


__コッ…コッ……スッ…


「…こちらの来賓の方々用の部屋にご用意をさせて頂きました…

では、どうぞこちらに…」


「あ、あぁ…」


__ガチャッ!…キイイィィィ…


ノーマが指す扉は彫り物で豪華に装飾されており、パッと見だとまるで

埋め込み式の彫刻が有る様にしか見えない!…何でこんな物を扉に?…

とマサツグは思わず困惑するのだが、まぁ王宮なので何処も彼処も

そんな物か…と自身に言い聞かせていると、ノーマがその扉のドアノブに

手を掛ける。そして扉を開けてマサツグに中の様子を確認させると

そこには先程のフィアナの部屋に負けず劣らずの広さのスイートルームが

姿を現す。部屋の中央には大きな机が一つ設置されており、その机の上に

見覚えの有る装備品の数々が置かれて有った。


「ッ!…広ッ!!…え!?…何この無駄にだだっ広い部屋!?…」


「ッ!?…おぉ!!…追いかけっこが出来そうです!!」


「…さぁ、こちらに御座います…」


「え?…あ、あぁ…」


部屋の中を見るなりマサツグは自身の装備品より先にその部屋の広さに

戸惑い!…シロはシロでその部屋の中を見ては目を輝かせる!…

まるでここなら走り回っても大丈夫そうと言ったウズウズとした目で

見回し出すのだが、そんなマサツグとシロの前に出るようノーマが先に部屋へ

入ると、マサツグ達を部屋の中へと案内する。そうしてマサツグ達は

ノーマの案内でそのスイートルームに足を踏み入れるのだが、

如何にも落ち着かず!…マサツグはここから早く出たい!…シロは走り回りたい!…

と、二人揃って可笑しな衝動に駆られながら装備品の置かれて有る机の前に

移動すると、ノーマはマサツグに没収品の確認をするよう言う。


「…ではご確認をどうぞ……」


「え?…あ、あぁ…」


{…何か俺起きてから「あぁ…」しか言ってない様な?……

…とにかく落ち着かないからさっさと着替えよう!…}


__スッ……ッ!…


ノーマに確認するよう言われてマサツグはBOTの様に返事をするとシロを

一旦降ろし…自分でも同じ返事しかしていない事に気が付いて困惑を

覚えるのだが、それよりも居心地の悪さが勝ったのかすぐさま自身の

装備品を手に取ると、ふとある事に気が付く。それは自身の装備品が

綺麗に磨かれてある事…マサツグが手に取るまでの間、誰も触っていないと

言った様子で軽装等には指紋一つ付いて居らず、没収されたアイテム類も

種類ごとにきちんと並べられて一目瞭然に直ぐ確認出来るよう置かれて

有った。更には没収する際袋を破ってしまったのか粉末状のアイテムは

その袋が綺麗に交換され、マサツグの武器…大剣に至っては刃まで

研いでくれたのか鋭利に磨かれて有った。…但し刀は抜けなかった

模様…それでもパッと見ただけでも分かるそのきめ細やかな仕事ぶりに

マサツグは驚き!…思わず固まってしまうと恐る恐るノーマに声を掛け出す。


「……ノーマ…これって?…」


「…はい…

お返しする際に当たってマサツグ様の装備品を綺麗に磨かせて頂きました…

ポーション類に種類ごとに陳列…数等の方もご確認をお願いいたします…

…そしてその袋物の中身が零れそうになっていたり…漏れていたりと…

そのまま返却するに際しまして少々不便だった為…誠に勝手ながら袋を

入れ替える等をさせて頂きました…一応私の方でも分かる範囲で選別した

ので問題はないと思いますが、確認を…武器の方も完璧に…

マサツグ様の大剣は非常に頑丈に作られて有った為少々手古摺って

しまいましたが問題は無いかと……ただ申し訳ありませんがその独特の

形をした剣の方は…」


「うんにゃ!…十分過ぎるよ!!…ありがとう!!!

すっげぇ助かる!!…まさかここまでして貰えるとは思ってなかった!…」


マサツグの問い掛けに答えるようノーマは返事をすると、自分がやったと

正直に答え始める。その際目の前に置かれて有る物全てを如何やったのかと

簡単に説明し出すと、袋物アイテムの交換や武器を研いだ等…マサツグが

聞いて驚く様な事をやったと話してはマサツグを戸惑わせ!…その際刀が

抜けなかった事を話して研げなかったと申し訳なさそうに謝ろうとし

始める。そんなノーマにマサツグは心から感謝するよう大丈夫と言い聞かせると、

ただ目の前に置かれて有る整頓されたアイテムを見て目を輝かせ!…

何ならマサツグの着替えにシロの着替えと…選択してある事にも気が付いて

逆に申し訳ない気分になりつつ、まずは服を着替え始める。


__……ゴソゴソ!…バサァ!!…


「ッ!!…ッ~~~!…」


__ジィ~~~!……ッ!…


今の今まで囚人服だったものを勢い良く脱ぎ出すとマサツグはシロや

ノーマが見ている中、徐に着替え出す!…その様子にノーマは表情を

変えなくともポッ!と頬を染めてはそっぽを向き、シロはマサツグの

裸を見慣れて居るのか子供として当然とばかりに凝視をする!…

その際マサツグの戦闘不能をやはり引き摺って居るのか、体をマジマジ

見ては怪我が残っていないかを確認し、その視線にマサツグの気が

付いた様子で淡々と着替えて居ると、シロの事について考え始める。


{……そうだよな…普通目の前で親代わりだろうと何だろうと…

大事な人がボロボロになって帰って来たら誰でも心配するよな?…

ましてや死にそうだったし…何なら死んだし…

…今ならシロのあのクリティカルヘッドバッドも理解出来る…

…それが死因だが……とにかく色々と気を付けないといけないよな?…

ある意味で俺だけの体じゃ無いし……でないとまた窒息されかねんし…}


__ゴソゴソッ!…ギュッギュッ!…スッ…スッ…ジャキッ!…ジャキ!…


「…ふぅ!……これでいつも通り!」


マサツグはいつもの服に着替えつつ、シロの視線に気が付いて徐に考え出す…

昨日のヘッドバットに今朝のフェ〇スハガー…アレは全てシロの愛情表現であり、

心配しての行動と…全部自身が引き起こした結果として改めて自覚し、反省し

始めると昨日の様な無茶な行動について色々と考え出す。結果として上手くは

行ったもののもし失敗して居たらと…シロを残してしまうのか?…と思わず

考えて妙な不安を覚え!…ゲームのシステム上無いと分かって居つつもその妙な

不安にマサツグ自身驚くと、ただ何も言えずに思考をグルグルと駆け巡らせては

着替え続ける…そうして一通りいつもの様に着替えて軽装を装備し…アイテムを

ポーチごと回収すると、大剣に刀と装備し直す!…その際新たに手に入れた

夏海刀はインベントリの方に仕舞い!…いつでも大剣もしくは春風刀とスイッチ

出来る様にして準備を整える。そうして一息吐いて終わったと一言漏らし…

その言葉に反応するようシロが駆け寄ると、ノーマも視線をマサツグに戻す。


__ッ!…テッテッテッテッテ……クルッ…


「いつものご主人様なのです!」


「ご苦労様で御座います…」


着替え終えたマサツグにシロはいつもの様に足へしがみ付き出し、

元のマサツグに戻った事に喜ぶとマサツグに甘え始める。それに

合わせてノーマもマサツグに対しお疲れ様と声を掛けると会釈をし、

マサツグも振り返ってその様子を見てしまうと、思わず戸惑って

しまう!…ただ着替えただけでわざわざ会釈!…一般ご家庭では

まず体験しない光景に慣れないマサツグなのだが、ふと思い立った

様子である事を思い付くとノーマに声を掛け出す。


「…ッ!?…い、いやぁ~…本当に助かったよ!……ッ!…

そうだ!…何かお礼をしないと!…」


「ッ!…え?…」


「いやここまでしてくれたんだから何かお礼を…

何か欲しい物とかは無い?…もしくはして欲しい事とか?…」


「ッ!?…そ、その様な事!……

私はただメイドとして当然の事をしたまでですし!…

…それにこれは女王陛下のご命令…

延いては私なりの感謝の気持ちで!…」


マサツグは思い付いた様に笑顔でノーマを呼ぶと、お礼がしたい!と

言い出し…その言葉にノーマは驚いた反応を見せると、マサツグは

続けてノーマの要望を聞き出そうとする。そんなマサツグの言葉に

ノーマは慌てて辞退をしようと、両掌を前に突き出し左右振って

見せるのだが、何故かこの時ノーマは妙に頬を赤く染めてマサツグを

直視しないよう視線を逸らし…ただフィアナの命令で…助けて貰った

恩でと…必死に言い訳をするのだが、マサツグはそれは聞いたと

ばかりにノーマの両手を掴むと包む様に握り出し、改めてノーマの

要望を聞き出す!


__ガッ!!…ッ!?…


「それはそれ!…これはこれ!……恩義何か気にしなくて良い!…

アレは助けて貰って当然なんだから!…そんな事より何か無いのかい?…

おいちゃん…何でもするよ?…」


「ッ!!…ッ~~~~~!!……で、ですが…」


「だぁ~いじょうぶ言ってみ?…

トンデモナイ事でない限りは答えるから!…」


突如両手を握られた事でノーマは更に赤面!…オマケにマサツグに

詰め寄られるよう顔を近付けられては逃げるに逃げられず!…

もはややって居る事は無理やりナンパをしている様な状態になる!…

この時ノーマの体勢も逃げ腰の状態になって、マサツグの言葉に

困惑しては戸惑いの表情を見せて居るのだが、その目の奥には

何かと葛藤している様子も見えており!…その様子を見てマサツグも

我慢をせず曝け出す様にノーマを更に唆し始めると、ノーマは

その言葉をきっかけに目に涙を浮かべ出しては、恥ずかしそうに

マサツグへ話し掛け出す!…


「あ、あうぅ~!…………で、では……

は、はしたないと思わないで下さいね?…」


「うんうん!……え?…」


「わ…私の!…」


{ッ!?…え!?…ちょっと待って!?…

この子何をお願いする気!?…まさかアレェ~…的な事じゃないよな!?…

このゲーム全年齢対象!!…何なら小さなお子様連れなんだが!?…}


目を潤ませながら頬を染め!…マサツグの顔に自身の顔を近付け出すと、

何やら意味深な言葉を口にする!…その言葉にマサツグも笑顔で

頷いたが途端に気付いた様子で…戸惑いの表情を見せ出すと、ノーマは

言い難そうにマサツグへお願いをし始める!…この時まるで薄い本の様な!…

昼ドラの様な官能的な雰囲気が漂い出すとマサツグは途端に狼狽え!…

この時シロはと言うと何が起きているのか分かって居ない様子で、

ただマサツグの事を黙って見詰めており!…その肝心のマサツグはと

言うと何度も心の中で全年齢対象と慌てては、ノーマの言葉に緊張を

走らせて居た!そしてノーマが意を決した様子でいざ言おうと目を閉じ

意気込み出すと、マサツグは更に慌て出し!…一体如何したら!?…と

言った様子でノーマの事を顔を赤くしながら見詰めて居ると、まさかの

お願いが飛び出す!


__アワアワアワアワ!!……ッ!!…


「わ!…私の頭を!…頭を撫でて抱き締めて欲しいのです!!!…」


「うぇえええい!!!……って、え?…」


「…お恥ずかしい限りなのですが……

マサツグ様に救出して頂いた際の温もりが忘れられないのです!…

今だまだ私の体に残っている様な…」


「何でそんな如何わしい言い方をする!?

ただ抱っこしただけでしょ!?…」


マサツグが戸惑いに戸惑って居る中!…ノーマの口から出て来たのは

頭を撫でて抱き締めて欲しいと言うシンプルなお願い…

別に何も如何わしいモノは感じ無いのに一世一代の告白をしたと言った

様子でノーマは赤面し!…その告白を受けたマサツグもとにかくシロの

耳を押さえては聞かせない様にしようとするのだが、まさかのお願いに

拍子抜けと言った様子で番う戸惑いを感じ始めると、ただノーマを見詰める…

そんな中ノーマは頬を染めたままマサツグに抱き締められた事が

忘れられないと話し、その何か別の事が有ったかの様な言い方に

マサツグがツッコミを入れると、シロはその様子にキョトンとする。

突然マサツグが慌て出し耳を押さえに来た…これは何?…と首を

傾げてはマサツグを見詰め、マサツグも突っ込みを入れた所で溜息を

吐くと、ノーマのお願いを叶え始める。


「……はあぁ~…驚いた!…寿命が縮むかと思ったぞ……

えぇ~っと?…頭を撫でて抱き締めたら良いんだよな?…」


「…は、はい……お、お手柔らかに…」


「…んじゃ行きますよぉ~?…はい、ギュゥゥ…」


「ッ!?…ッ~~~~~~!!!!」


無駄に緊張はしたがマサツグは冷静さを取り戻すと、ノーマと向き合い…

再度お願いの内容を確認し出すと、ノーマは顔を赤くしながら返事を

して頷く!…そんなノーマの様子にマサツグは戸惑いっ放しなのだが、

お安い御用と言った様子でノーマを抱き締めると、ノーマはビクッと

反応しながらもマサツグに包まれる。その際尻尾はピーンの伸ばしたまま

ピタッと動かなくなると落ち着きを見せず、ただマサツグに頭を

撫でられては声にならない声を挙げている!しかしそんな様子もずっと

続く訳では無く…徐々にノーマも落ち着きを見せ始めるのだが、

それと比例するようノーマの様子にも異変が出て来る!…


__ぎゅううぅぅぅ…なでなで…なでなで……パタタタタタ…


「…ッ!…プッ!……どう?これで良い?…」


「………。」


「………ノーマさん?…」


ノーマの要望を叶える様にマサツグが抱き締め頭を撫でて居ると、

まず声が無くなり始める…ただ無言で抱き締められて、徐々にでは

あるがマサツグの体に腕を回し、ギュッと抱き締めるよう腕に

力を入れ出す。そして次にノーマの尻尾がシロになる!…これは

如何言う事か?と言うと単純に…頭を撫でられた時のシロの様に

風を起こさん勢いで尻尾がはためいて居ると言う事である。現に

シロクラスとまでは行かなくとも微風を起こしており、その興奮度は

目に見えて良く分かる!…そんな様子にマサツグもノーマの事を

シロみたいと感じると思わず笑ってしまい…ノーマに満たされたか

如何かと確認の声を掛け始めるのだが、返事はなく…そんなノーマの

様子にマサツグが異変を感じると、一度ノーマの顔を覗き込むよう

離れては再度声を掛けるのだが、そこに有ったのはあのクールな

表情では無く…蕩け切った表情のノーマがお目見えするのであった。


「クゥ~~ン♥…」


「ッ!?…」


「はあぁ~~~~♥……ッ!?!?!?…

も!…申し訳ありません!!!…何と言うかそのぉ!!……

あ…ありがとう…御座いました……」


「う、うん…」


ノーマはまるでキャラが崩壊した様にまさかの蕩けた表情を見せて居た

のだが、その表情を見てマサツグは驚き戸惑い!…思わず手を止めると、

ノーマは少ししてから矢庭にハッ!とした反応を見せて、元のクールな

表情に戻る!…そして慌てた様に取り繕うとマサツグに頭を下げて

謝り出し、そのノーマの変わり様にマサツグは付いて行けず!…

戸惑いっ放しになって居ると、とにかくノーマに返事をして

ノーマの事を見詰めて居た。その際その様子を傍から見ていたシロは

ヤキモチは焼かなくとも何か感じたのか、マサツグの脚に抱き付いては

攀じ登り出し、マサツグの頭まで到達すると無言で頭にしがみ付く。


__……ガッ!!…よじよじよじよじ……ムフ~!…


「……えぇ~っと…シロさん?…」


「本当に!…本当に申し訳ありませんでした!!…」


「ッ!…あぁ!!…い、いやいや!…だ、大丈夫大丈夫!…

言い出しっぺは俺だから!!…」


シロはマサツグの頭にしがみ付き…ノーマはマサツグの目の前で

平謝りする!…そんな様子にマサツグは慌てて大丈夫!と返事をして

ノーマを宥めつつ…シロの様子にも気を掛けるのだが、シロはただ

無言で頭にしがみ付く。一体全体如何してこうなった?…と言いたい

所なのだが、言った所でマサツグに分かる筈も無く…スイートルーム

にて奇妙な雰囲気になり始めて居たら、別のメイドさんが扉を

ノックして有る事を伝え始める。


__コンコンッ!…ビクゥ!!!…


「……女王陛下様より伝言が御座います…

着替えを終えましたら会議室に来て欲しいとの事です…」


扉からノックの音が聞こえて来るとノーマはビクッと機敏に反応し、

顔を赤くする!…それは恥ずかしがる様にも見えるのだが、何方かと

言うと驚きの方が勝っており!…尻尾をピーンと逆立てて爪先立ちしすると、

その場でへたり込むよう徐々に崩れ出す。

しかしそんな事など知らない扉の向こうのメイドさんはフィアナからの

伝言が有ると言うと、扉越しに話し出し…その際ノーマは自身の心音を

抑える様に胸に手を当てては呼吸を荒げ!…扉の向こうに居るメイドさんに

対して真面に返事が出来る様な状態で無い、と、マサツグが察した様子で

代わりに慌てて返事をする。


「ッ!…は、はぁ~い!…分かりましたぁ~!」


「では……」


__コッ…コッ…コッ…コッ…


「……大丈夫?…」


マサツグが若干緊張した様子でノーマの代わりに返事をすると、扉の

向こうのメイドさんはそれで納得したのか…マサツグに返事をすると

自身の業務に戻って行き、その足音も遠くへと徐々に遠ざかって行く。

そんな徐々に遠ざかる足音にマサツグも何故かホッとした様子で胸を

撫で下ろすと、徐にチラッとノーマの方を振り向いては大丈夫か?と

尋ね、そのマサツグの問い掛けにノーマも徐々に落ち着きを取り戻す

のだが…今だ顔を赤くしてはマサツグの顔を見て返事をする。


「…は、はい…大丈夫…です…」


{…明らかに大丈夫そうに見えないんだよなぁ~?……

てか、俺はただノーマを軽く抱きしめて頭を撫でただけの筈!…

何でこんなに動揺せねばならんのだ!?…何も如何わしくは無い筈!…}


たどたどしくやはり気まずそうに…ノーマがマサツグに返事をすると

その様子にマサツグは戸惑い!…改めてこうなった経緯について

疑問を持つが、自分は何も如何わしい事はしていないと心の中で

言い聞かせ始める。今日ログインしてからラッキー?…ハプニング

だらけと巡り合わせに戸惑い…とにかくフィアナが呼んでいると

言った様子でノーマに手を貸し立たせると、今度は会議室までの

案内を頼む。


「…と、とにかく立てるか?…何か呼ばれてるみたいだし…」


「ッ!…は、はい…申し訳ありません……

では、こちらに…」


__ガチャッ!…コッ…コッ…


何処か足取りが怪しく見えるノーマにマサツグは不安を覚えつつ…自身の

装備が置かれて有ったスイートルームを後にすると、また王宮の通路に

出て来る。その間シロはマサツグに肩車されるよう頭にしがみ付いて

今まで離れていた分の時間を取り戻す様に甘え…マサツグは久々に

シロを肩車する事でその重さを両肩に感じて久しぶりの重量感に思わず

戸惑う!…今日一日で何回戸惑って居るんだ?…と自身でも感じて

疑問に思うのだが、その際ノーマは意識を切り替えるようマサツグに

ある事を話すと、マサツグを会議室へと案内していた。


__コッ…コッ…コッ…コッ…


「…そう言えば…聞いた話では現在…」


「ッ!…え?…」


「衛兵達が本格的にあの下種野郎の屋敷を家宅捜査し始めたそうで……

マサツグ様達が眠っている間にあの証言通りに地下室を発見したとか…

私の他に捕まって居た者も奥から救助され…無事家族の元に帰れたと

被害者の方から感謝の言葉が届いているみたいです…

…但しやはり無傷ではありませんが…」


突如ノーマが話を振り出した事にマサツグは若干驚くが、その内容を

聞いた瞬間マサツグはハッ!とした反応を見せると、黙ってノーマの

話を聞く。その内容と言うのはマサツグがドラゴンと戦っている間…

眠っている間にもあの屋敷に家宅捜査が入ったと言う話であり、

あの時は深くまで調べてはいなかったので分からなかったが、

行方不明者が見つかった!…生存者が助かったと言う内容の話であり、

その被害者達から感謝の言葉が届いていると…ノーマがマサツグに

話すと、その話を聞いてマサツグも良かった!と安堵するのだが、

やはり無傷と言う訳には行かず!…最後のノーマの言葉にマサツグは

何とも微妙にやり切れない様な気分になりながらもノーマに返事をする。

同時にふとある疑問がマサツグの中に浮かび出し、徐にその事について

尋ね出す。


「……だろうな………ッ!…

そう言えばゲスデウスは?…まだ捕まって無いのかい?…

さすがに一国の宰相でもこの国で身を隠し続けるのは難しいだろうし…

ホエールビアードに逃げたとしても逆にギルドに捕まりそうな気もするが?…」


「……それに付きましては…現在不明…

と言うよりもとなっている様でして…」


「ッ!…行方不明?…」


「はい…女王陛下もまだこの国に潜伏しているかもしれないと考えられ…

真っ先に全ての家屋を調べる様に指示したのですが…

その全てに痕跡は見られず…物置に家畜小屋…獣舎と調べたのですが

毛の一本も出て来なかったと…恐らくは外に逃げて今も何か企んでいる

可能性が高いかと…恐らくその事で冒険者様で在らせられるマサツグ様に

意見を聞きたく会議室に来るよう…ご命令をされたのではないかと…」


「…なるほど……」


マサツグが思った疑問と言うのはやはりゲスデウスの存在なのだが、

その事をノーマに尋ねた途端…ノーマはグッと奥歯を噛み締める様に!…

まるで苦虫を噛み潰した様な表情を見せてはマサツグの質問に答える。

何でもゲスデウスは現在消息不明!…その言葉を聞いて

マサツグは若干驚いた表情を見せるとそのノーマの言葉を復唱する様に

尋ね、その言葉にノーマも何処に居るのか分かっていない様子で…

ただその事にフィアナも怒って居るとばかりに話し出し、更に何か

まだ企んでいる可能性が高い事をマサツグに説明すると、その一連の

話を聞いてマサツグも小さく嫌な予感を感じ始める。まだ事件は

終わっていない!…その事は分かって居るのだが…如何にも

モヤモヤとした違和感が残ると、ノーマの後ろを歩きながらマサツグは

一人悩み出す。


__コッ…コッ…コッ…コッ…


{……まぁ確かに逃げてるって意味で消息不明って言うんなら

分かるんだが?…本当にそれだけなんだろうか?…

今までのゲスデウスの話を聞く限りそいつはかなり弁が立つ…

何なら誰かの陰謀とか言ってその罪を他の誰かに

擦り付けられそうな気もするんだが?…それに逃げるにしても

隠れる場所まで用意してるとか…何か用意周到過ぎる様な気もする!…

まるでバレる事も予期していた様な動きだ!…そんな用心深い奴が

自分の屋敷にあんな計画書を置いて置くか?…普通?…

……何か?……何か別に違う奴の存在が有る様な気がするんだよなぁ?…

ゲスデウスは恐らく口だけで伸し上がって来た奴だと俺は思うんだが?…}


ただ会議室に向かう道すがら…ノーマの話から嫌な予感も感じるのだが

同時に奇妙な違和感も覚え!…その事について考え出すと改めて

ゲスデウスの性格を考慮に、その違和感について考える。自分自身でも

苦手な事をやって居ると言う自覚は有るのだが、嘆いている暇は無いと!…

まるで探偵の様で唸りながら悩んではゲスデウスの後ろに誰かが

居る様な気がし…その後ろに居るのは誰か?と…今までに確認して来た事を

踏まえて長考するのだが、ノーマが時間切れと言う様に目的地に着いたと

言うと、足を止める。


__コッ…コッ…コッ…コッ……ピタッ


「……マサツグ様?到着いたしました…

こちらが会議室で御座います…どうぞこちらに…

女王陛下がお待ちです…」


「ッ!?…うぇ!?…あっ…あぁ…ごめん…助かったよ……ッ!?…」


ノーマは会議室の扉に手を掛けてマサツグを中へ案内しようとするのだが、

マサツグはそのまま真っ直ぐ進んでノーマにぶつかりそうになる。

しかし土壇場で気が付いて何とか踏み止まり、慌ててノーマに

謝りつつ会議室の中へと足を踏み入れると、円卓状の巨大なテーブルが

設置されて有る光景を目にする。そしてそのテーブルの一番奥の

中央にはフィアナが座って居り、若干膨れた様子でマサツグをジィ~…っと

見詰めて、遅い!…と文句を言わんばかりに目で訴えて居た!…


__ジィ~~~~!!……


「え?…えぇ~?…女王陛下?…」


「…とにかく何処でも良い座ってくれ……」


「ッ!…何故に不機嫌!…てか凝視されても困るのだが?…

……シロは隣に座っててくれなぁ?」


「はいです!」


フィアナの様子にマサツグは何故睨む?…と言った具合に戸惑うのだが、

いざフィアナに話し掛けるとフィアナも睨んで居ても仕方が無いと

感じたのか…とにかくマサツグを近くの席に座らせようと声を掛ける。

そんな明らかに八つ当たりをして来ているフィアナの様子にマサツグは

理不尽!と感じつつも、空いている席に座り…更にシロを肩から

降ろすと隣に座らせ、会議に参加する用意を整えると、フィアナは早速

報告会及びゲスデウスに対する対策会議を始めるのであった。

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