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-第一章-スプリングフィールド王国編-
-第一章六十三節 祭りの準備とお伽話と勇者(仮)-
しおりを挟む……リンが隠し持っていた?…資料書により情報がもたらされ、冒険者達が一気に
動き出しては春王祭に必要な食材が徐々にギルドに集められ始めた今日この頃…
町の中でも春王祭の準備が進んでおり、町は色とりどりの花や装飾品等で
飾られてはその陽気な雰囲気に活気付いていた。町の人達は祭りを心待ちに
している様子で笑みを零し、子供達は駆け回る…町行く人も何処か浮き足立って
居り、そんな様子を目にしながらマサツグ達は何故か…
「…今回君達に来て貰って本当に心強いよ…
同行してくれる事を承諾してくれて…ありがとう!…」
「い、いえ…気にしないで下さい…」
__ガラガラガラガラ…
ギルドマスターのフリードと共に王城に向かって馬車に乗せられていた…
フリードは付いて来てくれたマサツグとモツに対して笑顔でお礼を言い、
マサツグとモツは、何で…如何してこうなったと戸惑ってはフリードに
目を合わせる事が出来ないまま返事をし、馬車の中で揺られていた。
…さて、何故こんな状況になったかと言うと時間は少し遡って三日前…
食材納品後の話に戻る…クラリスがリンにプロレス技オンパレード(20連発)の
20発目を決めている時…二階から徐にギルドマスターが姿を現した所から
始まる…
「アルゼンチン゛ン゛!!……ヴゥアックブリィィカアアァァァァァ!!!!」
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
__うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!…
クラリスが勢いに乗った様子でリンの背骨を折り曲げる様に自身の肩まで
担ぎ上げ、そのまま自身の体を軸にしリンの背骨に圧を掛けると、
それが痛い!とばかりにリンが悲鳴を上げ泣き喚く。そしてその様子を
見ている冒険者達がまるで観戦でもしているかの様に興奮した様子で
歓声を上げ、その歓声も有ってかクラリスが乗りに乗った様子で更にリンを
落としに掛かろうとするのだが、ここで止めが入る様にフリードが二階から
顔を出す。
「…何やら楽しそうな事をしているね?……」
「ッ!……ッ!?…ギ、ギルドマスター!?…
こ、これはそのぅ!……」
「…少し良いかな?…頼みたい事が有るんだが?…」
「は、はい!!…直ぐに!…」
フリードが苦笑いしながらアルゼンチンバックブリーカーを決める
クラリスに話し掛け、声を掛けられた事にクラリスが反応し振り返ると
苦笑いするギルドマスターの表情を見た途端に慌てた表情を見せる。
そして周りの興奮も一気に冷めた様子で冒険者達が二階のフリードに
視線を向けて居ると、フリードはクラリスに用事が有ると言って
苦笑いしたまま二階の奥へと姿を隠し、その呼び掛けにクラリスが慌てた
様子で同意すると、リンの事など御構い無しと言った様子で投げ捨てる。
__ボタッ!……タッタッタッタッタッタ!…
「…あぁ~あ…こら完全に伸びてますなぁ…
当分は起きないんじゃ?…」
「…と言うよりもあの細い体の何処にそんな力が
有るのかが気になるんだが?…」
「はいはぁ~い!…お医者さんが通りまぁ~す!
道を開けて下さぁ~い!」
クラリスが慌てた様子で呼ばれたフリードの元へと走り出し、解放された
リンはと言うと投げ捨てられたままの状態で地面に突っ伏しては白目を
剥いてピクリとも動かなくなり、周りの冒険者共々マサツグがリンの様子を
見て呟いて居ると、モツがそれ以上にと言った様子でマサツグにツッコむよう
疑問を問い掛ける。その問い掛けにマサツグは無言で苦笑いをするしかなく、
冒険者一同が倒れるリンを見て如何したものかと困惑して居ると、空気を読んだ
様子でマサツグ達と一緒に着いて来たハリットが人波を掻き分けリンの容態を
確認し始める。
「……気絶して居るだけみたいですね…
…ふぅ…今日は良く気絶している人を見かける日ですね?…
何処か安静に出来る場所に寝かせて置けばじきに目を覚ますと…」
倒れているリンを仰向けに転がし自身の顔をリンの顔に近付け、息をしているかの
確認をすると直ぐにリンは気絶して居るだけと判断する。その際周りの人の目を
考慮した様子でマサツグの時とは違い服を脱がさず、クラリスが見せた技の数々も
命を奪う様な物では無いと判断して大丈夫と話すと、今日は患者が多いとばかりに
一息吐く。そしてハリットの言葉にマサツグが何も言えねぇ…と言った様子で
そっぽを向いて、聞かなかった振りをして見せて居ると二階の踊り場から
クラリスが顔を覗かせては突如マサツグとモツの名前を呼ぶ。
__コッコッコッコッコ!…
「マサツグさぁ~ん!…モツさぁ~ん!…ちょっと良いですかぁ~!」
「ッ!?…え?…今度は何!?…」
「ギルドマスターがお二人にお話が有ると!…」
「……え?…」×2
突如クラリスに名前を呼ばれマサツグとモツが驚き戸惑った表情を見せて
呟くと、周りの冒険者達の目は二人に移り…何をやった!?と言った様子で
困惑の眼差しを送る。そんな困惑の様子を見せる二人に対してクラリスも
困惑した様子を見せつつフリードが呼んで居るとだけ伝え、その言葉に
二人は戸惑いながらも呼ばれるままに二階へ移動し始めると、踊り場で
待っていたクラリスにフリードの居る執務室へと案内し始める。二階は
余り立ち寄った事が無いので何処に何が有るのか分からないと言った
興味本位の様子で二人が辺りを見渡し、その様子にクラリスがフフフッ♪と
可笑しそうな笑みを零して居ると、直ぐに三人はギルドマスターの待つ
執務室前へと辿り着く。
「…ここがギルドマスターの執務室です。
では…」
__…コンコンッ!…
「…入って来てくれ!…」
「失礼します!…」
クラリスが執務室の前で立ち止まりマサツグとモツも釣られて足を止めると、
クラリスは軽く紹介した後扉をノックする。すると中に居るフリードが
クラリスに入って来て良いと返事をし、クラリスが改めて声を掛け執務室の
扉を開けると、部屋の中は如何にもと言った室内で色々と飾られてあった。
まるで学校の校長室の様な謎の高級感にソファやテーブル…壁には自身が
使っていた剣だろうか鞘に仕舞われた状態で掛けられており、その他にも
シカの頭の剥製や王様から貰ったであろう表彰状等が飾られてある。
そんな室内にマサツグとモツが戸惑いつつもクラリスに連れられ中に入ると、
一番奥の書斎スペースにフリードが座って待って居れば、席を立ち手前の
対面する様に置かれたソファへと二人を案内する。
「…やぁ、来て貰って申し訳ない…
どうぞ、そこに座って…」
「あ…ど、どうも…」
「………。」
「………。」
マサツグとモツの二人をソファへと案内し、自身も対面するようソファに
腰掛けるとそこはもう校長室の様な緊張感に包まれる。フリードは笑顔で
マサツグとモツを迎え入れる状態で座っているのだが、部屋の雰囲気と
フリードの風格がそうはさせず、妙に緊張した様子でマサツグとモツが
返事をして案内されたソファに腰掛けると、気分は完全に説教を受けそうな
状態になり嫌でも身が縮まる!…今まで校長室に呼ばれる様な悪い事を
していない二人にとっては慣れない感覚で、フリードが何を言い出すのかと
完全に委縮した様子で固まって居ると、四人の間は沈黙に包まれる…
そんな様子にフリードは戸惑った様子を見せては咳払いを一つし、徐に
ある事を話し始める。
「……えぇ~っと…ン゛ン゛ッ!…」
__ッ!?…ッ!…プルプルプルプル!…
「…そんなに緊張しなくても別に何か叱ろうとしている訳では無いんだよ?…
ただちょっと…昔話をね?…」
「え?…」
フリードが咳払いをするとマサツグとモツが驚いた反応を見せ、フリードも
それを見て戸惑った様子を見せると慌てて二人に声を掛ける。二人の警戒を
解くよう慌てるフリードにクラリスが思わず吹き出しそうになるも、自身の
お尻を抓って我慢し何とか笑いを堪えて居ると、フリードが戸惑いながらも
二人へ話の用件を話し出す。しかしその用件と言うのは如何にも不可思議な物で
マサツグとモツに昔話と話しては笑って見せ、その言葉を聞いた二人は戸惑い
言葉を漏らし困惑して居ると、フリードはその昔話を突如話し始める。
「……この地には昔、魔王が君臨していた…
その魔王は好戦的で名の有る冒険者や実力有る剣闘士と戦う事を
何よりの娯楽としていて、事ある毎に挑んではその者達を震撼させていた…
ただ冒険者や武術家しか狙わなかった為、こちらから仕掛けない限りは
脅威にならなかったのだが…この時…
今は無き「ワールウィンド帝国」と呼ばれるもう一つの国がこの魔王を利用し、
スプリングフィールド王国へ侵攻しようとして居た過去があったしたらしい…
だが、その思惑は外れて逆に自国を滅ぼすきっかけになった…
彼らは何を思ったのかだろうか?…魔王を意のままに操れると思ったのか
迂闊にも手を出し、それがきっかけで魔王は帝国を逆に侵攻!…魔王は一人で
帝国を相手に戦争をし、結果は帝国の完全敗北で今は廃墟となっている。」
「……?…」
何の脈絡も無く話し始められた昔話をマサツグとモツは黙って聞き続ける
のだが如何にもフリードの意図が読めない…フリードが話しているのは
このゲームのこの大陸で有った昔話だと言う事は分かるのだが、
何故今それを話そうと思ったのかその意図が読めずにマサツグとモツは
困惑して居た。フリードは何を話そうとして居るのか?…それとも本当に
昔話をする為に自分達を読んだのか?…そんな疑問を覚えつつ二人が話を
聞いて居ると、フリードの昔話はまだ続く。
「…さて、ここから話がややこしくなる!…この時、魔王は帝国を
落とし終えた後何かに目覚めたらしく、自分の力を試す様に
今度はスプリングフィールド王国へと侵攻し始めたのだ!…
余程彼は帝国を落としたのが楽しかったのだろうか、迷う事無く一直線に
王都へと攻め入り王都に向かい宣戦布告しては蹂躙!…
魔王にとっては暇潰しだったのだろうが、国にとっては災害で急ぎ王国は
魔王討伐の算段を立てるのだがそれは火に油を注ぐ結果になってしまう!…
王国はまず、兵を編成して魔王に戦いを挑むが敵う筈も無く全滅!…
次に王国は実力のある冒険者、武術家を呼び寄せ再度魔王に挑むがこれも
失敗に終わる…
その後王国も考えられるありとあらゆる方法を試すが全部失敗に
終わって結果的に魔王を喜ばせるだけに終わってしまった…
…まぁ、魔王にとっては戦いが娯楽であるが故に丁度良いおもちゃを見つけた
程度にしか思っていなかったんだろう…町の人達への被害は無いものの兵士や
冒険者達への損害が激しく、違う意味で王国の滅亡が危惧されていた!…
抵抗すれば全滅!…かと言ってこのまま侵攻させるのもいつかは民に
影響が出る!…悩みに悩んだ末王国は考えた!…
いっその事何もしなければ帰ってくれるのでは?と…しかしこの考えは
間違いだったのか魔王は次の行動を取り始める!…
{…何故だ?…何故何もしてこない?…もしやもう終わりとでも言うのか?…
…つまらん!…つまらん!!つまらん!!!つまらん!!!!…
今まで抵抗して来る事に楽しみが有ったと言うのに何もして来ないとは…
この王国は腑抜けたか!?…ならば仕方ない!!…
今まで楽しませて貰ったが兵力の無い国家など我にとっては壊れたも同然!!…
何も無いだけの偶像に存在の価値等無し!!!…無塵と帰してくれる!!!…
……だがただ壊すだけでは面白くない…そうだな…ッ!よし!…
…これより半年後!!…これより半年の間に貴様達が我を止められなければ
我はこの国を…塵と返す!!…我も気が長い方では無いからな!!!…
それまでに我を倒せるだけの力を付けておく事だな!!…}
勿論この宣戦布告に王国は大混乱…会議や作戦を立てるが解決の兆しは
一向に見えないまま、ただ悪戯に時を浪費して行く…
そうして半年と言う年月はみるみる無くなり刻一刻と時間が過ぎて行く中…
突如としてある者達が現れ始める!…それは王国の安寧より王国に住む民の事を
一番に心配していた王家の血を継ぐ…後の春王と呼ばれる王子と、その時まだ
勇者と呼ばれる前の冒険者と騎士の二人であった。三人は国王に自らが魔王と
対峙すると告げると王国を後にし、魔王の居城に攻め入った!…
勿論その前に国王に反対されるも王子は自分の考えを曲げる気は無かったのか…
ほぼ家を飛び出したのと変わらない様子で他の二人と旅立ったらしい…
…だがその道は険しく長いもの…簡単には行かない…苦戦を強いられながらも
遂に魔王の居城に辿り着き、魔王と決戦を迎え!…遂に王家の血を継ぐ王子と
勇者は死闘の末、封印する事に成功した!…と言うのがこの国の昔話なのだよ…
…面白かったかな?…」
「え?…えぇ……」
{最後の話の部分の投げやり感が半端なかった様な気がするが?…}
フリードが話す昔話はまるでこの国に有る伝承の様で、マサツグとモツが
困惑しながらその話を黙って聞いて居ると、漸く終わりを迎える。
そして昔話を話し終えたフリードは二人に対して感想を求め始めるのだが、
二人はただフリードの意図を考えて居た様子で戸惑い出しては返事が
たどたどしくなり、その様子にフリードが苦笑いをする。その際口には
出さなかったものの話の最後の終わり方が急な事について疑問を持つが、
それ以上に何故呼ばれたのかをひたすらに考えて居ると、フリードは
今までの昔話が前座だったと言った様子で二人に本題を話し出す。
「…さて、ここまで話を聞いて貰ったのは他でもない……
本題はここからなんだ…」
「え?…」
「実はその魔王には側近が居たらしくて…
その側近が人と獣が入り混じった化け物を従える能力があったらしい!…」
「ッ!…それって!…」
フリードは今までの話を踏まえて本題に入ると真剣な表情を見せ、その様子に
マサツグとモツが戸惑った様子で反応を見せて居ると、フリードは気になる
一言を言い始める。それは魔王に側近が居る事で側近には化け物を従わせる
能力がある事…その化け物も人と獣が入り混じった物…まるでそれは今まで
相手にして来た人キメラの事を言っている様に聞こえ、二人が驚いた様子で
反応を見せて居るとフリードは若干困惑した様子で淡々と説明を続ける。
「…まぁ、君達の反応の通り…その人と獣が入り混じった化け物と言うのは
あの「人キメラ」と言うモンスター達の事だ!…
今回のカルト教団襲撃…強襲…殲滅と戦って来た中で何度も相手にして
来ていると思うが、問題なのは何故そのモンスターをカルト教団の連中が
従えているのか?…これに限る!…
…と言うよりも答えが出て居ると言った方が良いかな?…」
「ッ!…まさか!…」
フリードが両手を顔の前で組んでは若干困惑した様子で人キメラの話をし始め、
カルト教団がその人キメラを従えていた事を口にし出してはカルト教団の目的と
その教祖の正体について話し始める。その話を聞いたマサツグとモツは戸惑った
様子を見せては思わずソファから立ち上がり、フリードはそんな二人の様子を
見て驚いた反応を見せる事無く、寧ろ真剣な表情で眉間にしわを寄せると自身の
考えた結論を二人へ口にする。
「……そう我々はカルト教団の教祖がその魔王の側近では無いか?と
考えている!…
…これは歴代ギルドマスターに受け継がれる記録帳で今までにあった
大きな事件の事が事細かに書かれてある!…その中の一つにはこう書かれてあった!…
{勇者一行は魔王の封印に成功し、その側近達を退治し始める!…
しかしその内の一人を取り逃がしてしまい、完全な勝利とは行かなかったらしく…
「これで勝ったと思うな!!必ずや魔王様の封印を解き、貴様らに復讐してやる!」
…と捨て台詞を吐かれた……}とここに書いてある。
その際…この時代に居る人キメラはその後全滅させたとなっているが…」
フリードは自身の考えを二人に話すと同時に自身の懐から年季の入った手帳を
取り出すと、その手帳の紹介を軽く済ませては記述がされてあるページを開き、
何故その結論に至ったのかによる証拠を提示し話を続ける。その話を聞いて
マサツグとモツはただ戸惑う事しか出来ないと言った様子で立ち尽くしては
その手記を見詰め、徐々に自身の記憶に沿って理解を示すと頭の中で今までの
出来事に対して順を追って整理し始める。
「…じゃあ…クラスアップ試験の時に行った狩人狩りの森に居たあいつ等は…」
「アレは新たにその側近の手によって召喚…又は作られた人キメラか…
もしくは過去の取り逃がしと色々考えられるが…さすがに分からない…
マサツグ君の記憶を見せて貰った時に気になって自分で調べて見たんだが…
やはりあの森にその様な化け物が出て来る情報は一つも無かった…
更にその狩人狩りの森だが今は立ち入り禁止にして腕に覚えの有る
冒険者に対してクエスト…人キメラの掃討をして貰っているのだが…
報告では普通の森にしては動物が凶暴になり辺りには瘴気…
身元不明の死体が転がっていると聞いている!…
もはやあの森は普通では無い上に化物が闊歩する魔界と化している…
…ただある一部の場所を除きではあるがね?…」
「ッ!…その一部と言いますと…」
「浄化の樹・リンデが生えている場所…
…とは言っても確認が出来ていないのだけどね?…
何故か辿り着けないと聞いている…」
マサツグ達がフリードの話を聞いて自身が見た人キメラ達について考え始めると、
フリードが推測を口にする。そしてフリードはマサツグの記憶を除き見た際、
自分が疑問に感じた事を独自に調査したりと色々していた事を話し、今の
狩人狩りの森の状態について話すと同時にその処置についても話し、若干の
悩んだ表情を見せる。あくまでも応急処置としての対処なのか現場の冒険者の事を
考えた様子でとにかく解決法を探さなくては!と悩み、その際フリードがある事を
言うとその話にモツが食い付き、フリードが気が付いた反応を見せると、モツの
問い掛けに苦笑いしながら答える。そうして徐々にフリードが何を言いたいのかを
理解し始めたマサツグ達ではあるのだが、ここで別の疑問が浮上してくる。
「……まぁ、何と無く言いたい事は分かりました…
分かったんですが?…」
「ん?…」
「何でこの話を俺達に?…別に俺達じゃなくても…
何なら俺達以上に腕の立つ冒険者は幾らでも居ると思うんですが?…」
「ッ!………ふふふ!…」
マサツグ達が感じた新たな疑問とは何故自分達が名指しで呼ばれたのかと
言う事であった。ギルドの一階には中堅~廃人クラスの冒険者達が
集まっていて、普通に人キメラの殲滅やそれこそカルト教団の排除…
それぞれの分野で一役買って出た者達が居た訳であるのだが、それなのに
自分達が呼ばれたと言う疑問をマサツグとモツは聞かずには居られなかった。
そしてその質問を聞いたフリードはキョトンとした表情を見せると、
余程その質問が可笑しかったのか徐々に笑みを零し出し、その様子に二人が
揃って困惑して居ると、フリードは笑い始めた事を謝罪しては二人に
話し掛け始める。
「フフフ!…ッ!…あぁ~!…失敬!…そうだね…君達は知らなかったね?…」
「……え?…」
「…マサツグ君が持っているのは…ライモンド卿の大剣だね?…」
「ッ!…」
「そしてモツ君が腰に差しているのが…エイブレント卿の剣…」
「ッ!?…え?…何で?…」
フリードは如何やらマサツグとモツは既に話を理解して居ると言う態で
話をしていたのか、理解していない二人を見て謝罪するとその謝罪に
マサツグとモツが戸惑った反応を見せてはフリードの様子に困惑し始める。
そして目の前で困惑する二人にフリードが徐々に落ち着きを取り戻して見せると、
その視線は何故か二人の持つ武器の方へと向けられ、マサツグはライモンド…
モツはエイブレントと言い当てるとその教えた覚えの無い答えが返って来た事に
マサツグとモツは驚いた反応を見せる。そうして二人がフリードの掴めない
様子と雰囲気に完全に飲まれた様子で立ち尽くし何が何だかと言った様子で
ただ困惑して居ると、フリードは二人の持つ武器にも関係が有ると言った様子で
こう切り出す!…
「……実はその二本の剣は当時の勇者一行が使っていた武器とされているんだ…」
「え?…えぇ!?…」
「ちょ!…ちょっと待ってください!?…
だってこれは!!…」
__…フルフル……
突如フリードに自分達の持っている武器が勇者の持っていた武器と紹介され、
マサツグは驚き戸惑いモツは有り得ないとフリードに否定しようとするが、
フリードは逆にモツを否定するよう静かに首を左右に振る。その様子にモツが
戸惑ってはあの時見たエイブレントの記憶は嘘だったのか?…それとも
フリードに間違ってその情報が伝わってしまったのか?…と思わず色々疑い
始めてしまうのだが、フリードはその補足説明をする様にある事を二人に
話し出す。
「その驚き様だと知ってると思うけど…
ライモンド卿とエイブレント卿はお伽話よりもっと先の人物で勇者では無い!…
勇者では無いけど…受け継がれているんだ…
武器はとある王国で大切に保管されていてその二人が譲り受ける事に
なるんだけど……まぁ…二人共見た感じ自分様に作り変えちゃったみたいだね…
でも正真正銘…その傷の有る大剣と白銀剣は元々勇者一行が
握っていたとされる武器なんだ…」
「つ…作り変えちゃったって!……えぇ!?…」
「あははは…まぁ驚く所ではあるけど…
これで君達をここに呼んでこの話をした理由は理解して貰えたと思う!…
君達がその武器を持って居ると言う事は元の持ち主に認められたと言う事…
それに伴ってその武器を手に入れたタイミングでカルト教団の活動が活発化…
偶然にしては出来すぎている…まるで運命がそう仕向けている様に…」
「えぇ~……」
フリードは二人の持っている武器は勇者から受け継がれて来た物と話し、
更に自分様に作り変えられている事を見抜くと若干驚いた様子で話し始める。
そしてマサツグ達がその武器を手に入れたと言う事は勇者としての素質が
有ると期待した様子で言い、同時にカルト教団が活性化し始めた事を例に
挙げて運命と若干興奮した珍しい様子で言い出すフリードに
マサツグとモツは迷惑そうな表情で戸惑い声を漏らす。その際心の中で
{はた迷惑な…}と思ってしまうのだが、これもこの武器を手に入れた時点で
フラグが立ったのかと考えると、何故か簡単に諦めがついてしまう。そして
この瞬間…マサツグ達の持っている武器は魔王イベントに関連する
激レアアイテムと化した為、一部の冒険者から狙われる可能性も出て来ると
更に二人は面倒とばかりに溜息を吐き始める。
「……はあぁぁ~~…」×2
「……さて、回りくどい話に付き合わせてしまって申し訳ないね?…
…でもこれから起きる事柄には注意をした方が良い!…
君達は武器を手に入れる前から王族との関係性を持っていて、
その人間達に興味を持たれている!…
それだけでも数奇な事なのに君達は唯一の武器を手に入れたんだ!…
何が起きても不思議じゃない!…」
マサツグとモツがこれまで以上に面倒な事に巻き込まれるのでは?と
考え始めると一際大きな溜息を吐き出し、それを見たフリードが苦笑いすると
二人に忠告の言葉を口にする。王族と係わりを持っていて、勇者?…の武器を
所持している!…これで他の冒険者及びカルト教団に目を付けられると
フリードが二人の安否を気遣う様に声を掛けると、マサツグが落胆すると
同時にフリードの言葉に疑問を持ったのか質問し始める。
「えぇ!?…そんなぁ~!?…
…ってか本当にそう見えますか?…どちらかと嫌われている様な?…」
「傍から見ていても仲が良く見えるのは間違い無いだろう…
特にリー…ッ!…ゴホン!!…ハイドリヒ君や王妃様…
あの方々は間違いなく君に興味を持っている様だったよ?…」
「うげえぇぇ~~…」
マサツグは好かれていると言った好感を感じていないのか、
逆に疎まれているのでは?と疑問を感じた様子でフリードに聞き出すと、
フリードは目を閉じ首を左右に振って見せてそれは無いと答える。
その際何故か誰かの名前を言い間違える様な素振りを見せては
慌てる事無く咳払い一つして言い直し、マサツグが好かれている事を
改めて告げるとマサツグはゲンナリする。その様子を見たモツが
マサツグの隣で悪い笑みを浮かべては{ご愁傷様!…}と心の中で
呟き、それと同時にフリードが誰かの名前を言い間違えた事が
気になって居ると、フリードはマサツグの様子を見ては笑い出し
話し掛ける。
「あっはっはっはっは!…まぁ気持ちは分からなくも無いけど…
彼女達だって一応は冒険者をやっていた訳だから実力の無い者に
態々興味を持つ事も無いだろ?…これも…期待されていると考えれば…
案外良いものかもしれないよ?…」
__…ッ!……
「将軍もマサツグ君やモツ君の活躍を見てまだまだやれる!と
躍起になって居たみたいだし…少なからず王妃様に将軍と…
二人が気に入られている事は間違いないよ?…」
「ッ!?…って、俺もですか!?…」
フリードが苦笑いしながらマサツグを宥めると、その気に入られるだけの
実力は有ると褒め始めるのだが、そのフリードがマサツグを宥める際…
気になる言葉を口にすると更にモツが引っ掛かりを覚える。そうしてモツは
一人フリードが何かを隠している様な違和感を覚え始め、フリードの話す
言葉を集中して聞き始めるのだが次に話し始めたのは自分の話題と、
飛び火した事に驚いてその違和感も何処へやら…
そうしてギルドマスター・フリードに気付きたくもない真実を突き付けられ、
勇者・マサツグ(仮)と勇者モツ(仮)が誕生させられると、二人揃って脱力しては
今後如何しようかと悩み始めるのであった。
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嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
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王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
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「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
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錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
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悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
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