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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章八十五節 膝枕と卵と子狼-

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バルデウスを辛くも撃退し…マサツグ達はつかの間の休息に浸って居ると

ゲーム内時刻は既に夕方なのか日が沈み始めていた…あの黒い巨大な竜巻に

分厚い暗雲…それらもいつの間にか何処かに消えてオレンジ色に染まる

空が見えており、平穏を取り戻した中マサツグはあのゲイルジャッジメントを

斬った反動で動けなくなってスタン時間30分と言う…類を見ない重度の

デバフ負荷に倒れていた。そんなマサツグの様子にモツが戸惑いながらも

治療を施し、初めて見る症状にこんな事が有るのかと衝撃を受けて居ると、

またもやリーナが何か誤解した様子でマサツグに駆け寄り声を掛ける!…


「マサツグ!!…大丈夫か!?…死ぬんじゃない!!…

こんなところで死んだら私は!!…絶対に許さないからな!?…」


「勝手に殺すんじゃねぇ!……

…まぁ、あの風の塊を相手にしていた時は実際はお花畑が見え隠れしていたけど…

何とか生きてるよ…」


「…はあぁ~……とりあえずこれで良いかな?…

まだ応急処置だから何とも言えないけど…

…てか幾らゲームの中とは言え無茶しすぎだっての!!…

お陰でこっちまで冷や汗掻いて…ホントマジで心配したぞ!?…」


「いやぁ~…スマン!…」


地面に横になるマサツグの手を握っては死ぬな!と涙ながらに訴え、そのリーナの

言葉にマサツグが生きてる!とツッコミを入れると、あの空気の圧縮弾と対峙して

いた時の事を軽く語る。あの時風神演武が無ければヤバかった!…まるで天国が

見えていたと言わんばかりの言葉にモツが溜息を吐くと、自身が出来る治療を

完了させたのか…モツが呆れた様子でマサツグの言葉にツッコミを入れては自身の

本音を口にする。ゲームの中とは言え友人が死にそうになった所を見るのは

気が悪い!…そんな風に聞こえる言葉にマサツグが苦笑いしながらモツに

謝罪して居ると、治療が終わったとばかりにリーナがマサツグを抱き抱えると

リーナのやわっこい物が顔に当たり…そんな事など気にしていないとばかりに

リーナはまだ目に涙を溜めた様子で説教をし始める!…


「…このッ!!……大馬鹿者!!!!…

貴様!!!…あれ程私に無茶をするなと言いながら!!…

自分が無茶をして!!……ッ!!…心配したのだぞ!!…」


「ッ!……」


リーナはマサツグに言われた事をそっくりそのまま返す様に怒りながら

説教し出し、涙を流しながらマサツグの顔を覗き込み大粒の涙を

ポツリポツリと頬に零すと、生きて居る事に漸く安堵したのかマサツグに

優しく微笑み掛ける…その表情を見てマサツグが思わずドキッとすると

思わず視線を逸らしそうになるのだが、マサツグの中で何かが違う!と

言った感情が芽生えると、リーナに対していつもの様に意地悪をし始める!…


「ッ!……ッ!!…おいおい!…リーナさん?…

いつに無く[しおらしい]じゃあないですか?…

一体どんな心境の変わりよう…」


「ッ!!!…この!!!…馬鹿ッ!!!…」


__ドゴスッ!!!…


「ガッハッ!!……」


マサツグが自身の感情を誤魔化すようリーナの様子を茶化し始めてはその言葉に

リーナがショックを受け、直ぐに涙が止まった様子でマサツグに目を見開くと

怒りを沸々と滲ませる!…自分はマサツグの事を心配して居るのに!…

そんな表情を見せては顔を真っ赤にして拳を握ると動けないマサツグの腹部

目掛けて右ストレートを繰り出す!…当然ガードも何も出来ない…何なら体を

動かす事が出来ないマサツグは諸にその拳を受けて悶絶し、モツがその様子を

見るなり慌てて立ち上るとリーナの方へと駆け出して行き、羽交い絞めにして

止めに入る!…


__ッ!?…バッ!!…ガシッ!!…


「ちょちょちょ!!!…お…お…落ち着けリーナ!!…

ヤブが!…ヤブが本当に乙ってしまう!!!」


「は!…離せモツ!!!…

貴様と言う奴はぁ!…貴様と言う奴はぁぁ!!…貴様と言う奴はあぁぁ!!!…」


モツがリーナを羽交い絞めにして止めに入るも、もはやいつも通り…

マサツグはその場で悶絶し…モツは慌てて止めに入り…リーナは怒り足りないと

言った様子で暴れては収拾が付かなくなる!…その際リーナは羽交い絞めに

されても尚マサツグを殴ろうと文句を言いながら腕を振り回し、リーナの

暴れっぷりにモツが相変わらず戸惑いを覚えて居ると、バルデウスとの戦いで

忘れられていた者がまだ…地べたを這いずってはジリジリとマサツグ達に

近寄って来ていた!…


__ズリ…ズリ…ズリ…ズリ…


「ぜぇ!…ぜぇ!…あ…有り得ない!!…

魔王様と戦って勝利するなど…あの方はこの世で最強で!!……

…有り得ない!!!有ってはならない!!……

今の貴様ならこの状態の私でも!!……」


這いずって来て居たのはバルデウスに真っ二つに両断されたデュへインの姿…

無い腕を使って前進してはバルデウスが負けた事を有り得ないと嘆き…

今のマサツグの状態なら倒せると踏んでは息を切らしながらもジリジリと

にじり寄って来ていた!…恐らくはバレない様にとでも思っていたのだろうが、

アレだけぶつくさ言われれば当然マサツグ達は気付き…這い寄って来る

デュへインの姿を見つけるなり黒光りするGを思い浮かべてはそのしぶとさに

驚き呆れた声を漏らす。


「ッ!…うわあぁ…まだ生きてたのかよ…」


「ッ!…モツ!…」


__パッ!…ダッ!!…ガッ!!…


「ハアァ!!!」


__ザクッ!!…ッ!?…


リーナがハッ!と我に返った様子でモツに声を掛けてはモツがその声に反応して

羽交い絞めを解き、リーナが自身の折れた剣を取りにマサツグの元まで走り出し、

パッと手に取って見せると這いずるデュへイン目掛けて剣を投擲する!…

折れた剣は真っ直ぐデュへインに向かって飛んで行くとデュへインの左肩に

突き刺さり、その投擲でデュへインが怯み動けずに居るとリーナはマサツグへの

怒りも忘れた様子で、マサツグの前に立っては守るよう仁王立ちする!…


__ダァン!!!…ッ!?…


「…それ以上近付くとあの世に行っても後悔する位の事になるぞ?…」


「グッ!!…」


__チャキッ!!…スラァ……タッ…タッ…タッ…タッ……


地面を踏み鳴らしデュへインを見下すリーナは脅す様に言葉を掛け、そんな様子に

デュへインが戸惑い悔しさを表情に出しながら動けずに居ると、モツが静かに

剣を鞘から抜き始める!…勿論目的はデュへインに止めを刺す為!…この時モツは

デュへインに対し冷徹な視線を向けて頭の中である事を思い出し、デュへインの

前に立つと剣を突き付けてはフッと笑って見せる!…その思い出した内容と

言うのはこの戦争が始まってまだ間もない…マサツグからライモンドの伝言の聞く

その時まで遡る!…


__討伐レイドバトル開始直後…ギルドに向かう道中…


「うおおぉぉ!!…本当に辛い風だな!!…」


「ッ!!…なぁ!!モツさん!?…

このタイミングで何だが話しておきたい事が有る!!!」


「え!?…何!?…」


「ライモンドからの伝言!!!……実は!!…」


「ッ!!………」


マサツグ達が王城から出て討伐レイドバトルの説明を聞く為にギルドへ向かう道中…

それはマサツグの口から突如話し出される。何を思って今話そうと考えたのか?…

風に煽られながらもマサツグが突如モツを呼び出し、話したい事が有ると

叫びながらに話し出すと、その言葉にモツは戸惑う!…別にギルドに着いて

からでも問題無い筈じゃ?…そんな疑問を覚えつつ戸惑いながらもマサツグの話に

耳を傾けると、その話の内容はまさかのライモンド達の最後の伝言であり!…その内容を

聞いたモツはただ戸惑うばかりであった!…


__そして今現在…


「貴様ら……ッ!!!…貴様達さえ……ッ!!…貴様達さえ居なければ!!!

魔王様はこの世界を破壊し尽くし、我々が支配する完全な世界楽園

出来上がると言うのに!!!!……

貴様達が魔王様を倒さナケレバアアアアアアアアア!!!!…」


「……実はさぁ?…お前に伝言が有るんだ…

ライモンドとエイブレントからの…」


「ッ!?…なにぃ!?…」


「…{あの世でお前を待ってる}だとよ?……」


「ッ!?…え?…」


剣を突き付けて来るモツに文句を言うようデュへインが叫んで見せるが、

モツはただゴミを見る様な冷徹な視線でデュへインを見下し…一通り

叫び終えたところで例の伝言について話し出すと、デュへインは

その伝言に戸惑いを覚える!…そんな反応を見せるデュへインに対し

モツは変わらず…ただライモンド達が{あの世でお前を待ってる}と

伝えて来た旨をデュへインに話し、そのさも聞いた様な伝言にリーナが

驚き戸惑って居ると、モツは突き付けていた剣で音も無くデュへインの

頭を貫き、更にその首を斬り落として見せる!…キッチリ止めを刺すよう

確実性を持たせる為にやって見せると、モツは徐にマサツグの方に

振り返っては確認の言葉を掛け始める。


「……ふぅ…これで良いんだろ?…ヤブさんよ?…」


「…あぁ…そこそこ掛かっちまったけど……

後は向こうであの二人がボコボコにするでしょ?…」


「ッ!…あははは!…かもな?」


「え?…えぇ??…

さっきのは一体?…それにライモンドとエイブレントの伝言とは!?…」


モツが一息吐いてマサツグの代わりに伝言を伝えたと言った様子で確認の

言葉を掛け、その言葉にマサツグが安堵した表情で返事をして後の展開に

ついてモツに話し出すと、容易に想像出来たのかモツが笑いながら答える。

そんな二人のやり取りにリーナが疑問を抱えた表情を見せて如何言う事かと

二人に確認するよう尋ね出し、更にライモンドとエイブレントの名前が

出て来た事に興奮を覚えると、そのリーナの様子に二人は戸惑う!…如何やら

リーナはあの二人のファンらしく…度々マサツグとモツの間で二人の名前が

出て来ると興味を持った様子で詰め寄り、そんなリーナの様子に二人が

驚き戸惑っているとはぐらかしては難を逃れようとする!…単純に答えるのが

面倒臭い…そんな気持ちで一杯になりつつリーナの質問にのらりくらりと

避けて見せて居ると、デュへインが倒された事により真の意味で討伐レイドバトル…

騎士達の願いを叶え更にカルト教団の騒動にピリオドを打ったとマサツグ達

冒険者プレイヤーに通知が来るのであった!…


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                         Congratulations!!

        只今討伐レイドバトルの指定ボス…教祖・デュへインが討伐された事を

      確認いたしました!

      これにて討伐レイドバトルは終了し…参加者及びMVPの方には景品が

      送られますのでギルドの受け取りカウンターの方へと

      ご移動を願います!


      長い戦い…イベントに参加頂きました事を運営一同、心より感謝し…

      今後も「アルバスクロニクル」をお楽しみ頂けますよう精進して

      行きますので、どうぞ存分に楽しんで下さいませ!!


     運営一同より
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……終わった!…終わった訳なのだがさて、ここからが問題である!…

何とか腕は動かせるまでに回復するも今だマサツグは動くに動けず…

帰る手段も道も分からない状態に陥っていた!…リーナもここは見た事が無いと

言った様子で困惑し、マサツグは体が動かないので戦闘どころか逃げる事も

出来ない!…結果として遭難した様なモノなのだがとにかくマサツグの回復を

待とうと3人が意見を一致させると、ここでモツがふと思いついた様子でリーナに

耳打ちをし始める!…その時のモツの表情はとても悪い表情をしており、

何度もマサツグの事をチラ見しては悪い笑みを浮かべていた!…そしてリーナも

モツの言葉を疑う事無くスッと聞き入れると信じた様子でモツの言った事を

やり出し、マサツグが抵抗出来ないままにやられっぱなしで戸惑って居ると、

マサツグはモツに質問をし始めていた…


「……あの~…」


「んん~?…何だ?…如何したんだ?…」


「いや、如何したもこうしたも…一体これは?…

なしてこうなった?…」


「…ッ?…何をって?…

モツが言うにはこれが一番回復出来る方法と言っていたが?…」


マサツグはモツに問い掛けたつもりだったのだが何故かリーナが反応すると、

マサツグの頭を優しく撫でては質問を聞くようマサツグの言葉に耳を傾け、

リーナが反応した事にマサツグが戸惑うもとにかく如何してこうなった?と

言った様子で質問をすると、リーナは正直にモツの差し金と白状する。

この時マサツグは何故かリーナに膝枕をされて困惑しており、リーナは

やはりモツの言葉を疑う事無く信じ切った様子で、自身の膝にマサツグの頭を

置いては何故か気分が高揚し頬を赤く染めた表情でマサツグを見下ろして居た。

突如膝枕をし始めたリーナの行動にマサツグは完全に動揺し、デュヘインに

バルデウスと辛い戦いが続き、リーナなりに労ってくれているのだろうと

考えるとありがたいと言った気持ちにはなるのだが…マサツグを混乱させる

には十分であった。そんなリーナの様子にマサツグは如何しようも無く…

ただ逃げる様に視線を逸らすとその先には肩を震わせながら蹲っている

モツの姿が有り…それを見たマサツグがリーナの言葉を思い出して声を掛けると、

あからさまな反応が返って来る!…


「……モツさん?…」


「ッ!…何でしょうか?…マサツグさん?……www」


「……なあ、これ何とかならねぇ?」


マサツグがモツに話し掛けるとモツは肩を震わせながら返事をし、その際声も

完全に笑って居ると言った様子で誤魔化そうとするも、やはりマサツグの様子が

おかしいのか隠し切れず駄々洩れる…完全に笑うのを我慢しているのが容易に…

見るまでも無いモツの様子にマサツグが何とも言えない感情になるのだが、

それでもモツにこの状況を如何にか出来ないのかを尋ねると、モツは羨ましいと

ばかりにマサツグへ返事をしてはやはりカタカタと震えながら影で笑って

マサツグを煽る!…


「……いいじゃないか…www…

折角の一国のお姫様に膝枕をして貰っているんだぞ?…

もう少し堪能しておけよ……ブフッ!!!…クククッ!!…

あそこまで照れるとは……クククッ…ッ!!…リア充乙!…www」


__なでなで…なでなで…


「ッ!?…この!?…」


この時…リーナは依然満足げにマサツグの頭を膝枕しては照れて恥ずかしがる

のが面白いとばかりに膝枕を止める気配を見せない。しかしそんなリーナの

様子よりモツの反応にマサツグが文句を言おうとし、体を無理に動かそうとする

のだがそれを良しとしない様子でリーナがムッとすると、マサツグを引き留めて

膝枕を続行する!…


「ッ!…あっ!…コラ!動くな!!…安静にしてろ!…

モツがこうした方が回復が早くなると言っているのだ!!…

ジッとしてろ?…」


__なでなで…なでなで……ブフッ!!!…


「ッ!?…くそぉ~!……後で覚えてろよ!…」


思う様に動けない事を良い事に!…完全に玩具にされてしまっている

マサツグはリーナに文句を言われて引き留められ、また膝の上に

頭を戻されるとリーナがご機嫌でマサツグの頭を撫で始める!…

その何とも言えない…と言うよりは何も言えない状態にマサツグが戸惑うと

抵抗出来ないままリーナに玩具にされ続け、その様子にモツがブフッ!…と

噴出し笑うと、マサツグが静かにモツの事を恨み出す!…しかし恨んだ所で

如何にかなる訳も無く…ただ時間だけが無駄に過ぎて行くと次第に暇を感じ出し…

マサツグが暇を持て余した所で辺りを可能な限り見渡し始めるとある物を

見つける!…


「…ッ……ん?…」


改めて辺りを見渡す際…その散々たる状態にマサツグは驚く!…廃墟の壁は

匠もビックリな程に開放感しか残って居らず、祭壇近くのステンドグラスは

粉々に割れ…配置されていた長ベンチや椅子は只の木片になり、爆心地から

外側に向けて吹き飛ばされてはおが屑の様に溜まっていた…そんな廃墟の

様子の中…マサツグの視線の先に有ったのは教会の廃墟に不釣合いな…

辛うじて残った柱の陰に隠れるよう転がって居る卵であり、その卵の大きさは

見ただけでもかなり大きい!…約50cm位はあるだろうか?…PGのガン〇ラが

スッポリ収まりそうな…そんな大きな卵を見つけてはマサツグが今まで

何処に隠れていた?と疑問を感じるのだが、その卵は心成しか小刻みに

揺れている様な気がする!…


__モゾッ…モゾモゾッ…


「え?…モ!…モモモモツさん!?…

ちょ!…ちょっと!?…」


「いや…悪かったって…ッ!!…

ちょっとした出来心で!!……」


「いや、そうじゃなくて!!!…あれ!!!」


「へ?…」


揺れ動く卵にマサツグが戸惑うと先程の事も忘れた様子でモツを呼び出し、

その呼び掛けにモツが誤解した様子で謝り出すと、マサツグは違う!と

慌てた様子で言っては卵の方を指差しモツにその存在を教える!…

そのマサツグの指摘にモツが卵の方を振り返るとやはり揺れ動いているのか

その揺れは徐々に大きくなり出し、今にも生れ出て来そうな雰囲気にモツが

驚いた様子で一度自身の目を擦り…再度卵が有る事を確認し直すと、

恐る恐る近付いては警戒した様子で卵を確認し始める!…リーナも心配した

表情でそのモツの様子を見詰めるのだがマサツグの頭だけは今だ膝に

乗せており…そんな様子など知らないモツが卵の前に立つとその詳細を

調べ始める!…


「……え?…何これ?…こんなのあったっけ?…

てか何処に?…それも動いてるし!…

これで生まれて来るのがエ〇リアンとか無いよな!?…

と…とりあえず…鑑定してみよう……鑑定アプレェィザァル!…」


__ピピピ!…ヴウン!…


  -----------------------------------------------------------------------

              「モンスターエッグ」

                レア度 ?

        ランダムでペットモンスターが生まれて来る卵。

        何のモンスターが出て来るかは卵を孵化させるまで

        分からない。


                売却不可

  -----------------------------------------------------------------------


「…モ…モンスター…エッグ?…」


恐る恐るモツが卵を鑑定し始める中!…卵がたまに大きくグラッと揺れては

マサツグとモツを驚かせ、これでもしエ○リアンのフェイス○ガーみたいなのが

出て来たら如何しようと悩んでいると、その鑑定結果は直ぐに表示される。

モンスターエッグにペットモンスター…初めて聞く単語にモツが戸惑い、

マサツグがそのモツの言葉に同じ様に戸惑って居ると、リーナが改めて卵の

存在に気付いた様子で話し出す!


「ッ!…あぁ!…何を警戒していたのかと思えば…その卵か!…

それならあの教祖と戦う前からそこに有ったぞ?…」


「ッ!?…」×2


「…にしてもあんな激しい戦いが有ったと言うのに無傷とは!……

きっとのだろうな!!…その卵は!…」


「ッ!!……」


リーナは二人が何に対して警戒していたのかが分かって居なかった様子で

心配しており、その原因が卵であると分かった途端…安堵の表情を見せる。

そして二人の疑問に答えるよう廃墟に入った時から有ったと二人に答え、

その言葉にマサツグとモツが思わず…

{リーナ!!…お前知っとったんケェ!?}とツッコみたくなるのだが

口が思う様に動かず…ただリーナの言葉に驚いて居ると、リーナは卵が

無事である事に驚いて幸運の一言で片づけてしまう。一番気が付いて

いなさそうなリーナが気付いていた事にマサツグ達が驚き、リーナの一言に

マサツグが呆気に取られるのだが、有る言葉が気になると途端に嫌な予感を

感じ始める!…


{…いや運が良かったって!……運の良い?……何故だ?…

何故この言葉を聞いた途端に嫌な予感を感じるんだ!?…

そんな気がするのは俺だけか!?……}


__ピシッ!…ピシピシッ!!…


「ッ!?……お…おいおい!

なんか生まれるぞ!!」


「ッ!?…だああぁぁぁ!!!…何でこうなる!!…

ペットモンスターって聞いたけど手の付けられないのは勘弁だぞ!?」


マサツグが「幸運」と言う言葉に嫌な予感を感じて卵の様子を気に掛けて

居ると、嫌な予感は的中したのか独りでに激しく揺れ動き出して卵に

ヒビが入り始める!…明らかに何かが生まれて来そうな様子にモツが

戸惑い出し、マサツグは予感が的中した事に嘆きつつ既に諦めた様子で

普通のモンスターを望み始める!…そんな慌てる二人を余所にリーナは

状況を理解出来ていないのか、ただマサツグを膝枕して落ち着いた様子を

見せており、遂に卵のてっぺん部分がまるでサ〇エさんのオープニング

宜しく上下にパカっと割れて見せると、その卵の中からヒョコっと

モンスターが姿を現す!…


__ピシッ!!…ピシピシピシピシッ!!!…パカッ!!…カランッ…


「……え?…ポメ…ラニアン?…」


__…ヘッヘッヘッヘッヘッヘッヘ!……


「………え?…」


卵の中から出て来たのはポメラニアンに似た長毛種の真っ白な狼の子供…

パッと見では完全に成犬になったポメラニアンの様に見え、良く見ると

顔は狼らしく凛々しい顔をしているのだが、やはり何処か子供で豆柴の

顔の様にも見える。日に当たるとその体毛はキラキラと綺麗な輝きを放ち、

明らかに普通じゃない雰囲気を感じ取らせて、見事なまでにモフモフであった。

普通に可愛いワンちゃんがいる様にしか見えない二人はただ戸惑った様子で

その子狼を見詰め、生まれた瞬間その子狼は倒れるマサツグをジッと見詰めては

舌を出して呼吸を整え出し、二人が困惑し戸惑いの言葉を漏らして居ると何故か

立場が逆になった様子で今度はリーナが戸惑い始める!…


「ッ!?…な、何故ここにコレが!?…」


「ッ!?…リ、リーナ?…」


「そ、そいつは[ストームウルフ]だ!!…

気を付けろ!?…刺激を与えるな!?…」


リーナはその子狼を見るなり青褪めた表情を見せると、ここに子狼が居るのは

有り得ない!と言った様子で困惑し出し!…そのリーナの様子を見てマサツグが

リーナに声を掛けると、リーナはその子狼の種族名らしき言葉を口にする!…

そしてモツやマサツグに注意するよう声を掛けてはリーナが一人緊張し出し、

その様子にマサツグとモツが色々と困惑し始めて居ると、リーナに確認するよう

言葉を掛け始める!…


「…え?…えぇ~っと…リーナさん?…

その…ストームウルフ…だっけか?…何なのそれ?…」


「ッ!?…マサツグ本気で言っているのか!?…

ストームウルフの別名はフェンリルの幼体!!…

奴らが本気で暴れたら都市一つが簡単に滅ぶとされている危険生物だ!!!…」


「……はああぁ~……やっぱりそう言うのが来たかぁ………」


__………チョイチョイッ!…


マサツグの質問にリーナは常識だろ!?…と言わんばかりの驚きの表情を

見せてはストームウルフについての説明を簡単にし始める!…その際絶対に

その子狼から視線を逸らす事無くただ警戒した様子で見詰めてはマサツグに

説明を続け、その説明を受けたマサツグは膝枕されながら思いっきり溜息を

吐くと、嫌な予感が完全に的中した事に落胆し始める。そうしてリーナの

説明を聞いた後…マサツグがチラッとその子狼の方を確認すると、

いつの間にか卵の殻の外に出て今だマサツグの事をジッと見詰めており…

何の脅威も感じない…ただキラキラとした目で見詰めて来る子狼にマサツグが

思わず手招きをすると、ストームウルフの子供はこちらに向かい元気良く

駆け寄ってくる!


__ッ!…ダッ!!…ヘッヘッヘッヘッヘッヘッヘ!…


「なッ!?…き、貴様!?…さっきの話を聞いていたのか!?…

そいつは!!!…」


「いやぁ…何と言うか……リーナが言う程危険には見えなくてさぁ?…」


「馬鹿!!…本当に馬鹿!!!…

いいか!?…見た目に騙されるな!?…

ストームウルフはだな!!!…」


マサツグが手招きすると元気に駆け寄って来るストームウルフ!…

それを見てリーナが酷く慌て出すとマサツグの正気を疑う様に言葉を

掛るのだが、マサツグはそんなリーナの様子に逆に戸惑い…

ただストームウルフの目を見た限り脅威は感じないと言い訳をすると、

その言葉にリーナは驚く!…それと同時にマサツグを罵倒して改めて

ストームウルフの恐ろしさについて説明しようとするのだが、

そのリーナの心配も次の瞬間杞憂に終わる…


__ヘッヘッヘッヘ!…バッ!…ズザアアァァァ!!!……ヘッヘッヘッヘ!…


「……なぁ、これ本当に都市を滅ぼすの?…やはりそうには見えんのだが……」


子狼はマサツグの方に走って来るなりスライディングを決めるよう

腹這いで滑って来ると、距離まで計算したかの様にリーナとマサツグの前で

止まって見せる!…そして少し間が開いたかと思えばまた呼吸を荒くしては

体温調節をし始め、徐にマサツグの方へ腹を見せるよう仰向けになると、

撫でるよう催促しているのか尻尾を振って見せる!…そんな子狼の姿を見て

マサツグが疑問の表情を浮かべてリーナの方を振り向き、子狼の腹を

撫で始めては先程の説明が本当かどうかについてリーナに尋ね出すのだが、

リーナもその子狼の様子を目にしては戸惑いの表情を見せる…


「………あれ?…」


「……お手。」


__キャン!…


リーナが戸惑いの表情を見せては子狼を見詰め、マサツグがそのリーナの

表情に困惑すると何を考えたか子狼に右手を差し出す。その際掌を上にしては

芸をする様に合図の言葉を掛けると、子狼は戸惑う事無くスッと立ち上がって

見せては右前足をマサツグの手の上に乗せて元気良く返事をし、それを見た

マサツグがおっ!と言った表情を見せると、次に掌を見せるよう手を立てては

子狼に芸をするよう再度合図の言葉を掛け出す。


「ちんちん。」


__キャン!…


「……バァン!」


__……ポテッ…キャン……


「……なぁ?…やっぱりそうは思えないんだが?…」


マサツグの合図の言葉に反応するよう子狼がその場で直立すると自身の

腹を見せ出し、マサツグがそれを見て次の芸と言った様子で右手に銃を

作って見せると、子狼に対して引き金を引く。その際ちゃんと撃った

反動が有った様に手首をクイっと動かし口で効果音を付けると、

やはり戸惑う事無く子狼は撃たれたと言った反応を見せてはその場に

倒れて芸をして見せる。ここまで来るともはやリーナの説明に有った

凶悪性は何処にも無く…マサツグが再度リーナに尋ねるよう声を掛け出すと、

その言葉にリーナは困惑する…


「…も…もう何が何だか……ッ!…そう言えばモツは?…

一番近くに居た筈だが……ッ!?…」


「え?…モツ?…そう言えば?……ッ!?…」


自身が知っているストームウルフと違うと言った様子で困惑してはマサツグに

懐く子狼を見詰め、ハッ!とした反応を見せると徐にモツの心配をし始める!…

何なら一番子狼の近くに居た筈なのだが何故か子狼はマサツグの方に懐いており…

リーナがモツの居た方を振り向くとそこには確かにモツの姿が有るのだが

絶句する!…そしてリーナの言葉に反応するようマサツグもモツの方を見ては

その姿を確認するのだが、同じ様に驚いた表情を見せるとモツの顔をジッと

見詰めては戸惑う!…何故なら…


「…いや俺も卵の傍に居たんだが……

卵から出て来たこのわんこに顔を蹴飛ばされてそのまま倒された……」


「………モツ……ドンマイ……ぷふっ!…」


別に怪我をしたとかそういう意味では無いのだが…モツはリーナとマサツグの

言葉に返事をするよう踏み台にされた事を話してショックを受けた様子を

見せており、合流するようマサツグ達の方へと歩いて来るのだがそのモツの

顔はと言うと、モツの言う通り…額には両前足と両後ろ足の跡が横一列に

クッキリと残っていた…そんなモツの顔を見ては二人が如何反応したものかと

悩むのだが、とにかくマサツグはモツに対して労りの言葉を掛けると、

その表情を見ては笑わないよう必死に耐え!…リーナも徐々に近づいて来る

肉球跡に耐えようと眉間にしわを寄せて見ない様に心掛けるが、見事に

クッキリ跡が付いた様子を見ては耐え切れなくなり、モツの顔目掛けて

思いっきり吹き出す!…


「ッ!?……クッ!!…ブフウー!!!

アッハハハハハハ!!!!」


「うわッ!?

ちょッ!!急にどう……ハッ!!」


__バッ!!…ガサガサッ!!……


「ッ!?…な!?…んなんじゃこりゃーーーーーー!!!!!」


恐らくかなり珍しい光景だろう…リーナ王女の大爆笑図…

完全に腹筋が壊れた様子で大爆笑してはその様子にモツが疑問を持ち…

直ぐにハッ!とある事に気が付くと自身のアイテムポーチから手鏡を

取り出し始める!そして自身の顔を確認するとそこには大爆笑の

原因となる肉球跡が額にクッキリ付いており、初めてそこで気が付いた

モツが珍しく声を挙げて驚き戸惑うと、慌てて誤魔化そうと額を

擦り始める!…


__ゴシゴシゴシゴシ!…


「……ッ!?…と、取れねぇ!?…何だこれ!?…」


「ッ!?…取れないって!!…ブフッ!!……もう駄目だ!!…

あっはっはっはっはっはっはっは!!……ッ!…あれ?…動ける…」


__ザッ!……ッ!…ピョイン!…


モツが肉球跡を取ろうと幾ら試行錯誤しようが跡は中々取れず!…

モツが困惑し切って居るとその様子にマサツグも耐え切れない様子で

噴出しては転がり始め、自身の力で転がれる事にマサツグが気付くと、

ここで漸くスタンが完全に解けた事に気が付く!こうしてスタンが

解けた事によりマサツグが腹を抱えながらゆっくり起き上がり始めると、

件のわんこはマサツグの動きに合わせて飛び掛っては両肩を足場にして、

後ろ足を掛けてマサツグの頭に乗っかる!…


__ガッ!…ガッ!…ガシィ!!…ッ!?…


「ッ!?…クソ~!!……跡が取れ…ッ!…ブフッ!!!…

…ヤブ……ククッ!!…新しい頭装備でも見つけたかww」


「………。」


__パタパタパタパタッ!…


子狼が頭にしがみ付くとそれはまるでかなり特殊な頭装備を付けている様に

見え、それを見たモツがお返しとばかりに大喜びしては徐にカメラ機能を

起動させると、マサツグの頭に乗るわんこをマサツグの頭込みでスクショを

撮り始める。もはや何も言う気力も湧かないのかマサツグが黙って頭に

子狼を乗せて居ると、その子狼は余程マサツグに懐いているのか頭にしがみ

付いては尻尾を振ってご機嫌の様子を見せ、それを見たモツが更に受けた

様子で笑い出すと、スクショを取りながらタイトルを付け始める!…


__パシャッ!…パシャパシャッ!……


「マサツグ…わんこon theどたまnow……

ブフッ!!!…あっはっはっはっはっはっは!!!!」


「……如何してこうなった?…」


モツが自身の撮ったスクショを見ながら大爆笑をして居ると、マサツグは悟りを

開いた様に今の現状について疑問を持ち始める…ある意味バルデウスクラスに

戸惑いを覚えては頭に子狼を乗せたまま考え出し…思わず一言呟くと遠い空を

見始める…その際リーナはマサツグの事を心配した様子で見詰めては今だ警戒した

様子で子狼を見詰めており、子狼一匹で大の大人三人がワチャワチャして居ると、

突如直ぐ近くの茂みの奥からドタドタと猛スピードで何かが近づいて来る足音が

聞こえ始める!…


__ドドドドドドドドド!!!…


「ッ!?…何だこの足音!?…」


「敵か!?…いやしかし!……」


「とにかく警戒は怠るな!?…」


突如聞こえ始めた足音に三人が機敏に反応するとその足音が聞こえて来る

茂みの方を振り向く!…この時先のバルデウスとの戦いでリーナの剣は完全に

折れては使い物にならず!…マサツグとモツも時間経過である程度回復した

とは言え、満身創痍!…出来れば戦闘にならない事を祈る三人なのだが

その足音は近付いて来ているのか徐々に大きく聞こえ出し、一気に警戒を

強めては子狼の事を後回しで武器を構え!…何が出て来るのかと三人が

身構えていると、その足音の正体は茂みの中から勢い良く姿を現す!…


__ドドドドドドドドド!!!…ヴァサ!!……


「ッ!?…く、熊五郎ぉぉぉ!?!?…」


「ッ!?…やっと見つけたのねマサツグ!!…救援に来たのね!!!」


__ヒュゥゥン!…ビタッ!……ドガァ!!…キキィィィ!!!……


「お久しぶりでさぁ!!…マサツグ殿!!」


茂みの中から飛び出して来たは見覚えの有るフェルト地の熊の人形!…

しかもその手には何故か荷車が握られており…その荷車からカチュアが

飛び出し助けに来た!とマサツグの顔に張り付くと、熊五郎は急ブレーキを

掛けてマサツグ達の前に止まる!…そしてマサツグに久しぶりと

言った様子で声を掛けては笑みを浮かべて見せるのだが…突然の熊五郎と

カチュアの登場にマサツグ達が戸惑ってしまって何も喋る事が出来ずに

固まってしまう!…


「………。」


「……ん?…あれ?…ど、如何したんでさぁ?…」


「……いやそれこっちの台詞…」


「え?…」


驚き戸惑った表情で固まるマサツグ達に熊五郎が困惑気味に尋ねると、

マサツグが逆にツッコむよう返事をする…とにかく突然の登場に

ただ困惑しか無いと言った様子でマサツグが返事をして、その言葉に

熊五郎が戸惑い…双方如何したものかと状況に困惑し固まってしまうと、

空気を読んだ様子でもう一人…熊五郎の荷車から辺りを警戒する様に

ポリンも顔を出すとマサツグに声を掛ける。


「いたたたた!……あっ!…お久しぶりです!マサツグさん!!

マサツグさんの生命活動に危険反応を感じ取ったので救援に来ました!!」


「……え?…」


__わあああぁぁぁぁ!!…パタパタパタパタッ!…


「…ッ!?……ほ、本当に妖精って居たのか!…

……まさかこの目で見る日が来るとは!!……妖精!……」


「お…俺も初めて妖精を見るんだが!!…

それよりもその何処かの主みたいな熊が荷車を引いて来た事の方が

何より驚いた!!…」


急ブレーキが掛かったせいかポリンは頭を摩っており…相変わらず大事そうに

本を片手に抱えてズレたメガネの位置を直すと、マサツグとの再会を喜ぶ様に

助けに来たと言い出す。カチュアと同じく…何ならポリンの方が詳しく!…

他の妖精達も熊五郎の荷車から姿を現してはマサツグの前で飛んで見せ、

その妖精達の姿を初めて見たと言った様子でリーナが驚き喜びに興奮を覚えて

居ると、モツはご尤もな意見を口にしては驚いた表情を見せて熊五郎に視線を

向けていた!…そんなモツの意見にマサツグが静かに心の中で同意すると、

今だマサツグの頭の上では嬉しそうに尻尾をパタパタと振っており…まるで

マサツグの心を代弁するようキャンと可愛く吼える…子狼の姿が有るのであった。


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